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香港における特許無効手続に関する統計データ
2018年02月15日
■概要
香港において、指定特許が所定の異議申立または取消手続により既に取り消されている場合には、かかる指定特許を根拠として、香港特許の取消を請求することができる。本稿では、香港特許の取消請求に関する判決の内訳について紹介する。■詳細及び留意点
1. 香港特許制度の特徴
香港における現在の特許登録制度では、特許の有効性を判断する上で、香港知的財産局の役割は限られている。香港では短期特許を直接出願することはできるが、特許付与前の実体審査は行われない。標準特許は、中国、英国またはEPO(英国を指定)に出願された指定特許出願の公開および特許付与の記録を通して取得することができ、付与された後の香港標準特許は、その指定特許とは独立して存続する。
2. 特許取消請求の手続
香港特許の取消を求める者は通常、香港の裁判所に請求する必要がある。ただし、指定特許が所定の異議申立または取消手続(例えば、EPOでの特許付与後の異議申立)により既に取り消されている場合には、かかる指定特許を根拠として香港特許登録所の登録官に対し、香港特許の取消を請求することができる。登録官はかかる請求を受領した場合、当該事件を裁判所に付託することができる。
3. 取消請求判決の内訳
過去20年で、香港特許の取消請求に関する8件の判決が報告されている。この報告された判決の数は、裁判所が判決を出す前に終結した事件(和解または取下げなど)を含んでいないため、香港の裁判所に提起された取消請求の合計数とは異なる。報告された8件の判決のうち、5件は標準特許の取消、3件は短期特許の取消を求めるものである。8件すべての判決において、一部のクレームの取消ではなく、特許全体の取消が請求され、8件中5件において、特許権侵害の申立に対する抗弁として取消が請求された。
これら8件の判決に関して、特許権者の国籍は以下のとおりである。
(i)5件は香港の特許権者が関与していた(5件すべてにおいて、完全に無効であることを理由に取り消された香港短期特許が関係していた)。
(ii)2件はオランダの特許権者が関与していた(双方の事件において、特許は有効と認められた)。
(iii)1件は日本の特許権者が関与していた(特許は有効と認められた)。
これら8件の判決に関して、すべての取消請求人が香港の企業であった。
これら8件の判決に関して、取消請求人が主張した取消の理由は、以下のとおりである。
(i)6件において、特許クレームは新規性を欠いていると主張された。
(ii)7件において、特許クレームは進歩性を欠いていると主張された。
(iii)3件において、特許明細書の記載が不明瞭または不十分であると主張された。
(iv)1件において、クレームは特許を受けられない主題に関するものであると主張された。
4. 所要期間
取消請求の標準的な所要期間については、当事者が追加の期間延長請求などにより手続を遅延させようと試みないことを前提として、取消請求の判決が下されるまでに12‐18か月を要するのが一般的である。
5. 上訴
これら8件の判決のうち、上級裁判所に上訴されたのはわずか1件であり、違憲審査を求められた事件はなかった。
■ソース
・香港特許条例・Lexis Hong Kong: http://libguides.lib.cuhk.edu.hk/law/infoguide/database/Lexis
■本文書の作成者
Bird & Bird法律事務所■協力
日本技術貿易株式会社■本文書の作成時期
2017.10.31