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(中国)意匠出願における図面間の不一致について

2013年01月25日

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■概要
意匠出願をする場合、通常は六面図、すなわち、正面図、背面図、平面図、底面図、右側面図及び左側面図を提出して、保護を受けたい意匠を特定する。本件は、背面図に不備があったため他の図面と不一致が生じており、それを理由に特許庁審判部により無効の決定がなされ、第一審でも無効の決定が支持されたものの、高裁において、背面図の瑕疵は微細なものとして無効決定及びそれを支持した原審判決が覆された事案である。
■詳細及び留意点

 北京高級法院は、意匠(中国語「外观设计专利」)の保護範囲を、出願した図面又は写真で表した意匠を基準とするとし、図面の製図上の間違いが重大な瑕疵に該当する場合、本領域の通常の設計者が各図面を確認して一つの意匠を認識できないために意匠の保護範囲を特定することができない場合は無効宣告をしなければならない。しかし、微細な瑕疵の場合は、本領域の通常の設計者がその他の図面を確認して、その瑕疵が作図上のミスであると明確に判断できるため、その瑕疵は意匠の保護範囲が不確定になると考えることはできないとした。

 その上で、本案図面中に見られる意匠の不一致の原因は、本件の背面図に、蛍光灯カバーシェルの底部の曲斜面と底部の平面の間に境界線が表示されておらず、内側に凹んだ球面状の線も表れていないためであるとして、図面に瑕疵が存在することを認めた。しかし、蛍光灯カバーを外した状態の参考図、底面図、左右側面図を確認すれば修正し得る微細な瑕疵であるとして、意匠の保護範囲が不確定になると解することはできないから、原審判決及び無効審決が不一致について、本領域の通常の設計者が本件意匠を一つに特定できないと認定したことは誤りであるとし、原審判決及び無効決定を取り消した。

 

参考(北京市第一級中級人民法院民事判決2008年5月23日付(2008)中行初字第25号より抜粋):

 专利法实施细则第二条第三項规定,专利法所称外观设计,是指对产品的形状、图案或者其结合以及色彩与形状、图案的结合所作出的富有美感并适用于工业应用的新设计。专利法第五十六条规定,外观设计专利权的保护范围以表示在图片或照片中的该外观设计专利产品为准。专利法实施细则第二十七条第三項规定,申请人应当就每件外观设计产品所需要保护的内容提交有关视图或者照片,清楚地显示请求保护的对象。根据上述规定,申请人提交的外观设计视图应当按照技术制图或机械制图国家标准绘制,正确反映投影关系,各视图之间能够相互对应。对于视图中存在属于制图错误的重大瑕疵,本领域普通设计人员在观察了各视图后不能对该外观设计作出唯一性的理解,导致外观设计保护范围无法确定的,则该外观设计专利不符合专利法实施细则第二条第三項的规定,应当被宣告无效。但是,对于视图中存在的细微瑕疵,本领域普通设计人员通过查看其他视图后明显可以确定该瑕疵属于制图失误,而且该瑕疵不会导致外观设计保护范围的不确定的,不属于不符合专利法实施细则第二条第三項的情形。

 由此可见,本案视图中所反映出来的产品外观的不一致是由于本专利的后视图中没有表示日光灯罩壳体底部的曲斜面和底部平面之间的分界线,也未画出对应于内凹形球面的线条。但是,本专利去除灯罩的状态参考图、仰视图及左、右视图均可印证本专利后视图中应当画出分界线,并且在后视图左右边缘应当存在对应于内凹形球面的线条。因此,本专利视图之间存在的不一致可以通过视图之间的相互印证得到弥补,本领域普通设计人员通过查看其他多个视图后明显可以确定后视图中存在的错误属于细微瑕疵,该瑕疵不会导致外观设计保护范围的不确定。据此,原审判决及第9259号决定关于本专利的后视图和左、右视图、去除灯罩的使用状态参考图及仰视图之间存在的不对应使得本领域普通设计人员无法唯一确定本专利的外观的认定确属不当,应予纠正。上诉人闻国强的上诉主张有事实和法律依据,应予支持。

(参考訳)

 専利法実施細則第2条第3項*1は、専利法でいう意匠とは、製品の形状、模様又はその結合、色彩・形状・模様の結合が生み出した美感を有すると共に、工業上応用できる新規な設計と規定する。専利法第56条は、意匠権の保護範囲は図面又は写真で表した意匠を基準とすると規定する。専利法実施細則第27条第3項*2は、出願人は出願ごとに、意匠の製品が保護を求める内容について、関係する図面又は写真を提出し、保護を求める対象を明示しなければならないと規定する。上記規定を根拠に、出願人が提出した意匠の図面は、技術製図又は機械製図の国家標準に従って作成したものでなければならず、正確に投影することで、各図面が相互に一致性を持つ。図面の製図上の間違いが重大な瑕疵に該当するため、本製品の領域の通常の設計者が各図面を確認して一つの意匠のみを認識できず、意匠の保護範囲を特定することができない場合は、専利法実施細則第2条第3項の規定を具備しないから、無効宣告がなされなければならない。但し、図面に存在する微細な瑕疵については、本領域の通常の設計者がその他の図面を確認して、その瑕疵が作図上のミスであると明確に判断でき、かつ、その瑕疵により意匠の保護範囲が不確定にならない場合は、専利法実施細則第2条第3項に該当しない。

 これにより、本案図面中に見られる製品の意匠の不一致は、本件の背面図に、蛍光灯カバーシェルの底部の曲斜面と底部の平面の間に境界線が表示されておらず、内側に凹んだ球面状の線も表れていないことによるものである。しかし、本件の蛍光灯カバーを外した状態の参考図、底面図、左右側面図のいずれにも、本件の背面図に当然表示されるべき境界線を確認することができ、背面図には左右両端に内側に凹んだ球面に対応する線が存在していると推察される。これにより、本件の図面の間に存在する不一致は各図面を相互に確認することで修正し得るので、本領域の通常の設計者が他の複数の図面を確認することによって背面図に存在する間違いが微細な瑕疵であると明確に判断できるのであるから、この瑕疵により、意匠の保護範囲が不確定になると解することはできない。よって、原審判決及び第9259号決定が本件の背面図と、左右側面図、蛍光灯カバーを外した状態の参考図及び底面図の間で存在する不一致は、本領域の通常の設計者が本件意匠を一つに特定できない不当なものと認定したことを修正する。上訴人聞国强の上訴主張は事実と法律に依拠しており、支持する。

*1:同規定は2010年改正で削除されている。

*2:2010年改正により、現行の専利法実施細則では第27条第2項に変更されている。

 

出願意匠の写真

出願意匠の写真

 

【留意事項】

 中国でも登録意匠の訂正はできない。よって、出願した図面間で不一致があると、取り返しがつかないことになる。本件では高級人民法院の段階で無効決定を覆すことができたが、特許庁審判部(中国語「专利复审委员会」)や第一審人民法院では、図面における不備を理由に無効の判断を行っているので、提出した図面間で不一致が生じないように、細心の注意が必要である。

■ソース
・中国専利法
・中国専利法実施細則
・北京市第一級中級人民法院民事判決2008年5月23日付(2008)中行初字第25号
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 根本雅成
■協力
北京林達劉知識産権代理事務所
■本文書の作成時期

2012.11.27

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