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南アフリカにおける「商標の使用」と使用証拠

2016年04月27日

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■概要
南アフリカにおいては、商標が出願以前に南アフリカで使用されていることは、商標の登録要件となっておらず、単に使用意図を有しているだけでも登録を得ることができる。ただし、登録後には不使用取消制度による取消を免れるために、登録商標を使用することが必要となる。登録証の発行日から5年間継続して、登録された指定商品または指定役務に使用されなかった場合、その登録商標に対して不使用取消が請求されると登録が取り消される。
■詳細及び留意点

【詳細】

 1993年法律第194号の商標法第2条により、「商標の使用」の意味が次のように規定されている。

(1)本法において商標の使用というときは、次のものとする。

・商標の視覚的表示の使用

・容器の場合、当該容器の使用

・音声で再生できる商標の場合、商標の音声による再生の使用

(2)本法において商品との関係で商標の使用というときは、当該商品に係る商標の使用または商品との物理的その他の関係における商標の使用をいうものとする。

(3)本法において役務に係る商標の使用というときは、役務の提供に係る商標の使用をいうものとする。

 

 商品に関する使用とは、物理的関係のもとに商品に付された商標の使用を意味する。役務に関する使用とは、役務の提供との関係における使用を意味する。「関する」という言葉は、広く解釈される。使用は、商標としての使用でなければならない。商品または役務を示すだけの使用は、法的な使用とならない。通常の商取引以外の使用は、使用とはみなされない。

 

 商標が使用されているかどうか認定するために、平均的な消費者の基準が適用される。高等裁判所は、次の場合に商標の使用を認定している。

(1)衣類に付けられた付票に商標が表示されている場合

(2)ビデオテープに貼られたステッカーに商標が表示されている場合

(3)販売されてはいないが、商標の付された商品が広告に掲載されている場合

(4)商標が付された商品見本が、商業的に配布されている場合

 

 たとえば、役務に関する商標の使用証明として、南アフリカの顧客に提供された役務に関する請求書の写しが証拠として提出された場合で、それが5年以上の期間でただ一度の役務の提供だけであった場合、この使用実績が十分に商標の使用と認められるかどうかの判例はないが、その商標が正しく使用されている場合には、裁判所が通常の商取引においての誠実な使用と認定しないという理由はない。

 

 商標法は、商標の使用と認められるために必要な使用の程度に関しては明確に規定していない。使用の程度については個々のケースに大きく依存している。登録商標は、5年以上の間不使用の場合、不使用取消請求されると登録が取り消される。

 

 不使用取消手続において、使用の最低条件といった規定はない。商標法は「誠実な使用」を要求し、裁判所は通常の商業的使用を「誠実な使用」とみなす。もちろん、使用の使用状況が多ければ「誠実な使用」をより容易に立証することができる。商標の使用を裏付ける有用な証拠には、次のようなものがある。

(1)5年以内に発行された広告の写し(商標が付された商品または役務であることを認識できること)または宣伝資料

(2)関連商品の販売または関連役務の提供を示す納品書や請求書等の写し

(3)当該商標を付した商品の購入者または当該商標に関する役務の利用者からの宣誓書

(4)登録された商品または役務に関して当該商標を通商上使用していたことを示すその他の書類

 

 不使用取消請求に対抗するために要求される使用は、使用の期間や量というより、本質的には、登録された商品に関する商標の誠実な通商上の使用の要求である。「通商上の使用」という要求は、使用されている商品または役務が販売のために広告され、もしくは販売のために市場に出されていなければならないという意味において、商標の商業上の使用がなければならないことを示している。南アフリカにおける展示会への出展は、商標の使用開始を示す良い例となる。無料の商品見本を配ることは、不使用取消請求に対抗するには不十分である。不使用取消請求に対抗するためには、大規模かつ長期間の使用は要求されないが、商標権者は、たとえ2~3年以内でわずか数週間といった限定された期間であっても、商品または役務の宣伝や販売を検討すべきである。

 

 最近注目すべきこととして、南アフリカ最高裁判所が、不使用取消請求手続における立証責任の問題に言及している。New Balance Athletic Shoes Inc. v Dajee 第[2012]ZASCA 3号事件における判決において、裁判所は、「商標は商標権者が商標を使用する目的で登録され、単に第三者による当該商標の使用を阻止する目的だけではないということは既に言い尽くされている」と述べている。使用証拠に関して、裁判所は、使用を立証する責任は商標権者にあり、商標権者は使用を立証するに十分な使用事実を有していることが期待されるとした。そのような状況下で、裁判所は、使用を主張する商標権者は明瞭で説得力のある証拠を提出することが期待され、曖昧な説得力に欠ける主張によってはならないとした。

 

 さらに、上記判決において、裁判所は、商標の属地主義の観点から、外国法人の場合には、不使用取消請求を克服するために、南アフリカにおける商業的使用の証拠を提出する必要があるとした。商標権者が不使用取消請求を防御したい場合、法定期間内に適切な使用証拠を提出しなければならない。不使用取消請求人の主張を単に否定するだけの不明瞭な陳述または主張では、不十分である。

 

 結論として、商標権者が不使用取消請求を克服したい場合、通商上の誠実な商標の使用を立証できることが常に重要である。

■ソース
・南アフリカ商標法
■本文書の作成者
Spoor & Fisher Consulting (Pty) Ltd
■協力
日本技術貿易株式会社
■本文書の作成時期

2015.11.09

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