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韓国における権利範囲確認審判制度について

2013年03月08日

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■概要
権利範囲確認審判は、特許権者等が、第三者(被疑侵害者)が実施する技術等に関して、それが特許権者自身の特許権の権利範囲に属することの確認を求めたり(積極的権利範囲確認審判)、あるいは、第三者(被疑侵害者)が、第三者自身が実施中である技術等が他人の特許権の権利範囲に属さないことの確認を求めたりする審判(消極的権利範囲確認審判)である。その審決は侵害の有無についての裁判所の判断にある程度の拘束力を持つとみることができ、韓国では、侵害による紛争発生時に侵害者の半数以上が権利範囲確認審判を活用しているようである。
■詳細及び留意点

 権利範囲確認審判は、特許法、実用新案法、商標法、意匠法で規定されている(特許法第135条/実用新案法第33条/商標法第75条/意匠法第69条)。

 

(1) 権利範囲確認審判の種類

 権利範囲確認審判は、積極的権利範囲確認審判と消極的権利範囲確認審判とに区分される。積極的権利範囲確認審判は、特許権者または専用実施権者が請求するもので、第三者(被疑侵害者)の実施する技術等が権利者自身の特許発明の権利範囲に属することの確認を求めるものである。消極的権利範囲確認審判は、特許権者ではない第三者(被疑侵害者)が請求するもので、第三者自身が実施する技術等が他人の特許権の権利範囲に属さないことの確認を求めるものである。

 なお、権利対権利の権利範囲確認審判を請求する場合もある。後願の特許権者が、自身の権利が先願の特許権者の権利範囲に属さないことの確認を求める消極的権利範囲確認は適法な審判請求として認められる。しかし、先願の特許権者の権利が後願の特許権者の権利範囲に属することの確認を求める審判は、結果的に後願の特許権の無効を主張することとなり、権利範囲確認審判の趣旨に合わないため不適法とされ、審決却下となる。即ち、権利範囲確認審判は権利に属するか否かを確認する審判であり、無効を主張するためには無効審判をしなければならない(例:大法院判例2007후2766)。

 

 また、特許権の請求項数が2以上である場合は、請求項ごとに審判請求をすることができる(特許法第135条第2項)。

 

(2) 審判請求できる者

 審判請求人は、特許権者、専用実施権者、又は利害関係人でなければならない。利害関係人には、特許権者等から警告を受けた者、特許権と関連した製品を生産する者、または生産しようとする者等が含まれる。

 

(3) 審判請求の際に必要な書類等

 審判請求書では、特許発明と具体的に対比することができる説明書と必要な図面を添付しなければならない(特許法第140条第3項)。

 

(4) 権利範囲確認審判の効力

 権利範囲確認審判は、特許権の権利範囲と比較対象物等との関係で、当該対象物が特許権の範囲に属するか否かを決めるものであり、特許権の権利範囲自体を確定するものではない。

 また、審決は侵害の有無についての裁判所の判断にある程度の拘束力を持つとみることができる。すなわち、損害賠償や損害差止等を求める民事訴訟が提訴されている場合、裁判所においては侵害の有無の判断について審決の結果をある程度尊重する傾向にある。

 

【留意事項】

(1) 特許権等の侵害で民刑事訴訟が提起される可能性がある場合、被疑侵害者が「侵害でない」という主張ができる最もよい方法が消極的権利範囲確認審判を請求することである。自己の行為について侵害が疑われた場合、消極的権利範囲確認審判を提起することが望ましい。しかしながら、被疑侵害者の製品の一部が、特許権者の権利のうち本来ならば無効審判で一部無効と認定されるべきである部分と同一である場合には、消極的権利範囲確認審判を請求する前に無効審判を請求するのが望ましい。そうでないと、本来ならば無効とされるべき部分であるにもかかわらず、「特許権者の権利範囲に属する」という審決がでてしまう可能性があるからである。

 

(2) 反対に、侵害が発生した場合、特許権者は、まずは積極的権利範囲確認審判を請求することが考えられる。その場合、審判の結果を踏まえて民刑事措置について検討することとなる。ただし、権利範囲確認審判が長期間に亘る場合もあるため、そのような場合には審決が出るのを待たずに、審判の進行を見つつ(あるいは審判請求と同時に)民刑事措置をすることが望ましい(裁判所で係争中であれば優先審判制度を利用すれば、3~4ヶ月で審理終決となる。)。

 

(3) 権利対権利の争いの場合は、権利者は、積極的権利確認審判を請求する前に、被疑侵害特許が特許権者自身の特許権により無効となるべきものであれば無効審判を請求すべきである。

 

(4) 被疑侵害者が請求した消極的権利範囲確認審判において、被疑侵害者が説明する実施対象物が実際に流通している侵害品と相違する場合がある。即ち、実際の侵害品はAであるが、被疑侵害者はBをもって消極的権利範囲を請求する場合である。これは、本案訴訟では、権利と対象物(いわゆる「イ号」)を比べるが、権利範囲確認審判では、対象物そのものではなく、審判請求書に記載された内容(つまり、書面)を比較するため、例えば、申立人(被疑侵害者)が審判請求書に、実際の対象物とは敢えて少し違う説明をするというようなことは起こりうる。そのような場合には、特許権者は、積極的権利範囲確認審判を請求することも一案である。

 

(5) 権利範囲確認審判は、侵害の有無を決定するうえで重要な役割を果たし得るので、積極的に利用することも考えられる。しかし、権利範囲確認審判、無効審判、本案訴訟を、それぞれどのように利用すべきかは事案ごとによって異なるため、弁理士等に相談することも検討すべきである。

■ソース
・韓国特許法
・韓国実用新案法
・韓国商標法
・韓国商標法
・審判便覧(下記ウェブサイト内のPDFファイル)
http://www.kipo.go.kr/kpo/user.tdf?a=user.ipt.board.BoardApp&board_id=61&ssl=&cp=2&pg=1&npp=10&catmenu=&sdate=&edate=&searchKey=&searchVal=&c=1003&seq=2767
■本文書の作成者
崔達龍国際特許法律事務所
■協力
一般財団法人比較法研究センター 菊本千秋
特許庁総務部企画調査課 山中隆幸
■本文書の作成時期
2012.12.20
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