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ブラジルにおける商標出願の指定商品または役務についての取扱い

2023年04月06日

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■概要
ブラジル国家産業財産庁(Instituto Nacional da Propriedade Industrial 以下「INPI」という。)は、2000年1月、それまでの国内分類に代わって、「商品およびサービスの国際分類」(ニース分類)を採用した。2023年1月現在、INPIは、ニース分類第11版を使用している。ニース分類の採用以降、INPIは、類見出し(クラスヘディング)による記載を認めなくなり、具体的な商品または役務の指定を要求するようになった。商品または役務の記載は、ニース分類に基づく商品およびサービスの国際分類表に準拠した記載を用いることが望ましい。
■詳細及び留意点

〔詳細〕
1.商標出願における商品および役務の記載要領
ブラジルにおいては多区分出願が認められず、区分毎に独立した出願を行わなければならない(*)。各出願には、INPIにより現在採用されているニース分類(第11版)に従った商品または役務の指定を記載しなければならない(INPIウェブサイト「商品およびサービスの分類」)。
一方、2019年10月2日にマドリッドプロトコルがブラジルにおいて発効した。マドリッドプロトコル経由で出願する場合は、複数区分(マルチクラス)の指定が可能である(INPIウェブサイト「マドリッドプロトコル」)。

(*) 2020年3月9日のINPI条例 第257号は、e-INPI商標出願システムにおける多区分制度(マルチクラスシステム)による商標出願の利用可能性を規定しているが、2023年1月時点では運用には至っていない。
https://www.gov.br/inpi/pt-br/servicos/marcas/arquivos/legislacao/copy_of_RES_2572020.pdf

 INPIへの商標出願は、現在INPIウェブサイトで利用可能なe-INPI商標出願システムによってインターネットを介してのみ可能となっている(商標マニュアル「3.登録出願又は商標申請を行う方法」)。電子商標出願書式への記入に際して、出願人は、(a)INPIにより公表されたリスト(ニース分類の商品および役務リストと一致する)から商品または役務を選択する、または、(b)出願人が固有に作成した商品または役務の記載を提出する、という2つのオプションがある(商標マニュアル「3.5.2 電子フォームへの記入」)。オプション(a)の場合には、INPIによる商品または役務の審査が不要となることから約15%手数料が低く抑えられる(INPIウェブサイト「商標手数料(Code389、394)」)、当該リストがINPIにより事前承認されていることから商品または役務の記載についてオフィスアクションの発生を回避できるという利点がある。

 INPIは、商品または役務の広範な記載を認めていない。類見出し(クラスヘディング)や広範な記載が出願に含まれている場合、拒絶理由が通知される可能性が高く、この対応のために意見書を送り再度審査を受けるために手続の遅延が生じるおそれがある。また、この手続のために新たな費用も生じる。

 商品または役務の適切な分類について疑義が生じた場合、所定の手数料(5つの商品または役務まで170レアル)を納付することにより(INPIウェブサイト「商標料金表(Code357)」)、商品および役務分類委員会(Goods and Services Classification Commission : CCPS)に照会することが可能である。照会内容を検討後、CCPSは、ブラジル産業財産権公報(RPI)においてその回答を公示する(商標マニュアル「10.1.1 商品および役務分類委員会への照会」)。

 出願がパリ条約の優先権を含む場合、商品または役務の記載は、海外の優先権基礎出願と同一または基礎出願の商品または役務記載に含まれる限定的記載でなければならないことにも注意を要する。

 なお、2000年以前に認可または更新された登録については、商品および役務の広範な記載を認める古い国内分類のままとなっている。

2.審査における商品および役務の取扱い
 INPIの審査官は、ニース分類を基準として、出願に示された商品または役務が、出願された区分にしたがっているか否かを確認する(商標マニュアル「5.4 商品及びサービス明細の分析」)。

 出願後、新たな商品または役務を追加する補正は認められない。しかし、商品または役務を減縮する補正は認められる(商標マニュアル「9.2 商品及びサービスの分類及び明細に関する変更」)。

 INPIの審査官は、審査の過程においてその職権により、出願された区分へ適合させるために指定商品または役務の記載にマイナーな変更を行うことができる(商標マニュアル「5.4.1 明細の変更」)。通常、これらの変更は何らかの表現を含めること(例えば「医療用」や「医療用を除く」など)、または、出願された区分に属さない一部商品または役務を除外することである。

 INPIの審査官が、出願区分と指定商品または指定役務との間の不一致を確認した場合(例えば、指定商品が2以上の区分を包含するなどの場合)、拒絶理由通知を発行し、出願人に対して不一致を明らかにし、不適切な商品または役務を除外するよう求める(商標マニュアル「5.4.2 請求されている分類に適合しない明細」)。除外された商品または役務を保護するには、新規出願を行わなければならない。分割出願による対応は認められていない。

 INPIの審査官は、職権により、ニース分類に適合させるために用語を十分に明確かつ正確になるまで変更することができるが(商標マニュアル「5.4.1 明細の変更」)、商品または役務に関してあいまいな記載がある場合に、拒絶理由通知を発行することもある(商標マニュアル「5.19.1 方式指令 a)商品またはサービスの不適切な明細」)。この場合、出願人は、拒絶理由通知に応じ、希望する商品または役務を明確に示さなければならない。

 また、商品または役務がブラジルの法律に基づき違法と考えられる場合、活動の合法性を明確にするように、または請求している分類に一致し、違法性条件を満たさない項目/説明に差し替えるようにとの拒絶理由通知が出願人になされる(商標マニュアル「5.4.6 違法と考えられる商品またはサービスに相当する用語を含む明細」)。

 さらに、ブラジルの商標出願では、出願時に事業内容を宣誓するが、INPIの審査官は、審査の過程において、指定商品または指定役務が、出願人が出願時に宣言した事業内容に沿うものであるか否かについても審査する(ブラジル産業財産法第128条(1)、商標マニュアル「5.5 出願人の合法性の分析」)。指定商品または役務と事業内容とが一致しない場合も拒絶理由通知が発行され、出願人に対して、自身の事業内容に関する証拠を提出するよう要求されることがある。

 拒絶理由通知が発行された理由にかかわらず、期限内に応答がない、または期限内に指令内容に応じない場合、当該出願は失効したものとみなされ、拒絶査定が発行される(商標マニュアル「5.実体審査」)。

3.指定商品または指定役務が費用に与える影響
 商品または役務の数により、出願手数料が変わることはない(INPIウェブサイト「商標料金表」)。つまり、例えば指定商品が1つの出願と指定商品が15個の出願はそれらが同一の区分内であれば、同じ出願手数料を納付することになる。

 電子出願では、INPIにより公表されたリスト(ニース分類の商品および役務リストと一致する)を使うか、または、出願人が固有に作成した商品または役務の表記を使うか、自由である(商標マニュアル「3.5.2 電子フォームへの記入」)。費用を比較すると、前者は355レアルであるが、後者は415レアルなので、公表リストを使用する方が15%程度安価となる(INPIウェブサイト「商標料金表(Code389、394)」)。

 CCPS(商品および役務分類委員会)に対する商品または役務記載に関する相談は有料であり、その相談に対する手数料は、照会する商品または役務の数に応じて異なる(INPIウェブサイト「商標料金表(Code357)」)。

〔留意事項〕
 商品の補正に起因する手数料や代理人費用の新たな発生、拒絶理由対応などオフィスアクションによる余分な時間の経過を回避するため、希望する商品または役務を正確に記載することが推奨される。INPIにより公表されたリスト(ニース分類の商品および役務リストと一致する)に従うことが望ましい。これにより、オフィスアクションの回数が増えることを避け、手数料を必要最小限に抑えることができる。

 なお、ブラジルでは、商標登録出願、商標登録更新のいずれにおいても、商標の使用証拠の提出は要求されない。

■ソース
・ブラジル産業財産法(ポルトガル語)
http://www.planalto.gov.br/ccivil_03/leis/l9279.htm
・ブラジル産業財産法(日本語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/brazil-sanzai.pdf
・商標マニュアル第3版(INPI決議第249/2019号)(ポルトガル語)
http://manualdemarcas.inpi.gov.br/projects/manual/wiki/Manual_de_Marcas
・商標マニュアル(商標審査基準)2016.06改正(日本語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/brazil-shouhyou_kijun.pdf
・INPIウェブサイト「商品およびサービスの分類」(ポルトガル語)
https://www.gov.br/inpi/en/services/trademarks/classification-trademarks/classification
・INPIウェブサイト「マドリッドプロトコル」(ポルトガル語)
https://www.gov.br/inpi/en/services/trademarks/madrid-protocol
・INPIウェブサイト「商標料金表」(ポルトガル語)
https://www.gov.br/inpi/en/costs-and-payment/schedule-of-fees-trademarks.pdf/view
■本文書の作成者
Dannemann Siemsen Bigler & Ipanema Moreira
■協力
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2023.01.20

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