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ブラジルにおける商標異議申立制度

2017年04月25日

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■概要
ブラジルにおいて、商標出願が提出されると、ブラジル産業財産庁(Instituto Nacional da Propriedade Industrial:以下「INPI」)は、公報において出願を公告する。公報において商標出願が公告される時点まで、INPIはその出願の実体審査を行わない。商標出願が公報に公告された日から60日以内に、異議申立書を提出することができる。出願人は、異議申立の通知から60日以内に、答弁書を提出することができる。この期間の満了後、答弁書が提出されたかどうかに拘わらず、INPIは異議申立の実体的事項について審査する。
■詳細及び留意点

 商標出願が提出されると、INPIは第三者に知らせるために、産業財産公報において出願を公告する。留意すべき点として、産業財産公報において商標出願が公告される時点まで、INPIはその出願の実体審査を行わない。

 

 ブラジル産業財産法(以下「IP法」)第158条に従い、法律上の利害関係を有するいかなる第三者も、商標出願が産業財産公報に公告された日から60日以内に、異議申立書を提出することができる。この60日間の異議申立書提出期限を延長することはできない。

 

 異議申立は、絶対的拒絶理由および/または相対的拒絶理由を根拠とすることができる。異議申立の根拠として主張可能な絶対的拒絶理由および相対的拒絶理由は、IP法第124条に示されている。最もよく利用される絶対的拒絶理由は、識別性の欠如である。相対的拒絶理由に関しては、下記の規定を根拠として異議申立を提出することができる。

 

 IP法第124条中の下記のものは、商標として登録することはできない。

 

(V)第三者の商号における識別性のある要部の複製または模倣であって、かかる識別性のある要部との混同または関連づけを生じるおそれがあるもの。

(XII)IP法第154条の規定に従って、第三者が団体標章または証明標章として登録している標識の複製または模倣。

(XIII)公式または公認のスポーツ、芸術、文化、社会、政治、経済または技術関連の行事の名称、褒賞または象徴、およびその模倣であって、混同を生じるおそれのあるもの。ただし、その行事を推進する管轄機関または団体の許可を得ている場合を除く。

(XV)第三者の個人名、署名、名字、父称および肖像。ただし、その所有者、所有者の相続人または承継人の同意を得ている場合を除く。

(XVI)著名な雅号または愛称および個人または集団の芸術上の名称。ただし、その所有者、所有者の相続人または承継人の同意を得ている場合を除く。

(XVII)著作権により保護される文学的、芸術的または科学的著作物およびその題名であって、混同または関連づけを生じるおそれがあるもの。ただし、その著作者または所有者の同意を得ている場合を除く。

(XIX)同一、類似または同種の商品または役務を識別または証明するために第三者により登録された商標の、付加物をも含めた、全体的または部分的な複製または模倣であって、当該第三者の商標との混同または関連づけを生じるおそれがあるもの。

(XXII)第三者の名義で工業意匠登録により保護されているもの。

(XXIII)出願人がその活動に照らして明らかに知っているはずの商標であって、ブラジルの領域内に、またはブラジルが相互協定を維持している、もしくは相互主義の待遇を保証している国に本拠または住所を有する者により所有されている商標を、全体的または部分的に模倣または複製する商標。ただし、かかる商標が同一、類似または同種の商品または役務を識別するためのものであり、当該第三者の商標との混同または関連づけを生じるおそれがある場合に限られる。

 

 また、異議申立は、先行出願が存在する場合であっても、周知商標を保護することを定めたIP法第126条を根拠とすることもできる。

 

 最後に、IP法第129条(1)項は、同一、類似または同種の商品および役務に関して、同一または混同を生じるほど類似の商標が第三者により出願される前に、少なくとも6ヵ月間にわたり当該商標を使用している者に対して、優先的な権利を与えている。この規定も、異議申立の根拠とすることができる。

 

 異議申立書が提出されると、INPIは産業財産公報において異議申立を公示する。出願人は、異議申立の通知から60日以内に、答弁書を提出することができる。この期間の満了後、答弁書が提出されたかどうかに拘わらず、INPIは異議申立の実体的事項について審査する。

 

 異議申立を認める場合、INPIは出願を拒絶し、出願人は60日以内に拒絶査定に対する審判請求をすることができる。審判において拒絶査定を維持する判断が下された場合、その出願の拒絶が確定する。この決定を不服とする場合、唯一の手段として連邦裁判所に不服申立を提起することができる。

 

 留意すべき点として、INPIは職権により出願の実体審査を行い、異議申立で提起された理由とは異なる理由で出願を拒絶することができ、または異議申立が提出されない場合でも出願を拒絶することができる。

 

 最後に、商標登録が許可された場合、登録通知の公示が180日間にわたり行われ、異議申立人またはいかなる第三者も、この登録に対する行政上の無効手続を提起することができる。行政上の無効手続は、先の異議申立とは無関係に提起することができる。

 

異議申立書の提出要件

 

 異議申立人は、異議申立書を提出する際に、下記の方式要件を遵守しなければならない。

 

(1)異議申立人の法律上の代表者により署名された委任状を提出する。認証の必要はない。

(2)異議申立の理由を提出する。

(3)必要であれば、証拠を提出する(例えば、商標が周知であることを証明するため、異議申立人の優先的な権利を証明するため、または出願人の悪意を証明するため)。

(4)政府料金を支払う。(INPIのオンラインシステムを通して提出される異議申立は、政府料金が割り引きされる。)

 

 さらにIP法第158条(2)項に従い、異議申立がIP法第124条(XXIII)項(悪意)またはIP法第126条(周知商標)を根拠とする場合、異議申立人は、当該商標に関する自己名義のブラジル出願を有していることを証明しなければならない。かかる証拠の提出期限は、異議申立書を提出した日から60日である。異議申立人がこの要件を満たさない場合、その異議申立はINPIにより却下される。

 

 異議申立書の提出時に委任状を提出できない場合、異議申立人は、委任状の提出を定めたIP法第216条(2)に従い、異議申立書を提出した日から60日以内に委任状を提出することができる。この期限内に委任状が提出されない場合、その異議申立はINPIにより却下される。

 

 異議申立人は、異議申立書を提出した日から60日以内に証拠を提出することもできるが、この期限後に提出された証拠については、INPIは考慮する義務はない。

■ソース
・ブラジル産業財産法-法律第9.279/1996号
■本文書の作成者
Dannemann Siemsen Bigler & Ipanema Moreira(ブラジル法律事務所)
■協力
日本技術貿易株式会社
■本文書の作成時期

2017.01.24

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