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タイにおける商標異議申立制度

2017年04月12日

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■概要
タイでは、商標出願は、審査後に登録官により登録可能と判断されると、商標公報において公告される。2016年に改正されたタイ商標法の第35条に基づき、公告日から60日以内に、異議申立書を提出することができる。登録官は、異議申立書の写しを出願人に送達し、出願人はこれを受領した日から60日以内に、答弁書を登録官に提出する。かかる60日以内に答弁書が提出されない場合、その出願は放棄されたとみなされる。
■詳細及び留意点

 商標出願は、登録官による審査の結果、当該登録官が登録可能と判断した場合、商標公報において公告される。2016年に改正されたタイ商標法B.E. 2534(1991年)の第35条に基づき、公告日から60日以内に、異議申立書を知的所有権局の商標部門に提出することができる。

 

異議申立の理由

(1)より優先的な権利または権原

(2)識別性の欠如

(3)禁止された商標(悪意を含む)

(4)他者の先行商標と同一または混同を生じるほど類似している

(5)出願が商標法のいずれかの規定に違反している

 

 出願人が悪意で、即ち異議申立人の商標または著作物を模倣して商標を出願した場合は、その商標が禁止された商標であるという理由により、異議申立書を提出することができる。最高裁判所は、判決No. 4588/2552(2009年)において、悪意で(他者の知的財産権を模倣して)出願された商標は公益に反しており、商標法B.E. 2534(1991年)の第8条(9)項に基づき禁止されると判示した。それゆえ、かかる商標は登録されるべきではない。

 

異議申立書を提出できる者

 最初の理由、「より優先的な権利または権原」については、自己の先行商標、自己の未登録または未出願の商標に関する先使用、自己の先行意匠権または先行著作権を根拠として、より優先的な権利を有していると考える者が異議申立書を提出できる。残りの理由については、誰でも異議申立を提出できる。

 

異議申立書の提出期限

 異議申立書の提出期限は、公告日から60日である。異議申立書の提出期限を延長することはできない。

 

異議申立手続

 異議申立書は、法律により定められた様式を用い、全ての裏付け証拠を添付して、知的所有権局に提出しなければならない。異議申立書を提出する際の公定料金は、2,000バーツである。

 異議申立人は、異議申立を裏付ける追加の証拠を提出するために、60日間の延長を1回請求できる。異議申立人の代理人が異議申立書を提出する場合は、認証された委任状も必要となる。

 異議申立書が提出された後、登録官は、その写しを書留郵便により出願人に送達する。出願人はこれを受領した日から60日以内に、答弁書を登録官に提出する。答弁書を提出する際に公定料金は要求されない。かかる60日以内に答弁書が提出されない場合、その出願は放棄されたとみなされる。答弁書の提出期限を延長することはできない。

 出願人は答弁書を裏付ける追加の証拠を提出するために、60日間の延長を1回請求できる。

 双方の当事者が異議申立書または答弁書に加え、裏付け証拠を提出した後、登録官は双方の当事者の主張を検討し、異議決定を下す。最近の統計データによれば、証拠が少ない簡単な異議事件の場合、異議決定が下されるまでに通常、異議申立書が提出されてから約10ヵ月を要する。大量の証拠が提出された複雑な異議事件の場合、異議決定が下されるまでに16ヵ月以上かかる可能性がある。異議決定書は双方の当事者に送付される。

 登録官の異議決定を不服とする当事者は、登録官から異議決定を受領した日から60日以内に、商標委員会(日本の審判部に相当する)に審判を請求することができる。商標委員会に審判を請求する際の公定料金は4,000バーツである。

 審判請求人は、審判請求を裏付ける追加の証拠を提出するために、60日間の延長を請求することができる。この審判請求は査定系審判であるため、相手方当事者は応答書を提出できない。

 審判が請求された後、商標委員会は審判請求を審理し、審決を下す。最近の統計データによれば、証拠が少ない簡単な異議事件の場合、審決が下されるまでに通常、審判請求が提出されてから約14ヵ月を要する。大量の証拠が提出された複雑な異議事件の場合は、審決が下されるまでに審判請求が提出されてから20ヵ月以上かかる可能性がある。審決書は双方の当事者に送付される。

 商標委員会の審決を不服とする当事者は、商標委員会の審決書を受領した日から90日以内に、知的財産および国際取引中央裁判所(Central Intellectual Property and International Trade Court)(以下、「IPIT裁判所」)に上訴することができる。訴状が提出されてから約12~16ヵ月後に、判決が言い渡される。

 IPIT裁判所の判決を不服とする場合は、特別控訴裁判所に上訴することができる。特別控訴裁判所の判決を不服とする当事者は、最高裁判所に申し立てなければならない。

 

獲得可能な救済

 タイにおける異議申立手続で獲得できる唯一の救済は、商標出願の拒絶である。登録官および商標委員会は、弁護士の報酬または費用を裁定することができない。裁判所は弁護士の報酬を裁定できるが、その額は全体的に極めて低く、実際の報酬額を反映するものではない。

 

提言

 異議申立人は、異議申立書を提出する前に、出願人に書簡を送付する、または連絡を取ることにより、出願の取り下げまたは出願における特定の商品または役務の削除を要求することもできる。出願人が異議申立期限までにかかる要求に応じない場合には、異議申立人はまず異議申立書を提出すべきであり、友好的な解決に至った場合は後日、異議申立を取り下げることができる。また、異議申立人は異議申立書を提出した後に、出願人に上記の書簡を送付する、または連絡を取ることもできる。

 異議申立書を提出する理由が存在する場合、商標出願が登録された後に取消請求を提起するよりも、異議申立書を提出する方が容易であり、費用効果も高い。

■ソース
・B.E. 2543(2000年)およびB.E. 2559(2016年)により改正された、タイ商標法B.E. 2534(1991年)
・タイ商標法B.E. 2534(1991年)に基づき公布された、タイ省令B.E. 2535(1992年)
■本文書の作成者
Satyapon & Partners Ltd.
■協力
日本技術貿易株式会社
■本文書の作成時期

2017.01.09

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