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中国における登録商標無効審判制度(中国語「請求宣告注冊商標無効制度)の概要

2017年08月17日

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■概要
(2022年8月5日訂正:
2019年の商標法改正で、第44条第1項「登録商標が、商標法第10条・第11条・第12条の規定に違反するとき、」が「登録商標が、商標法第4条・第10条・第11条・第12条・第19条第4項の規定に違反するとき、」に変更されましたので、修正いたしました。)

登録された商標について、商標法第44、45条に基づいて商標審判部(中国語「商標評審委員会」)に無効審判を請求できる。無効審判手続は、主に(1)請求人による審判請求、(2)方式審査、(3)被請求人の答弁、(4)答弁に対する弁駁、(5)審判合議体による審理、(6)審決という審判の手順で進められる。請求人は、商標審判部が下した審決に不服がある場合、人民裁判所(中国語「人民法院」)に行政訴訟を提起することができる。
■詳細及び留意点

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登録商標無効審判フロー

1.審理手続の流れ

(1)請求人による審判請求

登録商標無効審判(中国語「請求宣告注冊商標無効」)は、商標審判部(中国語「商標評審委員会」)に対して行う。無効審判は次の場合に請求できる。

(a)登録商標が、商標法第4条・第10条・第11条・第12条・第19条第4項の規定に違反するとき、または、欺瞞的手段もしくはその他不正手段により登録を受けたときは、商標局が自ら当該登録商標を無効宣告するが、その他の事業単位または個人は、登録商標の無効審判を商標審判部に請求できる(商標法第44条第1項)。

(b)登録商標が、商標法第13条第2項と第3項(他人の馳名商標を模倣等したもので公衆に誤認を与えるものは登録・使用禁止)、第15条(授権されていない代理人等による出願は登録・使用禁止)、第16条第1項(地理的表示が当該地域によるものではなく公衆に誤認を与えるものは登録・使用禁止)、第30条(先行商標と同一・類似するものは登録不可)、第31条(複数の出願人から同一・類似の商品について同一・類似の商標の登録商標出願がなされた場合、出願日が異なる場合は先願に係る商標を予備査定し、同日出願の場合は先行使用と認められる商標を予備的査定し、他の出願を拒絶する)、第32条(他人の先行権利を侵害する商標、または他人が先に使用している一定の影響力のある商標を不正な手段で先取りして出願した商標は登録不可)の規定に違反するときは、商標の登録日から5年以内に、先行権利者(中国語「在先権利人」)または利害関係人(中国語「利害関係人」)は商標審判部にその登録商標の無効審判を請求できる。ただし、悪意による登録の場合には、馳名商標権者は5年の期間制限を受けない(商標法第45条第1項)。

請求人は無効審判を請求するとき、商標審判部に書面の請求書類の正本1部を提出すると同時に、相手方当事者数に相当する副本を提出しなければならない。また、請求書類を提出した後、証拠を補足する必要がある場合、請求書に声明し、かつ請求日から3ヵ月以内に補足証拠を提出しなければならない。上述の法定補足期間は延長不可である。補足期間の満了後に形成し、または請求人が他の正当な理由で期間満了前に提出できなかった証拠は、期間満了後に提出する場合、商標審判部はかかる証拠を相手方当事者に交付して証拠調べを経てその証拠を採用することができる(実施条例第59条、商標審判規則(以下「審判規則」という)第20条・第23条)。

(2)方式審査

商標審判部は、審判請求書を受領した後、方式審査の要件を具備するか否か、つまり、請求書類と証拠が要求の様式で記載し、提出されたか否かなどを審理する。要件を具備するときは、その請求を受理し、請求人に受理通知書を送付する。要件を具備しないときは、請求人に不受理通知書を送付し、かつその理由を説明する。補正が必要な場合、補正通知書を送付し、それを受領した日から30日以内に補正するよう請求人に通知する(実施条例第57条、審判規則第22条)。

(3)被請求人の答弁

商標審判部は商標審判の請求を受理した後、直ちに請求書類の副本を商標権者に送達し、受領後30日以内に答弁するよう要求する。期間が満了して答弁しなくても、商標審判部の審理に影響を与えないが、実務上は、この反論の機会を利用して、答弁する商標権者が圧倒的に多い。

証拠を補足する必要がある場合、答弁書に声明し、かつ答弁書の提出日から3ヵ月以内に補足証拠を提出しなければならない(実施条例第58条・第59条、審判規則第23条)

(4)答弁に対する弁駁

当事者が法定の期間内に提出した証拠資料について、商標審判部が当該証拠資料を相手方当事者に送付し、指定の期限内に弁駁(中国語「質証」)を行うことを命じることができる(審判規則第23条第2項)。

弁駁手続とは、商標審判部が証拠交換通知書を請求人に送付した後、請求人はそれを受領した日から30日以内に、被請求人の証拠を調べたうえ、その答弁理由を反駁するものである。なお、提出は1回限りである。

(5)審判合議体による審理

審理は、原則として合議制を採用する。通常、3名以上の奇数人数の商標審判官により構成される合議体で審理を行う。ただし、審理事実が明らかで、事情状況が簡潔な事件について、商標審判官1名の単独審判を行うことができる(審判規則第6条・第27条)。

商標審判事件の審理は、原則として書面審理にて行う。ただし、実施条例第60条の規定により口頭審判を行うと決定された場合はこの限りでない(「審判規則」第4条)。なお、商標審判部は当事者の請求に応じて、または実際の需要により、審判請求に対して口頭審理を行うことを決定することができる(実施条例第60条)。通常は、口頭審理を行わず、書面審理が進められる比率が圧倒的に大きい。

審理を経て終結された事件については、商標審判部は法に基づき決定または審決を下す(審判規則第33条)。商標審判部が下した決定または審決に不服がある場合、審決を受領した日から30日以内に人民裁判所(中国語「人民法院」)に行政訴訟を提起することができる(商標法第44条、第45条)。

(6)審決

商標審判部は、請求人と被請求人が陳述した理由と提出した証拠を審理し、12ヵ月間以内(特殊な事情がある場合、6ヵ月間延長可能)に審決を下し、書面の審決を当事者双方に送付する。登録商標の維持または取消の審決に不服がある場合には、審決を受領した日から30日以内に、人民裁判所に対して行政訴訟を提起することができる(商標法第45条)。

2.証拠提出の留意点

審判当事者は、請求の事実または答弁の事実に対して挙証責任を有し、請求時または答弁時には、相応する証拠資料を提出しなければならない。証拠には、書証、物証、視聴資料などが含まれる。

証拠提出の際には、次の点に留意する必要がある。

(1)当事者が商標審判部に書証を提出するときは、原本を提出しなければならない(審判規則第40条)。全ての証拠について原本を提出することは困難であるが、実務上、重要な証拠は、できるだけ原本またはその公証本を提出すべきである。

(2)中国以外の領域で形成された証拠については、その証拠が形成された国で公証・認証手続きを行わなければならない(審判規則第41条)。

(3)外国語証拠を提出するときは、その中国語の翻訳文を添付しなければならない(審判規則第42条、商標実施条例第6条)。

【留意事項】

(1) 商標法第44条第1項による無効審判は請求期限がない。第45条第1項による無効審判は、通常5年間の除斥期間がある。悪意による登録の場合には、馳名商標権者は5年の期間制限を受けない。

(2) 商標法第44条第1項による無効審判は商標局以外の何人でも請求可能。第45条第1項に基づく審判請求は、先行権利者と利害関係者に限られる。

(3) 請求人または被請求人は、審判請求または答弁のとき、証拠を補足する必要がある場合、請求書類または答弁書に声明しなければならない。声明しない場合は、補足不可となる。

(4) 無効審判の期間は、通常12ヵ月間であるが、特殊な事情がある場合、6ヵ月間延長可能である。

■ソース
・中国商標法
・中国商標法実施条例
・中国商標審判規則
■本文書の作成者
北京林達劉知識産権代理事務所
■協力
日本技術貿易株式会社
■本文書の作成時期

2017.03.06

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