ウガンダにおける知的財産保護の現状
【詳細】
1.知的所有権を保護する法律および加盟条約
ウガンダで知的所有権を保護する法律は以下の通りである。
(1)2014年工業所有権法
(2)2010年商標法
(3)2006年著作権および著作隣接権に関する法律
(4)2009年企業秘密保護法
また、ウガンダは知的所有権に関するいくつかの国際条約に加盟している。これらには以下がある。
(1)工業所有権の保護に関するパリ条約(1965年6月14日)
(2)特許協力条約(1995年2月9日)
(3)世界貿易機関(WTO)を設立するマラケシュ協定(1995年1月1日)
(4)世界貿易機関(WTO)-知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)(1995年1月1日)
(5)アフリカ広域知的財産機関(ARIPO)の創設に関するルサカ協定(1978年8月8日)
(6)アフリカ広域知的財産機関(ARIPO)の枠組み内の商標に関するバンジュール議定書(2000年11月21日)
(7)アフリカ広域知的財産機関(ARIPO)の枠組内の特許および意匠に関するハラレ議定書(1984年4月25日)
2.商標
商標は、ウガンダにおける知的所有権という点で明らかに重要な役割を果たしている。これは、2015年の特許出願件数が10件であるのに対し、商標登録出願件数は2,792件にのぼることから明らかである。
商標は、商品とサービスの両方について登録することができ、国際商標分類が採用されている。保護を求める分類ごとに個別の出願を行う必要がある。優先権を主張することができ、代理人を使う際には委任状(公証は不要)が必要である。
ウガンダにおける商標法は、英国商標法に準じて定められている規定と、ウガンダでの独自の規定が混在する。以下のような特徴は、英国商標法の影響を受けている点である。
(a)登録簿はパートAとパートBに区分され、パートBは識別力の低い商標に充てられている。
(b)誠実な同時使用がなされている場合、先行商標と抵触する商標の登録が可能である。
(c)権利の部分放棄を課すことができる。
(d)同一または類似する商標の登録を相互に「連合させる」規定がある。-連合商標制度 (連合商標制度:類似関係にある商標を連合商標とし、分離移転を制限する制度。日本においては、平成8年に廃止された。)
(e)「防護」商標登録の規定がある。
(f)存続期間は最初は7年間で、更新後は10年間である。
(g)不使用取消審判を回避するために商標を使用しなければならない期限は3年間である。
一方、以下の点が、ウガンダで新たに規定された。
(a)電子出願が規定されている。
(b)識別力は、生来的識別力であれ使用による識別力であれ、識別能力を有する「標識」によって定義される。
(c)形状が商品自体の性質から生じる場合、技術的成果を得るために必要な場合、または商品に本質的価値を与える場合は、形状を登録することはできない。
(d)真正商品(並行輸入)の場合に商標権者が訴訟を提起することが制限される。
(e)商標法は、商標の偽造などの行為を犯罪と規定する。
(f)裁判所は、すべての偽造品を没収および廃棄する命令を下すことができ、偽造品と疑われる品は、商標権者による申請に基づいて税関当局が押収することができる。
3.著作権
著作権および著作隣接権に関する法律は、文学、科学、芸術作品、録音物、フィルム、コンピュータープログラム、電子データベース、伝統的フォークロア(「民間伝承」や「民俗文化財」等と呼ばれ、ある社会の構成員が共有する文化的資産である伝統的文化表現)および知識などの広範な作品について著作権の保護を規定している。作品は物質的形態に変換されなければならないという事実から、創作性は、独自性というより技能と労力を投入することにより生み出されるものであり、著作権の要件である。解説、批評、ニュース報道などについては、公正な慣行において、例外が設けられている。
ウガンダでは著作権登録は可能だが、必須事項でない。しかし、著作権登録は著作権の推定的(一応の)証拠と見なされる。
著作権の存続期間は、著作者の死後50年間までである。著作者は通常最初の著作権者であるが、雇用関係等の要件を満たしている場合には、この限りではない。著作権侵害については民事訴訟および刑事訴訟が可能である。
4.特許
施行規則等の下級法規は整備が進められていないが、2014年工業所有権法において、特許による保護が規定されている。その主な特徴は以下の通りである。
(1)PCT国際段階および国内段階の出願が認められている。
(2)同法は特許が付与されないものを規定しており、一般的な不特許事由の他、天然物から精製、合成、または他の方法で抽出された天然物質(ただし、かかる天然物質を元の環境から抽出するプロセスはこの限りでない) 、人体およびすべての人体要素の全部または部分も、特許の対象とならないことが規定されている。
(3)医薬品および試験データは、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)の施行を担当する理事会により採択された通り、2033年1月1日まで特許保護から除外される。
(4)明細書には、ウガンダ領土内で採取され、発明の完成に直接または間接的に使用された遺伝資源または生物資源について、ならびに、伝統的知識に関しては、遺伝資源または生物資源に関連するか否かにかかわらず、伝統的知識の創作者からの事前の情報に基づく同意なしに、発明の完成に直接または間接的に使用される場合には、その出所を明確に示さなければならない。
(5)現在、特許の存続期間は出願の日から20年間で、期間の延長はできない。
5.実用新案
2014年工業所有権法が適用される。その主な特徴は以下の通りである。
(1)実用新案は、新規性と産業上の利用可能性を有する小発明と定義される。
(2)特許出願は、登録または拒絶の前のいつでも実用新案に変更することができ、逆も同様である。
(3)実用新案の保護期間は付与日から10年間である。
6.意匠
2014年工業所有権法が適用される。その主な特徴は以下の通りである。
(1)同法は、国の意匠保護制度を導入し、英国の意匠登録が自動的にウガンダに拡張される制度を廃止するものである。同法の施行直前まで、英国で登録されたいかなる意匠の登録所有者も旧英国意匠(保護)法に基づいてウガンダにおいて権利を享受しており、かかる権利は英国法に基づいてそれらが存続しなくなるまで継続するものとなっていた。
(2)「意匠(industrial design)」とは、実用品の側面で、装飾性または審美性を有し、物品の形状もしくは表面のような三次元的特徴、または模様、線、色彩などの二次元的特徴から成るものを意味する。
(3)意匠出願は、国際意匠分類で同じ分類に属する、または同じ物品の組物または構成物に属する2つ以上の意匠について行うことができる。
(4)保護期間は出願から5年間であり、さらに2回にわたってそれぞれ5年間の延長が可能である。
7.テクノベーション
2014年工業所有権法の第14部に「テクノベーション」を規定している。「テクノベーション」とは、技術分野における特定の問題に対する解決方法であり、ウガンダにおける企業の従業員が企業による使用のために提案したもので、当該企業の活動に関連しているが、提案日の時点で当該企業により使用されていなかった、または使用を積極的に検討されていなかったものを意味する(2014年工業所有権法第81条)。
従業者は企業に対して、自らのなしたテクノベーションに対して、企業からテクノベーションの証明書の発行を申請することができ(2014年工業所有権法第83条)、企業はテクノベーションの証明書を発行する場合、そのテクノベーションを以後に使用するか否かの意思表示を同時に通知しなければならず(2014年工業所有権法第85条)、使用を通知する場合には、テクノベーションの提案者は、報奨を受け取る権利を有する(2014年工業所有権法第86条)。
8.技術移転
投資法(Cap 92)は、技術移転取決めの登録を規制および規定している。同法は、とりわけ、外国の技術または専門知識の移転契約は契約終了後も譲受人が当該専門知識の使用を継続することを許可するものとし、技術移転契約は競合技術の使用を制限することはできないと規定している。
実際には技術移転契約を登録する投資家は非常に少なく、同法は無効とされるものと考えられている。
9.企業秘密
企業秘密保護法は、企業にも政府機関にも適用される。同法は、秘密情報に関する慣習法に影響を及ぼさず、他の知的財産を損なうものでもない。同法は「企業秘密」を、商業価値を有し、所有者が内密にしておこうとする情報と定義している。
たとえば施設への無許可の立入、詐欺的不実告知、盗聴、電子的手段、契約違反として情報が明らかにされた場合は、侵害があるとされる。しかし、当該情報が独立的にまたはリバースエンジニアリングによって明らかにされた場合は、侵害はないとされる。情報の所有者は侵害について訴訟を提起することができ、裁判所は差止命令、損害賠償、利益計算、懲罰的損害賠償を認めることができる。
10.ウガンダの裁判所
ウガンダにおいて、知的所有権に関わる侵害訴訟はすべて、高等裁判所(High Court of Uganda)で審理を行う(2014年工業所有権法第2条)。控訴は控訴裁判所に提起することができ、上告は最高裁判所に提起することができる。
ブルネイにおける著作権関連法規の概要および運用実態
【詳細】
1. 適用法および保護対象等
ブルネイにおいても、多くの国と同様、独創的な著作物が保護されるためには登録の必要はなく、創作と同時に著作権が発生する。
著作権について規定するブルネイの法律は、「2006年著作権令」(”Copyright Order, 2006”以下「著作権令」)である。著作権令第3条(1)項は、保護される著作物として以下の作品を列挙している。
○独創的な言語著作物、演劇著作物、音楽著作物もしくは美術の著作物
○録音物、映画、放送もしくは有線放送の番組
○出版物の組版面
著作権の保護期間は、基本的に著作者が死亡した暦年の翌年1月1日から50年経過後、録音物、映画、有線放送番組の場合には著作物の制作もしくは公開がなされた暦年の翌年の1月1日から50年経過後に満了する(著作権令第14条~17条)。
2.著作権の権利行使
著作権は自動的に発生する(登録等を必要としない)権利であり、著作権の権利行使時にも登録は要求されない。著作権者が他者による著作権侵害を発見した場合、被疑侵害者に対して、民事訴訟または刑事訴訟を提起することができる。
著作権侵害に関する民事訴訟において、著作権者は損害賠償、差止命令などの救済を求めることができる。他に、侵害品の引渡や差押などの裁判所命令を得ることも可能である。
著作権令は、以下の行為を著作権者の同意なしに行った場合、著作権侵害が発生すると規定している(著作権令第18条(1)項)。
○著作物の複製
○著作物の複製を公衆へ提供する行為
○著作物の上演、上映または演奏の公開
○著作物の放送(有線放送サービスによる放送を含む)
○著作物の翻案制作もしくは翻案に関わる何らかの行為の実行
○著作物を公衆へ伝達する行為
上記行為に加えて、著作権令では「二次的侵害」とみなされる行為について、以下行為を規定している(著作権令第26条~30条)。
○著作権者の許諾なしに、侵害製品であることを知っているか、侵害製品であると信ずべき理由がある物品を輸入すること(自宅での私的な使用を除く)
○著作権者の許諾なしに、侵害製品であることを知っているか、侵害製品であると信ずべき理由がある物品について以下の行為をなすこと
- 物品の占有、販売、貸出もしくは賃貸、販売もしくは賃貸のための申出、もしくは展示を業として行うこと
- 物品の公の展示もしくは頒布を業として行うこと
- 業としてではないが著作権者に不利な影響を及ぼす程度に物品を頒布すること
- 侵害製品を製作するための手段を提供すること
- 侵害行為のために施設の使用を許可すること
- 侵害行為のための装置を提供すること
なお、著作物の使用が公正使用(fair dealing)に該当する場合、著作物の使用に関して著作権者からの事前許可は不要である。公正使用には、研究目的もしくは私的学習、批評もしくは評論、付随的利用、教育・試験その他教育機関での使用などが含まれている。(著作権令第30条以下)
3. 刑事上の犯罪
2013年に著作権令が改正され、著作権侵害に関する刑事責任が強化された。ブルネイ著作権法に基づく主な刑事上の犯罪には、以下の行為が含まれる(第204条~第207条)。
○販売もしくは賃貸を目的とした著作権侵害製品の製作
○著作権侵害製品の占有または保管もしくは管理
○著作権侵害製品の輸入(自宅での私的な使用を除く)
○著作物の公衆への伝達
○著作権者に不利な影響を及ぼす程度に侵害製品を頒布すること
○以下の行為を業として行うこと
- 著作権侵害製品の販売もしくは賃貸
- 著作権侵害製品の販売もしくは賃貸のための申し出もしくは展示
- 著作権侵害製品の公開展示
- 著作権侵害製品の頒布
上記侵害行為による犯罪が成立するためには、対象製品が著作権を侵害していることを侵害者が知っていた、またはそう信ずべき理由があったことを立証しなければならない。
上記犯罪に対する刑罰は、侵害製品1点につき10,000ブルネイドル以下の罰金および/または5年以下の懲役である。再犯または累犯の場合、刑罰は侵害製品1点につき20,000ブルネイドル以下の罰金および/または10年以下の懲役となる。
著作権令に基づき、ある者が同一の著作権侵害製品を5点以上占有、保管もしくは管理している場合、それに反する証拠がない限り、それら著作権侵害製品は自宅での私的な使用以外の目的および/または業務上の使用に供されるものと推定される。
4. 水際取締
著作権者は、著作権侵害製品が税関管理下にあるか、または税関の管理下になった時点で、それらを輸入禁制品として処理するよう税関長に申請できる。申請は最長5年間にわたって有効に存続する。
上記申立が税関長宛に提出された後、申立に記載されていた製品が輸入され、税関の管理下に置かれた場合、税関職員は製品を調査し、それらが著作権侵害製品であるか否かを判定する。製品が侵害製品であると税関職員が判定した場合、製品は税関により拘留される。
5. ブルネイにおける企業活動
ブルネイで企業活動を行う場合、第三者による侵害行為があり得ることに留意しなければならない。ブルネイで侵害製品が製造されるのではなく、近隣諸国から侵害品が輸入されるケースがしばしば見受けられる。警察官や税関職員は、侵害品の差押えや侵害者の逮捕といった大きな権限を有しているが、彼らの主体的な侵害品調査は稀であり、そのような調査は知的財産権利者が自発的に行うこと期待していると思われる。そのため、特に製造業者に関していえば、著作権保有者が、市場で侵害品を定期的にチェックし、できる限り早期に必要な対策をとることが望ましい。
南アフリカにおける特許出願の補正の制限
【詳細】
1.関連条項
南アフリカ特許出願において、特許明細書の補正(amendment)および訂正(correction)は、特許の存続期間中いつでも自発的に行うことができる。南アフリカ特許法(以下、「特許法」)の第50条および第51条は、係属中の出願または付与後の特許に対して可能な補正および訂正(以下、広義の意味で「補正」として取り扱う)について規定している。
1-1.南アフリカ特許法第50条(1)項
特許法第50条(1)項(a)は、あらゆる出願書類における誤記は、出願係属中または特許付与後に訂正可能なことを規定している。裁判所の判断では、記載または複写する際に、故意ではなく不注意により生じた誤りは、誤記であるとしている。
特許法第50条(1)項(b)は、特許法に明確な規定のないあらゆる文書の補正について定めている。この条項では、例えば出願の提出時に省かれてしまった発明者の名前、南アフリカ出願時には入手できなかった二番目もしくはそれ以降の優先権基礎出願の詳細情報が含まれており、補正によって追加することができる。
1-2.南アフリカ特許法第51条
特許法第51条は、特許出願の係属中および特許付与後の双方における、特許明細書の補正、または誤記以外の誤りの訂正(広義の補正)について規定している。出願係属中、明細書およびクレームは、下記を条件として、補正することができる。
(a)新規事項を追加するものではないこと。
(b)補正後の各クレームが、補正前の明細書に含まれていた事項に適正に基づいていること。
特許が付与された後の明細書およびクレームは、上記(a)および(b)に加え、下記(c)が満たされることを条件として、補正することができる。
(c)補正後の各クレームが、補正前の明細書に含まれていたクレームの範囲内に完全に含まれていること。
また、付与された特許に対する補正の申請は公告され、その後二ヶ月間が異議申立期間となる。一方、出願係属中の補正申請については公告されることはない。
2.新規事項の追加
補正を通して新規事項を追加することはできないが、特許法第51条(8)項は、出願当初の明細書に記載された事項と適正に関連づけられる新規事項は、その出願係属中であれば、補足開示(出願時の明細書およびクレームを補足するために、発明の更なる説明を加えた書面)により提出することができると規定している。なお、特許の付与後は、補足開示を提出することはできない。補足開示にのみ記載される事項については、その新規性判断の基準日は当該補足開示の提出日として取り扱われる。すなわち、あるクレームの根拠となる記載が、補足開示にしかない場合、そのクレームの新規性は、補足開示の提出日を基準として判断されることとなる。
3.補正の手続
特許法第51条の要件として、補正、または誤記以外の誤りの訂正の申請は、その補正または訂正の「十分な理由」を明記しなければならない。最高裁判所の最近の判決によれば、第三者および登録官に、その補正または訂正の理由が明らかになるように、補正の申請において十分な情報を提示しなければならない。
特許明細書の補正の申請には、下記(1)~(3)がなければならない。
(1)特許代理人により署名され、補正の十分な理由が明記された所定の申請書式。
(2)明細書のうち補正を要求するページのコピーであって、必要な補正を赤で示したコピー。
(3)補正が組み込まれた、補正ページの清書または再入力された写し。
4.無効なクレームを含む特許の扱い
南アフリカ特許のいずれかのクレームに無効理由が含まれる場合、その無効理由を含むクレームを補正して無効理由が解消されるまでは、その特許権全体を無効かつ権利行使不可と取り扱われる。特許権者が補正を行う場合でも、特許法第51条(10)項に基づき、提出された補正が、特許法第51条の規定に反する明細書の補正にあたると特許庁長官が判断する場合、その補正を無効とすることができる。したがって、このような場合、特許権者は、補正が適法に受け入れられるまで無効とされる可能性のある特許を有することになる。明細書の補正がなされた場合、その補正の結果、新たに侵害と認められる行為が生じた際には、特許庁長官は自己の裁量で、補正が行われる前の当該行為に関して損害賠償の認定を拒否することができる。さらに、その裁量による判断を下すにあたり、明細書の作成過程とこれまで補正がなされなかったことに関して特許権者の対応が適切であったか否かを考慮ことができる。
5.自発補正のすすめ
南アフリカの特許出願制度には、特許庁による先行例調査、実体審査、付与前異議申立はない。したがって方式審査で要件が満たされると、その特許出願はその時点で南アフリカ特許庁に係属している明細書およびクレームの通り自動的に特許付与段階へ進むことになる。それゆえ南アフリカにおける特許出願人は、他の審査主義国において、対応する出願の手続中に知った先行技術を考慮して、南アフリカ出願の明細書またはクレームを補正する必要がある。
特許存続期間中のあらゆる時点で、第三者は新規性の欠如および自明性を含む様々な理由により、特許の取消を特許庁長官に請求することができる。これに関して、南アフリカ特許法は英国特許法およびヨーロッパ特許法と同様、公知(文献公知を含む)、公用の事実に基づく新規性の喪失の基準として、特に南アフリカ国内外を問わないとする絶対新規性要件を採用している。それゆえ出願人が他の審査主義国において、対応する出願をしており、引用された先行技術による新規性欠如の結果として当該外国出願のクレーム補正が必要になった場合には、かかる新規性欠如を避けるために南アフリカ出願のクレームも補正する必要がある。南アフリカにおける新規性要件を満たすには、発明は当該発明の優先日前の時点における技術水準の一部を構成するか否かで判断され、新規性を判断する目的上、このような技術水準としては、当該発明の優先日の時点で未公開の南アフリカ出願に開示される事項も含まれる。
したがって、ある出願が、特許性を備えた1つ以上のクレームを含む一方、他のクレームは無効になる可能性がある場合には、これらのクレームの削除や補正(可能な場合)、または分割出願を提出することが望ましい。分割出願は、親出願の特許査定より以前に提出しなければならない。南アフリカ出願では通常、方式要件が満たされている場合、出願からおよそ9~12か月ほどで特許査定がおりる。
6.まとめ
南アフリカ特許出願において、自発的補正は、係属中の特許出願または付与された特許に対して行うことができるが、特許の付与後に行われる補正には、より厳しい制限が課せられる。
南アフリカ特許において、一つの無効クレームはその特許全体を無効にし、補正によって無効理由が解消されるまで権利行使できない。
第三者は特許存続期間中のあらゆる時点で、特許の取消を特許庁長官に請求することができる。
南アフリカでは、先行技術調査、実体審査、ならびに付与前異議申立制度はない。したがって方式審査を通過すると、その特許出願は特許査定がおりる。
【留意事項】
南アフリカ特許は特許の存続期間中いつでも補正できるものの、付与後補正は付与前補正より厳しい制限が課せられるので、瑕疵により特許が無効とされないために、また、既に認識している関連先行技術を回避して特許性を担保するため、特許付与前に補正することが望ましい。
トルコにおける特許公報の調べ方
【詳細】
(1)トルコ特許庁(TURKISH PATENT INSTITUTE)のウェブサイトhttp://www.tpe.gov.tr/TurkPatentEnstitusu/?lang=en(英語版)にアクセスすると以下の画面が表示されるので、画面左中央の「Online Services」の「Patent Search」をクリックします(囲い1)。

トルコ特許庁(TURKISH PATENT INSTITUTE)のウェブサイト(英語版)
(2)「Online Services」の「Patent Search」をクリックすると特許検索の画面が表示されます。検索項目は、キーワード(発明の名称と抄録)、公報(Bulletin)番号、出願番号、EPC出願番号、EPC公開番号、PCT出願番号、PCT公開番号、優先権番号、公開日、出願人、発明者、代理人、国際特許分類(IPC)となっています(囲い2)。
項目間のAND検索はできますが、OR検索はできません。また、キーワード検索はトルコ語のみとなっています。なお、トルコ語はアルファベットを使用するため、出願人名は、英文表記による検索が可能です。
検索を実行するためには検索画面の最下部に都度に表示されるワンタイムパスワードを入力する必要があります(囲い3)。
【検索項目】
- Title/Abstract (トルコ語キーワードによる発明の名称、抄録検索)
- Bulletin Number (公報番号)
- Application Number (出願番号)
- EPC Application Number (EPC出願番号)
- EPC Publication Number (EPC公開番号)
- PCT Application Number (PCT出願番号)
- PCT Publication Number (PCT公開番号)
- Priority Number (優先権番号)
- Publication Date (公開日)
- Applicant (出願人)
- Inventor (発明者)
- Attorney (代理人)
- IPC Class (国際特許分類)

検索画面
(3)結果一覧にはヒットしたレコードの出願番号と発明の名称が表示されます。また、ヒット件数が右上部”Record Count”に表示されます。印刷用アイコンが右上に用意されています。リスト左端のフォルダアイコン(囲い4)をクリックすると詳細情報が表示されます。

検索結果画面
(4)検索結果からは公報単位の書誌情報、抄録に加え、「File Status」で審査経過情報や年金納付状況なども確認することができます(囲い5)。また、「Documents」から特許公報をPDF形式で取得することも可能です(囲い6)。
詳細表示で表示される項目は以下の通りです。
- Application Information(出願書誌情報)
- 「Application No(出願番号)」: (フォーマットは(出願年)/5ケタの番号、 例:2012/13838)
- 「Registration No(1)(登録番号1)」: (フォーマットは(登録年)-G-6ケタの番号、 例:2012-G-394004)
- 「Registration No(2)(登録番号2)」: 上記登録番号1とは別に出願番号と同じ番号が登録番号として採用される(フォーマットは(出願年)+ 5ケタの番号、 例:2012 13838)
- 「Application Date(出願日)」:
- 「Registration Date(登録日)」:
- 「Granted Date(特許付与日)」:
- 「Type of Application(出願種別)」:(PCT/EPC など)
- 「Type of Protection(権利種別)」:(Patentなど)
- 「Publication Date(公報発行日)」:
(PCTからトルコ国内移行の場合)
- 「PCT Application No(国際出願番号)」:
- 「PCT Publication No(国際公開番号)」:
- 「PCT Publication Date(国際公開日)」:
(欧州特許のトルコ国内移行の場合)
- 「EPC Application No(EP出願番号)」:
- 「EPC Publication No(EP登録番号)」:
- 「EPC Publication Date(EP公報発行日)」:
- Applicant(s)(出願人)
- Inventor(s)(発明者)
- Attorney(代理人)
- Classification Code(国際特許分類)
- Title of Invention(発明の名称)
- Abstract of Invention(発明の要約)

詳細表示画面(書誌事項、抄録)
(6)「File Status」で審査経過情報(囲い7)や年金納付情報(囲い8)に表示される主な項目は以下のとおりです。
審査経過情報は、その出願における手続が時系列で表示されます。手続き内容についてはトルコ語のみで表示されます。また、このページから審査包袋にアクセスできるわけではありません。
年金納付情報については、納付年次、納付日および納付金額を確認することができます。(囲い8)

詳細画面(経過情報)

特許公報のPDF表示例
【留意事項】
トルコ特許庁の提供するデータベースには英語版の表示がありますが、キーワード検索で使用可能なワードはトルコ語のみである点には注意が必要です。また、データベースには、収録もれの可能性が皆無とはいえず、たとえ収録されていても、名義の表記ゆれや用語の不統一、通常とは異なる特許分類が付与されているなどの理由から、意図する検索ではヒットしない場合もあります。トルコにおいて問題になる特許がないか否かの判断は、特許庁データベースの検索結果のみに頼らず、他国での特許調査の結果を参考にしたり、専門家に相談して調査を実施するなどして、複数の観点から判断することが望ましいと考えられます。
ブルネイにおける商標権に基づく権利行使の留意点
【詳細及び留意点】
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ニュージーランドにおける分割出願に関する留意事項
【詳細】
1.特許法改正とその適用
ニュージーランドでは2013年に特許法が改正され(2013年特許法。以下、「新法」と称する)、2014年9月13日に以降に出願された出願および国内移行されたPCT出願に適用される。2014年9月12日以前に出願された出願および国内移行されたPCT出願には、1953年に制定された特許法(1953年特許法。以下、「旧法」と称する)が適用される。
分割出願については、親出願に新法が適用されている場合に新法が適用され、親出願に旧法が適用されている場合に旧法が適用される。(新法第258条)
2.新法下の分割出願
2-1.時期的要件
新法下では、分割出願は、親出願が認可(*)される前であればいつでも行うことができる。(新法第34条) ただし、以下の審査請求期限に注意を要する。
(*)ニュージーランドでは、出願が特許法で要求される要件を全て満足すると認可(アクセプタンス)され、認可通知が発行される。認可通知発行後、その旨が官報に公告され、公告日から3か月が異議申立て期間となる。この期間内に異議申立てがない場合、または異議申立てがあった場合でも異議理由なしの決定がされた場合には、特許が付与される。(旧法下でも同様)
ニュージーランドでは、2013年特許法改正により審査請求制度が導入された。(新法第64条)分割出願の審査請求期限は、親出願の出願日から5年と定められている。(2014年特許規則(以下、「新法特許規則」と称する)71(a)) 審査請求制度の導入により、分出願が可能な期間は、親出願の出願日から5年に制限されることとなった。審査請求期間が出願日より5年と定められているため、この期間内に審査請求がなされない場合には、出願は放棄されたものとみなされるからである。
分割出願の出願日は親出願の出願日まで遡る。(新法第34条(3))
2-2.実体的要件
分割出願は、親出願の出願時に開示されていた内容に関するものでなければならない。(新法特許法第34条(1)) 分割出願が、親出願に開示されない内容を含む場合、出願日は親出願の出願日まで遡らず、実際に分割出願が出願された日となる。
分割出願と親出願とは同じ内容のクレームを含んではならない。(新法特許規則52(3))分割出願が認可されるためには分割出願のクレームが親出願のクレームとは異なる必要があり、同様に、親出願が認可されるためには親出願のクレームが分割出願のクレームと異なっている必要がある。
2-3.公開
公開済みの親出願に基づく分割出願がなされた場合、その分割出願は公開される。(新法特許第77条)
3.旧法下の分割出願
3-1.時期的要件
旧法下では、分割出願は親出願が認可される前であればいつでも行うことができる。(1954年特許規則(以下、「旧法特許規則」と称する)23(1))
分割出願の出願日は親出願の出願日まで遡る。(旧法特許規則23(1))
3-2.実体的要件
分割出願は、親出願に開示される内容に関するものでなければならない。分割出願が、親出願に開示されない内容を含む場合、出願日は親出願の出願日まで遡らず、実際に分割出願が出願された日となる。
分割出願と親出願とは同じ内容のクレームを含んではならない。一方の出願のクレームを他方の出願のクレームとは異なるように補正することが要求される。(旧法特許規則の規則23(2))
3-3.公開
旧法下では出願公開制度はなく、旧法が適用される分割出願は特許付与されるまで公開されない。
4.認可期間の延長のための分割出願の利用
旧法下では、親出願が認可される前であればいつでも分割出願を行うことができる。しかも、分割出願の期限はその直接の親出願が認可前であるかどうかで決まる。したがって、分割出願から分割出願を繰り返し行うことにより、全て同じ出願日(最初の親出願の出願日)が与えられた一連の分割出願を作り出すことができる。また、親出願の内容全体を引き継いだ分割出願を行った後で親出願を放棄することにより、出願が認可されるのが保留され、認可されるまでの期間(**)を実質的に延ばすことができる。
親出願の内容全体を引き継いだ分割出願を提出した後で親出願を放棄するという手法は新法下でも可能であるが、分割出願の審査請求期限が親出願の出願日から5年と定められている以上、この5年を経過している場合には、分割出願を行うことにより認可されるまでの期間を更に延ばすことはできない。
(**)認可期間(アクセプタンス期間)
ニュージーランドでは出願日から一定の期間内に出願が認可される必要がある。この一定の期間は、旧法下では拒絶理由通知の発行から15か月であり、新法下では拒絶理由通知の発行から12か月である。
オーストラリアにおける特許の補正の制限
【詳細】
1.2013年4月15日(改正特許法の施行日)より前に審査請求された出願あるいは特許に対する補正の制限
1-1.補正全般
特許出願後、特許または特許出願の明細書をいつでも補正することができる。
2013年4月15日より前に審査請求された出願に対しては、補正制限が比較的緩やかな旧オーストラリア特許法(以下、「旧特許法」と記す)が適用される。誤記や明らかな誤りを訂正する場合を除き、補正に対する主な要件は、「補正後の明細書が出願当初の明細書に実質的に開示されていない事項をクレームすることになるような補正は認められない」という点のみである。
そのため、追加の実施例や新たな実験結果といった、クレーム発明を支持する新たな記載を明細書に追加することができる。尚、補正は、クレームが明瞭かつ簡潔であることや、明細書に開示された事項により裏付けられていなければならない、といった明細書の要件も満足する必要がある。
1-2.許可(Acceptance)後の補正
旧特許法下では、出願の許可(Acceptance)後であっても(または特許付与後であっても)、明細書にクレームを支持する記載を追加する補正を行うことができる。しかし、誤記や明らかな誤りを訂正する場合を除き、許可されたクレームの範囲を拡大する補正は認められない。この場合も、クレームが明瞭かつ簡潔であること、および明細書に開示された事項により裏付けられていなければならない、といった明細書の要件を満たす必要がある(旧特許法第40条(2)および第40条(3))。
以上を踏まえて、実務上は、出願後直ちに許可される可能性を回避し許可前のより緩やかな規定に基づき明細書を補正する機会を確保するために、出願時に「許可の延期(postponement of acceptance)」を申請しておくことが推奨される。
2.2013年4月15日(改正特許法の施行日)以降に審査請求された出願あるいは特許に対する補正の制限
2-1.補正全般
2013年4月15日以降に審査請求された出願に対しては、補正をより厳しく制限する改正特許法が適用される。具体的には、出願当初の明細書に開示された内容を超えるような、新規事項を明細書に追加する補正は禁じられる。この改正特許法により、補正実務は他の主要国とほぼ同じになった。
より具体的には、誤記や明らかな誤りを訂正する場合を除き、明細書の補正は、補正後の明細書が以下の文書において開示された内容を超える事項をクレームし又は開示する場合、認められない(改正特許法第102条)。
(1)出願当初の明細書
(2)その他の所定書類(あれば)
上記「その他の所定書類」には、明細書とともに提出された要約書、および国際段階で許容される所定の補正内容および訂正内容(PCT出願のオーストラリア国内段階移行出願の場合)が含まれる。また、補正は、クレームが明瞭かつ簡潔であること、および明細書に開示された事項により裏付けられていなければならない、といった明細書の要件を満足する必要がある。
2-2.許可(Acceptance)後の補正
許可(Acceptance)後の補正については、より厳しく制限され、誤記や明らかな誤りを訂正する場合を除き、許可されたクレームの範囲を拡大する補正は認められない。この場合も、クレームが明瞭かつ簡潔であること、および明細書に開示された事項により裏付けられていなければならない、といった明細書の要件を満たす必要がある。
以上を踏まえて、実務上は、出願後直ちに許可される可能性を回避し許可前のより緩やかな規定に基づき明細書を補正する機会を確保するために、出願時に「許可の延期(postponement of acceptance)」を申請しておくことが推奨される。
3.追加の考察
特許の有効性の争点を含む訴訟が行われている場合、明細書の補正は裁判所に申し立てなければならない。訴訟の開始前に特許権者が有効性の懸念について認識していた場合、裁判所は補正を却下することができる。このため、対応外国出願の審査内容が、オーストラリア特許クレームの有効性について問題がある可能性がある場合、早期に補正を行うよう配慮すべきである。
4.補正の方法
補正は、自発的な補正として、もしくは審査報告書に対する応答として行うことができる。特許出願の種類によって、自発補正可能な時期が異なる。標準特許出願については、(出願が失効していないことを条件として)出願後、特許付与後であってもいつでも補正を行うことができる。イノベーション特許出願については、特許付与後いつでも補正を行うことができる。
オーストラリアにおける商標ライセンス契約に関する留意点
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マダガスカルにおける知的財産保護の現状
【詳細】
マダガスカルにおける知的財産権の取扱いについては、主に以下の法律に規定されている。
(1)産業財産保護に関する1989年7月31日付の法律第89-019号 (Ordinance No.89-019 Establishing Arrangements for the Protection of Industrial Property in Madagascar、以下、「産業財産権法」という)。この法律は、特許、商標、意匠、商号の保護、および不正競争について規定するものである。
(2)文学的および芸術的財産権に関する1995年9月18日付の法律第94-036号(Law No. 94-036 on Literary and Artistic Property、以下、「著作権法」という)。この法律は著作権を規定するものである。
また、マダガスカルは、以下に挙げる知的財産権に関する国際条約に加盟している。
(a)特許協力条約(1978年1月24日)
(b)工業所有権の保護に関するパリ条約(1963年12月21日)
(c)世界知的所有権機関(WIPO)(1989年12月22日)
(d)標章の国際登録に関するマドリッド協定議定書(2008年4月28日)
(e)世界貿易機関(WTO)-知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)(1995年1月1日)
1.特許
マダガスカルへの外国からの出願についてはパリルートおよびPCTルートによるマダガスカルへの国内移行が可能である。過去に出願された特許出願(原出願)に係る改良発明の特許出願を認める追加特許制度を備えている。また、発明者証に関する規定も設けられている。
産業財産権法には、特許を受けることができない発明が規定されている。公序良俗に反する発明の他、ソフトウェア、医薬品、動物、化粧品、食品の発明は特許を受けることができない。
さらに、出願時の絶対的新規性(出願日以前に国内外で公衆の知るところとなった技術に該当しないことを新規性の要件とし、国内および外国で公知、公用となった場合に新規性がないとすること)が求められる。ただし、出願日または優先権主張日の6ヶ月前以内に、国際博覧会等への展示を通じて発明が公表された場合に、新規性喪失の例外適用を受けることができる旨の規定も設けられている。
マダガスカルでは、特許の存続期間は出願日から15年間である。この期間は、特許権者が申請することにより、さらに5年間延長することができる。追加特許は、原出願の登録特許(原特許)とともに失効する。特許年金については、出願日から2年目以降毎年支払うものとされている。
マダガスカルにおける2014年の特許出願件数は24件であり、そのうち4件がマダガスカル人(内国人)による出願、20件が外国人による出願である。
2.意匠
マダガスカルでは、線もしくは色彩からなる構成、または線もしくは色彩との組み合わせの有無に関わらず、立体的意匠の外観形状も、意匠登録の対象になり得る。構成または形状は、工業製品または手工芸品に特別の外観を与えるものでなければならない。
新規性については、明確かつ認識可能な形状であって、または独自な視覚的効果をもたらす、1つまたはそれ以上の装飾的特徴により、他の類似する意匠とは異なる意匠にのみ、意匠保護が与えられる。意匠は、先行意匠と比較して実質的に重要ではない特徴だけが相違しているという理由だけでは新規性要件は満たされない、または出願意匠とは異なる物品に適用されるというだけでも新規性要件は満たされない。意匠の新規な要素が、機能的・技術的効果を生み出すために必須な形状である場合、当該意匠は意匠保護を受けることができない。
出願日の6ヶ月前以内にマダガスカルにおいて販売または他の方法によって意匠を公開した場合、新規性は喪失されないものとする。また、意匠出願日または意匠の優先権主張日の6ヶ月前以内にマダガスカルまたはパリ条約同盟国における公認の博覧会で意匠を開示した場合も、創作者等がかかる博覧会に参加したことを証明する公認証明書の作成を条件として、新規性は喪失されない。
一意匠一出願が原則であり、意匠出願に対する実体審査が行われる。意匠登録は、出願日から5年間有効であり、所定の手数料を支払うことによりさらに2回にわたって5年間の更新が可能である(最長15年)。
マダガスカルにおける2014年の意匠出願件数は207件である。
3.商標
商標にはラベル、色彩、デザイン、図、スローガンが含まれると産業財産権法に規定されている。商標が登録されるためには、他社の商品またはサービスと識別されなければならず、使用により獲得される識別力も考慮される。
サービスマークおよび連合商標の登録に関する規定はあるが、防護標章および連続(シリーズ)商標に関する規定はない。国際商標登録もマダガスカルを指定することが出来る。存続期間は出願から10年間で、不使用取消の除斥期間は登録から3年である。
商標出願は、登録可能性と先願の両面から審査される。先願については、登録局は同一または類似一の先願商標がある場合にのみ拒絶する。出願が先願商標権を理由に拒絶された場合、その拒絶判断が最終判断であり、登録局に対して不服を申立てることができない。登録局の拒絶理由が不当と考えられる場合、商標出願人は、控訴裁判所に決定の不服について訴訟を提起することができる。
第三者が同一または類似の商標を既に登録している場合、商標登録を取り消すためには、取消訴訟を提起することができる。
なお、マダガスカルの商標制度において、商標出願に対する異議申立の規定がない。
商標権者が侵害訴訟を提起する権利は、登録が認められた商品またはサービスだけに留まらず、商標の希釈化に対しても認められる。産業財産権法は、許諾を受けていない商標の使用が「正当な事由を欠き」、「商標権者の利益を害するおそれがある」状況について定めている。
また、商号および不正競争についても規定しており、「工業、商業、手工芸、農業に関して誠実な慣行に反する如何なる行為」も違法と定めている。
2014年の国内商標出願は約1,100件であり、そのうち約800件はマダガスカル人、300件は外国人によるものであった。また、同年の国際商標登録の出願においてマダガスカルが指定された件数は約900件である。
4.著作権
著作権法により保護される著作権は文学的および芸術的作品だけに留まらず、たとえば音楽作品、映画フィルム、三次元創作物、ソフトウェア、データベース、フォークロア(伝統的文化表現)にも適用される。
著作件法は、著作権を譲渡した著作者に対しても著作人格権を与え、彼らが著作者の表示を求めること、そしてその作品の同一性を侵害された場合に異議を唱えることを認めている。
マダガスカルにおける著作権の存続期間は、通常、創作者の死亡日から起算して70年間である。
シンガポールにおける登録特許の取消手続と特許出願に対する第三者情報提供について
【詳細】
シンガポール特許の有効性について、取消手続によって、特許の登録後に争うことができる。一方、特許登録局(以下、シンガポール特許庁と記載)に係属中の特許出願に対する異議申立制度はない。また、公式な第三者情報提供の制度も設けられていない。
以下、シンガポール特許出願または登録特許の有効性を争うための手続について説明する。
1.登録特許についての取消手続
シンガポール特許法では、登録官(Registrar、特許庁長官に相当)は、シンガポール特許庁に提出された申請に基づき、取消理由に該当する特許を取り消すことができる(シンガポール特許法第80条)。この取消手続は、何人も申請することができる。したがって、第三者は、登録特許の有効性に関して、取消手続によって争うことができる。
なお、(1)侵害訴訟における無効の抗弁により、(2)非侵害の確認判決を求める訴訟において、(3)特許侵害を理由とした脅迫に対する訴訟(シンガポール特許法第77条)における請求または反訴の請求として、特許の取消を求める場合は、シンガポール高等裁判所に取消手続を提起することができる(シンガポール特許法第82条)。
1-1.シンガポール特許庁による取消手続における取消理由
シンガポール特許庁の登録官は、以下の理由のいずれかに基づき、特許を取り消す権限を有する(シンガポール特許法第80条)。
(a)特許の新規性または進歩性が欠如している、または、特許を産業上利用することができない
(b)特許が、特許を受ける権原のない者に付与された
(c)特許明細書が、当業者が実施することができるように発明を明確かつ完全に開示していない
(d)特許明細書に新規事項が追加されている
(e)特許明細書に、認められるべきでなかった補正または訂正が行われた
(f)特許が不正に取得された、もしくは、不実表示、所定の重要な情報の不開示または不正確な開示があった
(g)特許が、同一の優先日を有し、同一の者またはその権原承継人により出願された、同一の発明に関する2以上の特許の1である
1-2.シンガポール特許庁による取消手続の流れ
取消手続の流れ(出典:シンガポール知的財産庁ウェブサイト)

シンガポール特許庁による取消手続の流れ
(1)取消申請
取消申請人が特許の取消を申請。取消申請に際して、取消申請人は理由陳述書を提出する。理由陳述書には、取消理由、関連事実、を記載する。
(2)答弁書
特許権者は、取消申請に対して、答弁書を提出することができる。特許権者から答弁書が提出されない場合、取消手続の審理は、特許権者が不参加の形式で進められる。
(2a)補正案
特許権者は、答弁書の提出と同時に、明細書(クレームを含む)の補正案を提出することができる。
(2b)補正案の公開
特許権者による補正案提出から2か月で、補正案は公開される。
(2c)補正に対する異議
何人も、補正案の公開から2か月以内に、補正案に対して異議を申し立てることができる。
(3)事件管理協議(1回目)
答弁書が提出された後に、両当事者の参加の下、事件管理協議が実施され、取消手続の進行に関して協議する。
(4)取消申請人による証拠提出
取消申請人は、特許権者の答弁書および補正案(ある場合)を受領してから3ヶ月以内に、取消を裏付ける証拠を提出することができる。
(5)特許権者による証拠提出
取消申請人が提出した証拠の受領から3ヶ月以内に、特許権者は、特許の有効性を裏付ける証拠を提出することができる。
(6)取消申請人による追加証拠の提出
特許権者が提出した証拠の受領から3ヶ月以内に、取消申請人は、特許権者が提出した証拠に対する応答として、追加証拠を提出することができる。
(7)事件管理協議(2回目)
取消申請人による追加証拠の提出期間が終了した後1か月で、シンガポール特許庁の登録官は、2回目の事件管理協議を開催する。事件管理協議において、登録官は、取消申請人に対して再審査を請求するよう指示することができる。登録官による再審査の請求指示から2か月以内に、取消申請人は、シンガポール特許庁に再審査の請求を行わなければならない。登録官による再審査の請求指示に対して取消申請人が再審査の請求を行わなかった場合、取消申請は放棄されたものとみなされる。
(8)再審査
取消申請人によって再審査が請求された場合、シンガポール特許庁の審査官による再審査が行われる。
再審査では、両当事者の主張および明細書に対して行われた補正が考慮される。再審査報告書には、特許が取り消されるべきか否かに関する勧告が記載される。
(9)事件管理協議(3回目)
登録官は、再審査報告書の結論を考慮して、さらなる事件管理協議を開催することができる。さらなる事件管理協議において、登録官は、両当事者の代理人に対して、口頭審理の前に追加書面を提出するよう命令することができる。
(10)口頭審理
口頭審理において、両当事者の主張を聴取した後、登録官は決定を下す。
(11)決定
登録官は、口頭審理中に決定を両当事者に伝える。口頭審理中の決定が留保された場合、登録官は、決定理由を記載した書面を作成し、両当事者に通知する。
(12)控訴
シンガポール特許庁での取消手続の決定を不服とする当事者は、登録官の決定が通知されてから28日以内にシンガポール高等裁判所に控訴することができる。
2.特許出願に対する第三者情報提供
シンガポール特許庁に直接出願された特許出願、またはシンガポールに国内移行された後のPCT出願には、第三者が情報提供を行うための公式な手続はない。ただし、情報提供を希望する第三者は、シンガポール特許庁に書面で情報を提供することにより、非公式の情報提供を行うことができる。情報提供された資料を審査に採用するか否かはシンガポール特許庁の裁量に委ねられている。
PCT出願の国際段階において第三者情報提供がなされた場合、この第三者情報提供による情報は、PCT出願がシンガポールに国内移行された際に、WIPOの国際事務局からシンガポール特許庁に送付される。シンガポール特許庁の審査官が、特許出願の審査における新規性および進歩性を検討する際に、PCTの国際段階で提出された第三者情報提供の情報を考慮するか否かは裁量に委ねられている。