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ブラジルにおける特許年金制度の概要

2022年11月08日

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■概要
ブラジルにおける特許権の権利期間は、出願日から20年であり、年金は出願日を起算日として、3年次から発生する。年金は一年ごとに納付し、特許登録前、出願が係属中にも納付しなければならない。実用新案権の権利期間は、原則として、出願日から15年、意匠権の権利期間は出願日から25年である。特許権、実用新案権、意匠権について、年金の追納や権利回復の制度がある。
■詳細及び留意点

1.特許権
 ブラジルにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際出願日)から20年である(産業財産法第40条、特許協力条約第11条)。登録後最低10年間の権利期間を保障する条項は、2021年に違憲と判断され、廃止された(関連記事1参照)。特定条件を満たす特許権に対して存続期間の延長を認める制度はない。年金は出願日を起算日として、3年次から発生する(産業財産法第84条)。年金は一年ごとに納付し、特許登録前、出願が係属中にも納付しなければならない。各年の年金納付期限日は出願応当日である(産業財産法第84条)。

 電子出願様式での年金の納付にはGRU(Guia de Recolhimento da União:ユニオン・コレクション・ガイド、料金徴収システム)への登録が必要である(関連記事2参照)。
 このシステムへの登録は、「Cadastro no e-INPI(e-INPIへの登録、https://www.gov.br/inpi/pt-br/cadastro-no-e-inpi)」へアクセスして実行できるが、登録の対象者はブラジル居住者か代理人のみとされている。

 意図しない特許権や特許出願に対して年金を誤って納付してしまった場合、庁内で納付金を正しい納付先に変更することはシステム上対応されておらず、誤納付の返金のための手続を行い、期限内に改めて正しい年金納付手続をする必要がある。
 年金納付金額に不足があった場合は、不足分のみを追加で納付し手続を補完することができる(決議第113/2013年 第7条)。

 納付期限内に年金の納付が行われなかった場合、期限日から9か月以内であれば追納が可能である(産業財産法第84条第2項)。最初の3か月間に限り追徴金が発生しないため、通常納付時の金額の年金を追納すれば権利を維持することができる。年金納付期限日から4か月目からは追徴金が発生し、所定の年金に加えて追徴金も同時に納付しなければならない(産業財産法第84条第2項)。追納期間を超えて年金納付がされなかった場合や追徴金の支払いがなされなかった場合、特許権については失効し、特許出願については出願が取下げられたものとみなされる(産業財産法第86条)。ただし、ブラジル産業財産庁から発行される失効通知から3か月以内であれば特許権の回復、特許出願の再開が可能である。回復手続の際には、所定の年金と追徴金に加えて回復費用も支払う必要がある(産業財産法第87条)。

 上記のとおり、追納期間を超えて年金納付がされなかった場合に特許権は失効するが、権利を放棄したい旨を記した書面をブラジル産業財産庁に提出することにより、積極的に放棄を行うことも可能である。

関連記事:
1.「ブラジルにおける特許権の存続期間に関する連邦最高裁判所判例」(2022.03.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/22841/
2.「ブラジルにおける特許制度のまとめ-手続編」(2022.06.14)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/23704/

2.実用新案権
 実用新案権の権利期間は、原則として、出願日(PCT条約に基づく実用新案登録出願の場合は国際実用新案登録出願日)から15年である(産業財産法第40条)。登録後最低7年間の権利期間を保障する条項は、2021年に違憲と判断され、廃止された。特定条件を満たす登録実用新案権に対して存続期間の延長を認める制度はない。年金は出願日を起算日として3年次から発生する(産業財産法第84条)。年金は一年ごとに納付され、各年の年金納付期限日は出願応当日である(産業財産法第84条)。

 年金の納付、追納、権利の回復については特許権の場合と同様である。

3.意匠権
 意匠権の権利期間は出願から10年であり、5年ごとに連続して3回の更新が可能である(産業財産法第108条)。年金は出願日から起算し、特許権や実用新案権とは異なり、権利期間中は5年ごとに更新でき、更新する場合は更新の都度年金を納付する必要がある。各納付年次の年金納付期限日は出願応当日である(産業財産法第120条)。

 年金の納付、追納、権利の回復については特許権の場合と同様である。

■ソース
・ブラジル産業財産法
http://www.planalto.gov.br/ccivil_03/leis/l9279.htm (ポルトガル語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/brazil-sanzai.pdf (日本語)
・RESOLUÇÃO No 113 /2013(決議第113/2013年)
https://www.gov.br/inpi/pt-br/backup/legislacao-1/resolucao-113-13-anuidades.pdf (ポルトガル語)
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2022.08.04

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