国別・地域別情報

ホーム 国別・地域別情報 アジア 審判・訴訟実務 | アーカイブ 特許・実用新案 | 意匠 | 商標 韓国における産業財産権紛争調停制度の活用

アジア / 審判・訴訟実務 | アーカイブ


韓国における産業財産権紛争調停制度の活用

2013年03月29日

  • アジア
  • 審判・訴訟実務
  • アーカイブ
  • 特許・実用新案
  • 意匠
  • 商標

このコンテンツを印刷する

■概要
(本記事は、2020/11/10に更新しています。)
 URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/19555/

特許・実用新案、意匠、商標等の産業財産権の紛争があるとき、裁判や審判を通して解決しようとすれば、多くの費用と時間が消耗される。しかし、紛争調停制度を活用すれば少ない費用(申請自体は無料。代理人依頼時には代理人費用は必要。)と短い時間(3ヶ月以内)に紛争を解決することができる。産業財産権紛争調停制度による調停が成立した場合、確定判決と同一の効果をもつことになる。
■詳細及び留意点

産業財産権紛争調停制度は発明振興法(第41条~第49条の2)及び発明振興法施行令(第20条~第26条)に根拠し、「産業財産権紛争調停委員会運営細則」(特許庁告示2009-26号、2009.10.1付け改定施行)によって運営される。

 

(1) 紛争調停対象は特許・実用新案、意匠、商標等の産業財産権の全ての紛争である。但し、権利の無効及び取消可否、権利範囲確認等に関する判断のみを要請する場合は除く(発明振興法第44条)。

 

(2) 調停申請をすることができる者は、調停申請日現在、特許庁に登録されている産業財産権、又は消滅した権利であっても損害賠償請求権が存在する権利の権利者、実施権者、使用権者、職務発明者、その他、該当権利の実施に直接的な利害関係がある者が該当する(発明振興法第43条の2)。

 

(3) 調停申請手続きはまず、紛争の当事者のいずれか一方が産業財産権紛争調停申請書(韓国語「산업재산권분쟁조정신청서」)を調停申請委員会に提出する。提出後30日以内であれば内容を変更することもできる。なお、在外者(外国人)の申請は韓国代理人(登録された弁理士)を通さなければならない。特許庁は調停申請が受付されれば、適法であるかどうかを確認し、適法でなければ却下する。しかし、調停対象案件に該当すれば、手続上の瑕疵についてはそれほど厳しくなく、申請は適法であるが書類上の不備があり補完が必要な場合には、申請人に補完要請をすることができる。

 

(4) 特許庁長は申請書が受理されれば、被申請人に副本を添付し、被申請人は、通知日から20日以内(在外者は30日以内)に答弁書を提出しなければならない。なお、この期日に対する延長可能規定はないので、まずは調停に応じる意思があるか否かにつきを答弁することが望ましい。被申請人が答弁書を提出しなかったり、調停に応じない場合は調停を終了する。

 

(5) 紛争の両当事者が双方とも調停に応じれば、調停委員会では3人の委員からなる調停部を構成し、両当事者に通報する。調停委員について両当事者は除斥忌避事由に該当すれば、除斥忌避をすることもできる。(発明振興法第41条の2、42条)

調停部は紛争の実体を把握し、合理的で公正な調停案を作成し、両当事者が和解できるように勧告する等、調停の役割を担当する。

 

(6) 調停部は、両当事者に書面または口頭陳述することができる機会を付与し、下記内容の全部または一部内容が含まれた調停案を作成する(運営細則第27条)。なお、通常口頭陳述は特許庁(大田)にて実施される。

(i)調停の対象

(ii)損害賠償額やロイヤルティー支給等、金銭の債権・債務に関する事項

(iii)在庫量の処分に関する事項

(iv)調停に所要された費用の負担に関する事項

(v)今後、当該紛争で審判、裁判等を請求しないという不争条項

(vi)両紛争当事者間のクロスライセンス技術協力等、戦略的提携に関する事項

(vii)その他紛争解決のための両当事者が協議しなければならない事項

 

(7) 調停部は調停案を作成すれば、両当事者を別々にまたは同席させ、調停案の受諾勧告等の和解を勧告する。調停案は両当事者が合意すれば修正することもできる。しかし、調停案に最終合意できない場合には、調停は中断する。

 

(8) 調停案に合意すれば、調停部は調停調書を作成し、両当事者及び調停委員がこれに捺印すれば、裁判上の和解や確定判決と同一の効力をもつようになる。

 

(9)このような調停過程は申請日から3ヶ月以内に終結するように運営されている。

 

【留意事項】

(1) 紛争が発生し、両当事者による協議では解決できない場合、審判や訴訟に及ぶ前に紛争調停制度を利用することを検討してみるのもよい。和解調停は、両者が合意しなければいつでも調停を中止することができるため、両当事者はそれほど心理的負担を感じる必要はない。

 

(2) 調停申請は時効中断の効力があるが、調停が不成立の場合にはその不成立が確定された日から1ヶ月以内に提訴しなければ時効中断の効力はない(発明振興法第47条)。

■ソース
・発明振興法
・発明振興法施行令
・産業財産権紛争調停委員会運営細則(特許庁告示2009-26号、2009.10.1日付け改定施行)
法制処のウェブサイト
(http://www.law.go.kr/admRulSc.do?menuId=1&p1=&subMenu=9&nwYn=1&query)
にて検索可能(検索語:산업재산권분쟁조정위원회운영세칙」)
■本文書の作成者
崔達龍国際特許法律事務所
■協力
一般財団法人比較法研究センター 菊本千秋
特許庁総務部企画調査課 山中隆幸
■本文書の作成時期

2012.12.20

■関連キーワード