韓国のプログラム関連発明における権利保護に関する調査

「プログラム関連発明における国境を跨いで構成される実施行為及び複数主体により構成される実施行為に対する適切な権利保護の在り方に関する調査研究報告書」(令和5年3月、知的財産研究教育財団 知的財産研究所)

目次

Ⅳ.海外におけるプログラム関連発明に関する権利保護等の状況
6.韓国
(1)韓国特許法の規定 P.135
(国境を跨いで構成される実施行為および複数主体により構成される実施行為に関連する韓国特許法の規定を紹介している。)

(2)国境を跨いで構成される実施行為による侵害 P.137

(i)裁判例
①半製品を生産・輸出して国外で完成品への組立が行われた事例
②国外から配布されたアプリケーションを国内ユーザがインストールしてサービスを利用した事例
③国外サーバから国内ユーザに提供されるサービスを国内事業者が行う事例
(ii)論文等
①特許侵害の域外適用について言及した論文
(iii)海外質問票調査
(海外質問票調査で得られた回答のうち、上記(ⅰ)裁判例、(ⅱ)論文等、以外の内容を中心に紹介している。)
①韓国特許法の改正(2020年3月11日施行)(特許法第2条第3項および特許法第94条第2項の改正)に対する産業界、学界等の評価
②国外からの SaaSサービスに対する権利保護ついて
③事案 2(上記(i)の①で紹介されている事案)において判示された属地主義の例外が認められるための考慮要素に対する評価や意見
④国境を跨いで構成される権利侵害行為に対して、権利の保 護を強化することを求める
産業界の意見や学界における議論
⑤特許法以外で参考となる事項

(3)複数主体により構成される実施行為による侵害 P.143
(i)裁判例
①複数主体により特許発明の一部を分担して実施した場合に、単一主体の侵害となる要件及び共同侵害となる要件を示した事例
②複数主体が提携して特許発明を実施した事例
(ii)論文等
①複数主体による特許権侵害に対する対応方法について言及した論文
②複数主体による特許権侵害の幇助責任について言及した論文
(iii)海外質問票調査
(海外質問票調査で得られた回答のうち、上記(ⅰ)裁判例、(ⅱ)論文等、以外の内容を中心に紹介している。)
①複数主体により特許発明の一部を分担して実施した場合に、単一主体の侵害となる要件及び共同侵害となる要件に関する議論
②複数主体により構成される権利侵害行為に対して、権利の保護を強化することを求める産業界の意見や学界における議論
③特許権侵害訴訟以外の裁判例

資料III 海外質問票調査
資料6 韓国調査結果 P.463
(法律・裁判例などに関する13の質問に対する韓国法律事務所の回答を紹介している。)

中国における専利権侵害訴訟手続の概要

専利権侵害訴訟手続フローチャート図

1.裁判制度
 中国の裁判制度は、「四級二審制」とよばれており、全部で四つの等級の人民法院から構成され、当事者が、第1審の判決に不服な場合は、一度だけその一等級上の人民法院に上訴する機会が与えられる(民事訴訟法第171条)。上訴された場合は、一級上の人民法院により第2審手続が行われ、その第2審判決が確定判決となり、効力が発生する(民事訴訟法第182条)。

 なお、確定判決に重大な瑕疵がある場合は、当事者は、確定判決の人民法院の一級上の人民法院に再審を申し立てることができるが、再審手続を行うか否かは、申立てを受けた人民法院が決定するものであり、再審理由はかなり限られている(民事訴訟法第205~207条)。

2.管轄
 特許権と実用新案権の侵害訴訟は、原則第1審は、知識産権法院、省・自治区・直轄市の人民政府所在地の中級人民法院、または最高人民法院が指定した中級人民法院が管轄する(最高人民法院による第一審の知的財産に係る民事及び行政案件の管轄に関する若干規定(以下、「知財案件管轄若干規定」という。)第1条)。意匠権の侵害訴訟は、第1審は、知識産権法院と、中級人民法院と、最高人民法院が指定した下級人民法院が管轄する(知財案件管轄若干規定第2条)。

 土地管轄は、被告所在地または侵害行為地の人民法院が管轄権を有する。侵害行為地には、侵害行為発生地と侵害結果発生地が含まれる(最高人民法院による専利紛争案件の審理における法律適用の問題に関する若干の規定(以下、「専利紛争案件若干規定」という。)第2条)。

 なお、複数の人民法院が管轄権を有する場合は、原告は、いずれか一つの人民法院に提訴することができる。また、複数の被告が存在する場合は、いずれか一つの被告の所在地または侵害行為地の人民法院を選択して提訴することができる(民事訴訟法第36条)。被疑製品の製造者および販売者を共同被告として訴訟を提起する場合、販売地の人民法院が管轄権を有する(専利紛争案件若干規定第3条)。

3.提訴
 訴訟手続は、提訴により開始される。提訴するときに、原告は、管轄権を有する人民法院に、以下の書類を提出しなければならない。

3-1.訴状の原本および副本
 訴状には、原告と被告、請求の趣旨、事実と理由を記載する。

3-2.基本的な証拠
 基本的な証拠は、以下のとおりである。
(1) 専利権の登録原簿
(2) 年金納付証明(領収書等)
(3) 被告の侵害行為を裏付ける公証書類
(4) 原告側主体証明書類
 (a) 現在事項全部証明書およびその公証ならびにApostille認証
  (2023年11月07日より前は、中国在日大使館または領事館による認証が必要であるが、2023年11月07日以降は、Apostille認証だけで十分である。)
 (b) 法定代表者証明書およびそのApostille認証
 (c) 委任状およびそのApostille認証
 (d) 社長印の印鑑証明書およびそのApostille認証
  (委任状および法廷代表者証明書に押印する印鑑について、人民法院から、社印の上に、さらに社長印による捺印も要求される場合、上記証明書類が必要となる。)
 (e) 人民法院に認められた翻訳機関による上記(a)~(d)の中国語翻訳書類
(5)被告側主体証明書類
 家企業信用情報公示システム(https://www.gsxt.gov.cn/)からダウンロードした工商登録情報ページ

4.訴状審査
 人民法院は、提訴されたときは、起訴要件を満たしているか否かを審査する。起訴要件を満たしていないと判断したときは、7日以内に不受理の裁定を行う。原告は、不受理の裁定に不服がある場合は、裁定書の受領日から10日以内(在外者については30日以内)に上訴することができる。人民法院は、起訴要件を満たしていると判断したときは、7日以内に受理して当事者に通知し、受理の日から5日以内に訴状の副本を被告に送付する(民事訴訟法第126条、第128条)。

5.開廷前手続
 被告は、答弁を行う場合、訴状の副本の受領日から15日以内(在外者の場合は30日以内)(以下、「答弁期間」という。)に答弁書を提出しなければならない(民事訴訟法第128条)。

 当事者は、当該答弁期間内に管轄権に関する異議申立を行い、事件を他の人民法院へ移送することを請求することができる。人民法院は、申立に理由がある場合、事件を当該他の人民法院に移送する裁定を行い、申立に理由がない場合は当該異議申立を却下する裁定を行う。当事者は、裁定に不服がある場合は、裁定書の受領日から10日以内(在外者については30日以内)に上訴することができる(民事訴訟法第130条)。

また、被告、前記答弁期間内に、原告の専利権に対する無効審判を請求し、その無効審判に基づいて侵害訴訟の中止を申請できる。しかしながら、実用新案権または意匠権についての無効理由が発見されない旨の専利権評価報告書がある場合、または、発明特許の場合は、裁判所は中止申請を許可しないことができる(専利紛争案件若干規定第4~8条)。

 その後、人民法院は、合議体を形成して、口頭審理の期日を定め、当事者双方に呼出状を送付する。

6.口頭審理
6-1.冒頭手続
 法廷秩序を読み上げると同時に、当事者の有する法廷上の権利を通知する。その後、当事者、代理人の身分を確認する。また、各当事者に対して裁判官、書記官の忌避または除斥の申請をするか否かを確認する。

6-2.法廷調査
 法廷調査は、事実の認定を目的とする。まず、原告が、訴訟請求およびその根拠となる事実と理由を述べ、被告が、答弁としてそれに依拠する事実と理由を述べる。
 その後、証拠調べを行う。原告が、証拠を提出し、被告は、提出された証拠に対して真実性、合法性、関連性に関する意見を述べる。その後、被告が、証拠を提出し、原告が、提出した証拠に対して真実性、合法性、関連性に関する意見を述べる。証人がいる場合は、証人尋問を行う。

6-3.法廷弁論
 法廷調査の段階で認定された事実に基づいて、原告と被告がそれぞれの主張を述べた後、双方が互いに弁論する。法廷弁論の段階で、新たな事実が判明した場合は、法廷調査の段階に戻ることもある。

6-4.和解の試み
 当事者双方に和解の意思があれば、裁判長は、裁判上の和解を行う。ただし、当事者の一方が和解の意思がないことを表明すれば、この段階は終了する。和解が成立した場合は、人民法院により和解調書が作成される。この和解調書は、確定判決と同等の法的効力を有する。

7.判決
 第1審手続は、国内案件では受理日から6か月以内に終結することが求められている(民事訴訟法第152条)が、法院側は当該案件審理期限を延長することができる。また、渉外案件は、この制限を受けないため、実際は1年以上かかることが多い。各当事者は、第1審判決に対して不服である場合は、判決の送達日から15日以内(在外者については30日以内)に一級上の人民法院に上訴することができる(民事訴訟法第171条、第276条)。

中国のプログラム関連発明における権利保護に関する調査

 「プログラム関連発明における国境を跨いで構成される実施行為及び複数主体により構成される実施行為に対する適切な権利保護の在り方に関する調査研究報告書」(令和5年3月、知的財産研究教育財団 知的財産研究所)

目次

Ⅳ.海外におけるプログラム関連発明に関する権利保護等の状況
5.中国
(1)中国専利法、民法典及び最高人民法院による司法解釈の規定 P.121
(国境を跨いで構成される実施行為及び複数主体により構成される実施行為に関連する中国専利法、民法典、最高人民法院による司法解釈の規定について紹介している。)

(2)国境を跨いで構成される実施行為による侵害 P.122
(i)裁判例
①国外に設置されたサーバからサービスが行われた事例
②国外で収集した証拠により侵害主張した事例
(ii)論文等
①国境を跨いだ間接侵害について言及した論文
②管轄権の域外適用について言及した論文
(iii)海外質問票調査
(海外質問票調査で得られた回答のうち、上記(ⅰ)裁判例、(ⅱ)論文等、以外の内容を中心に紹介している。)
① 国境を跨いだ特許権侵害についての中国法律事務所コメント
②国境を跨いだ間接侵害についての中国法律事務所コメント
③特許権侵害訴訟以外の裁判例

(3)複数主体により構成される実施行為による侵害 P.127
(i)裁判例
①ユーザと単一事業者からなる複数主体により実施された事例
②ユーザと複数事業者からなる複数主体により実施された事例
③相互に関連性が深い複数主体により実施された事例
④部品提供業者を含む複数主体により実施された事例
⑤間接侵害(幇助)を認定するために考慮される要素を示した事例
(ii)論文等
①複数主体による方法専利発明の実施について言及した論文
②複数主体による共同侵害または間接侵害について言及した論文
③複数主体の権利侵害行為の保護強化について言及した論文
(iii)海外質問票調査
(海外質問票調査で得られた回答のうち、上記(ⅰ)裁判例、(ⅱ)論文等、以外の内容を中心に紹介している。)
①特許権侵害訴訟以外の裁判例

資料III 海外質問票調査
資料5 中国調査結果 P.439
(法律・裁判例などに関する11の質問に対する中国法律事務所の回答を紹介している。)

中国におけるロイヤルティ送金に関する法制度と実務運用の概要

1.ロイヤルティ送金に伴う契約届出義務
 「中国外貨管理条例」の関連規定により、国際貿易におけるサービス、荷物などのよくある貿易項目に基づき海外へ送金する場合、「真実かつ合法な取引基礎」を有しなければならない(中国外貨管理条例第12条)。実際に銀行などの金融機関を通じて海外に送金する際に、関連金融機関は、当該取引の真実と合法性を審査し、取引の真実と合法性を証明できる資料(契約書、インボイス、当局による届け出証明、税務証憑など)の提出を要求する。
 「中国商標法」、「専利法実施細則」、「技術輸出入管理条例」などの法律・規定によると、ライセンス契約書を締結した後、商標ライセンス、専利ライセンス、ノウハウライセンスなどの場合(対象となる技術が自由輸入技術に該当する場合)、当局への届出が要求されているが(中国商標法第43条、専利法実施細則第14条、技術輸出入管理条例第18条)、届出はライセンス契約の効力発生要件ではなく、また契約届出を怠ったことによる罰則もない。しかしながら、ロイヤルティを海外送金する際に「技術輸入契約登記証」などの関連当局が発行する届出証明書類等の提出が金融機関から要求されることから(技術輸出入管理条例第39条)、届出をしていない場合、海外送金に支障が出る恐れがある。そのため、関連法令の要求に従い、届出を行っておくことが無難である。ライセンス契約届出手続に関する詳細は、下記【ソース】に示す「専利ライセンス契約届出弁法」、「商標ライセンス契約届出弁法」、「著作権契約届出申請書及び証明書の規範化に関する通知」をご参照いただきたい。

2.ロイヤルティ送金の必要書類
 ロイヤルティを送金する際、実務においては、通常、下記書類の提出が要求される。

2-1.商標ライセンス契約
(1) 送金申請書
(2) 契約書
(3) インボイスまたは支払通知
(4) 税務証憑
(5) 商標主管部門発行の届出証明
なお、一部の銀行は、金額が少ない場合、上記の資料を提出せずに送金できるようになった。

2-2.専利ライセンス契約
(1) 送金申請書
(2) 契約書
(3) インボイスまたは支払通知
(4)「技術輸入許可証」または「技術輸入契約登記証」
(5)「技術輸入契約データ表」
(6) 税務証憑
(7) 専利主管部門発行の届出書証明
(8) 会計事務所が発行する売上高の信憑性を証明する資料(支払金額が売上高に連動する場合)

2-3.ノウハウライセンス契約
(1) 送金申請書
(2) 契約書
(3) インボイスまたは支払通知
(4)「技術輸入許可証」または「技術輸入契約登記証」
(5)「技術輸入契約データ表」
(6) 税務証憑
(7) 会計事務所が発行する売上高の信憑性を証明する資料(支払金額が売上高に連動する場合)

2-4.海外授権の図書に関する著作権ライセンス契約
(1) 送金申請書
(2) 契約書
(3) インボイスまたは支払通知
(4)「著作権契約届出済み」という判が捺印されている著作権ライセンス契約または契約届出の許可書類
(5) 税務証憑

2-5.オーディオおよびビデオ製品著作権ライセンス契約
(1) 送金申請書
(2) 契約書
(3) インボイスまたは支払通知
(4)「著作権契約届出済み」という判が捺印されている著作権ライセンス契約または契約届出の許可書類
(5) オーディオおよびビデオ製品管理部門の発行した許可書類
(6) 税務証憑

2-6.電子出版物著作権ライセンス契約
(1) 送金申請書
(2) 契約書
(3) インボイスまたは支払通知
(4)「著作権契約届出済み」という判が捺印されている著作権ライセンス契約または契約届出の許可書類
(5) 税務証憑

2-7.ソフトウェア著作権ライセンス契約
(1) 送金申請書
(2) 契約書
(3) インボイスまたは支払通知
(4)「著作権契約届出済み」という判が捺印されている著作権ライセンス契約または契約届出の許可書類
(5)「技術輸入および設備輸入の契約届出発行証書」または「技術輸入許可証」または「技術輸入契約登記証」
(6)「技術輸入契約データ表」
(7) 税務証憑

 実務において、中国各地の外貨管理機構や金融機関の詳細規定または実務操作規定などは、かならずしも一致していないため、送金する前に予め現地の対応する外貨管理機構や金融機関などに、必須書類や手続などを確認しておいた方が好ましい。

3.税務局での登録
 源泉所得税を確定するため、中国現地法人は、予め関連ライセンス契約書を中国の税務当局に提出する必要がある。「国家税務総局、国家外貨管理局によるサービス貿易等項目に対する対外送金の税務登録に関する公告(2013年第40号)」(国家税務総局公告2018年第31号により改正)(第1条)により、海外の機関または個人が国内から取得した運輸、旅行、通信、建築据付および労務請負、保険サービス、金融サービス、コンピュータと情報サービス、専有的権利の使用と許諾、スポーツ文化と娯楽サービス、その他の商業サービス、政府サービスなどのサービス貿易収入を含む収入について、国内組織または個人は、海外に1回5万ドルを超えて送金する場合、上記2013年第40号の第3条に規定された状況を除いて、いずれも所在地の税務機関に税務登録手続を行わなければならない。公告(2013年第40号)(第2条)により、税務登録手続を行う際、下記の書類が必要である。

(1) 捺印された契約書または取引関連証憑のコピー(外国語で作成された場合、その中文訳も提出する必要がある)
(2) サービス貿易などの項目に対する対外送金税務登録表

 また、「国家税務総局、国家外貨管理局によるサービス貿易等項目に対する対外送金の税務登録関連問題に関する補充公告」(2021年第19号)(第1条)によると、国内機関と個人が同一の契約に対して何度も対外送金する必要がある場合、初めて送金する前に税務登録をすればよい。最近では、登録が、インターネットで申請できるようになってきている。

4.ライセンシーの源泉徴収義務
 中国の税法では、日本企業へロイヤルティを送金する中国事業者に、源泉徴収が義務づけられている(税法第37条)。税法(第19条、第37条)、「国家税務総局による非居住者企業所得税源泉徴収関連問題に関する公告(国家税務総局公告2017年第37号)」(2018年第31号公告より修正)(第7条)および「国家税務総局による売上税から増値税への移行試行における非居住者企業の企業所得税納付の関連問題に関する公告」(2013年第9号)によると、非居住者企業が中国で取得したロイヤルティの付加価値税を含まない全額に対して、源泉徴収が実施され、ライセンシーが源泉徴収義務を負う。ライセンシーが、源泉徴収義務の発生日から7日以内に、所在地の税務当局に源泉徴収申告および納付手続を行わなければならない。「企業所得税法実施条例」(第91条)によると、ロイヤルティ送金に対する源泉所得税の税率は、10%である。

5.付加価値付加価値税
 「中華人民共和国付加価値税暫定条例(2017改正)」(第1条)および「財政部、国家税務総局による売上税から付加価値税への移行試行を全面的に実施することに関する通知」(財税(2016)36号)(付属書類1の第1条)によると、中国国内でサービス、無形資産、不動産を販売する機関と個人は、付加価値税の納税者であり、付加価値税を納付しなければならない。「中華人民共和国増値税暫定条例」(第2条第3項)によると、ロイヤルティ送金に対する付加価値税の税率は、6%である。

6.留意事項
 「国家税務総局による非居住者企業所得税源泉徴収関連問題に関する公告」(第6条)により、源泉徴収義務者が非居住者企業と企業所得税法第3条第3項に規定された所得に関する業務契約を締結する際、契約中に源泉徴収義務者が実際に税金を負担することを約束した場合、非居住者企業が取得した税抜所得を税込所得に換算して課税対象額を計算し、納付しなければならない。
 例えば、ロイヤルティが100万元の場合、中国企業が税金を負担すると約定された場合、源泉徴収された付加価値税と企業所得税は、以下のように計算される。
 付加価値税を含まなく企業所得税を含む所得額(税込所得)=税抜き所得/(1-所得税率)
 税込所得=100/(1-10%)=111.11万元
 源泉徴収付加価値税=111.11×6%=6.67万元
 源泉徴収企業所得税=111.11×10%=11.11万元
 換算済各種税金を含む契約の合計金額は、100万元+6.67万元+11.11万元=117.78万元となる。
 契約書を作成する際、各種税金を考慮した上、税金の負担方を明確に約定したほうが好ましい。例えば、日本企業は100万元を受領したいが、ライセンス契約書に記載された送金の総額が100万元であった場合、税金控除のため、想定通りの金額を受領できない恐れがある。
 また、前記財税(2016)36号通知の付属書類3「売上税から付加価値税への移行政策の規定」(第1条第26項)の定めにより、納税者は技術譲渡、技術開発とそれに関連する技術コンサルティング、技術サービスを提供する場合、付加価値税は免除される。付属書類1「売上税から付加価値税への移行試行実施弁法」に添付した「サービス、無形資産、不動産の販売への注釈」により、無形資産の販売とは、無形資産(技術(特許技術と非特許技術を含む)、商標、著作権、ビジネス信用、自然資源使用権とその他の権益的無形資産を含む)の所有権や使用権を譲渡するビジネス活動を指す。したがって、無形資産に関するライセンスの場合、付加価値税の免税を申請可能である。付加価値税の免税を申請する場合、書面契約をもって、所在地の省レベルの科技主管部門による許可を受ける必要がある。

マレーシアにおける特許の単一性要件と分割出願

(1) 特許出願の単一性要件
 マレーシアにおいて、特許出願は、発明の単一性の要件を満たさなければならない(マレーシア特許法第26条)。

 次の場合は、発明の単一性の要件を満たしているとされる。
・対象となる製品に関する独立クレームに加えて、その製品の製造のために特に採用される方法についての独立クレーム、およびその製品の使用に関する独立クレーム(マレーシア特許規則19(1)(a))。

・対象となる方法に関する独立クレームに加えて、その方法を実施するために特に工夫された装置または手段に関する独立クレーム(マレーシア特許規則19(1)(b))。

・対象となる製品に関する独立クレームに加えて、その製品の製造のために特に採用された方法に関する独立クレーム、およびそのような方法を実施するために特に工夫された装置または手段に関する独立クレーム(マレーシア特許規則19条(1)(c))。

(2) 単一性要件の不備を是正するための分割出願
 単一性要件を満たさない出願については分割出願によって、その不備を是正できる(マレーシア特許法第26B条(1))。
 実体審査において、出願された特許が単一性の要件を満たしていないと判断された場合、単一性要件を満たしていない旨の報告書が審査官から発せられ(マレーシア特許法第30条(1)(2)に基づく報告書)、その報告書について意見書を提出するため、およびこれらの要件を遵守するために、出願を補正するための機会を与えられる。出願人は、この報告書の発行日から3か月以内(*1)に当該特許の分割出願を行うことができる(マレーシア特許規則19A(1)(a))。
 ただし、原出願が特許付与、拒絶、みなし取下げ、取下げ、または、放棄された場合、分割出願は認められない(マレーシア特許法第26B条(1A))。
単一性要件の不備を補うための分割出願を行う場合、分割出願について実体審査(または修正実体審査)を求める請求は、出願の分割を申し立てるときに行わなければならない。なお、分割出願時に実体審査(または修正実体審査)請求を申請しない場合、分割出願は取り下げたものとみなされる(マレーシア特許規則27(2)、(2A)、および同規則27A(2)、(2A))。

(3) 自発的な分割出願
 上記(2)記載の、単一性要件の不備を是正するための分割出願のほか、出願人は自発的に分割出願することもできる。この場合、審査官から最初に送付される報告書(マレーシア特許法第30条(1)(2)に基づく報告書)の発行日から3か月以内(*1)に分割の申立てをしなければならない(マレーシア特許規則19A(b))。なお、分割出願期限を延長することはできない(マレーシア特許法第26B条(1B))。
 自発的な分割出願を行う場合も、分割出願について実体審査(または修正実体審査)を求める請求は、出願の分割を申し立てるときに行わなければならない。なお、分割出願時に実体審査(または修正実体審査)請求を申請しない場合、分割出願は取り下げたものとみなされる(マレーシア特許規則27(2)、(2A)、および同規則27A(2)、(2A))。

*1: 2016年6月1日発行のPractice Direction No. 2/2016により分割出願期限の起算日が、「the date of mailing」から「the date of examination report」に改正された。

(4) 分割出願の範囲
 分割出願においては、原出願の明細書に記載された範囲を超えてはならない(マレーシア特許法第26B条(1))。分割出願に新規事項が含まれていると判断され、出願人が当該新規事項を除外することを拒んだ場合には、分割出願は拒絶される。

(5) 分割出願の出願日
 分割出願は、原出願の出願日に出願したものとして取り扱われる。(マレーシア特許法第26B条(2))。

(6) 分割出願の手数料
 分割出願に係る手数料は、通常の特許出願と同じく、オンラインで行う場合には260マレーシアリンギット、オンライン以外の提出の場合には290マレーシアリンギットである。

(7) 留意事項
 一般的に、出願と関連する競業他社の製品を市場で発見し、他社製品を技術的範囲に含むようにクレームを構成したい場合、他社製品の構成が含まれるように親出願のクレームを補正しつつ、自社製品との関係でより広い特許を取得するべく分割出願を行う等の方法で分割出願を戦略的に利用し得る。
 ただし、マレーシアにおいて、特許出願の分割を行うことができる時期は、上述の通り、限定的であるため、このような戦略的な分割出願が活用できる場面は限定的になる。

ベトナムにおける知的財産の基礎的情報(全体マップ)-実体編

1.出願ルート
 ベトナムでは、発明特許権、実用新案特許権、意匠権、商標権を取得するために、以下のルートにより出願することができる。また、意匠を除いて国際出願(PCT、マドリッドプロトコル)ができる。

[ベトナムにおける出願ルート]

直接出願 国際出願 広域出願
特許 不可
実用新案 不可
意匠 不可 不可
商標 不可

<諸外国の制度概要>
 ・一覧表URL
(特許)https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/1tokkyo.pdf
(実用新案)https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/2jitsuyou.pdf
(意匠)https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/3isyou.pdf

(商標)https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/4syouhyou.pdf
 ・諸外国の法令・条約等URL https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/mokuji.html
  (国等のリンクをクリックすると各国等の制度概要や法令情報が日本語で表示される。)

2.法令・制度等

(1) 主な法律

法域 法律・規則(公用語)/(英語)
a: 法律・規則等の名称
b: 主な改正内容
URL:
改正年
(YYYY)
施行日
(DD/MM/YYYY)
知的財産法 (公用語)
a: Luật số 50/2005/QH11, LUẬT SỞ HỮU TRÍ TUỆ
(日本語)
a: 知的財産法第50/2005/QH11号b: 知的財産に関して規定する法律。2009年に一部の条文が改正された(改正法の施行は2010年)

https://ipvietnam.gov.vn/documents/20182/626826/5.1.+Luat+So+huu+tri+tue+2005.pdf/5a8cbdf8-c7c1-457e-b9db-b5a696a76ed7


2005

01/07/2006
(英語)
a: Law No. 50/2005/QH11 of November 29, 2005, on Intellectual Property

https://wipolex.wipo.int/en/text/274445

(公用語)
a: Luật số 36/2009/QH12, LUẬT SỬA ĐỔI, BỔ SUNG MỘT SỐ ĐIỀU CỦA LUẬT SỞ HỮU TRÍ TUỆ
(日本語)
a: 法律番号36/2009/QH12、知的財産法の一部の条項を修正および補足する法律
b:侵害行為に対する行政措置に関し、警告書の送付を要件としていた条文を削除し(211条)、従来は「消費者または社会に損害を与える侵害行為」と規定していた条文を「著作権者、権利者、消費者、または社会に損害を与える侵害行為」と改正し(211条)、製品に貼付する侵害商標ラベルを所持しているだけでも行政措置の対象とし(211条)、行政措置の罰金額の規定(改正前は損害額と同額もしくは最大損害額の5倍まで)を削除した(214条4項)。

http://ipvietnam.gov.vn/documents/20182/626826/5.2.+Luat+So+huu+tri+tue+sua+doi.pdf/a268a18f-eb19-4884-892e-eeae913d7d47


2009

01/01/2010
(英語)
a: Law No. 36/2009/QH12 of June 19, 2009, amending and supplementing a Number of Articles of the Law on Intellectual Property

https://wipolex.wipo.int/en/text/182541

(公用語)
a: Luật sửa đổi, bổ sung một số điều của Luật Kinh doanh bảo hiểm, Luật Sở hữu trí tuệ (Luật số: 42/2019/QH14)
(日本語)
a: 保険事業に関する法律および知的財産に関する法律の多数の条項を改正および補足する法律(法律番号:42/2019/QH14)

b: 電子出願が導入され、特許の新規性喪失の例外が拡充され、知的財産権のライセンス契約(ただし、商標ライセンス契約以外)は登録した場合にのみ第三者対抗要件を得ることが規定された。

https://www.ipvietnam.gov.vn/documents/20195/702193/Luat+42+sdbs+Luat+KDBH+Luat+SHTT.pdf/0a48805e-0b44-40d8-9ea7-7bcc3a5a5faa

2019

14/01/2019
(知財に関してのみ)
(公用語)
a: Luật sửa đổi, bổ sung một số điều của Luật Sở hữu trí tuệ(Luật số: 07/2022/QH15)
(日本語)
a: 知的財産法の多数の条項を改正および補足する法律(法律番号:07/2022/QH15)

b: 知的財産法の改正法。特許については、ベトナム国内発明の第一国出願義務の明確化、サポート要件や実施可能要件の明文化等が、意匠については、出願公開の繰延べ請求期間の設定等が、商標については、音商標の導入、拒絶理由の追加、周知商標の定義の明確化等が新たに規定された。

https://ipvietnam.gov.vn/documents/20195/1326404/Luat+sua+doi%2C+bo+sung+mot+so+dieu+cua+Luat+So+huu+tri+tue.pdf/e4fc7dc2-2e7b-4a6a-99d6-7a9ae7caf90f
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2022

01/01/2023
(日本語)
a: 知的財産法
b: 知的財産法第50/2005/QH11号(2006年7月1日施行)に法律第36/2009/QH12号(2010年1月1日施行)、法律第42/2019/QH14号(2019年11月1日施行)、法律第07/2022/QH15号(2023年1月1日施行)の改正を反映した内容である。

https://www.jica.go.jp/Resource/project/vietnam/059/materials/lqgpft0000005lvu-att/intellectual_property_law_2022.pdf

関連記事:「ベトナムにおける政府による知的財産に関する各種優遇・支援制度」(2019.8.15)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/17629/

関連記事:「ベトナムにおける特許・実用新案出願制度概要」(2019.6.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17469/

関連記事:「ベトナムにおける意匠出願制度概要」(2019.6.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17471/

関連記事:「ベトナムにおける商標出願制度概要」(2018.10.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17473/

関連記事:「ベトナムにおける医薬用途発明の保護制度」(2018.8.16)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15660/

産業財産に関する政令 (公用語)
a: Nghị định số 103/2006/NĐ-CP ngày 22 tháng 09 năm 2006 của Chính phủ quy định chi tiết và hướng dẫn thi hành một số điều của Luật Sở hữu trí tuệ về sở hữu công nghiệp

b: 工業所有権に関する細則を定めるとともに、知的財産法の一部条項の施行細則を規定する政令

http://ipvietnam.gov.vn/documents/20182/627934/6.1.+Ngh%E1%BB%8B+%C4%91%E1%BB%8Bnh+s%E1%BB%91+103.2006.ND.CP.doc/3b6d0268-9aea-4a4e-b1cc-16d79e0d2a55
(Word書式ダウンロード形式)

2006

21/10/2006
(英語)
a: Decree No. 103/2006/ND-CP of September 22, 2006, detailing and guiding the Implementation of a Number of Articles of the Law on Intellectual Property regarding Industrial Property

https://wipolex.wipo.int/en/text/131859

(日本語)
a: 産業財産に関する知的財産法の細則及び施行ガイドラインの政令103号(2006年10月21日施行)

http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1022116/www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/s_sonota/fips/mokuji.htm

(公用語)
a: Nghị định số 122/2010/NĐ-CP ngày 31 tháng 12 năm 2010 của Chính phủ sửa đổi, bổ sung một số điều của Nghị định số 103/2006/NĐ-CP quy định chi tiết và hướng dẫn thi hành một số điều của Luật Sở hữu trí tuệ về sở hữu công nghiệp.
(日本語)
a: 政府決議122/2010/ NĐ-CP(2010年12月31日公布)
b. 政府決議103/2006/NĐ-CPの一部改正。秘密特許制度、特許の第一国出願義務に関する規定が追加された。

http://ipvietnam.gov.vn/documents/20182/627934/6.2.+Ngh%E1%BB%8B+%C4%91%E1%BB%8Bnh+s%E1%BB%91+122.2010.ND.CP.doc/4b906bbd-c78c-46b6-836f-c95660573bf3
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2010

20/2/2011
(英語)
a: Decree No. 122/2010/ND-CP of December 31, 2010, amending and supplementing a Number of Articles of the Decree No. 103/2006/ND-CP of September 22, 2006, detailing and guiding a Number of Articles of the Law on Intellectual Property regarding Industrial Property

https://wipolex.wipo.int/en/text/330661

(公用語)
a: Nghị định số 65/2023/NĐ-CP ngày 23/8/2023 của Chính phủ quy định chi tiết một số điều và biện pháp thi hành Luật Sở hữu trí tuệ về sở hữu công nghiệp, bảo vệ quyền sở hữu công nghiệp, quyền đối với giống cây trồng và quản lý nhà nước về sở hữu trí tuệ.

(日本語)
a:政府決議65/2023/NĐ-CP(2023年8月23日施行)

b: 産業財産権、産業財産権の保護、植物品種の権利、知的財産の国家管理に関する知的財産法を実施するための条項と措置を詳述している。

https://thuvienphapluat.vn/van-ban/So-huu-tri-tue/Nghi-dinh-65-2023-ND-CP-huong-dan-Luat-So-huu-tri-tue-so-huu-cong-nghiep-576846.aspx

https://ipvietnam.gov.vn/documents/20195/1560614/65_2023_ND-CP_23082023-signed.pdf/2f15e2bf-068d-4cc7-abe7-c1007b270693
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2023

23/8/2023
(英語)
a: Decree No. 65/2023/ND-CP of August 23, 2023, details a number of articles and measures to implement the Law on Intellectual Property on industrial property, protection of industrial property rights, rights to plant varieties and state management of intellectual property

https://thuvienphapluat.vn/van-ban/So-huu-tri-tue/Nghi-dinh-65-2023-ND-CP-huong-dan-Luat-So-huu-tri-tue-so-huu-cong-nghiep-576846.aspx


関連記事:「ベトナムにおける知的財産権侵害事案の刑罰制度およびその運用」(2018.2.1)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/14459/

関連記事:「ベトナムの模倣被害に対する措置および対策」(2017.11.16)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/14253/

関連記事:「ベトナムにおける営業秘密ならびに職務発明、職務著作および職務意匠の保護」(2017.3.14)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/13240/

産業財産に関する省令 (公用語)
a: No.01/2007/TT-BKHCN, Thông tư Hướng dẫn thi hành Nghị định số 103/2006/NĐ-CP ngày 22 tháng 9 năm 2006 của Chính phủ quy định chi tiết và hướng dẫn thi hành một số điều luật của Luật Sở hữu trí tuệ về sở hữu công nghiệp

b. 政府決議103/2006/NĐ-CPの詳細規定を定める科学技術省令

https://www.most.gov.vn/Images/Attachments/03169353e61e41efaa0bac4ce58fc659-01.2007.TT.BKHCN%20ve%20Luat%20SHTT.doc
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2007

01/03/2007
(英語)
a: Circular No. 01/2007/TT-BKHCN of February 14, 2007, guiding the Implementation of the Government’s Decree No. 103/2006/ND-CP of September 22, 2006, detailing and guiding the Implementation of a Number of Articles of the Law on Intellectual Property regarding Industrial Property

https://wipolex.wipo.int/en/text/131995

(日本語)
a: 産業財産権に関する知的財産法の一部条項を詳細に規定し、その施行ガイドラインを提供する政府の2006年9月22日付政令第103/2006/ND-CP号の施行ガイドラインを提供する省令第01/2007/TT-BKHCN号

https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/vietnam-sangyou_syourei.pdf

(公用語)
a: Thông tư 13/2010/TT-BKHCN sửa đổi quy định của Thông tư 17/2009/TT-BKHCN và 01/2007/TT-BKHCN do Bộ Khoa học và Công nghệ ban hành

b. 政府決議103/2006/NĐ-CPの詳細規定を定める科学技術省令01/2007/TT-BKHCNを改正する省令

http://congbao.chinhphu.vn/noi-dung-van-ban-so-13-2010-tt-bkhcn-725


2010

13/09/2010
(公用語)
a: Thông tư số 18/2011/TT-BKHCN ngày 22 năm 7 năm 2011 của Bộ Khoa học và Công nghệ sửa đổi, bổ sung một số quy định của Thông tư số 01/2007/TT-BKHCN ngày 14/02/2007, được sửa đổi, bổ sung theo Thông tư số 13/2010/TT-BKHCN ngày 31/7/2010 và Thông tư số 01/2008/TT-BKHCN ngày 25/02/2008, được sửa đổi, bổ sung theo Thông tư số 04/2009/TT-BKHCN ngày 27/3/2009

b. 政府決議103/2006/NĐ-CPの詳細規定を定める科学技術省令01/2007/TT-BKHCNを改正する省令

http://congbao.chinhphu.vn/noi-dung-van-ban-so-18-2011-tt-bkhcn-2435

2011

05/09/2011
(英語)
a: Circular No. 18/2011/TT-BKHCN of July 22, 2011, amending and supplementing some provisions of Circular No. 01/2007/TTBKHCN of February 14, 2007, as amended and supplemented by Circular No. 13/2010/TTBKHCN of July 31, 2010, and Circular No. 01/2008/TT-BKHCN of February 25, 2008, as amended and supplemented by Circular No. 04/2009/TT-BKHCN of March 27, 2009

https://wipolex.wipo.int/en/text/330755

(公用語)
a: Thông tư số 05/2013/TT-BKHCN sửa đổi, bổ sung một số điều của Thông tư số 01/2007/TT-BKHCN ngày 14/02/2007 hướng dẫn thi hành Nghị định số 103/2006/NĐ-CP quy định chi tiết một số điều của Luật sở hữu trí tuệ về sở hữu công nghiệp, được sửa đổi, bổ sung theo Thông tư số 13/2010/TT-BKHCN ngày 30//7/2010 và Thông tư số 18/2011/TT-BKHCN ngày 22/7/2011.

b. 政府決議103/2006/NĐ-CPの詳細規定を定める科学技術省令01/2007/TT-BKHCNを改正する省令

http://congbao.chinhphu.vn/noi-dung-van-ban-so-05-2013-tt-bkhcn-3311


2013

06/04/2013
(公用語)
a: Thông tư số 05/2013/TT-BKHCN ngày 20/02/2013 sửa đổi, bổ sung một số điều của Thông tư số 01/2007/TT-BKHCN ngày 14/02/2007 hướng dẫn thi hành nghị định số 103/2006/NĐ-CP quy định chi tiết một số điều của luật sở hữu trí tuệ về sở hữu công nghiệp, được sửa đổi, bổ sung theo thông tư số 13/2010/TT-BKHCN ngày 30/7/2010 và Thông tư số 18/2011/TT-BKHCN ngày 22/7/2011

b. Circular No.05/2013/TT-BKHCN 2013年2月20日、政府決議103/2006/NĐ-CPの詳細規定を定める科学技術省令01/2007/TT-BKHCNを一部改正する省令

https://wipolex.wipo.int/en/text/446618


2013

20/02/2013
(公用語)
a: Thông tư số 16/2016/TT-BKHCN ngày 30 năm 06 năm 2016 của Bộ Khoa học và Công nghệ sửa đổi, bổ sung một số điều của Thông tư số 01/2007/TT-BKHCN ngày 14 tháng 02 năm 2007 hướng dẫn thi hành Nghị định số 103/2006/NĐ-CP ngày 22 tháng 9 năm 2006 của Chính phủ quy định chi tiết và hướng dẫn thi hành một số điều của Luật Sở hữu trí tuệ về sở hữu công nghiệp, được sửa đổi, bổ sung theo Thông tư số 13/2010/TT-BKHCN ngày 30 tháng 7 năm 2010, Thông tư số 18/2011/TT-BKHCN ngày 22 tháng 7 năm 2011 và Thông tư số 05/2013/TT-BKHCN ngày 20 tháng 02 năm 2013

b. 政府決議103/2006/NĐ-CPの詳細規定を定める科学技術省令01/2007/TT-BKHCNを改正する省令

http://congbao.chinhphu.vn/noi-dung-van-ban-so-16-2016-tt-bkhcn-25022?cbid=19735


2016

15/01/2018
(英語)
a: Circular No. 16/2016/TT-BKHCN of June 30, 2016, amending and supplementing a number of Articles of Circular No. 01/2007/TT-BKHCN of February 14, 2007

https://wipolex.wipo.int/en/text/466093

a: Số: 07/VBHN-BKHCN
THÔNG TƯ HƯỚNG DẪN THI HÀNH NGHỊ ĐỊNH SỐ 103/2006/NĐ-CP NGÀY 22 THÁNG 9 NĂM 2006 CỦA CHÍNH PHỦ QUY ĐỊNH CHI TIẾT VÀ HƯỚNG DẪN THI HÀNH MỘT SỐ ĐIỀU CỦA LUẬT SỞ HỮU TRÍ TUỆ VỀ SỞ HỮU CÔNG NGHIỆP

b. 政府決議103/2006/NĐ-CPの詳細規定を定める科学技術省令01/2007/TT-BKHCN(2010, 2011, 2013, 2016の改正省令を反映した合冊版)

https://thuvienphapluat.vn/van-ban/So-huu-tri-tue/Van-ban-hop-nhat-07-VBHN-BKHCN-2017-huong-dan-Nghi-dinh-103-2006-ND-CP-So-huu-tri-tue-385941.aspx


2010
2011
2013
2016

15/01/2018
(2016年改正の施行日)
関連記事:「ベトナムにおける第一国出願制度」(2019.8.15)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17627/

関連記事:「ベトナムの特許・実用新案関連の法律、規則、審査基準等」(2021.5.11)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/19844/

関連記事:「ベトナムの意匠関連の法律、規則、審査基準等」(2019.2.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16559/

関連記事:「ベトナムにおける特許年金制度の概要」(2018.10.11)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15961/

関連記事:「ベトナムにおける寄託微生物関連発明に関する実務」(2018.8.16)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15662/

関連記事:「ベトナムにおける特許権の共有と共同出願」(2018.3.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/14742/

関連記事:「ベトナムにおけるマドリッド協定議定書の基礎商標の同一性の認証」(2017.6.1)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13766/

関連記事:「ベトナムにおける共同開発契約」(2017.3.9)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/13234/

関連記事:「ベトナムにおける技術ライセンス契約」(2017.3.6)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/13228/

関連記事:「ベトナムにおいて技術検証(PoC)契約書モデルを使用する際の注意事項」(2023.5.30)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/34527/

関連記事:「ベトナムにおける特許ライセンス契約の基礎および留意事項」(2016.6.30)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/12211/

関連記事:「ベトナムにおける商標ライセンス契約の留意点」(2016.6.22)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/11810/

関連記事:「ベトナムにおける遺伝資源の利用と特許制度」(2016.4.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/11881/

著作権 (公用語)
a: Nghị định số 22/2018/NĐ-CP ngày 23 tháng 02 năm 2018 của Chính phủ quy định chi tiết một số điều và biện pháp thi hành Luật sở hữu trí tuệ năm 2005 và Luật sửa đổi, bổ sung một số điều của Luật sở hữu trí tuệ năm 2009 về quyền tác giả, quyền liên quan

http://ipvietnam.gov.vn/documents/20182/627934/6.5.+Ngh%E1%BB%8B+%C4%91%E1%BB%8Bn+s%E1%BB%91+22_2018_ND-CP.doc/c2d4e695-6e87-4e80-9f3f-12d234882a09
(Word書式ダウンロード形式)

2018

10/04/2018
(英語)
a: Decree No. 22/2018/ND-CP of February 23, 2013, on Guidelines for Certain Number of Articles of the Intellectual Property Law and Law on Amendments to the Intellectual Property Law 2009 in Terms of Copyright and Related Rights

https://wipolex.wipo.int/en/text/472667

(公用語)
a: Nghị định số 17/2023/NĐ-CP của Chính phủ: Quy định chi tiết một số điều và biện pháp thi hành Luật Sở hữu trí tuệ về quyền tác giả, quyền liên quan

b: 著作権および著作隣接権によって保護される作品の種類、侵害とみなされない作品利用の例外、保護登録の指示、集団代表組織、コンサルティングおよびサービス組織の活動、侵害の検査および処理、輸出入商品の管理、仲介サービス提供者の責任について規定している

https://thuvienphapluat.vn/van-ban/So-huu-tri-tue/Nghi-dinh-17-2023-ND-CP-huong-dan-Luat-So-huu-tri-tue-ve-quyen-tac-gia-quyen-lien-quan-565147.aspx

https://datafiles.chinhphu.vn/cpp/files/vbpq/2023/5/17-cp.signed.pdf
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2023

26/4/2023
関連記事:「ベトナムにおいて商標権・意匠権侵害を主張された場合の対抗措置」(2015.5.22)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/8622/

不正競争 (公用語)
a: Luật 23/2018/QH14, Luật Cạnh tranh

b: 旧競争法27/2004/QH11は新法となるLuật 23/2018/QH14の施行日に失効した。

http://congbao.chinhphu.vn/noi-dung-van-ban-so-23-2018-qh14-26888


2018

01/07/2019
関連記事:「ベトナムにおける物品デザインの商標的保護」(2018.9.20)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15847/

関連記事:「ベトナムにおける「.vn」ドメイン名紛争の解決」(2015.3.31)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/8508/

(2) 審査基準等

法域 法律・規則(公用語)/(英語)
a: 法律・規則等の名称
b: 主な改正内容
URL:
改正年
(YYYY)
施行日
(DD/MM/YYYY)
特許 (公用語)
a: QUY CHẾ THẨM ĐỊNH ĐƠN ĐĂNG KÝ SÁNG CHẾ

b:特許に関する審査基準
https://www.ipvietnam.gov.vn/documents/20182/856300/QUY+CHE+SANG+CHE.pdf/c459ef94-79f2-4057-be88-0b2ebebd1400


2010

31/03/2010
(日本語)
a: ベトナム特許出願審査基準
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/vietnam-tokkyo-shinsa-kijun.pdf

(公用語)
a: QUYẾT ĐINH Ban hành Phụ Lục I bổ sung vậo Quy chệ thâm định đon đãng ký sáng chệ được ban hành kém theo Quyết số 487/QĐ-SHTT ngày 31/3/2010 của Cục trưởng Cục Sở hữu trí tuệ, được sửa đổi, bổ sung theo Quyết định số 5196/QĐ-SHTT ngày 31/12/2020

b: 2010年3月31日発行の特許に関する審査基準を補足(付属書I) コンピュータプログラムに関連する特許としてクレームされた主題を認定するためのガイドライン

https://ipvietnam.gov.vn/documents/20182/856300/PHU+LUC+I+QUY+CHE.pdf/63955d4e-f820-46c9-891a-f2476b72ac5b
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2021

31/12/2021
(英語)
a: Annex I
GUIDELINES FOR DETERMINING THE ELIGIBILITY FOR PATENTPROTECTION OF CLAIMED SUBJECT MATTER OF COMPUTERPROGRAM RELATED INVENTIONS

https://www.jica.go.jp/Resource/project/english/vietnam/059/materials/fp4rrb000000t60p-att/materials_03_01.pdf

(公用語)
a: QUYẾT ĐINH Ban hành Phụ Lục I bổ sung vậo Quy chệ thâm định đon đãng ký sáng chệ được ban hành kém theo Quyết số 487/QĐ-SHTT ngày 31/3/2010 của Cục trưởng Cục Sở hữu trí tuệ, được sửa đổi, bổ sung theo Quyết định số 5196/QĐ-SHTT ngày 31/12/2020 và Quyết định số 6193/QĐ-SHTT ngày 31/12/2021

b: 2010年3月31日発行の特許に関する審査基準を修正または補足(付属書II)

https://www.ipvietnam.gov.vn/documents/20195/1473438/20230405112446119.pdf/70d00c6f-8078-4f56-9825-07ed4a827691


2021

03/04/2023
意匠 (公用語)
a: QUYẾT ĐINH Vế việc ban hành Quy chế thẩm định đơn đăng ký kiểu dáng công nghiệp

b: 意匠に関する審査基準

https://www.ipvietnam.gov.vn/documents/20182/856300/Quy+ch%E1%BA%BF+KDCN+2022+-+b%E1%BA%A3n+nh%E1%BA%B9.pdf/72dadac7-dc16-422a-bde0-a50578b65b80

2022

12/5/2022
地理的表示 (公用語)
a: QUYẾT ĐINH Ban hành Quy chế Thẩm định đơn đăng ký chỉ dẫn địa lý

b: 地理的表示に関する審査基準

https://www.ipvietnam.gov.vn/documents/20195/1413131/Quy+ch%E1%BA%BF+CD%C4%90L+%28ban+h%C3%A0nh+theo+QDD_Q%C4%90-SHTT+ng%C3%A0y+31-12-2021%29.pdf/5181b9df-83ee-4947-97d7-38e2496504c4


2021

31/12/2021
関連記事:「ベトナムにおける商標審査基準関連資料」(2016.3.1)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/10292/

関連記事:「ベトナムにおける特許審査基準関連資料」(2016.1.29)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/10250/

(3) 主な条約・協定(加盟状況)

条約名 加盟 加盟予定
(YYYY)
未加盟
(1) パリ条約
   (工業所有権の保護に関するパリ条約)

(    )
(2) PCT
   (特許協力条約)

(    )
(3) TRIPs
   (知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)

(    )
(4) PLT
   (特許法条約)

(    )
(5) IPC
   (国際特許分類に関するストラスブール協定)

(    )
(6) ハーグ協定
   (意匠の国際登録に関するハーグ協定)
(7) ロカルノ協定
   (意匠の国際分類を定めるロカルノ協定)

(    )
(8) マドリッド協定
   (標章の国際登録に関するマドリッド協定議定書)

(    )
(9) TLT
   (商標法条約)

(    )
(10) STLT
   (商標法に関するシンガポール条約)

(    )
(11) ニース協定
   (標章の登録のため商品及びサービスの国際分類に関するニース協定)

(    )
(12) ベルヌ条約
   (文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約)

(    )
(13) WCT
   (著作権に関する世界知的所有権機関条約)

(    )
(14) WPPT
   (実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約)

(    )

関連記事:「ベトナムにおけるパリ条約ルートおよびPCTルートの特許出願の差異」(2015.3.31)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/8518/

3. 料金表

[情報1]
(公用語)
Title: THỦ TỤC ĐĂNG KÝ SC/GPHI (4. Phí, lệ phí đăng ký sáng chế/giải pháp hữu ích)
https://www.ipvietnam.gov.vn/vi_VN/web/guest/sang-che-gphi

(英語)
Title: REGISTRATION PROCEDURE FOR PATENTS (4. Fees and charges for invention or utility solution registration)
https://www.ipvietnam.gov.vn/en_US/web/english/patents


[情報2]
(公用語)
Title: THỦ TỤC ĐĂNG KÝ KIỂU DÁNG CÔNG NGHIỆP (4. Phí, lệ phí đăng ký kiểu dáng công nghiệp)
https://www.ipvietnam.gov.vn/vi_VN/web/guest/kieu-dang-cong-nghiep

(英語)
Title: REGISTRATION PROCEDURE FOR INDUSTRIAL DESIGNS (4. Fees and charges for industrial design registration)
https://www.ipvietnam.gov.vn/en_US/web/english/industrial-designs


[情報3]
(公用語)
Title: THỦ TỤC ĐĂNG KÝ NHÃN HIỆU (4. Phí, lệ phí đăng ký nhãn hiệu)
https://www.ipvietnam.gov.vn/nhan-hieu

(英語)
Title: REGISTRATION PROCEDURE FOR TRADEMARKS (4. Fees and charges for trademark registration)
https://www.ipvietnam.gov.vn/en_US/web/english/trademarks

インドネシアにおける判決へのアクセス方法

1.インドネシア最高裁判所のデータベースでの判決閲覧

 インドネシア最高裁判所(以下、「最高裁判所」という)のデータベースは、更新が比較的頻繁に行われており信頼できる情報源であると言われているが、インドネシア語でのみ情報が提供されている。

(1) 最高裁判所の提供するウェブサイト(https://putusan3.mahkamahagung.go.id/)へアクセスすると、図1の画面が表示される。

図1:最高裁判所データベースのウェブサイトトップページ

 最高裁判所が提供するデータベースは、全てインドネシア語で提供されており、他言語による情報提供は行われていないが、ブラウザの機械翻訳により表示言語を変更することは可能である。
 Google Chromeを使用している場合、画面表示の言語は右クリックで表示されるプルダウンメニューから「○○語に翻訳」(「〇〇」はChromeの言語設定により異なる)を選択し、変更することができる(図2)。

図2:言語変更画面

(2) トップページ上部赤線で囲んである「DIREKTORI(ディレクトリ、DIRECTRORY)」にポインターを合わせると項目が表示される(図3aおよび図3b)。

図3a:「DIREKTORI」選択画面(インドネシア語)

図3b:「ディレクトリ」選択画面(日本語)

 緑線で囲んである「KLASIFIKASHI(分類、CLASSIFICATION)」に表示される項目は、以下のとおりである(インドネシア語(日本語、英語))。

SEMUA(全て、ALL)
PIDANA MILITER(軍事犯罪(刑事)、MILITARY CRIME)
PERDATA KHUSUS(特別民事、SPECIAL CIVIL)
PERDATA AGAMA(民間宗教(民事)、CIVIL RELIGION)
PIDANA KHUSUS(特殊犯罪、SPECIAL CRIMES)
PATEN(特許、PATENT)
SENGKETA KEWENANGAN MENGADILI(司法権をめぐる紛争(紛争裁定)、DISPUTE OF JUDGMENTAL AUTHORITY)
PERDATA(民事、CIVIL)
PAJAK(税、TAX)
TUN(行政、ADMINISTRATION)
PIDANA UMUM(一般犯罪(刑事)、GENERAL CRIME)

(2) ディレクトリの中からPERDATA KHUSUS(特別民事、SPECIAL CIVIL)、を選択すると(https://putusan3.mahkamahagung.go.id/direktori/index/kategori/perdata-khusus.html)、下位分類のリストが表示される(図4aおよび図4b)。赤線で囲んであるKlasifikasi(分類、Classification)の欄に知的財産権の下位分類として、Merek(ブランド(商標)、Brand)、Hak Cipta(著作権、Copyright)、Desain Industri(工業デザイン(意匠)、Industrial Design)およびPaten(特許、Patent)などがある。
 なお、2023年11月時点では、トップページ(図3aおよび図3b)のDIREKTORI(ディレクトリ、DIRECTRORY)のPATEN(特許、PATENT)を選択しても、案件は表示されない。

図4a:特別民事の下位分類 (インドネシア語)

図4b:特別民事の下位分類(日本語)

(3) 例えば、図4bの赤線の「特許」をクリックすると、判決一覧が直近のものから遡って表示される(図5b)。(なお、表示まで、少し時間がかかる場合がある。)

図5a:判決一覧画面(インドネシア語)(「Paten」を選択した場合)

図5b:判決一覧画面(日本語)(「特許」を選択した場合)

(4) 図5bの閲覧したい判決をクリックすると、判決に関する書誌事項画面が表示される(図6aまたは6b)。

図6a:書誌事項画面(インドネシア語)

図6b:書誌事項画面(日本語)

 書誌事項画面に表示される項目は以下のとおりである。なお、機械翻訳では分かりづらいと思われる文言は、日本語を意訳して表示している。

・Nomor(判決番号、Number)
・Tingkat Proses(プロセスレベル(審理状況)、Process Level)
・Klasifikasi(分類、Classification)
・Kata Kunci(キーワード、Keywords)
・Tahun(年、Year)
・Tanggal Register(登録日、Registration date)
・Lembaga Peradilan(司法機関、Judicial Institution)
・Jenis Lembaga Peradilan(司法機関の種類、Types of Judicial Institutions)
・Hakim Ketua(裁判長、Chief Justice)
・Hakim Anggota(裁判官、Member Judge)
・Panitera(登録官、Registrar)
・Amar(判決の結論、Result)
・Catatan Amar(判決の主文、Main text)
・Tanggal Musyawarah(審議日、Deliberation date)
・Tanggal Dibacakan(判決言渡日、Date Read)
・Kaidah(規則、Rule)
・Status(ステータス、Status)
・Abstrak(要約、Abstract)

 判決の詳細は、図6aまたは図6bの赤線で囲んである「Lampiran(付録(添付文書)、Appendix)」をクリックして、PDFファイルをダウンロードすることができる(図7)。

図7:判決詳細(インドネシア語)

 また、案件によっては、図6aまたは図6bの青線で囲んである「Putusan Terkait(関連する判決、Related Verdict)」をクリックすることによって、下級審の裁判例の情報を閲覧することが可能である。

 収録数は限られているが、知的財産関連の判決を「PERDATA KHUSUS(特別民事、SPECIAL CIVIL)」以外の分類でも探すことは可能である。例えば、刑事関係の判決は、トップページの「PIDANA KHUSUS(特別刑事、SPECIAL CRIMES)」を選択して表示される画面の下位分類Klasifikasi(分類、Classification)に表示される「Kejahatan Merek(商標刑事、Brand Crime」、「Kejahatan Hak Cipta(著作権刑事、Copyright Crime)」、「Rahasia Dagang(営業秘密、Trade Secret)」に収録されている。

 また、トップページの「PENCARIAN(検索、Search)」(図8)をクリックし、キーワード検索を行うこともできる(図9)。

図8:最高裁判所データベースのウェブサイトトップページ(図1再掲)

図9:キーワード検索画面(インドネシア語)

2.Hukum Onlineでの判決閲覧
(1) 民間企業が運営するHukumonline.Comから判決情報を閲覧することも可能である。Hukumonline.Comのウェブサイト(https://www.hukumonline.com/)へアクセスする(図10)。

図10:Hukum Online.Comのウェブサイト(トップページ中部)(インドネシア語)

(2) トップページ中部左(図10)の赤線で囲んである「Pusat Data(データセンター)」から、「Putusan(判決)」タブをクリックし青線で囲んである「LIHA SEMUA(全てみる)」をクリックすると「Kategori Putusan(法分野による分類)」画面が表示される(図11)。

図11:Kategori Putusan(法分野による分類)画面(インドネシア語)

(3) 図11の緑線で囲んである「Perdata(民事)」をクリックすると分類が表示される。青線で囲んである「HKI (Hak atas Kekayaan Intelektual)(知的財産権関係の判決)」を選択すると、知的財産関係の判決が表示される(図12)。

図12:知的財産関係の判決一覧画面(インドネシア語)

図12の赤線で囲んである欄をクリックすると、種別、「Desain Industri(意匠)」、「Hak Cipta(著作権)」、「Merek(商標)」、「Paten(特許)」が表示される。例えば、緑線で囲んである「Merek(商標)」をクリックすると、商標に関する判決が表示される(図13)。

 図13:商標判決表示画面(インドネシア語)

(4) 判決の詳細を確認するためには、アカウントの作成が必要である。図13の確認したい判決をクリックすると、アカウントの作成を求められる。無料会員が閲覧できる情報は限定的である。なお、収録判決の更新は、あまり頻繁に行われていないようである。

 なお、図13の画面右上の赤線で囲んである言語(インドネシア語または英語)変換は、2023年11月時点では機能していない。なお、右クリックでブラウザの翻訳言語選択で表示される言語に変換することは可能であるが、この機能を利用して図12の種別選択を行おうとしても日本語訳が適切に表示されないため、お勧めしない。

タイにおける進歩性の審査基準に関する一般的な留意点(後編)

(前編から続く)
4.進歩性の具体的な判断
4-1.具体的な判断基準

 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「3. 進歩性の具体的な判断」の第3段落に記載された「(1)から(4)までの手順」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第3部3.実体審査 「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準」、および「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準 進歩性に関する検討とともに行うその他の要因の検討」

(2) 異なる事項または留意点
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第3部3.実体審査 「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準」の記載事項については、前編の「2. 基本的な考え方」に記載した、審査官の検討手順を参照されたい。

 さらに、「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第3部3.実体審査「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準 進歩性に関する検討とともに行うその他の要因の検討」には、次のように、審査官は海外における進歩性に関する検討手法を採用し得ることが記載されている。

 「また、進歩性の検討には様々な方法がある。例えば、欧州特許庁のProblem-Solution-Approach、英国特許庁とシンガポール知的財産庁のWindsurfing等が挙げられる。したがって、仏暦2522年(西暦1979年)特許法第7条の規定に基づいて、審査官は、これらの方法を採用して検討することが可能である。」

4-2.進歩性が否定される方向に働く要素
4-2-1.課題の共通性

 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「3.1.1 主引用発明に副引用発明を適用する動機付け」の「(2)課題の共通性」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第3部3.実体審査 「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準 進歩性が否定される方向に働く要因の検討」における「(2) 課題解決が同一又は類似であること(課題の共通性:Similarity of problems to be solved)」

(2) 異なる事項または留意点
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」では、「課題の共通性」に関して、次のように記載されている。

 「クレームにおける重要な技術的特徴について、第一の先行技術と第二の先行技術との間で同一の技術的課題が解決されている場合、審査官は、そのクレームにおける権利の主張と異なる技術的課題解決の思考過程の違いの理由があるか検討しなければならない。思考過程の違いの理由は、その特許の出願時に当業者が容易に発明できるという動機があるかどうかを判断する際の基礎とすることができる。発明について試行錯誤の結果、第一の先行技術と第二の先行技術を共に適用することができる技術的特徴を生み出すことで発明の権利(クレーム)を主張することもあるからである。」

4-2-2.作用、機能の共通性
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「3.1.1 主引用発明に副引用発明を適用する動機付け」の「(3)作用、機能の共通性」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第3部3.実体審査 「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準 進歩性が否定される方向に働く要因の検討」における「(3) 作用、機能が同一又は類似であること(作用、機能の共通性Similarity of operations or functions)」

(2) 異なる事項または留意点
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」では、「作用、機能の共通性」に関して、次のように記載されている。

 「クレームにおける重要な技術的特徴について、第一の先行技術と第二の先行技術との間で作用、機能が共通する場合、審査官は、主先行技術と副先行技術を共に適用することができる発明の権利(クレーム)に対し、当業者が容易に発明できる動機付けがあるという判断の根拠にすることが可能である。」

4-2-3.引用発明の内容中の示唆
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「3.1.1 主引用発明に副引用発明を適用する動機付け」の「(4)引用発明の内容中の示唆」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第3部3.実体審査 「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準 進歩性が否定される方向に働く要因の検討」における「(4) 先行技術の内容中の提案や推奨 (先行技術の内容中の示唆:Suggestions shown in the content of prior art)」

(2) 異なる事項または留意点
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」では、「引用発明の内容中の示唆」に関して、次のように記載されている。

 「クレームにおける重要な技術的特徴について、第一の先行技術と第二の先行技術の内容中において提案や推奨があれば、当業者にとって容易に理解でき明らかであることを伝える証拠とすることができる。審査官は、第一の先行技術と第二の先行技術を共に適用することができる発明の権利の主張(クレーム)に対し、当業者が容易に発明できる動機付
けがあるというための根拠にすることが可能である。」

4-2-4.技術分野の関連性
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「3.1.1 主引用発明に副引用発明を適用する動機付け」の「(1)技術分野の関連性」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第3部3.実体審査 「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準 進歩性が否定される方向に働く要因の検討」における「(1) 同じ技術分野の関連性(Relation of technical fields)」

(2) 異なる事項または留意点
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」では、「技術分野の関連性」に関して、次のように記載されている。

 「クレームにおける技術的要旨(クレームで主張された発明を意味する)を検討し、第二の先行技術と置換することができる、または第二の先行技術を付加することが可能であり、同じ技術分野の発明の技術的課題の解決であると判断した場合、その技術分野に基づいて決定された手段または実施によって、創作されたものが、第一の先行技術と第二の先行技術を正しく組み合わせて適用する動機付けに欠けると判断するためには、審査官は“関連性のある技術分野かどうか”という観点で対比するべきである。このことは、その発明の技術的効果または結果に、当業者が容易に発明できる動機付けへの結果があることを判断する際に重要な要因として用いることができる。」

4-2-5.設計変更
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「3.1.2 動機付け以外に進歩性が否定される方向に働く要素」の「(1) 設計変更等」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第3部3.実体審査 「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準 進歩性が否定される方向に働く要因の検討」における「先行技術の設計変更の検討(Design variations of primary prior art)」

(2) 異なる事項または留意点
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」では、設計変更に関して、次のように記載されている。

 「クレームにおける重要な技術的特徴において、以下の(1)から(4)のとおり、第一の先行技術と権利を求める発明との間で異なってはいるものの一致している部分が生じているが、当業者が本願発明の構成要素に想到又は選択できると検討することができる特徴を有する場合、これらは、進歩性が否定される要因となる。さらに、第一の先行技術の中に、設計変更についての示唆があることは、進歩性の否定を支持する有力な要因とみなすことができる。
(1)定められた課題を解決するための公知材料の中からの最適材料の選択
(2)定められた課題を解決するための数値範囲の最適化又は好適化
(3)定められた課題を解決するための均等物による置換
(4)定められた課題を解決するための技術に関連する設計変更や設計選択」

4-2-6.先行技術の単なる寄せ集め
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「3.1.2 動機付け以外に進歩性が否定される方向に働く要素」の「(2)先行技術の単なる寄せ集め」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第3部3.実体審査 「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準 進歩性が否定される方向に働く要因の検討」における「先行技術の単なる寄せ集め(Mere aggregation of prior art)」

(2) 異なる事項または留意点
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」では、「先行技術の単なる寄せ集め」に関して、次のように記載されている。

 「当業者が、先行技術の各構成要素の単なる寄せ集めだと理解できれば、全てが先行技術の単なる寄せ集めで、当業者による通常の創作によってできたと検討することができる。これは進歩性の否定を支持する重要な要因である。」

4-2-7.その他
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「3.1.2 動機付け以外に進歩性が否定される方向に働く要素」と異なるタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 日本の特許・実用新案審査基準と同じく、「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」には、進歩性が否定される方向に働くその他の要素については記述がない。

(2) 異なる事項または留意点
 日本の特許・実用新案審査基準と異ならない。

4-3.進歩性が肯定される方向に働く要素
4-3-1.引用発明と比較した有利な効果
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「3.2.1 引用発明と比較した有利な効果」の「(1) 引用発明と比較した有利な効果の参酌」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第3部3.実体審査 「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準 進歩性が肯定される方向に働く要因の検討」における「先行技術よりも明らかに有利な発明の技術的な効果または結果(Advantageous effect) の検討」

(2) 異なる事項または留意点
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」では、「引用発明と比較した有利な効果」に関して、次のように記載されている。

 「発明にとって有利な進歩的な結果が生じている場合、その先行技術より優れた技術的な結果または効果は、進歩性の肯定を支持するものである。審査官は、明細書、クレーム及び図面(あれば)をもとに発明の技術的な効果または結果を評価すべきである(これは、発明の技術的効果がクレーム中の構成要素を組み合わせて得られたことを意味する)。特別な重要な技術的特徴または特定の技術的特徴が明瞭に示されていなければならず、この技術的な効果または結果は、全ての先行技術の技術的結果より有利な技術的な効果や結果でなければならず、当業者の予測や期待より上回る場合、進歩性があるとみなされる。」

4-3-2.意見書等で主張された効果の参酌
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「3.2.1 引用発明と比較した有利な効果」の「(2) 意見書等で主張された効果の参酌」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」には、「意見書等で主張された効果の参酌」に関する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 前述「4-3-1. 引用発明と比較した有利な効果」の「(2) 異なる事項または留意点」を参照されたい。ここでは、原則として「審査官は、明細書、クレーム及び図面(あれば)をもとに発明の技術的な効果または結果を評価すべきである」とされている。

4-3-3.阻害要因
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「3.2.2 阻害要因」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第3部3.実体審査 「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準 進歩性が肯定される方向に働く要因の検討」における「先行技術の障害を排除する要因の検討(Obstructive factors)」

(2) 異なる事項または留意点
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」では、「阻害要因」に関して、次のように記載されている。

 「第二の先行技術(Secondary prior art)を第一の先行技術(Closest prior art)と共に採用するにあたり、発明の障害であった課題(まだ先行技術では解決できていない)を排除する重要な要因を検討する。権利を主張するクレームにおける各構成要素から構成され、進歩性の肯定を支持する重要な技術的特徴を有する発明について、審査官は、その技術的な結果または重要な技術的特徴を考慮し、先行発明の障害を排除する要因が生じた後に、当事者が容易に想到できるかどうかの理由が十分にあるかどうかを検討すべきことに留意する。なお、それらの要因が進歩性に関連しない場合もあるが、それは後に進歩性を否定する根拠となる。したがって、不適切な先行技術とは以下の通りである。
(1)主先行技術に対して採用されると、第一の先行技術の目的を達成することができなくなる第二の先行技術
(2)主先行技術に対して採用されると、十分に作用、機能しない原因になる第二の先行技術
(3)適用が回避されており第一の先行技術での採用はできないと判断されている第二の先行技術
(4)印刷物で先行技術の作用及び結果と関連する他の特徴が公開されているために当業者が適用しない第二の先行技術」

4-3-4.その他
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「3.2 進歩性が肯定される方向に働く要素」と異なるタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第3部3.実体審査 「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準」「進歩性が肯定される方向に働く要因の検討」の「進歩性に関する検討とともに行うその他の要因の検討」

(2) 異なる事項または留意点
 日本の特許・実用新案審査基準に類似する要素とは別に、審査官は、以下のような他の要素も考慮して進歩性を判断するとの記載がある。

1.発明が、当該分野の当業者が長い間解決しようと試みてきたが達成できなかった問題(Long-felt need)を解決することを目的とし、当該発明がこの問題を解決できる場合、進歩性を肯定する方向に働く一つの要素として考慮される。

例:家畜のマーキングに関する長年の課題を解決しようとする発明であって、その目的が、動物に苦痛を与えることなく、かつ動物の皮膚を傷めないマーキングを行うことにある発明。本発明は、動物に苦痛を与えることなく、また動物の皮膚に損傷を与えることなく、動物の皮膚にマーキングをすることができる「凍結焼印」の方法を用いることにより、この問題を解決することに成功した。この発明は、進歩性を有すると判断された。

2.当該分野の従事者に、他に方法がないと思わせるような誤解や誤信が一定期間存在し、当該分野の研究開発が長期にわたり欠落している場合に、発明が技術的解決策を提起し、誤解や誤信を解くことができる場合には、進歩性を肯定する方向に働く一つの要素として考慮される。

例:電動モーターの場合、整流子とカーボンブラシの間の接合面が平滑であるほど、整流子とカーボンブラシの接続が良くなり、電流が少なくなることは以前から理解されていた。その後、整流子表面にミクロンレベルの小さな溝を刻む発明が考案された。これにより、電流がより少なくなることが判明し、従来の理解が覆ることになった。この発明は、進歩性を有すると判断された。

4-4.その他の留意事項
4-4-1.後知恵
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「3.3 進歩性の判断における留意事項」の(1)でいう「後知恵」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」には、「後知恵」に関する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 審査官は、請求項に係る発明に引きずられてしまうことのないようにするというような記載はないが、例えば、審査官の行うべき判断として以下の説明がある。

 「審査官は前記する審査基準と規則を用いて、進歩性の有無を検討しなければならない。進歩性の否定を支持する要因を評価し、第27条に基づき、補正や理由の提出を求めるために、出願人に検討した理由と共に拒絶の通知をしなければならない。また、当業者にとって容易に明らかではない、より優れた発明の効果または技術的結果を示す進歩性の肯定を支持する要因を、場合によってその他の理由と共に評価し、その発明が進歩性を有するかどうかを判断しなければならない。」(第1章第3部3.実体審査 「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準」「進歩性が肯定される方向に働く要因の検討」の「進歩性に関する検討とともに行うその他の要因の検討」)

4-4-2.主引用発明の選択
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「3.3 進歩性の判断における留意事項」の(2)でいう「主引用発明」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第3部3.実体審査 「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準」、および「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準 進歩性に関する検討とともに行うその他の要因の検討」

(2) 異なる事項または留意点
 前編の「2. 基本的な考え方」に記載した、審査官の検討手順を参照されたい。

4-4-3.周知技術と論理付け
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「3.3 進歩性の判断における留意事項」の(3)でいう「周知技術と論理付け」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」には、「周知技術と論理付け」に関する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 前述「4-1. 具体的な判断基準」の「(2) 異なる事項または留意点」を参照されたい。

4-4-4.従来技術
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「3.3 進歩性の判断における留意事項」の(4)でいう「従来技術」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」には、「従来技術」に関する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 前述「4-1. 具体的な判断基準」の「(2) 異なる事項または留意点」を参照されたい。

4-4-5.物の発明と製造方法・用途の発明
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「3.3 進歩性の判断における留意事項」の「(5) 物自体の発明が進歩性を有している場合には、その物の製造方法及びその物の用途の発明は、原則として、進歩性を有している」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第2部3.先行技術調査の要旨「3.1 内容の調査」

(2) 異なる事項または留意点
 日本の特許・実用新案審査基準のように「物自体の発明が進歩性を有している場合には、その物の製造方法及びその物の用途の発明は、原則として、進歩性を有している」ことが、直接は記載されていないが、以下の先行技術調査の手法から同様の考え方を採用していると考えられる。

 「製品に関するクレームが既に明確で、新規性及び進歩性を有すると考えられる場合、審査官又は特許調査官は、製造工程又は当該製品の使用方法のクレームについて調査を行わなくても良い。」

4-4-6.商業的成功などの考慮
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「3.3 進歩性の判断における留意事項」の(6)でいう「商業的成功」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第3部3.実体審査 「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準 進歩性に関する検討とともに行うその他の要因の検討」における「商業的成功(Commercial success)」

(2) 異なる事項または留意点
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」では、「商業的成功などの考慮」に関して、次のように記載されている。

 「商業的成功(Commercial success)について、商業的成功が発明の重要な技術的特徴による場合、その発明が今までとは別の方向に予期せぬ結果を有している指標となり、その発明は進歩性の肯定を支持する要因である明瞭な重要な特徴があるといえる。ここで審査官は、商業的成功が宣伝や販売促進による成功ではなく、発明の重要な技術的特徴によるものかどうかを常に留意しなければならない。」

5.数値限定
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第4節「6. 数値限定を用いて発明を特定しようとする記載がある場合」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」には、「数値限定」に関する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第4節6.にある、(i)から(iii)までの全てを満たす場合に、審査官が、そのような数値限定の発明が進歩性を有していると判断するというような基準は、「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」には記載がなく、具体的に、数値限定の発明が例外的に進歩性を有していると判断される基準については明確にされていない。

6.選択発明
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第4節「7. 選択発明」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」には、「選択発明」に関する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第4節7.にある、(i)から(iii)までの全てを満たす場合に、審査官が、そのような数値限定の発明が進歩性を有していると判断するというような基準は「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」には記載がなく、具体的に、選択発明が例外的に進歩性を有していると判断される基準については明確にされていない。

7.その他の留意点
 特許・実用新案審査基準(日本)の第III部第2章第1節「新規性」に記載されている、請求項に記載された発明の認定、引用発明の認定、およびこれらの発明の対比については、以下のとおりである。

7-1.請求項に記載された発明の認定
(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第3部3.実体審査 「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準」

(2) 異なる事項または留意点
 日本の特許・実用新案審査基準のように、進歩性における発明の認定について、「請求項に記載された発明の認定は、新規性の場合と同様にして行われる」と明確には記載されていないが、「審査官は、一つ以上のクレームに係る発明の進歩性の有無について検討をするにあたっては、新規性の検討後、クレームにおいて明瞭に記述されている発明の技術的な重要な特徴により検討を行う」とあるので、日本と同じであると考えられる。

7-2.引用発明の認定
(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第2部3.先行技術調査の要旨 「3.1 内容の調査」

(2) 異なる事項または留意点
 日本の特許・実用新案審査基準のように進歩性における引用発明の認定について「新規性の場合と同様にして行われる」と明確には記載されていないが、「調査においては進歩性の技術的概念を検討しなければならず、クレームの文言のみに限定してはならないが、全てを対象とするほど広範囲であってはならない。調査のために使用する内容は、当業者による明細書及び図面から検討する。」とあることから、日本と同じであると考えられる。

7-3.請求項に記載された発明と引用発明の対比
(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第3部3.実体審査 「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準」

(2) 異なる事項または留意点
 日本の特許・実用新案審査基準のように「請求項に記載された発明と引用発明の対比は、新規性の場合と同様にして行われる」と明確には記載されていない。しかし、以下の説明から基本的には新規性における対比と同じ手法を用いると考えられる。

 「審査官は、一つ以上のクレームに係る発明の進歩性の有無について検討をするにあたっては、新規性の検討後、クレームにおいて明瞭に記述されている発明の技術的な重要な特徴により検討を行う」「審査官はまず、クレームにある発明の技術的要旨を第一の先行技術(最も近い先行技術)と対比し、クレームが進歩性の有無に関連しうるかどうか理由に基づいて判断し、次に、第二の先行技術(ここでは、進歩性の検討に用いるすべての先行技術)と組み合わせて、以下のように、進歩性の有無に関する理由に基づいて検討する。」

8.追加情報
 これまでに記載した事項以外で、日本の実務者が理解することが好ましい事項、またはタイの審査基準に特有の事項ついては、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 特に記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 特に記載はない。

タイにおける進歩性の審査基準に関する一般的な留意点(前編)

1.記載個所
 タイにおける進歩性(タイ特許法第7条)の審査基準は、「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」第1章第3部3.実体審査「3.3.4 第5条に定める実体審査」において、新規性とともに記載されている。その概要(目次)は、以下のとおりである。

3.3.4 第5条に定める実体審査
 3.3.4.4 進歩性 (Inventive step) の審査
  3.3.4.4.1 進歩性の検討基準
   進歩性が否定される方向に働く要因の検討
    先行技術の設計変更の検討
    先行技術の単なる寄せ集め
   進歩性が肯定される方向に働く要因の検討
    先行技術よりも明らかに有利な発明の技術的な効果または結果の検討
    先行技術の障害を排除する要因の検討
    進歩性に関する検討とともに行うその他の要因の検討
  3.3.4.4.2 進歩性の判断例
    化学分野における進歩性の判断例
    電気及び物理分野における進歩性の検討例
    工学分野における進歩性の検討例

2.基本的な考え方
 日本における特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「2.進歩性の判断に係る基本的な考え方」第一段落に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第3部3.実体審査 「3.3.4.4.1 進歩性の検討基準」

(2) 異なる事項または留意点
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」では、「基本的な考え方」に該当する審査官の検討手順に関して、次のように記載されている。

 「審査官は、一つ以上のクレームに係る発明の進歩性の有無について検討をするにあたっては、新規性の検討後、クレームにおいて明瞭に記述されている発明の技術的な重要な特徴により検討を行う。」
 「審査官は、先行技術との関係を検討した上で、先行技術の中から少なくとも一件選択し、保護を求める発明の進歩性の有無を検討する(ここでは、最も近い先行技術と他の先行技術とを組み合わせることを意味する。)。このとき、進歩性の有無について最良の検討をするために、先行技術の選択について適切であるであるかどうか、理由があるかどうかを考慮する。その技術における当業者が容易に理解または想到できるかどうかという可能性に対して理由がなければならないということである。」
 「審査官はまず、クレームにある発明の技術的要旨を第一の先行技術(最も近い先行技術)と対比し、クレームが進歩性の有無に関連しうるかどうかの理由に基づいて判断し、次に、第二の先行技術(ここでは、進歩性の検討に用いるすべての先行技術)と組み合わせて、以下のように進歩性の有無に関する理由に基づいて検討する。」として、以下「進歩性が否定される方向に働く要因の検討」「進歩性が肯定される方向に働く要因の検討」が示されている。これらの検討は、実質的に日本の審査基準における「論理付け」に等しいと解される。

 また、進歩性の検討に際して、タイを指定した国際出願の審査にあたっては、国際調査報告書(International search report)の結果を活用できることが、以下のように示されている。

 「進歩性を検討する際、調査報告書(search report)の文献のカテゴリー(category)の欄にある記号の文字を参照して検討することができる。“X”であれば、当該文献(Closest prior art)のみを用いて新規性および進歩性が欠けていると判断することができる。なぜならば、その改良点あるいは相違点は、当業者にとって容易に明らかであるためである。“Y”であれば、全く改良がない、または、その改良が当業者にとって容易に明らかであることを示す、少なくとも1件の先行技術文献の技術的特徴と共に、進歩性が無いと検討する。」

3.用語の定義
3-1.当業者

 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「2.進歩性の判断に係る基本的な考え方」でいう「当業者」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の第1章第3部3.実体審査 「3.3.4.4 進歩性 (Inventive step) の審査」

(2) 異なる事項または留意点
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」では、「当業者」については、次のように記載されている。

 「法律に定められる、発明の進歩性の有無を検討する際のその知識または能力を検討基準とする当該技術分野における通常の知識を有する者(person having ordinary skill in the pertinent art)とは、中位あるいは平均の知識(Average skill)または専門知識を有する者である。一般的には、普段からその分野で働いている者のことを指しているが、その者は分野によって異なった知識や専門知識を有するであろう」と記載されている。また、当業者と専門家(Expert)との比較にあたっては、「(当業者は)専門家(expert)レベルに達する必要はない。これは、そのレベルの専門知識を有する者であれば、大半の発明は、容易に明らかな発明であると判断できるからである。」

3-2.技術常識及び技術水準
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「2. 進歩性の判断に係る基本的な考え方」でいう「技術常識及び技術水準」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」には、対応する記載がない。

(2) 異なる事項または留意点
 「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」では、「技術常識及び技術水準」に関して、日本の審査基準のように明示されていない。
 しかし、タイ特許法第6条には、新規性の判断基準として技術水準が規定されており、技術水準には「特許出願日前に国内において他人に広く知られ、又は使用されていた発明」(第1項)および「特許出願日前に国内又は外国において文書又は印刷された刊行物に記載され、展示され、その他公衆に公開された発明」(第2項)が含まれるとされている。
 また、「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」によると、「広く知られ」とは、例えば、販売もしくは頒布された製品等であるとされている(第1章第3部3.実体審査 「3.3.4.3.1 新規性の検討手順」)。

3-3.周知技術及び慣用技術
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第2節「2. 進歩性の判断に係る基本的な考え方」でいう「周知技術及び慣用技術」に対応するタイの「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
「特許及び小特許審査マニュアル(2019年版)」には、対応する記載がない。

(2) 異なる事項または留意点
 「3-2. 技術常識及び技術水準」を参照されたい。

 進歩性の具体的な判断、数値限定、選択発明、その他の留意点については「タイにおける進歩性の審査基準に関する一般的な留意点(後編)」をご覧ください。

ベトナムにおける特許の早期権利化の方法

1.特許の審査期間に関する規定と運用実務
 ベトナムにおける特許出願は、出願日から1か月以内に方式について審査され(ベトナム知的財産法(以下、「知的財産法」という。)第119条第1項)、実体審査の期限は、出願の審査請求が公開日前に行われたときは出願の公開日から,または審査請求が公開日後に行われたときは,出願の審査請求の日から18か月以内とされている(知的財産法第119条第2項a)。しかし、実務的には法律で定められたとおりには進まず、2021年に登録された特許では、出願日から登録日までの平均期間が5.0年とされている※1
※1 「ASEAN 産業財産権データベースから得られる特許および実用新案の統計情報」JETRO 2022年3月 https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/asean/ip/pdf/report_202203_asean.pdf

(1) 特許審査ハイウェイ
 日本国特許庁(以下、「JPO」という。)とベトナム国家知的財産庁(以下、「IP VIET NAM」という。)は、特許審査ハイウェイ試行プログラム(以下、「PPH試行プログラム」という。)を2016年4月1日より実施し、2022年4月1日より、試行期間を3年間延長した。新しい試行期間は2025年3月31日で終了予定となるが、必要に応じて延長される予定である。
 出願人は、日本-ベトナム間のPPH試行プログラムにおける申請要件を満たす日本出願に基づくIP VIET NAMへの特許出願につき、関連する書類の提出を含む所定手続を行うことで早期審査を申請することができる。PPH 試行プログラムを申請する場合には、出願人は、IP VIET NAMに申請様式を提出する。
 なお、2022年4月1日から2023年3月31日までの期間にIP Viet NamとJPOとの間の協力協定に基づき、IP Viet Namで受理されたPPH申請の総数は132件である※2
※2 「【ベトナム】ベトナム、特許審査ハイウェイ(PPH)プログラムによる特許出願の早期審査申請受付に関する報告について」JETRO 2023年4月 https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/asia/2023/vn/20230411.pdf

(2) 早期公開の請求
 前述のとおり、実体審査の期限は、出願の審査請求が公開日前に行われたときは出願の公開日から,または審査請求が公開日後に行われたときは,出願の審査請求の日から18か月以内とされている(知的財産法第119条第2項a)。したがって、特許出願の公開時期を早めることは、早期権利化のための有効な手段の一つである。
 通常、特許出願は、出願日、もしくは優先権を主張している場合は優先日から19か月、または方式審査承認通知日から2か月以内のいずれかのより遅い期日に公開される(知的財産法第110条第2項、科学技術省・省令第01/2007/TT-BKHCN号(以下、「省令」という。)14.2a.i)。
 一方、出願人が所定の手数料を支払って、早期公開請求書を提出すれば、特許出願は、その請求の受領日から2か月以内に公開される(知的財産法第110条第2項、省令14.2.a.iii)。
 よって、出願と同時に早期公開請求と実体審査請求を行うことが、早期権利化に有効である。

 また、ベトナムを指定した国際出願の場合は、早期の国内段階への移行手続と早期公開請求を行うことが、早期権利化に有効である。
 ベトナムを指定した国際出願の処理の開始時点は、優先日から32か月であるが、出願人は、より早い時点での国内段階移行を文書で請求することができる(省令27.7b)。ベトナム国内段階に移行した国際出願は、通常の特許出願に係る手続に従い、方式審査および実体審査を受ける(省令27.7c)。国内段階への移行とともに出願人が所定の手数料を支払って、早期公開請求書を提出すれば、特許出願は、その請求の受領日から2か月以内に公開される(知的財産法第110条第2項、省令14.2.a.iii)。よって、出願人が、ベトナム国内段階への早期の移行手続と早期公開の請求を行うことで、ベトナムを指定した国際出願の早期権利化につながる。
 実務上、国際出願が国際公開される前のような極めて早い段階でベトナム国内段階に移行する場合がある。しかし、前述のとおり、通常はベトナム国内段階に移行した国際出願は優先日から32か月後に方式審査が開始される。国内段階への早期の移行手続と早期公開のための申請書を提出しIP VIET NAMがこれに同意したとしても、国際段階での国際公開がなされていないかぎりベトナムでの方式審査は始まらない。したがって出願人が、国際出願がベトナム国内段階に移行してすぐ方式審査を望む場合は、特許協力条約(以下、「PCT」という。)第21条(2)(b)およびPCTに基づく規則(以下、「PCT規則」という。)第48.4条に基づき、国際出願の早期公開請求を行う必要がある。

(3) 国際出願の審査の早期開始の請求
 国内段階に移行した特許出願の出願人は、PCT第23条(2)に基づいて、早期審査請求を書面で提出し、所定の費用を支払うことで、審査の早期開始を請求することがきる(省令27.7c)。よって、前述のベトナム国内段階への早期の移行手続と早期公開の請求と合わせて請求すれば、早期権利化の手段となる。
 この省令27.7cの規定は、出願人が書面で請求し所定の費用を払えば、所定の期限の前に手続を行うようにIP VIET NAMに請求できると規定する省令9.3によって裏付けられていると解釈できるが、同規定が定めるとおり、IP VIET NAMは具体的な理由を示した通知を行えば、この請求を拒絶できることに留意が必要である。

(4) 外国対応出願の審査結果の活用
 IP VIET NAMは、特許出願の審査をするとき、特許出願の内容について外国の特許庁の審査結果を参考にすることができる(知的財産法第114条(3))。また、科学技術大臣は、この規定が定める特許出願の審査結果の使用について、その詳細を定める(知的財産法第114条(4))※3。また、従前より、IP VIET NAMが実体審査を行う際、対応する外国出願の引例と審査結果から得られる情報を活用できるとされていた(省令15.2)。
※3 知的財産法第114条(3)は、2023年1月1日の施行であるが、科学技術大臣が定める詳細については、現時点で未公表である。

 実務的には、IP VIET NAMの審査官は、特許性を判断する際、カナダ、アメリカ、日本、ロシア、英国、スウェーデン、オーストリア、スペイン、韓国、中国、ドイツ、EPO(欧州特許庁)、EAPO(ユーラシア特許庁)といった国・地域、なかでもEPO、日本、米国、中国、韓国における対応する出願の審査結果をしばしば参考にしている。

 特許査定が下される多くのケースでは、ベトナムでの実体審査において対応する外国特許と同様となるようにクレームと発明の詳細な説明を補正するよう命じる指令書が発行されている。したがって、外国とりわけ日本、EPO、米国で対応する特許が付与されている場合、出願人は特許性を確保するために対応する外国出願にあわせて自発的にクレームを補正するほうがよい。通常、対応する外国特許に準拠するための基本条件は、補正された請求範囲が先の出願の保護請求の範囲を超えていないことである。

(5) ASEAN特許審査協力(ASPEC)プログラム※4
 ASPECは、参加国の特許庁間で特許審査および審査結果を共有して審査を早期化するとともに、審査の質を向上させる制度であり、2009年6月15日に運用が開始された。
 実務的に、ASPECは審査早期化の非常に有効なツールとして活用できる。これまでのところASPECを利用した特許出願の件数はあまり多くないが、ASPECがもたらす審査早期化というメリットは否定できない。通常の実体審査では、1回目のオフィスアクションが出されるまでには、少なくとも審査開始から18か月程度を要する。しかし、ASPECを利用した初の事案では、実体審査に要したのはわずか2か月程度だった。
※4 ASPECの概要や申請の要件については、下の関連記事に解説がなされているので参照されたい。
「ASEAN特許審査協力(ASPEC)プログラム」https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/24171/

(6) 審査官との面接
 審査官とベトナムの弁理士の間で審査を円滑・迅速に進めるための面接が行われる場合がある。この面接は、電話、あるいは対面での面談で行うことができ、審査官と弁理士は、当該出願が特許性を獲得するための有効な手段(例えば、対応する特許にあわせて補正した場合に特許査定を得られる可能性など)を協議する。

2.特許の早期権利化を実現するベストプラクティス
 特許を早期権利化するために取り得る手段を紹介してきたが、最善の方法は、出願内容を対応する外国特許に沿ったものにするとともに、特許審査ハイウェイ、またはASPECの申請を組み合わせることである。経験上も、対応する外国特許に合わせることで特許性が満たされて特許付与の条件が整うと、ASPEC制度等の申請により、ASPEC等を申請していない出願よりも、当該出願の審査を早期化することができる。