中南米 / その他参考情報
ブラジルにおける著名商標の認定について
2014年05月02日
■概要
ブラジルでは現在、著名商標の認定は、異議申立又は行政取消請求の手続においてのみ認定の請求を行うことができるが、ブラジル知財庁(INPI)決議第107/2013(本稿作成時点では未施行)に基づき、独自の手続により、著名商標としての認定を受けることが可能となる。■詳細及び留意点
【詳細】
ブラジルにおける著名商標の保護については、産業財産法第125条で定められている。同条に基づき、著名商標の認定を受けることによって、その登録商標は、同一又は類似の商品・役務に限定されることなく、いかなる分野においても広範な保護が与えられることになる。
登録商標の著名性を認定する手続は、2013年8月20日に発令されたブラジル知財庁(INPI)第107/2013決議(ポルトガル語:Resolução)によって新たに規定された。従前は、ブラジルにおける著名商標の認定は、異議申立又は行政取消請求の手続の中の引用商標についてのみ著名性の認定を請求できたが、この新しい決議により、独立の手続として、著名商標の認定申請が可能となる。
しかし、本稿作成時点で、この決議は施行されていない。新たな認定手続は第107/2013決議では「INPIにより手数料が定められた後に施行される」とされていたが、2014年2月16日付の第27号辞令(ポルトガル語:Portaria)により、手数料が発表された。これによると、著名商標の認定を受けるための手数料は、電子請求の場合37,575レアル(本稿作成時点約160万円)で、紙媒体による請求の場合は41,330レアル(同約177万円)である。なお、同辞令により、施行時期は「今後INPI長官が辞令発令により発表する」とされているが、時期は未定である。
登録商標が著名であることの認定を請求するときには、3つのことを証明しなければならない。一つ目は、幅広く需要者によって認識されていること、二つ目は、指定商品又は役務について当該商標が高い名声を持つこと、三つ目は、相当の識別力を獲得していることである。
そして、このような著名性を証明するためには、ブラジル全土で大勢に知られていることを立証する必要があり、立証のためにはあらゆる証拠を提出することが可能である。一般的には、マーケティングリサーチ(自分の商標が市場でどれくらい知られているかの調査)、マーケティング予算(自分の商標、あるいは自分の商標がついた商品)の広報のための予算)、及びマーケット優勢度(市場における自分の商標、あるいは自分の商品がついた商品の専有度/独占度)についての証拠を提出する。なお、全ての証拠はポルトガル語で提出しなければならない。
著名商標の認定は、特別に組織された委員会によって判断される。委員会は商標審査部の経験豊かな審査官と商標審査部長で構成される。認定の判断に当たっては、委員会が補正指令(例えば、提出された証拠の説明や追加の証拠の提出を求める等)を出すことがある。認定の審決に不服の場合は、審決の日から60日間以内にINPIに対して不服申立の提起が可能である。
なお、INPI第107/2013決議前制度下では著名認定の効果は5年間であったが、同決議による新たな制度下で著名性について認定を受けた場合は10年間有効となる。
【留意点】
- コンテンツ作成時点では、決議第107/2013はまだ施行されていないため、著名商標の認定を請求するためには異議申立又は行政無効の手続の枠内でしか請求できない。また、同決議前の(つまり、現行の)制度では著名性は標章について認定をしていたが、同決議による新制度下では「登録商標」が対象となることから、この決議の施行前に著名性についての認定を申請済みで且つ認定申請の手数料を納付済で審決がまだ出ていないものについては、この決議の施行後90日以内に、新制度下における著名性の認定申請をしたいかについての確認の手続をする必要がある。
- 現在、著名商標として認定されている商標のリストは下記のリンクからアクセスし、見ることが可能である。
http://www.inpi.gov.br/images/docs/inpi_marcas__de_alto_renome_em_vigencia_2013_09_11.pdf
■ソース
・INPI決議第107/2013http://www.inpi.gov.br/images/docs/nova_resolucao_alto_renome.pdf
■本文書の作成者
カラペト・ホベルト(ブラジル弁護士)■協力
一般財団法人比較法研究センター 菊本千秋■本文書の作成時期
2014.02.20