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中国における知財侵害刑事訴訟制度概要

2012年07月30日

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■概要
知財犯罪に該当する場合は、法により刑事責任が追及される(刑法第213条~220条)。情状が軽微である知財犯罪で被害者が犯罪の証拠を持っている場合は、被害者は直接裁判所へ自訴を提起することができる。社会秩序と国家利益に深刻な危害を与える知財犯罪は、検察院により公訴が提起される。裁判所は立件した後、合議廷を設置して開廷審理を行う。
 裁判所の一審判決に不服がある場合、被告人と自訴事件の自訴人は、上訴期間以内に上級裁判所に上訴を提出することができ、検察院は、控訴期間以内に上級裁判所に控訴を提出することができる。また、控訴事件の被害者は、検察院に控訴を請求することができる。二審終審制である。
■詳細及び留意点
知財侵害の刑事訴訟手続フローチャート図

知財侵害の刑事訴訟手続フローチャート図

中国における知財侵害刑事訴訟を流れに沿って説明する。

 

(1)提訴手続

  • 知財犯罪に該当する場合は、法により刑事責任が追及される(刑法第213条~第220条)。
  • 検察院が公訴を提起していなく、且つ、被害者が犯罪の証拠を持っている情状の軽微な知財犯罪については、被害者により直接裁判所へ自訴を提起することができる。一方、社会秩序と国家利益に深刻な危害を与える知財犯罪は、警察の捜査を経て、検察院により公訴が提起される(最高裁判所による『中華人民共和国刑事訴訟法』執行の若干の問題に関する解釈第1条)。

 

(2)立件審査手続

  • 裁判所は、公訴の提起を受け取った後、7日以内に受理するか否かを決定し(解釈第118条)、自訴の提起を受け取った後、15日以内に受理するか否かを決定する(解釈第191条)。

 

(3)開廷前手続

  • 裁判所は、立件した後、合議廷を設置し、開廷の10日前に、訴状の副本を被告に送達する。また、開廷の3日前に、開廷の時間、場所などを検察院に通知する。なお、当事者などに対する召喚状は、開廷の3日前に送達する(刑事訴訟法第151条)。

 

(4)開廷手続

  • 開廷審理の際、法廷調査の前に、当事者は合議廷の裁判官、書記官及び公訴人などに対し、忌避を申請できる(刑事訴訟法第154条)。開廷審理では、主に法廷調査、法廷弁論などを行うが、裁判長が弁論終結を言い渡した後、被告人は、最後に陳述する権利を持つ(刑事訴訟法第155条、第160条)。
  • 裁判所は、専利権侵害の自訴事件に対し調解1(中国語「调解」)でき、また、自訴人は、判決が言渡されるまでに、被告人と和解(中国語「和解」)することができ、又は、自訴を取り下げることが(中国語「撤回」)できる(刑事訴訟法第172条)。

1当事者が人民法院、人民調解委員会及び関連組織のもとで解決することを指す。

 

(5)開廷後手続

  • 裁判所は、開廷審理において直ちに判決を言い渡した場合には、5日以内に判決書を送達しなければならず、期間を定めて判決の言渡しをする場合には、判決の言渡し後、直ちに判決書を送達する(刑事訴訟法第163条)。通常は、開廷審理の後、適当な時期に一審判決を言い渡すが、その場合、受理後1ヶ月以内に判決を言渡さなければならないが、関連手続を経て、審理期間を延長できる(刑事訴訟法第168条)。

 

(6)上訴手続

  • 一審判決を受け取った日から10日間以内に、当事者(被告又は自訴人)は上訴(中国語「上诉」)を提起することができ、検察院は控訴(中国語「抗诉」)を提出することができる(刑事訴訟法第183条)。

 

(7)二審手続

  • 二審手続は、一審手続とほぼ同じであるが、事実が明白と認められる場合、書面にて審理することができる。但し、検察院が控訴を提出した事件は、開廷して審理しなければならない(刑事訴訟法第187条)。
  • 二審裁判所は原判決の認定事実が明白で、適用法律が正確で、量刑が適当であると認めた場合、上訴または控訴を却下し、原判決を維持する。原判決の認定事実が正確であるが、適用法律が間違い又は量刑が不当であると認めた場合は、自判する。原判決の認定事実が明白ではなく、証拠が不十分である場合には、事実を判明した上、自判することができ、原判決を取消し、原審に差し戻して再審理させることもできる(刑事訴訟法第189条)。
  • 二審裁判所は一審裁判所に訴訟手続違反があることを発見した場合、原判決を取消し、原審に差し戻して再審理させる(刑事訴訟法第191条)。
  • 二審手続においても、一審と同様に、1ヶ月以内に裁判を終了しなければならない。ただし、所定の場合には関連手続を経て、審理期間を延長することができる(刑事訴訟法第196条)。
■ソース
刑法
刑事訴訟法
最高裁判所による『中華人民共和国刑事訴訟法』執行の若干の問題に関する解釈
■本文書の作成者
北京林達劉知識産権代理事務所
■協力
一般財団法人比較法研究センター 尹明華・菊本千秋
■本文書の作成時期

2012.06.29

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