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中国における知的財産裁判所(知識産権法院)
2016年03月11日
■概要
中国では、これまで知的財産権専門の裁判所はなかったが、最高人民法院(日本における最高裁判所に相当。)の「北京、上海、広州における知識産権法院の設立に関する決定」が2014年11月3日に施行され、北京、上海および広州にそれぞれ知識産権法院(知的財産裁判所)が設置された。案件の内容・性質に応じて、それぞれ管轄する案件が定められており、また知識産権法院は中級人民法院(日本における地方裁判所に相当。)に相当するため、上訴案件は知識産権法院所在地の高級人民法院(日本における高等裁判所に相当。)が扱う。内部機構としては、主審裁判官と合議法廷の主体的地位を重視する体制が取られている。■詳細及び留意点
【詳細】
1.知識産権法院の創設
中国には2014年11月まで、知的財産権専門の裁判所はなかった。知的財産に関する民事、行政、刑事事件は民事訴訟法、行政訴訟法、刑事訴訟法および、一連の知的財産に関する事件の管轄規定に基づき、既存の各裁判所により受理・審理されてきた。
中国の国会にあたる全人代常務委員会において2014年8月31日、「北京、上海、広州における知識産権法院の設立に関する決定」が可決され、最高人民法院が同規定を公布、11月3日より施行された。
上記の規定に基づき、北京知識産権法院が同年11月6日に、広州知識産権法院が12月16日に、上海知識産権法院は12月28日にそれぞれ設立された。知識産権法院は中級人民法院に相当する位置づけにある。なお人民法院(日本における裁判所に相当。)については級別に4級あり、上から最高人民法院、高級人民法院、中級人民法院、基層人民法院となっている。
2.知識産権法院の管轄
「北京、上海、広州の知識産権法院における案件の管轄に関する規定」に基づき、北京、上海、広州の知識産権法院が管轄する案件は以下の通りである。
2-1.北京市知識産権法院
(1)北京市の管轄区における特許、植物新品種、集積回路配置設計、ノウハウ、コンピューターソフトウェアに関わる第一審の民事および行政案件
(2)北京市の区、県級以上の地方人民政府が著作権、商標、不正競争などに関して実施した行政行為を不服として提起した行政訴訟の一審案件
(3)北京市の管轄区における馳名商標の認定に関わる第一審の民事案件
(4)国務院部門が特許、商標、植物新品種、集積回路配置設計等の知的財産権に関して下した権利付与・確定の査定または決定を不服とする第一審の行政案件
(5)国務院部門が特許、植物新品種、集積回路配置設計に関して下した強制許諾決定および強制許諾の実施料あるいは報酬の裁定を不服とする第一審の行政案件
(6)国務院部門が知的財産権に関して行った権利付与・権利確定に関わるその他の行政行為を不服とする第一審の行政案件
(7)北京市の基層人民法院が下した著作権、商標、技術契約、不正競争に関わる民事および行政判決、裁定を不服として控訴した案件
2-2.上海知識産権法院
(1)上海市の管轄区における特許、植物新品種、集積回路配置設計、ノウハウ、コンピュータソフトトウェアに関わる第一審の知的財産権民事および行政案件
(2)上海市の区、県級以上の地方人民政府が著作権、商標、不正競争などに関して実施した行政行為を不服として提起した第一審の行政案件
(3)上海市の管轄区における馳名商標の認定に関わる第一審の民事案件
(4)上海市の基層人民法院が下した著作権、商標、技術契約、不正競争に関わる民事および行政判決、裁定を不服として控訴した案件
2-3.広州知識産権法院
(1)広東省の管轄区内における特許、植物新品種、集積回路配置設計、ノウハウ、コンピューターソフトウェアに関わる第一審の知的財産権民事および行政案件
(2)広州市の区、県級以上の地方人民政府が著作権、商標、不正競争などに関して実施した行政行為を不服として提起した第一審の行政案件
(3)広東省の管轄区内の馳名商標の認定に関わる第一審の民事案件
(4)広州市の基層人民法院が下した著作権、商標、技術契約、不正競争に関わる民事および行政判決、裁定を不服として控訴した案件
なお、当事者が知識産権法院の下した一審判決、裁定を不服として提起した上訴案件および上級の裁判所に再審を請求した案件については、知識産権法院所在地の高級人民法院の知識財権審判廷が審理する。
3.知識産権法院の機構設置
北京知的財産権法院は、司法体制改革の精神に則って設立された。内部には4つの法廷が設置され、2つの司法補助機構と1つの総合行政機構が設置されている。法廷にはいずれも副裁判長を置かず、主審裁判官と合議法廷の位置づけを明確にしている。
人事的には分類管理と定員制を実施しており、裁判官は総勢30名、司法補助職員が51名、司法行政職員が15名となっている。広州知識産権法院には立案法廷、特許審判法廷、著作権審判法廷、商標および不当競争審判法廷の4つの審判業務法廷以外に,1つの総合行政機構(総合事務室)と2つの司法補助機構(技術調査室と司法警察小隊)が置かれている。
審判法廷は行政級別が確定されておらず、裁判長は主審裁判官が兼任し、副裁判長は置かれていない。内訳は政治司法特定項目の担当職員が100名、主審裁判官が30名で、他に院長1名と副院長2名(うち1名は副院長と政治部主任を兼任)がいる。
上海知識産権法院の内部構成は対外的には公表されていないものの、全体的な枠組みは北京や広州の知識産権法院とほぼ同じであると考えられる。
■ソース
・中国最高人民法院「北京、上海、広州における知識産権法院の設立に関する決定」■本文書の作成者
天達共和律師事務所■協力
日本技術貿易株式会社■本文書の作成時期
2015.02.03