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中国知財侵害の民事訴訟制度概要
2012年07月30日
■概要
(本記事は、2017/7/27に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/13942/
知財権侵害行為に対し、権利者又は利害関係者は裁判所(中国語「人民法院」)に提訴することができる。裁判所は提訴事件を受けた後、7日以内に立件するか否かを決定する。立件した後、合議廷を設置して開廷審理を行なうが、開廷審理を経て、和解が成立しない場合、判決を言い渡して審理を終結する。
裁判所の一審判決に不服がある場合、上訴期間以内に上級裁判所に上訴を提出することができる。二審終審制である。
なお、渉外民事訴訟の場合、管轄、期限などの各方面で特別な規定があり、注意が必要である。
■詳細及び留意点
中国における知財侵害民事訴訟の流れに沿って説明する。
(1)提訴手続
- 権利者又は利害関係者は、侵害行為に対し、侵害行為を知った日又は知り得るべき日から2年以内に、裁判所に、知財侵害訴訟を提起することができる(特許紛争事件の審理に適用される法律の問題に関する若干の規定(最高人民法院解釈)第23条、商標民事紛争案件の審理における法律適用の若干の問題に関する最高人民法院解釈第18条、著作権民事紛争案件の審理における法律適用の若干の問題に関する最高人民法院解釈第28条)。
(2)立件審査手続
- 裁判所は、訴訟の提起を受け取った後、審査を経て、受理条件を満たしていると認めた場合、7日以内に立件し、受理条件を満たしていないと認めた場合、7日以内に事件を受理しない旨の裁定を下す。原告は、不受理裁定に対して不服がある場合には、上訴を提起することができる(民事訴訟法第112条)。
(3)開廷前手続
- 裁判所は、立件した日から5日以内に訴状の副本を被告に送達しなければならず、被告は、受け取った日から15日以内に答弁書を提出できる。被告が答弁書を提出した場合には、裁判所は、受け取った日から5日以内に答弁書の副本を原告に送付しなければならない。被告が答弁書を提出しなくても、事件の審理に影響を及ぼさない(民事訴訟法第113条)。被告が外国にいる場合には、30日以内に答弁書を提出すればよい(民事訴訟法第246条)。
- 裁判所が事件を受理した後に、答弁書を提出する期間内に、当事者は、管轄権に対して異議を申し立てることができる。裁判所は、審査を経て、異議が成立する場合には、管轄権を有する裁判所に事件を移送する旨の裁定をし、異議が成立しない場合には、却下する旨の裁定を行う(民事訴訟法第38条)。当事者は、管轄異議却下裁定に対して上訴を提起することができる(民事訴訟法第140条)。
- 裁判所は合議廷を設置し、且つ、設置日から3日間以内に合議廷の構成メンバーを当事者双方に通知する(民事訴訟法第115条)。
- 裁判所は、事件を受理した後、立証期間を指定するが、指定の期間は30日より短くてはならず、当事者が立件受理通知書を受領した日の翌日より起算するものとする(最高裁判所による民事訴訟の証拠に関する若干の規定第33条。以下、「規定」という)。当事者が立証期間内に証拠資料を提出することが確実に困難であるときは、裁判所の許可を得て、立証期間を適宜延長することができる(規定第36条)。なお、立証期間は裁判所により指定する以外に、当事者間の協議により、裁判所の認可を得た上で確定することもできる(規定第33条)。
- 裁判所は、開廷の3日前に、開廷の時間、場所などを当事者及びその他の訴訟参加人に通知しなければならない(民事訴訟法第122条)。
(4)開廷手続
- 開廷審理の際、法廷調査の前に正当な理由があれば、当事者は合議廷の裁判官または書記官に対し、忌避を申請できる(民事訴訟法第123条)。開廷審理では、主に法廷調査、法廷弁論などを行う(民事訴訟法第124条、第127条)。法廷弁論終結後、判決までの間に調解1(中国語「调解」)をすることができるが、調解が成立しない場合には、判決を言い渡さなければならない(民事訴訟法第128条)。
1当事者が人民法院、人民調解委員会及び関連組織のもとで解決することを指す。
(5)開廷後手続
- 通常、開廷審理の後、適当な時期に一審判決を言い渡される。法律の規定に従い、受理日から6ヶ月以内に判決を言い渡さなければならないが、特別の状況があれば、関連手続を経て、審理期間を延長できる(民事訴訟法第135条)。
(6)上訴手続
- 一審判決を受け取った日から15日間以内に、当事者は上訴を提起することができる(民事訴訟法第147条)。中国の領域内に住所を有しない当事者は、30日以内に上訴を提起することができる(民事訴訟法第247条)。
(7)二審手続
- 二審手続は、一審手続とほぼ同じであるが、事実が明白と認められる場合、書面にて審理することができる(民事訴訟法第152条)。
- 二審手続において、二審立件から判決書を下すまでは3ヶ月以内とされているが、関連手続を経て、審理期間を延長することができる(民事訴訟法第159条)。
■ソース
中国民事訴訟法最高裁判所による民事訴訟の証拠に関する若干の規定
特許紛争事件の審理に適用される法律の問題に関する若干の規定
商標民事紛争案件の審理における法律適用の若干の問題に関する最高人民法院解釈
著作権民事紛争案件の審理における法律適用の若干の問題に関する最高人民法院解釈
■本文書の作成者
北京林達劉知識産権代理事務所■協力
一般財団法人比較法研究センター 尹明華・菊本千秋■本文書の作成時期
2012.06.29