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ベトナムにおける周知商標の保護

2014年06月03日

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■概要
ベトナムでも、ある商標が周知であると認められると、他人の商標出願に対する拒絶理由を構成し得ると共に、同一又は類似の商標を使用する他人に対して不正競争に基づく権利侵害を主張できる。
■詳細及び留意点

【詳細】

(1) ベトナムにおける周知商標の保護

 ベトナムでは、もしある商標が周知であると認められれば、非常に強力な保護が与えられる。

 まず、登録・未登録を問わず、周知商標は第三者の商標登録を妨げる効力がある(ベトナム知的財産法第74条(2)(i))。すなわち、他人の周知商標と同一又は誤認混同を生じさせる程度に類似し、その周知商標と同一又は類似する商品・役務に使用する商標は、識別性がないとみなされ、登録が認められない。また、周知商標と類似しない商品・役務に使用する場合であっても、周知商標の識別性を阻害し、又は、周知商標の信用力を利用する目的があるときも、識別性がないとみなされ、登録が認められない。

 更に、周知商標は不正競争の観点からも保護される(ベトナム知的財産法第129条、第130条)。すなわち、事業主、事業活動、商品・役務の出所に誤認混同を生じさせる行為や、周知商標の信用力を不正に利用する目的の行為は、不正競争行為であるとみなされる。そして、周知商標と同一又は誤認混同を生じさせる程度に類似する商標を使用する行為は、周知商標と類似しない商品・役務に使用する場合であっても、出所又は周知商標所有者と使用者の関係につき誤認混同を生じさせるときは、周知商標に対する権利侵害となる。

NOIPが、周知商標と同一又は誤認混同を生じさせる程度に類似するとの理由で、出願を拒絶又は登録を無効にした例はいくつかある。例えば、“ALBERTO VALENTINO”の商標出願(出願番号No.4-2006-11022)につき、Valentino S.p.Aの周知商標である“VALENTINO”と誤認混同を生じさせる程度に類似するとの理由で出願が拒絶された。

 

(2) 周知商標として認められるために必要な手続

 ベトナムにおいて、周知商標として認められるための特別な制度は存在しない。そのため、実務的には、周知商標であるか否かは、無効審判、商標権侵害等の個別の案件を通じて、確認されることになる。

 

(3) 周知商標として認められるために必要な要素・資料

 2007年2月14日のCircular 01/2007/TT-BKHCNの42.3条によれば、訴訟等において周知商標として認められるためには、次のような資料が必要である。

 

・商標を使用した範囲、規模、期間(商標の起源、継続的使用の経緯等を含む)を示す資料

・登録又は周知商標として認識されている国の数を示す資料

・商標を使用する商品・役務のリストを示す資料

・商標が使用されている地域を示す資料

・商品や役務の売上高を示す資料

・商品や役務の販売数量を示す資料

・商標の譲渡価格やライセンス価格を示す資料

・商標の広告(国内及び国際展示会への参加を含む)にかけた費用を示す資料

・裁判所等で侵害が認められたことを示す資料

・購入や広告を通じて商標を認識している消費者を示す資料

・メディア等により認識されている程度を示す資料

・商標を使用する商品・役務が何らかの賞を受賞したことを示す資料

・知的財産審査機関により行われた調査の結果を示す資料

 

【留意事項】

 上記のとおり、商標が周知であると認められると強力な保護が受けられ、実際に周知商標と類似するとの理由で出願が拒絶された例もある。もっとも、周知商標であると認められるために必要となる具体的な基準(具体的な使用期間、売上実績、広告費用等)を示すガイドラインはなく、周知商標であることを正式に認定した判決等もないため、現時点では、周知であるか否かの具体的な基準については不透明な面がある。

■ソース
・ベトナム知的財産法
・Circular 01/2007/TT-BKHCN
http://www.noip.gov.vn/web/noip/home/en?proxyUrl=/noip/cms_en.nsf/(agntDisplayContent)?OpenAgent&UNID=D2945788E58A233F4725767200221575
■本文書の作成者
辻本法律特許事務所
Banca Intellectual Property Law Firm
■協力
一般財団法人比較法研究センター 菊本千秋
■本文書の作成時期

2014.1.14

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