新興国等知財情報データバンク システム更改に伴う記事更新停止のお知らせ

新興国等知財情報データバンクは、3月末にかけてシステム更改を実施いたします。

それに伴い、2021年1月20日(水)~4月下旬(予定)の間、記事投稿を停止いたします。なお、上記期間内も、これまで投稿された記事は、通常どおりご覧いただけます。

利用者の皆様にはご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます。

タイにおける特許法改正に向けた動き

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韓国での特許出願における優先権主張の手続(外国優先権)

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タイにおけるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈の実務

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香港におけるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈の実務

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タイにおける商標異議申立制度

 商標出願は、登録官による審査の結果、当該登録官が登録可能と判断した場合、商標公報において公告される。2016年に改正されたタイ商標法B.E. 2534(1991年)の第35条に基づき、公告日から60日以内に、異議申立書を知的所有権局の商標部門に提出することができる。

 

異議申立の理由

(1)より優先的な権利または権原

(2)識別性の欠如

(3)禁止された商標(悪意を含む)

(4)他者の先行商標と同一または混同を生じるほど類似している

(5)出願が商標法のいずれかの規定に違反している

 

 出願人が悪意で、即ち異議申立人の商標または著作物を模倣して商標を出願した場合は、その商標が禁止された商標であるという理由により、異議申立書を提出することができる。最高裁判所は、判決No. 4588/2552(2009年)において、悪意で(他者の知的財産権を模倣して)出願された商標は公益に反しており、商標法B.E. 2534(1991年)の第8条(9)項に基づき禁止されると判示した。それゆえ、かかる商標は登録されるべきではない。

 

異議申立書を提出できる者

 最初の理由、「より優先的な権利または権原」については、自己の先行商標、自己の未登録または未出願の商標に関する先使用、自己の先行意匠権または先行著作権を根拠として、より優先的な権利を有していると考える者が異議申立書を提出できる。残りの理由については、誰でも異議申立を提出できる。

 

異議申立書の提出期限

 異議申立書の提出期限は、公告日から60日である。異議申立書の提出期限を延長することはできない。

 

異議申立手続

 異議申立書は、法律により定められた様式を用い、全ての裏付け証拠を添付して、知的所有権局に提出しなければならない。異議申立書を提出する際の公定料金は、2,000バーツである。

 異議申立人は、異議申立を裏付ける追加の証拠を提出するために、60日間の延長を1回請求できる。異議申立人の代理人が異議申立書を提出する場合は、認証された委任状も必要となる。

 異議申立書が提出された後、登録官は、その写しを書留郵便により出願人に送達する。出願人はこれを受領した日から60日以内に、答弁書を登録官に提出する。答弁書を提出する際に公定料金は要求されない。かかる60日以内に答弁書が提出されない場合、その出願は放棄されたとみなされる。答弁書の提出期限を延長することはできない。

 出願人は答弁書を裏付ける追加の証拠を提出するために、60日間の延長を1回請求できる。

 双方の当事者が異議申立書または答弁書に加え、裏付け証拠を提出した後、登録官は双方の当事者の主張を検討し、異議決定を下す。最近の統計データによれば、証拠が少ない簡単な異議事件の場合、異議決定が下されるまでに通常、異議申立書が提出されてから約10ヵ月を要する。大量の証拠が提出された複雑な異議事件の場合、異議決定が下されるまでに16ヵ月以上かかる可能性がある。異議決定書は双方の当事者に送付される。

 登録官の異議決定を不服とする当事者は、登録官から異議決定を受領した日から60日以内に、商標委員会(日本の審判部に相当する)に審判を請求することができる。商標委員会に審判を請求する際の公定料金は4,000バーツである。

 審判請求人は、審判請求を裏付ける追加の証拠を提出するために、60日間の延長を請求することができる。この審判請求は査定系審判であるため、相手方当事者は応答書を提出できない。

 審判が請求された後、商標委員会は審判請求を審理し、審決を下す。最近の統計データによれば、証拠が少ない簡単な異議事件の場合、審決が下されるまでに通常、審判請求が提出されてから約14ヵ月を要する。大量の証拠が提出された複雑な異議事件の場合は、審決が下されるまでに審判請求が提出されてから20ヵ月以上かかる可能性がある。審決書は双方の当事者に送付される。

 商標委員会の審決を不服とする当事者は、商標委員会の審決書を受領した日から90日以内に、知的財産および国際取引中央裁判所(Central Intellectual Property and International Trade Court)(以下、「IPIT裁判所」)に上訴することができる。訴状が提出されてから約12~16ヵ月後に、判決が言い渡される。

 IPIT裁判所の判決を不服とする場合は、特別控訴裁判所に上訴することができる。特別控訴裁判所の判決を不服とする当事者は、最高裁判所に申し立てなければならない。

 

獲得可能な救済

 タイにおける異議申立手続で獲得できる唯一の救済は、商標出願の拒絶である。登録官および商標委員会は、弁護士の報酬または費用を裁定することができない。裁判所は弁護士の報酬を裁定できるが、その額は全体的に極めて低く、実際の報酬額を反映するものではない。

 

提言

 異議申立人は、異議申立書を提出する前に、出願人に書簡を送付する、または連絡を取ることにより、出願の取り下げまたは出願における特定の商品または役務の削除を要求することもできる。出願人が異議申立期限までにかかる要求に応じない場合には、異議申立人はまず異議申立書を提出すべきであり、友好的な解決に至った場合は後日、異議申立を取り下げることができる。また、異議申立人は異議申立書を提出した後に、出願人に上記の書簡を送付する、または連絡を取ることもできる。

 異議申立書を提出する理由が存在する場合、商標出願が登録された後に取消請求を提起するよりも、異議申立書を提出する方が容易であり、費用効果も高い。

ブラジルにおける知的財産訴訟件数

 ブラジルにおける産業財産権の保護および権利行使に関連する規定は、ブラジル産業財産法-法律第9.279/1996号(LPI)に定められている。著作権およびソフトウェアに関する法律はそれぞれ、ブラジル著作権法-法律第9.610/1998号(LDA)およびブラジルソフトウェア法-法律第9.609/1998号である。

 とりわけ産業財産法に従い、商標侵害、特許侵害または不正競争行為は、民事上の不法行為および刑事上の犯罪の双方に該当する。それゆえ、商標所有者および特許権者は、民事上および刑事上の救済を受ける権利を有する。

 また、重要な点として、ブラジル産業財産庁(INPI:ブラジルにおいて特許、工業意匠、商標および地理的表示の権利付与に責任を負う機関)または正当な利害関係を有するあらゆる者は、INPIにより付与された商標権または特許権を取り消すために無効請求を提起することができる。同じことが他の種類の産業財産権にも当てはまる。

 同様に、特許および商標出願を拒絶する、またはいずれかの産業財産権を取り消すINPIの行政決定を不服として、無効請求を提起することもできる。

 既存のブラジル裁判所制度およびその制度が構築された方法を考慮して、侵害請求は州裁判所に提起しなければならないが、無効請求の場合は連邦裁判所が管轄権を有する。その理由は、INPIがあらゆる無効手続において当事者にならなければならないため、ブラジル民事訴訟規則に従い、これらの特定の事件を処理するために連邦裁判所の権限が必要になるためである。

 現在、ブラジルには複数の専門化された連邦地方裁判所があり、さらに上訴レベルでは、リオデジャネイロにある第2巡回区連邦控訴裁判所における二つの専門部(specialized panels)が、ブラジルで提起された産業財産権無効請求の大半を審理している。対照的に、州裁判所におけるほとんどの裁判官はIP事件を専門としていない。注目すべき点として、例えばラテンアメリカ最大の金融センターであるサンパウロでは、州控訴裁判所においてIP事件を担当する二つの専門部が設けられているが、第一審裁判官はIP事件を専門としていない。

 

 上記を明確にした上で、下記のグラフは、ブラジルにおけるIP訴訟の現状を俯瞰できるように、州裁判所、連邦裁判所、司法最高裁判所および最高裁判所における事件をIP分野別に分類したものである。

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 尚、ブラジルの司法制度は、IP分野別の訴訟に関する公式データを提供していないため、本書において報告されたデータは、詳細な調査を通してダーツIP(www.darts-ip.com法データベース)から入手したものである。かかる情報は、指定された年において裁判所判決(あらゆる種類)が下された、または申立が提出された訴訟のみを示している。

中国の司法実務における均等論についての規定および適用

1.均等論の基本的な適用規則

1.1「3つの基本的に同一と易に想到」という基準

 2001年司法解釈の第17条においては、「基本的に同一の手段、機能および効果と当業者が容易に想到」という均等性の判断基準が明文化されている。

 例えば、参考事例1において、最高人民法院は、「被疑侵害品の技術的特徴と専利の技術的特徴が均等であるかどうかを判断する際には、被疑侵害品の技術的特徴が当業者にとって容易に想到できるものであるかだけでなく、被疑侵害品の技術的特徴が専利の技術的特徴と比べ基本的に同一の手段を採用し、基本的に同一の機能を実現し、かつ基本的に同一の効果を奏しているかをも考慮しなければならない」と論じている。そして、上記すべての条件が満たされた場合に限り、両者が均等な技術的特徴に該当すると認定される。

 

1.2均等性の判断の基準時は侵害発生時

 2001年司法解釈の第17条について、最高人民法院は、2015年に「均等に該当する特徴は、・・・当業者が被疑侵害行為の発生時に創造的な工夫をかけなくても想到できる特徴」という補正を加え、均等性の判断の基準時は侵害発生時であることを明確にした。

 

1.3オールエレメントルール

 中国の法院では、侵害性の判断においてはオールエレメントルールが採用されているので、均等論を適用する際にも、均等性の判断対象は技術全体ではなく、その技術を構成する技術的特徴となる。

 最高人民法院は、参考事例2において、「均等性とは、被疑侵害品における技術的特徴と請求項における対応する特徴との均等性を指し、被疑侵害品に係る技術と請求項に係る技術の全体的な均等性ではない」と強調している。

 

2.各種技術的特徴の均等論の適用

2.1数値または数値範囲に係る特徴の均等性判定

 2016年に、最高人民法院により公布された「専利権侵害をめぐる紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈(二)」(以下「2016年司法解釈の二」と略す)の第12条においては、「請求項が『少なくとも』、『超えない』などの用語により数値に係る特徴を限定し、且つ当業者が専利請求の範囲、明細書及び図面を閲読した後、当該用語が専利技術案の技術的特徴に対して限定作用があることを特に強調していると認めるとき、専利権者がそれと異なる数値につき均等の範囲内であると主張した場合、人民法院はそれを認めない」と規定されている。当該規定から、人民法院は、請求項における数値が数値範囲により限定されている特徴に関して均等性を判断する場合、非常に厳しい基準を採用することがわかる。さらに、前記司法解釈に対応し、北京市高級人民法院は、その策定した「専利侵害判定指南」の第54条において、「被疑侵害品における数値が請求項に記載されている対応の数値と異なる場合、専利権者は、被疑侵害品における数値が請求項に記載されている対応の数値と比べて技術的効果において実質的な相違がないことを証明できた場合を除き、その均等論に関する主張は認められない」と明確に規定されている。

 

2.2閉鎖形式の請求項の均等性判定

 化学や医薬分野でよく使われている閉鎖形式の請求項については、2016年司法解釈の二の第7条によると、被疑侵害品に係る技術が当該閉鎖形式の請求項を基に他の技術的特徴を追加したものである場合、その追加した特徴が回避できない通常量の不純物でない限り、当該請求項の保護範囲に入らないと規定されている。

 例えば、参考事例2において、最高人民法院は、閉鎖形式の請求項は、請求項に記載されていない組成成分や方法ステップを包含しないと一般的に解釈されていると論じている。また、組成物の閉鎖形式の請求項の場合、一般的には組成物には請求項に記載された成分のみが包含され、他の成分はすべて排除されるものと理解すべきであるが、通常量の不純物を含むことが許される。なお、補助原料は不純物に属さないとされる。

 

2.3機能的特徴の均等性判定

 請求項における機能的特徴について、2016年司法解釈の二の第8条によると、均等性の判定は、被疑侵害品の技術的特徴を、当該請求項の機能的特徴そのものと比較するのではなく、明細書および図面に記載された当該機能を実現するために不可欠な技術的特徴と比較することによって行われるものとする。

 

  1. 均等論の適用に対する制限

3.1包袋禁反言

 包袋禁反言は均等論の適用に対する制限であり、最高人民法院により2009年に頒布された「専利権侵害をめぐる紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」(以下「2009年司法解釈」と略す)の第6条に明確に記載されている。具体的には、包袋禁反言の適用には以下の論点について注意すべきである。論点1)どのような限定または放棄に対して包袋禁反言が適用されるか、論点2)包袋禁反言が特定の技術的特徴について均等を排除する範囲、論点3)包袋禁反言を適用する主体。

 論点1)について、専利権者は権利付与と確定の過程において、実質的な欠陥を克服するために行われた補正や意見陳述は、すべて禁反言の対象となり得る。ここで、実質的な欠陥には新規性や進歩性の欠陥だけではなく、サポート要件違反、実施可能要件違反、必要な技術的特徴の欠如などの欠陥も含まれる。

 論点2)について、専利権者が確定の過程において「制限や放棄した範囲」とは、専利権者が明確に制限や放棄を示した範囲だけである。例えば、参考事例3において、最高人民法院は、「独立項が無効化され専利権が従属項で維持された場合、専利権者が自ら放棄したものではなければ、その従属項に対して包袋禁反言を適用して均等論の適用を制限すべきではない」と判断している。

 論点3)包袋禁反言を適用する主体について、最高人民法院は、参考事例4において、「被告側が包袋禁反言の適用を主張したかどうかにかかわらず、法院は専利権侵害判定において自発的に包袋禁反言を適用して合理的に専利権の保護範囲を確定することができる」と論じている。

 

3.2公衆への開放の原則

 公衆への開放の原則も均等論の適用に対する一つの制限で、2009年司法解釈に明確に規定されている。同解釈の第5条によると、明細書や図面だけに記載され請求項で限定されていない技術的範囲は、(専利権者が自ら公衆に開放したものとみなされるため)専利権侵害判定において専利保護範囲に取り戻すことはできない。ここで、公衆への開放の原則の適用の前提とは前記技術的範囲が明細書や図面に記載されていることであり、もし記載されていなければ公衆への開放の原則が適用されることはない。

 例えば、参考事例5において、最高人民法院は、明細書において発明方法のステップ10と11の順序を入れ替えることができると記載されているものの、請求項においては入れ替えた後のステップが反映されていないため、入れ替えた後のステップ11と10について均等の主張を受け入れないと判断している。

 

*注記1:中国法における「専利」とは、特許、実用新案、意匠の全てを包括したもので、「専利法」は、特許法、実用新案法、意匠法の全てに対応するものである。

*注記2:司法解釈とは、中国最高人民法院または最高検察院により公布され、現行の法律規定の適用方法につきより具体的に明確化するためのもので、実務においては法律と同様な位置づけを有するものである。

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