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台湾における専利に必要な書類一覧

2021年06月17日

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■概要
専利の出願、審査、維持あるいは審判には、所定の書類を用意しなければならない。書式によっては台湾特許庁(中国語「智慧財産局」)のウェブサイトにてダウンロードできるものもあるが、そうでないものもある。そこで、専利に係る必要書類について、台湾特許庁のウェブサイトで提供されている書類をもとに、出願のプロセスに沿って、出願時に必要な書類、出願後から公告に至るまでに必要な書類、公告後に必要な書類に分けて説明すると共に、専利法または専利法施行細則における各種必要書類を紹介する(台湾特許庁のウェブサイトにおいて提供されていない書類には、「*」をつけている)。
■詳細及び留意点

1.出願時に必要な書類
1-1.共通事項
 優先権を主張しようとする場合、願書に「優先権主張」に関する情報「当該基礎出願の出願日、出願番号・当該出願を受理した国」等を明記しなければならない。
※記入していない場合は主張しないとみなされる為、必要であれば回復請求手続きを行わなければならない。なお、出願人は最先の優先日後16か月以内(意匠の場合は10か月)に受理国による出願の受理を証明する書類を提出しなければならない(専利法第29条、第120条、第142条1項、専利法施行細則第16条)。

1-2.各必要書類
(a)特許
・特許願(中国語「発明専利申請書」)(専利法施行細則第16条)
・明細書、特許請求の範囲、要約書、および必要な図面(ある場合)(専利法25条1項)
 台湾特許庁のサイトからダウンロードできる願書に、明細書や要約書、請求の範囲等の様式も簡略的に記載されているが、明記すべき事項の詳細は、専利法施行細則第17条~第23条に規定されている。
 なお、生物材料またはその利用に係る発明の特許出願(当業者が容易に入手できるものを除く)である場合、明細書に寄託機構、寄託日、および寄託番号を明記しなければならない(専利法施行細則第17条5項)。また、願書にも、上記寄託情報を記す必要がある。専利法第27条第1項によると、遅くとも出願の日までに当該生物材料を台湾特許庁の指定する台湾国内寄託機構に寄託していなければならない旨が規定されている。ただし、日本と台湾の提携覚書調印により、台湾で特許出願をする場合、日本の寄託機関である特許微生物寄託センター(NPMD)や特許生物寄託センター(IPOD)等における寄託も、台湾特許庁に承認されている(専利審査基準第1編第8章4.生物材料の寄託証明書類)。なお、証明書類は出願日後4か月以内に提出しなければならない(専利法第27条第2項)。

(b)実用新案
・実用新案登録願(中国語「新型専利申請書」)(専利法施行細則第45条)
・明細書、実用新案登録請求の範囲、要約書および図面(ある場合)(専利法第106条1項)
 台湾特許庁のサイトでダウンロードできる願書に、明細書と要約書、請求の範囲等の様式も簡略的に記載されている。

(c)意匠
・意匠登録願(中国語「設計専利申請書」)(専利法施行細則第49条)または、関連意匠登録願(中国語「衍生設計専利申請書」)(専利法第127条、専利法施行細則第49条3項および第61条2項)
 関連意匠登録出願の出願日は、本意匠登録出願の出願日より前であってはならないと規定されている。
・明細書および図面(専利法第125条1項)
 台湾特許庁のサイトでダウンロードできる願書に、明細書の様式も簡略的に記載されている。明記すべき事項の詳細は、専利法施行細則第50条~第54条に記載されている。

2.出願から特許/登録査定に至るまでに必要に応じて提出する書類
2-1.共通書類
(a)補正書(出願願書に添付した書類についての補正)(中国語「専利補正文件申請書」)
 例えば、明細書、特許/実用新案登録請求の範囲および図面が、出願時に中国語ではなく外国語で提出された場合、台湾特許庁の指定期間内に中国語書面を提出(専利法の法文では「補正」と書く)。
(b)補正書(中国語「専利修正申請書」)
 明細書、図面、特許・実用新案登録請求の範囲についての補正(専利法の法文では「修正」と書く)。(専利法第43条1項、第49条1項、第109条、第142条、専利法施行細則第36条、第45条、第59条)
(c)*応答意見書(中国語「申復意見書」)
(d)出願権譲渡登記申立書(中国語「専利申請権譲與登記申請書」)(専利法第14条2項、専利法施行細則第8条柱書、第8条1号および第63条1項)
(e)出願権相続登記申立書(中国語「専利申請権繼承登記申請書」)(専利法第14条2項、専利法施行細則第8条柱書、第8条2号および第69条)
(f)*新規性喪失の例外期間(専利法第22条3項、第120条および第122条3項)に関する証明書類
 旧法時代は出願時に新規性喪失の例外規定の適用を求めなければならなかったが、2017年5月1日に施行された改正法では、出願時に限らず、審査中に関連証明書類を添付し、例外規定の適用を申込んだ場合も、適用されることになっている。
(g)その他
・指定期間延長申請書(中国語「専利申請延展指定期間申請書」)
・出願取下書(中国語「專利申請案撤回申請書」)
・専利証書受領および出願延期公告申立書(*1)(中国語「申領専利證書及申請延緩公告申請書」)(専利法施行細則第86条)
 延期申請は6か月を超えてはならない。
・専利出願一括変更登録申請書(中国語「専利申請案<一文多案号>変更事項申請書」)
 同時に複数件の出願の出願人・代理人の住所変更、出願人の氏名・名称/国籍の変更または法人代表者の変更、代理人・受取人の変更をする際に使用。前記以外の変更の場合は、案件それぞれについて個別に申請する必要がある。

(*1)出願延期公告申立書は、台湾での専利公告後、出願人が他国にて出願する際、当該台湾対応出願がその他国における出願の障害になることを防ぐために行い、特に当該国(例えばECFA締結以前の中国)がお互いに優先権を認めないような場合のために設けられた。台湾特許庁「専利証書受領および出願延期公告申立要領」第4点によると、出願延期公告申立ては、証書料と一年目の年金納付時に同時に提出しなければならない。また、出願人は延期期間を自ら指定することができるが、6か月を超えてはならない。延期期間は延期公告許可後、原公告予告日から起算される。

2-2.各専利に関する書類
(a)特許
(i)審査
(ア)必要書類
・特許・実体審査請求書(中国語「発明専利実体審査申請書」)(専利法第38条1項、第39条1項、専利法施行細則第32条)
(イ)必要に応じて提出する書類
・特許・早期公開請求書(中国語「発明専利提早公開申請書」)(専利法第37条2項)
・実体審査延期請求書(中国語「発明専利申請延緩実体審査申請書」)
 「発明専利出願案実体審査延期作業方案」によると、実体審査請求と同時、またはその後に請求することになっている。ただし、出願日から三年を経過していてはならない。
・特許・優先審査請求書(*2)(中国語「発明専利優先審査申請書」)(専利法第40条1項)
・特許・早期審査請求書(*3)(中国語「発明専利加速審査申請書」)
・面接申立書(中国語「専利面詢申請書」)(専利法第42条1項1号)
・特許・特許関連案件連合面接申立書(中国語「発明専利関連案連合面詢申請意願書」)
・再審査(*4)を請求する場合、専利再審査請求書(中国語「専利再審査申請書」)(専利法第48条)

(*2)優先審査とは、発明公開後に他人が業として実施していたとき、早期に専利権が付与されるよう出願人が実体審査期間短縮を請求することによって行われる審査を指す。

(*3)早期審査とは、(アメリカと台湾)或いは(日本と台湾)の同一の出願が、PPH/AEPの条件を満たす場合、台湾特許庁がUSPTOやJPOの一部の実体審査の結果を踏まえて、台湾特許庁の審査スピードを上げる審査を指す。

(*4)再審査とは、初審審査で拒絶査定を受けた場合、出願人が理由を添付し、再び実体審査を請求することをいう。

(ii)特許審査ハイウェイ(PPH)を申請する場合(台湾出願の外国対応出願がある、あるいは出願人による商業上の実施行為がある場合)
(ア)必要書類
・特許審査ハイウェイ請求書(中国語「発明専利 PPH審査申請書」)
(イ)必要に応じて提出する書類
・特許審査ハイウェイ補正書(中国語「発明専利 PPH修正申請書」)
・特許・特許審査ハイウェイを利用した早期審査の支援作業請求書(中国語「発明専利TW-SUPA審査申請書」)

(iii)特許出願の変更
・出願変更願(特許出願を実用新案登録出願に変更)(中国語「発明専利改請新型専利申請書」)(専利法第108条)
・出願変更願(特許出願を意匠登録出願に変更)(中国語「発明専利改請設計専利申請書」)(専利法第132条)

(iv) 分割出願
・特許分割願(中国語「発明専利分割申請書」)(専利法第34条1項、専利法施行細則第28条1項)

(b)実用新案
(i)実用新案登録出願の変更
・出願変更願(実用新案登録出願を特許出願に変更)(中国語「新型専利改請発明専利申請書」)(専利法第108条)
・出願変更願(実用新案登録出願を意匠登録出願に変更)(中国語「新型専利改請設計専利申請書」)(専利法第132条)

(ii)分割出願
・実用新案分割願(実用新案分割)(中国語「新型専利分割申請書」)(専利法第107条、専利法施行細則第45条)

(c)意匠
(i)審査
(ア)必要書類
無し
 意匠登録出願は一律に実体審査に付されるので審査請求書は必要無し。
(イ)必要に応じて提出する書類
・面接申立書(中国語「専利面詢申請書」)(専利法第142条1項)
・意匠・実体審査延期請求書(中国語「設計専利申請延緩実体審査申請書」)
 「設計専利出願案実体審査延期作業方案」によると、出願と同時またはその後で請求することになっている。ただし、出願日から1年を経過していてはならない。
・再審査を請求する場合、専利再審査請求書(中国語「専利再審査申請書」)(専利法第142条1項)
 特許と同じ用紙を使用することとなっており、【専利類別】で意匠を選択し用いる。

(ii)出願の変更
・出願変更願(意匠登録出願を実用新案登録出願に変更)(中国語「設計専利改請新型専利申請書」)(専利法第108条)
・出願変更願(意匠登録出願を関連意匠登録出願に変更)(中国語「設計専利改請衍生設計専利申請書」)(専利法第131条)
・出願変更願(関連意匠登録出願を意匠登録出願に変更)(中国語「衍生設計専利改請設計専利申請書」)(専利法第131条)

(iii)分割出願
・意匠分割願(中国語「設計専利分割申請書」)(専利法第130条、専利法施行細則第58条)

(iv)その他必要に応じて提出する書類
・関連意匠登録願(中国語「衍生設計専利申請書」)(専利法第127条1項、3項、専利法施行細則第49条3項および第61条第2項)
 本意匠が登録出願した後でも登録出願することができる。ただし、本意匠登録出願が公告された後は、関連意匠登録出願をすることができない。

3.特許/登録査定後に必要に応じて提出する書類
3-1.共通書類
(a)訂正
・訂正(審判)請求書(中国語「専利更正申請書」)
・訂正(審判)請求書・誤記または誤訳の訂正用紙(中国語「専利更正申請書(誤譯訂正適用)」)
(専利法第67条、第120条、第139条、専利法施行細則第70条および第81条)

(b)その他
・専利権譲渡登記についての申請書(中国語「専利権譲渡登記申請書」)(専利法第6条1項および専利法施行細則第63条)
・専利権相続登記についての申請書(中国語「専利権継承登記申請書」)(専利法第6条1項および専利法施行細則第69条)
・専利権実施許諾/再実施許諾登記についての申請書(中国語「専利権授権(再授権)登記申請書」)(専利法第62条、63条1項、および専利法施行細則第65条、第66条)
・専利権質権登記についての申請書(中国語「専利権質権登記申請書」)(専利法第62条1項および専利法施行細則第67条)
・専利権信託登記についての申請書(中国語「専利権信託登記申請書」)(専利法第62条1項および専利法施行細則第64条)
・専利権証書追記(*5)または再発行願(中国語「専利証書加註、補(換)発申請書」)(専利法施行細則第80条)
・専利権証書英訳版証明申請書(中国語「専利証書英譯証明申請書」)
・特許料/専利登録料納付書(中国語「専利年費繳納申請書」)(専利法第92条2項、第93条、第120条、第142条1項)
・専利権一括変更登録申請書(中国語「専利権<一文多案号>変更事項申請書」)
 同時に複数件の専利権の権利者・代理人の住所変更、権利者の氏名/名称・国籍または法人代表者の変更、代理人・受取人の変更をする際に使用。前記以外の変更の場合は、案件それぞれについて申請する必要がある。
・専利案件閲覧申立書(中国語「専利案件閲卷申請書」)(専利法第47条2項、第85条2項、第120条、第142条1項)
・専利案件控え発行申立書(中国語「専利案件影印申請書」)(専利法第47条2項、第85条2項、第120条、第142条1項)

(*5)専利権証書追記の多くは専利権に質権が設定されている等の事情を追記するために用いられる。2019年11月1日に施行された改正専利法により、意匠権の存続期限が12年から15年に延長されたため、法改正以前に登録を受け、まだ存続している意匠権は、意匠登録証書に新たな存続期間の追記を請求することができる(もしくは証書の再発行願を出すこともできる)。

3-2.各専利に関する書類
(a)特許
(ア)医薬または農薬関係
・専利延長登録申立書(中国語「専利権期間延長申請書」)(専利法第53条)

(イ)特許の実施
・*強制実施廃止願(中国語「強制授権廃止申請書」(専利法第89条2項および専利法施行細則第77条2項)

(b)実用新案
・実用新案技術評価請求書(出願が登録要件を満たしているかどうかについての評価)(中国語「新型専利技術報告申請書」)(専利法第115条1項および専利法施行細則第42条)

4.他人の出願に対して必要に応じて提出できる書類
・特許出願案に関する第三者意見書(中国語「発明専利申請案第三方意見書」)(専利法施行細則第39条)
 日本の「情報提供」に相当。
・無効審判請求する場合、無効審判請求書(中国語「専利挙発申請書」)(専利法第57条、第71条、第119条、第141条)
・*強制実施申立書(中国語「強制授権申請書」)(専利法第87条2項および専利法施行細則第77条1項)

5.留意事項
 台湾特許庁のウェブサイトにてダウンロードできる提出必要書類の様式は、専利法、施行細則、専利審査基準または他の法律政策(例えばPPH、あるいはTW-SUPAなど)に対応しなければならないため、様式内容が更新されることがある。そのため、適宜更新された様式をタウンロードすることが望ましい。
 専利法あるいは施行細則に記載のある提出書類にもかかわらず、台湾特許庁のウェブサイトでダウンロードできないもの(本トピックでは「*」マークにて標示)については、台湾特許庁によって調整中のため公開されていない可能性がある。この他、出願する者が比較的少数のため、決まった様式で提出する必要がないとされているものもある。

■ソース
・台湾特許庁 専利に関する出願・申請に関する注意事項および書類ダウンロード
https://topic.tipo.gov.tw/patents-tw/lp-712-101.html
・台湾特許庁 専利に関する電子出願・電子申請に関する記入注意事項および書類ダウンロード
https://topic.tipo.gov.tw/patents-tw/lp-715-101.html
■本文書の作成者
聖島国際特許法律事務所
■協力
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2021.02.05

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