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(中国)冒認出願の疑いがある意匠権について

2013年01月22日

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■概要
本件は、新規性がないとした無効審決を不服として審決取消訴訟が提起された事案である。本件意匠に対しては、訴外第三者が本件意匠の創作者は自分であるとの確認訴訟を提起し、また、本件審決取消訴訟では、無効審判の請求人である企業が、当該意匠は自社の意匠を模倣したものと主張するなど、冒認出願が疑われていた。
審決取消訴訟の原告(意匠権者)は、第三者による確認訴訟を理由に無効審判手続を中止するように求めたにもかかわらず無効審決が出たことは違法であると主張したが、裁判所は原告の主張を認めなかった。無効審判では冒認ではなく、新規性喪失を無効理由としていたことから、審決取消訴訟では公知意匠の類否についての原審決の判断のみが審理され、無効審決が支持された。
■詳細及び留意点

 意匠権(中国語「外观设计专利权」)について無効審判請求(中国語「专利无效宣告请求」)がなされ、特許庁審判部(中国語「专利复审委员会」)により無効の決定が下された。この無効審判の審理中に、別途、無効審判の対象の意匠の創作者で正当な権利者は自分であることを確認する権利帰属訴訟が提起されたことを理由に、意匠権者は無効審判手続の中止(中国語「中止程序」)を求めた。しかし、その中止申請手続に不備があったために無効審判の審理は中止されず無効審決が下されたことから、意匠権者は無効審決の手続は違法であるとして、審決取消訴訟で争った。同取消訴訟では、無効審判請求人である参加人からも、本件意匠権が冒認(中国語「假冒」)であるとの主張がなされた。

 裁判所は、原告は確かに別の裁判で訴えられているが、その裁判により原告の権利が妨害されることなどを示す証拠は一切ないことから、無効審判手続に違法性はないとした。その上で、無効審判請求人が実施する公知意匠と本件登録意匠は類似するとして無効と判断した審決を支持した。

 

参考(北京市第一級中級人民法院民事判決2008年11月27日付(2008)中行初字第588号より抜粋):

 本院认为,关于原告提出的中止程序请求被视为未提出而存在的程序问题,由于设立中止程序的主要目的是保证适格的权利人在无效程序中对相应的权利得以行使,而原告本身即为本案专利权人,其权利归属身份受到苏仁慈质疑,苏仁慈曾就此在昆明市中级人民法院提起专利权属诉讼,被告即是本案原告,作为专利权人,原告参加了复审委员会的无效宣告请求审查程序,没有证据显示其何权利受到妨碍或未能得以行使,并导致了不公平审查决定。国家知识产权局视为未提出中止程序请求并不影响原告正当权利的行使,原告亦未对所述程序问题如何影响其权利行使作出合理陈述,故对于原告主张的第10802号决定程序违法应予撤销的主张本院不予支持。

 关于实体问题,专利法第二十三条规定:授予专利权的外观设计,应当同申请日以前在国内外出版物上公开发表过或者国内外公开使用过的外观设计不相同和不相近似,并不得与他人在先取得的合法权利相冲突。

 本案中,附件2是申请日之前在国内出版物公开发表的包装盒图片,原告对于附件2公开的包装盒显示文字的字体、颜色与本专利相近似不持异议。对于形状,附件2公开的包装盒虽为图片,但能够显示其立体形状为长方体,同样与本专利包装盒的长方体相似。因此,通过整体观察,综合判断,本专利与附件2公开的包装盒相近似,不符合专利法第二十三条的规定。

(参考訳)

 当裁判所は以下のとおり判断する。原告が提出した手続き中止請求が未提出と見なされたことに係る手続上の違法性の問題について、手続き中止請求制度を設ける主な目的は、適格な権利者が無効審判手続きにおいて、それ相応の権利を行使できることを確保することである。原告は本件の意匠権者であり、権利帰属の適格性について苏仁慈に疑われ、苏仁慈はこの帰属問題について昆明市中級人民法院に意匠権帰属訴訟を提訴し、その被告が本件原告である。しかし、意匠権者として、原告は特許庁審判部の無効審判請求の審理に参加したが、如何なる権利が妨害されて権利行使が不可能になり、不公平な審査決定が導かれたかということを示す証拠は一切提出しなかった。中国特許庁は手続き中止請求を未提出としたが、原告の正当な権利行使に影響はない。また、原告も上述の手続き問題に関し、どのような影響がその権利行使に及んだのかについて合理的な陳述を行っていない。よって、第10802号決定は手続きの違法性により撤回すべきとの原告の主張について、当裁判所は支持しない。

 実体問題に関して専利法第23条は、特許される意匠について、出願日前に国内外出版物で公然発表され、又は、国内外で公然使用された意匠と同一でも類似でもなく、他人の適法な先行権利と抵触しないものでなければならないと規定する。

 本案中、付属書類2は出願日前に国内出版物で公然発表された包装容器の写真である。原告は付属文書2に開示される包装容器における文字の書体、色彩と本件意匠との類似性について異議をもっていない。形状について、付属文書2の公開包装容器は写真であるが、その立体形状が立方体であることが示されており、本意匠の包装容器の立方体と類似する。よって、全体観察を通じて総合判断すれば、本意匠と付属書類2の包装容器は類似し、専利法第23条に規定する要件を具備しない。

 

【留意事項】

 意匠出願は実体審査を経ることなく登録されると説明されるが、審査指南には「審査官は検索を経ずに獲得した現有設計又は抵触出願に関する情報に基づき、意匠が専利法第23条1項に明らかに合致していないか否かを判断することができる」との記載があるので、冒認出願が出願段階で権利化を阻止される場合もあり得ることになる。しかし、審査官が検索しないで冒認ではと疑うことは実際には稀であろうから、冒認出願への対応策は準備しなければならない。対応策としては、自ら速やかに意匠出願を行って他人の権利化を防ぐか、無効審判によって権利を消滅させることなどが考えられる。

 無効審判で対応する場合、冒認出願に基づく権利であるとの無効理由が真っ先に思い浮かぶ。しかし、冒認出願の立証には、日頃から意匠の創作過程の記録を残しておく必要があるなど、負担を伴うといえる。一般的に、自ら公開又は公然実施した事実を立証する方が容易といえるだろう。確実に無効にするには、審判手続で立証しやすい無効理由を選択することが賢明であり、本件のように冒認出願と認識しながらも新規性喪失を無効理由に選択する方法は、冒認出願対応策として検討に値する。

 また、本件では原告が無効審判請求手続中に中止請求を行っているが、この申請は、審査指南の「第四部分第三章4.7無効宣告手続の中止」が準用する「審査指南第五部分第七章第7節の規定」に基づくものである。同規定の「7中止手続」では、中止について「地方の知的財産権管理部門又は人民法院が専利出願権(又は専利権)の帰属をめぐる紛争を受理した際、若しくは人民法院が専利出願権(又は専利権)に対する財産保全措置を裁定した際に、専利局は権利帰属をめぐる紛争当事者の請求或いは人民法院の要請に応じて、関連手続を中止させる行為」と定義している。裁判官は本件審決取消訴訟において、中止申請制度の趣旨を「適格な権利者が、無効審判手続きにおいてそれ相応の権利を行使できることを確保すること」と述べている。

 中止を申請するには、手続中止請求書と証明書類(専利出願番号(又は専利番号)が明記された地方の知的財産権管理部門又は人民法院による関連の受理書類の正本又は副本)を提出する必要がある(7.3.1.1「権利帰属をめぐる紛争当事者の請求による中止の手続」)。審査指南によれば、中止請求対象の専利権等が喪失していないこと等の所定の要件を具備することが求められ、要件を具備しない場合は中止請求を未提出とみなし、その旨の通知書が発行される(7.3.1.2「権利帰属をめぐる紛争当事者の請求による中止の審査・確認と処理」)。

 手続の中止は手続の遅延をもたらすことから、中止申請の安易な利用は単なる時間稼ぎであり、審判官に悪い印象を与えて不利な判断を引き出しかねない点にも留意が必要である。

■ソース
北京市第一級中級人民法院民事判決2008年11月27日付(2008)中行初字第588号
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 根本雅成
■協力
北京林達劉知識産権代理事務所
■本文書の作成時期

2012.09.26

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