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タイの営業秘密関連訴訟における損害賠償額の算定

2016年04月05日

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■概要
損害賠償額の算定は、知的財産権に関する訴訟において非常に困難なプロセスを伴う作業である。特に、営業秘密にかかる事件において損害賠償額を算定することは、複雑な要素や不明確な要素を伴うものであり、他の知的財産権侵害事件と比べても、困難であると言える。以下、タイにおける営業秘密関連訴訟における損害賠償額の算定について考察する。
■詳細及び留意点

【詳細】

 損害賠償額の算定は、訴訟のあらゆる要素の中でも難しいプロセスである。そして、営業秘密を伴う事案は、他の知的財産権関連訴訟と比べてもとりわけ複雑で不透明な部分が多く、損害賠償額の算定は一段と困難を極める。

 

 原告も被告も営業秘密が係わる製品を開発し販売しており、売上実績が把握されている事案では、現実の損害が立証できれば、逸失利益を回復できる可能性がある。逸失利益は、通常、純利益すなわち売上高から間接費と経費を差し引いたものとして算定される。多くの裁判所は、営業秘密関連訴訟における損害賠償額算定の基準として、原告の逸失利益または被告の利益を採用する傾向にある。このような算定の基準となる売上実績の情報が裁判所に提出されない場合、裁判所は、逸失利益について損害賠償額の基準としては推測的色彩が強すぎるとみなす可能性が高いと考えられる。

 

 損害賠償額を算定する裁判所は、原告の逸失利益をさまざまな手法で算定する。これには比較的ストレートな手法もあれば、極めて複雑な手法もあり、以下に裁判所がかかる算定にあたり考慮する要因を示す。

・流用された営業秘密の性質

・研究開発費用

・原告および被告のビジネス上の競合関係

・市場の規模、および数量化が困難な他の要因

 

 したがって、上記を踏まえ、原告には(公判中に)裁判所に対し、技術、時間、資金、知的財産権、予防措置、人員等に関連して、営業秘密に長年にわたり多大な投資を行ったことを立証することを強く推奨する。原告が、これらの要因を証明する証拠を裁判所に提出することによって、裁判所は損害賠償額の算定にあたり、これらの証拠を考慮することができる。

 

 タイ中央知的財産・国際取引裁判所(Central Intellectual Property and International Trade Court:CIPITC)は、判決(No.IP38/2011、2011年4月4日)において、原告に認める損害賠償額の算定について以下のように明示している。

 

(1)侵害により、またはこれを理由として被告が得た利益の賠償金は、原告の営業秘密を侵害する装置および手順により作られた被告製品の売上に基づき算定される。

 

 CIPITCはさらに、営業秘密法第13(1)条(B.E. 2545(2002))により、同裁判所は現実に生じた損害のみ判断する権限を与えられていると判示した。

 この判例において原告は、被告の侵害装置および手順により製造された製品が流通したことにより、売上の損失を被ったと主張した。しかし、同裁判所は、原告は現実に被った損害につき(賠償を)請求していないと判断し、また、被告の製品を購入した顧客は、営業秘密侵害が無くても原告から製品を購入しなかった可能性があるため、原告の売上が失われたすべての原因が、被告製品の流通にあるとは言い切れず、原告の損害は不明確と判断した。しかし、被告が原告に対して行った営業秘密の侵害により、原告は不可避的に損害を被ったと思料され、この理由に基づいて、原告に認められる損害賠償額を判定するのが適切と判断された。

 

(2)本件訴訟で原告に生じた費用の賠償額を立証し、原告の営業秘密の機密性を維持し、訴訟費用、探偵の費用、輸送費用、弁護士費用、その他の費用を立証するためには、原告は輸送費用や弁護士費用やその他の費用の領収書などの証拠書類を裁判所に示さなければならない。

 ただし、これらの裏付け書類が提出されたからといって、裁判所は、必ずしも原告の請求に応じた損害賠償額を認めるとは限らないので留意する必要がある。

 

(3)提訴日以降、被告が原告の営業秘密侵害を停止するまでに原告に生じた損害は、原告側の証拠次第で決まる。これをどのように判断するかは、判事の裁量に任される。

 上記にもかかわらず、当事務所が手がけた最新の営業秘密侵害事件で、CIPITCは、損害賠償金として2000万タイバーツ(66万6666米ドル)、提訴日から損害賠償金が満額支払われるまで年率7.5%の金利を原告に支払うよう被告に命じた。これは同裁判所がこれまでに命じた最も高額な損害賠償金額であり、損害賠償額の決定に際しての同裁判所の柔軟性を示している。この柔軟性は利点もある反面、営業秘密関連訴訟における損害賠償額の予測を困難にすることになった。

■本文書の作成者
Tilleke & Gibbins
■協力
日本技術貿易株式会社
■本文書の作成時期
2014.12.29
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