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(台湾)商標審判手続概要———無効審判
2013年01月29日
■概要
利害関係人又は審査官は商標無効審判手続を請求することができる。請求後は答弁書等の提出により争点整理を行い、審査を経て審決が出される。審決に対しては、審決書送達日の翌日から30日以内に訴願を申し立てることができる。■詳細及び留意点
【詳細】

台湾における商標無効審判の流れ
(1)審判請求人
利害関係を有する者又は審査官が請求できる(商標法第57条第1項)。
(2)無効理由
商標法第57条第1項に掲げる商標法第29条第1項、同第30条第1項、同第65条第3項に限定される。
条文番号 |
概 要 |
5年制限 |
第29条第1項第1号 |
指定商品又は役務の品質、用途、原料、産地又は関連する特徴の説明のみで構成されているもの。 |
有り |
第29条第1項第2号 |
指定商品・役務の慣用商標又は名称であるもの。 |
無し |
第29条第1項第3号 |
その他の識別性を有しない標識のみで構成されるもの。 |
有り |
第30条第1項第1号 |
商品・役務の効能を発揮するために必要なもの。 |
無し |
第30条第1項第2号 |
中華民国の国旗等と同一・類似するもの。 |
無し |
第30条第1項第3号 |
国家元首の肖像等と同一のもの。 |
無し |
第30条第1項第4号 |
中華民国政府機関等の標章と同一・類似するもの。 |
無し |
第30条第1項第5号 |
国際的政府組織等の旗等と同一・類似するもの。 |
無し |
第30条第1項第6号 |
国内外の品質管理等を示す標識等と同一・類似するもの。 |
無し |
第30条第1項第7号 |
公序良俗違反のもの。 |
無し |
第30条第1項第8号 |
商品・役務の品質・産地等を誤認誤信させるもの。 |
無し |
第30条第1項第9号 |
台湾又は台湾と商標の保護を相互に承認する国の酒類の産地表示と同一・類似のもので、酒類に使用するもの。 |
有り*1 |
第30条第1項第10号 |
他人の登録商標と同一又は類似して誤認混同を生じさせるおそれがあり、先願者の合意を得ていないもの。 |
有り*2 |
第30条第1項第11号 |
他人の著名商標等と同一・近似で、混同誤認を生じさせるおそれがあるもの等(合意あるものを除く)。 |
有り*1 |
第30条第1項第12号 |
他人の先使用商標と同一・類似の範囲にあり、出願人がその存在を知り、合意なく剽窃を意図して出願したもの。 |
有り |
第30条第1項第13号 |
他人の肖像又は著名な氏名、芸名、筆名、屋号を使用するもの(但し、同意を得ている場合を除く)。 |
有り |
第30条第1項第14号 |
著名な法人等の名称を含み、関連公衆に混同誤認を生じさせるおそれがあるもの(但し、同意を得たものを除く)。 |
有り |
第30条第1項第15号 |
商標が他人の著作権、専利権その他の権利を侵害し、その判決が確定しているもの(但し、同意を得たものを除く)。 |
有り |
第65条第3項 |
所定の取消事由に該当として取り消された商標と同一・類似関係にある商標の登録・使用などの制限違反のもの。 |
有り |
*1:悪意の場合、5年の制限はないので注意。
*2:引用登録商標の使用を立証する必要がある。
(3)請求期間
無効理由により、登録公告日の翌日から起算して5年以内に請求しなければならない場合と、5年の制限がない場合がある。商標法第29条第1項では第1号と第3号が5年以内の制限があるが、第2号にはない。第30条第1項では、第1号から第8号までは制限はないが、第9号から第15号までは5年の制限がある。なお、第9号と第11号は、悪意の場合は5年の制限がなくなる点に注意。第65条第3項は5年の制限がある。
(4)手続内容
(ⅰ)書類
・ 無効審判を請求する者は、事実及び理由を明記した無効審判請求書及びその副本を提出する(商標法第62条で準用する同第49条第1項)。
・ 第30条第1項第10号違反を主張し、登録後3年以上経過している登録商標を引用する場合、無効審判請求前3年間に、その引用登録商標の指定商品・役務への使用を証明するか、不使用の正当理由を立証しなければならない(商標法第57条第2項)。
(ⅱ)手続
・ 無効審判は、登録商標毎に請求する。登録商標の指定商品・役務ごとに請求することも可能(商標法第62条で準用する同法第48条第2項、第3項)。
・ 無効審判請求書受領後、副本が商標権者に送達され、商標権者は答弁書を提出する。答弁書の副本は審判請求人に送付され、審判請求人は意見を陳述する(商標法第62条で準用する同法第49条)。
(ⅲ)取下げ
無効審判請求人は、無効審判の審決前に、請求を取り下げることができる。取下げ後は、同一の事実について、同一の証拠及び同一の理由により、同じ登録商標に対して再び無効審判請求をすることはできない(商標法第61条、商標法第62条において準用する同法第53条)。
(ⅳ)審決
無効審決が確定すると、その商標登録は取り消される(商標法第60条)。無効理由が審判請求の商品・役務の一部にのみある場合、無効理由がある商品・役務についてのみ無効となる(商標法第62条で準用する同第55条)。但し、無効事由が既に消滅しているときは、公益及び当事者の利益の平衡を斟酌し、請求棄却の審決を下すことができる(商標法第60条)
(5)不服申立
審決書送達日翌日から30日以内に経済部に対して訴願書を提出して、行政不服申立を行うことができる(訴願法第4条、同第14条)。
【留意事項】
無効審判の請求には5年の制限があるものや、引用する登録商標の使用を立証する必要があるものもあり、後者の制約は日本にはないものである。
■ソース
台湾商標法■本文書の作成者
聖島国際特許法律事務所(作成:2012年11月4日)特許庁総務部企画調査課 根本雅成(改訂:2013年6月17日)
■協力
一般財団法人比較法研究センター 木下孝彦■本文書の作成時期
2013.06.17