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(中国)意匠の類否判断について
2012年11月13日
■概要
中国では、意匠は外観設計専利として専利法で専利権により保護している。本件では容器の蓋の意匠の専利権について特許庁審判部に無効審判を請求したが、特許庁審判部が有効審決を下したため、請求人は、これを不服として取消訴訟を起こし、両意匠が円形状の形状で、周辺部がロール形状であり、差異点は微差であると主張したが、中級人民法院は有効審決を支持した。■詳細及び留意点
本件の争点は、本意匠(中国語「外观设计专利」)と引用意匠(中国語「在先设计」)の差異が、顕著な差異なのか、それとも部分的で軽微な差異なのか、全体的な視覚効果に対して大きな影響があるか、という点にある。
意匠の類否判断(中国語「近似性问题判断」)は、全体観察で総合的に判断して行うところ、本件意匠に係る物品は日常用品であり、類否判断は一般消費者の視点で離隔状態を想定して行わなければならない。両意匠の形状の主な差異は、通気口の位置と形状、さらに小さな縁の角片の数量と形状にある。両意匠の通気口の形状、位置、作動形態のいずれにも顕著な差異が存在し、かつ、全体として円形状である蓋において、小さな縁の角片の数量及び形状における差異は、全体的視覚効果について多大な影響を有し、これらの差異は、一般消費者にとって明らかな相違となる。よって、両意匠は互いに類似しないと認定し、引用意匠によって本意匠が専利法第23条に該当しないことを証明することはできないと判断した特許庁審判部(中国語「专利复审委员会」)の審決には、不当なところはないと認定し、支持した。
参考(北京市第一級中級人民法院民事判決2008年11月27日付(2008)中行初字第488号より抜粋):
本院认为,本件争议焦点在于本专利与在先设计的不同之处是否属于明显不同,抑或属于局部细微不同,对整体视觉效果是否产生显著性影响。
外观设计近似性问题判断的规则是整体观察,综合判断,而本件涉及的产品属于日常用品,进行近似性判断应当从一般消费者角度出发,在隔离状态下进行判断。结合本件,因其只涉及形状要素,故应对整体形状从一般消费者角度加以观察确定。根据证据显示,两者形状的主要区别在于通气孔的位置和形状以及小边角片的数量和形状,本专利通气孔位于容器盖的中央,其上的小圆片可以左右翻转,其整体设计较为平整,而在先设计的通气孔位于容器盖的一侧,该通气孔整体凹陷,其上具有一个一侧可翻转的小圆片,通气孔整体设计较厚。本专利具有三个弯月形的小边角片,而在先设计仅在一侧具有一个半圆形的小边角片。由于两设计通气孔的形状、位置、作用方式均有较大差异,且对于整体为圆形的容器盖而言,小边角片数量和形状上的不同对整体视觉效果有较大影响。因此,两设计间所述不同之处相对一般消费者而言,应当属于明显不同,对整体形状视觉效果能够产生显著性影响。专利复审委员会据此认定两者不相近似,在先设计不能证明本专利不符合专利法第二十三条,所作认定并无不当。
综上所述,专利复审委员会作出的第10758号决定认定事实基本清楚,适用法律正确,程序合法,依照《中华人民共和国行政诉讼法》第五十四条第(一)项之规定,本院判决如下:
维持被告中华人民共和国国家知识产权局专利复审委员会作出的第10758号无效宣告请求审查决定。
案件受理费人民币一百元,由原告汕头市东方塑胶有限公司负担(已交纳)。
如不服本判决,原告汕头市东方塑胶有限公司、被告中华人民共和国国家知识产权局专利复审委员会于本判决书送达之日起十五日内,第三人德科有限公司于本判决书送达之日起三十日内,向本院递交上诉状,并按对方当事人人数提交上诉状副本,同时交纳上诉案件受理费,上诉于中华人民共和国北京市高级人民法院。
(参考訳)
当裁判所は、本件の争点は、本意匠の引用意匠の差異が、顕著な差異なのか、それとも部分的で軽微な差異なのか、全体的な視覚効果に対して大きな影響があるかという点にあると考える。
意匠の類否判断は、全体観察で総合的に判断して行う。本件意匠に係る物品は日常用品であり、類否判断は一般消費者の視点で離隔状態を想定して行わなければならない。本件意匠が形状要素のみに関するため、全体の形状について、一般消費者の視点から観察を行って判断すべきである。証拠によれば、両意匠の形状の主な差異は通気口の位置と形状、さらに小さな縁の角片の数量と形状にある。本意匠は通気口が容器蓋中央に位置し、その上の小さな円形の片が左右に回転可能で、その全体のデザインは比較的平坦であるのに対して、引用意匠では通気口は容器蓋の一方側に位置し、同通気口の全体が凹型に窪み、その上に片側反転可能な小さい円片が設けられ、通気口全体に比較的厚みがある。本意匠には三日月形状の小さな縁の角片を3つ有するのに対して、引用意匠では一方の側にのみ、1つの半円状の小さな縁の角片を有する。両意匠の通気口の形状、位置、作動形態のいずれにも顕著な差異が存在する。また、全体的に円形状である容器蓋において、小さな縁の角片の数量及び形状における差異は、全体的視覚効果に多大な影響を有している。よって、両意匠間の上述の差異は一般消費者にとって明らかな相違となり、全体形状の視覚的効果に大きな影響を与えることができる。両意匠は互いに類似しないと認定し、引用意匠によって本意匠が専利法第23条に該当しないと証明することはできないと認定した特許庁審判部の審決には、不当なところは一切ない。
【留意事項】
中国での意匠の専利権は、実体審査をしないで権利が設定されることから、無効審判で対応するのが基本である。意匠の類否判断手法そのものは日本の手法と変わらないように思われるが、具体的な類似範囲についても同じであるかは不明である。今後の判決の蓄積を待つ必要がある。
■ソース
・北京市第一級中級人民法院民事判決2008年11月27日付(2008)中行初字第488号・中国専利法
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 根本雅成■協力
北京林達劉知識産権代理事務所■本文書の作成時期
2012.09.20