韓国における特許・実用新案・意匠年金制度の概要
1. 特許権
1-1. 存続期間
韓国における特許権の存続期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である(韓国特許法(以下「特許法」という。)第88条第1項)。年金の納付義務は、特許査定が発行された場合に発生し、審査係属中は発生しない(特許法第79条第1項)。
特許権の存続期間の延長制度として、特許出願に係る発明の実施にあたって他の法令による許可が必要であり、当該許可を受けるまでに特許発明の実施をすることができない期間がある場合には、実施をすることができない期間に対して最長5年の期間まで存続期間延長出願を行う制度がある(特許法第89条第1項)。
1-2. 年金の納付期限
特許査定が発行されると、特許査定を受領した日から3か月以内に初回の年金納付として、1年度※から3年度の3年分の年金の納付が求められる(特許法第79条1項、特許料等の徴収規則第8条第5項)。なお、韓国では、2回目以降、すなわち4年度以降の年金は、設定登録日に該当する日を基準として毎年1年分ずつ、その前年度に納付しなければならず(特許法79条第1項、特許料等の徴収規則第8条第8項)、毎年の設定登録日に対応する日が納付期限となる。4年度以降の年金は1年ごとの納付、および複数年分の一括納付どちらも可能である(特許法第79条第2項)。
※ ここでの年度とは、設定登録日を基準とした年金納付の年度をいう。期間の計算において初日は算入しないので(特許法第14条第1項第1号)、各年度の最終日は設定登録日に対応する日となる。
年金の納付金額は、年度が上がるに従って増額し、また請求項数により変動する(特許料等の徴収規則第2条第2項第1号 別表1)。年金は、特許権者もしくは利害関係人であれば納付することができる(特許法第80条第1項)。
年金納付額に不足がある場合、韓国特許庁より補填命令が下され、補填命令を受けた日から1か月以内であれば不足分の年金を納付することができる(特許法第81条の2)。
1-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
納付期限日までに年金が納付されなかった場合、納付期限日から6か月以内であれば年金の追納が可能である(特許法第81条第1項)。年金の一部が追納期間内に納付されていない場合は、前述のように韓国特許庁より補填命令が下され、補填命令を受けた日から1か月以内であれば年金を納付することができる(特許法第81条の2)。追納期間中や補填期間中は、所定の年金金額に加えて追徴金を同時に納付する必要がある(特許法第81条第2項、第81条の2第3項)。
1-4. 権利回復制度
6か月の追納期間を超えて年金および追徴金が納付されなかった場合、または、1か月の補填期間を超えて不足分の年金および追徴金が納付されなかった場合、特許権は消滅したものとみなされる(特許法第81条第3項)。ただし、追納期間の最終日もしくは補填期間の最終日から3か月以内であれば、権利回復の申請が可能である(特許法第81条の3第3項)。権利回復の申請の際には、当初の年金と追徴金に加え、回復費用を納付する必要がある。
上記の通り、追納期間経過までに年金を納付しない場合、特許権は消滅するが、権利を放棄したい旨を記した書面を韓国特許庁に提出することにより積極的に放棄する手続もある。なお、特許権の放棄は、請求項ごとに行うことができる(特許法第215条の2第1項)。
1-5. 年金の誤納
所定の年金よりも多く納付した場合、韓国特許庁に過払い金の返還請求を行えば返金される(特許法第84条第1項第1号)。ただし、韓国特許庁から返還事例に該当する旨の通知を受領した日から5年を経過した後は、返還請求をすることができない(特許法第84条第3項)。
2. 実用新案権
2-1. 存続期間
実用新案権の存続期間は、出願日(PCT条約に基づく実用新案出願の場合は国際特許出願日)から10年である(韓国実用新案法(以下「実用新案法」という。)第22条第1項)。出願日から4年、あるいは出願審査請求日から3年のうちどちらか遅い日よりも後に実用新案の設定登録がされた場合、遅延した期間分の延長登録出願を行うことができる(実用新案法第22条の2第1項、第22条の3)。
2-2. 年金の納付期限
年金の納付義務は、出願が登録査定を受けてから発生し、審査係属中は発生しない(実用新案法第16条第1項、特許料等の徴収規則第8条第5項)。特許権と同様、出願が登録査定を受けると、登録査定を受領した日から3か月以内に初回の年金納付として1年度から3年度の3年分の年金の納付が求められる(実用新案法第16条第1項、特許料等の徴収規則第8条第8項)。2回目以降、すなわち4年度以降の年金は、設定登録日が該当する日を基準として毎年1年分ずつ、その前年度に納付しなければならず、毎年の設定登録日に対応する日が納付期限となる。4年度以降の年金は一年ごとの納付および複数年分の一括納付どちらも可能である(実用新案法第16条第2項)。
年金の納付金額は、年度が上がるに従って増額し、請求項数により変動する(特許料等の徴収規則第3条第2項第1号 別表2)。年金は、実用新案権者もしくは利害関係人であれば納付することができる(実用新案法第20条で準用する特許法第80条第1項)。
2-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
年金の追納制度は、特許と同じである(実用新案法第20条で準用する特許法第81条第1項、第81条の2)。
2-4. 権利回復制度
追納期間を徒過した場合の権利回復制度は、特許と同じである(実用新案法第20条で準用する特許法第81条の3第3項)。
追納期間経過までに年金を納めない場合、実用新案権は消滅するが、権利を放棄したい旨を記した書面を韓国特許庁に提出することにより積極的に放棄する手続もある(実用新案法第44条で準用する特許法第215号の2第1項)。
2-5. 年金の誤納
年金の誤納返還に関する制度も特許と同じである(実用新案法第20条で準用する特許法第84条)
3. 意匠権
3-1. 存続期間
意匠権の存続期間は、出願日から20年である(韓国デザイン保護法(以下「デザイン保護法」という。)第91条第1項)。存続期間の延長制度は存在しない。
3-2. 年金の納付期限
年金の納付義務は、出願が登録査定を受けてから発生し、審査係属中は発生しない(デザイン保護法第79条第1項、特許料等の徴収規則第8条第5項)。特許と同様、出願が登録査定を受けると、登録査定を受領した日から3か月以内に初回の年金納付として1年度から3年度の3年分の年金の納付が求められる(デザイン保護法第79条第1項、特許料等の徴収規則第8条第8項)。2回目以降、すなわち4年度以降の年金は、設定登録日が該当する日を基準として毎年1年分ずつ、その前年度に納付しなければならず、毎年の設定登録日に対応する日が納付期限となる。なお、4年度以降の年金は一年ごとの納付および複数年分の一括納付どちらも可能である(デザイン保護法第79条第2項)。
年金の納付金額は、年度が上がるに従って増額し、また意匠の数により変動する(特許料等の徴収規則第4条第2項第1号 別表3)。年金は、意匠権者もしくは利害関係人であれば納付することができる(デザイン保護法第81条第1項)。
3-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
年金の追納については、特許と同様の制度がある(デザイン保護法第82条、第83条)。
3-4. 権利回復制度
追納期間を徒過した場合の権利回復については、特許と同様の制度がある(デザイン保護法第84条)。追納期間経過までに年金を納めない場合、意匠権は消滅するが、権利を放棄したい旨を記した書面を韓国特許庁に提出することにより積極的に放棄する手続もある(デザイン保護法第105条)。なお、複数の意匠が登録された意匠権は、意匠権ごとに分離して放棄することができる(デザイン保護法第105条)。
3-5. 年金の誤納
年金の誤納返還についても、特許と同様の制度がある(デザイン保護法第87条)。
中国における特許出願の補正
(1)通常出願とパリルート出願の補正時期と補正できる内容
特許(中国語「发明专利」)の通常出願とパリルート出願の補正時期・内容は、以下のとおりである。
補正時期 | 補正できる内容 | 留意点 |
---|---|---|
(i)審査請求時(実施細則第57条第1項)※1 | 全ての出願書類について自発的に補正することができる。 | 補正は、出願当初の明細書および特許請求の範囲に記載した範囲(中国語「原说明书和权利要求书记载的范围」)を超えてはならない(専利法第33条)。 |
(ii)国務院専利行政部門(中国語「国务院专利行政部门」)が発行した実体審査に入る旨の通知書(中国語「进入实质审查阶段通知书」)を受領してから3か月以内(実施細則第57条第1項) | ||
(iii)国務院専利行政部門が発行した拒絶理由通知書(中国語「审查意见通知书」)に対して応答する時(実施細則第57条第3項) | 拒絶理由通知書で指摘された不備についてのみ補正することができる。 | |
(iv)拒絶査定不服審判(中国語「专利复审」)を請求する時、または国務院専利行政部門の復審通知書(中国語「复审通知书」)※2に回答する時(実施細則第66条) | 拒絶査定、または復審通知書で指摘された不備についてのみ補正することができる。 |
※2 復審請求(拒絶査定不服審判請求)が専利法および実施細則の関連規定に合致していない、または特許出願にその他の専利法および実施細則の関連規定に明らかに違反する状況が存在すると考えられる場合に、国務院専利行政部門が請求人に通知する書面(実施細則第67条第1項)。
(2) 特許協力条約(PCT)に基づく国際出願(以下「PCT出願」という。)の補正時期と補正できる内容
PCT出願については、以下の時期・内容で補正することができる。
補正時期 | 補正できる内容 | 留意点 |
---|---|---|
(i)中国国内段階移行手続を行う時(PCT第28条、第41条、実施細則第130条、審査指南第3部第1章5.7) | 全ての出願書類について自発的に補正することができる。 | 補正は、PCT出願時明細書(図面を含む)および特許請求の範囲に記載した範囲を越えてはならない(専利法第33条)。 また、請求項の数が10項を超えた場合、出願手数料は国際公開公報に基づき計算されるので、中国国内移行手続きを行う際に請求項を削除しても、出願料を減らすことはできない。 |
(ii)審査請求時(実施細則第130条第2項による実施細則第57条第1項の適用)※3 | ||
(iii)国務院専利行政部門が発行した実体審査に入る旨の通知書を受領してから3か月以内(実施細則第130条第2項による実施細則第57条第1項の適用) | ||
(iv)拒絶理由通知書に応答する時(実施細則第57条第3項、審査指南第2部第8章1、5.2)※4 | 拒絶理由通知書で指摘された不備についてのみ補正を行うことができる。 | |
(v)拒絶査定不服審判を請求する時、または国務院専利行政部門の復審通知書に回答する時(実施細則第66条) | 拒絶査定、または復審通知書で指摘された不備についてのみ補正することができる。 |
※4 審査指南第2部第8章1に「中国国家段階に移行した国際出願の実体審査について、本指南第三部分第二章『国家段階に移行した国際出願の実体審査』に具体的な規定がある場合、この章の規定を適用する。具体的な規定がない場合は、本章の規定を適用する。」と規定されているが、審査指南第3部第2章には移行したPCT出願の拒絶理由通知書応答時の補正についての規定がないので、審査指南第2部第8章の規定が適用される。審査指南第2部第8章5.2では、実施細則第57条第3項に基づき補拒絶理由通知書応答時の補正ができるとされている。
(3) PCT出願における中国語明細書および特許請求の範囲の誤訳訂正
補正時期 | 補正できる内容 | 留意点 |
---|---|---|
(i)国務院専利行政部門による中国国内公開公報の公開準備作業が完了する前(実施細則第131条第1項第1号) | 自発的に補正(訂正)することができる。 | 当該補正にかかる官庁手数料:CNY300/回 |
(ii)国務院専利行政部門が発行した実体審査に入る旨の通知書を受領してから3か月以内(実施細則第131条第1項第2号) | 当該補正にかかる官庁手数料:CNY1,200/回 | |
(iii)国務院専利行政部門が発行した翻訳文訂正通知書(中国語「通知书的要求改正译文」)に対して応答する時(実施細則第131条第3項) | 通知書で指摘された不備についてのみ補正(訂正)することができる。 | 当該補正にかかる官庁手数料:方式審査段階ではCNY300/回、実体審査段階ではCNY1,200/回 |
(4) 留意事項
出願が実体審査に入り、拒絶理由通知書が通知された場合、実施細則第57条第3項の規定によると、上記のとおり、出願書類の補正は拒絶理由通知書で指摘された不備についてのみに限定されることになる。ただし、実施細則第57条の運用については、個々の審査官に一定の裁量権が与えられており(専利審査指南第2部分第8章5.2.1.3)、規定を厳格に遵守することを要求されている印象はあまりなく、実務上、拒絶理由通知書を受けてから、再度その発明の特徴を検討し、引用文献および諸外国の審査状況を考慮した上で、特許請求の範囲の補正を行うことはよくある。
期待どおりの権利取得ができるかどうかは実施細則第57条の運用実態によるため、審査官によってばらつきはあるが、特許請求の範囲の補正によって、審査官が従来技術を再び調査しなければならないような場合でない限り、その補正が拒絶理由通知書に指摘されていない内容であっても認められる可能性はある。したがって、拒絶理由通知書に応答する際、審査官に指摘されていない内容について補正する必要があれば、自発的に補正を行ってみる価値はあると思われる。
なお、上記表の留意点欄に記載されている、専利法第33条のいわゆる新規事項の追加の禁止について、専利審査指南第2部分第8章5.2.1.1によれば、「明細書および特許請求の範囲に記載された範囲は、明細書および特許請求の範囲の文字どおりに記載された内容と、明細書および特許請求の範囲の文字どおり記載された内容および明細書に添付された図面から直接的に、疑う余地もなく確定できる内容を含む。」とされており、「明示的記載+自明事項」が新たな技術的事項を導入しないものとして認める日本の運用に比べて、かなり厳しいため、注意を要する。
新興国等知財情報データバンクメンテナンスのお知らせ(令和6年10月29日)
新興国等知財情報データバンクのメンテナンスを実施いたします。
以下、メンテナンスの時間帯はアクセスがしづらい状態になりますので、ご了承ください。
メンテナンス日時:
令和6年10月29日(火)11:00〜12:00
利用者の皆様にはご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます。
中国における商標出願制度概要
商標(中国語「商标」)の出願手続は、上記フローチャートに示したように、主に(1)出願、(2)方式審査、(3)実体審査、(4)出願公告、(5)登録公告の手順で進められる。
1. 出願
・一つの出願において、多数の区分について同一の商標を登録出願する、いわゆる、1出願多区分制度を採用している(商標法第22条)。
・定められた商品分類表に基づき商標を使用する商品区分および商品名を明記することが定められている(商標法第22条)。日本国特許庁が「日中韓類似群コード対応表」を公開しているので活用されたい。また、商標法第4条に「商品商標に関する規定は、役務商標に適用する。」と明記されている。
・マドリッド・プロトコルに基づく国際出願において、指定商品は、基礎出願または基礎登録の商品の範囲を超えてはならない(条例第39条)。
・出願手続は、出願人名を含めて中国語を使用しなければならない(条例第6条)。
・標章として他人の商品と識別可能な、文字、図形、アルファベット、数字、立体的形状、色彩の組合せ、および音声等、ならびにこれらの要素の組合せを含む標章は、商標として登録出願できる(商標法第8条)。
・優先権を主張する場合は、最初の出願から6か月以内に行い、その主張の日から3か月以内に商標登録出願の副本を提出する(商標法第25条)。なお、この期間を延長することはできない。
・出願公開制度はない。
・団体商標制度および証明商標制度がある(商標法第3条)。
2. 方式審査(中国語「形式审查(形式審査)」)
・出願日は、商標局が出願書類を受領した日となる。出願手続に不備がないかの方式審査を開始し、出願書類の受理または不受理の通知を出願人に行う。出願手続または出願書類の記載に不備があり、関連規定の要件を満たさない場合、商標局は書面により出願人にその旨を通知し理由を説明する(条例第18条)。
・出願手続または出願書類の記載が基本的に関連規定の要件を満たすが、補正(中国語「补正」)の必要がある場合には、商標局は出願人に通知し、30日以内に補正をさせる(条例第18条)。なお、この応答期間を延長することはできない。
3. 実体審査およびその手続内容について
・商標局は、商標登録出願について審査し、登録要件を満たす出願には出願公告査定(中国語「初步审定(初歩審定)」)を行い、かつ公告する(商標法第28条、条例第21条)。
・拒絶理由としては、商標法第13条第2項および第3項、第15条、第16条第1項、第30条、第31条、第32条の規定(以下「相対的拒絶理由」と総称する。)、ならびに商標法第10条、第11条、第12条、第19条第4項の規定(以下「絶対的拒絶理由」と総称する。)等が挙げられる。
・なお、近年の改正により、商標法第4条において、使用を目的としない悪意の商標登録出願については、拒絶しなければならない(商標法第4条)と明記されている。加えて、悪意による商標登録行為を行政罰の対象とし、悪意による権利行使を裁判所による司法罰の対象とすることが規定されている(商標法第68条4項)。
・出願が登録要件を満たさない、または一部の指定商品について登録要件を満たさない場合には、これを拒絶査定、または部分的に拒絶査定し、その旨を理由とともに出願人に通知する(商標法第34条、条例第21条)。部分拒絶査定の場合、特に手続しなければ登録要件を満たす部分のみが公告される。
・商標局の拒絶査定に不服があるときは、出願人はその通知を受領した日から15日以内に商標局の商標評審委員会(中国語「商标评审委员会」、日本の審判部に相当)に再審請求(日本の不服審判請求に相当)を提出することができる(商標法第34条)。
4. 出願公告と異議申立
・出願公告査定され公告された商標については、公告後3か月以内であれば、相対的拒絶理由に違反していると先行権利者もしくは利害関係人が判断した場合、または商標法第4条(使用を目的としない悪意の出願)もしくは絶対的拒絶理由に違反していると何人かが判断した場合、商標局に異議を申し立てることができる(商標法第33条)。この異議は商標局の裁定を受けるが、その商標局の裁定に不服がある場合は、当事者は裁定の通知を受領した日から15日以内に商標評審委員会に到達するように再審請求を提出することができる(商標法第35条)。
5. 登録公告
・出願公告後3か月以内に異議申立がないとき、または異議が成立しないと裁定された場合は、登録(中国語「注册(注冊)」)が認められ、商標登録証が交付され公告が行われる(商標法第33条)。
・登録商標が、商標法第4条(使用を目的としない悪意の出願)もしくは絶対的拒絶理由に違反するとき、または欺瞞的手段もしくはその他不正手段により登録を受けたとき、商標局は無効を宣告できる。また、個人、法人、団体、その他の政府機関等が登録の無効を請求できる(商標法第44条)。
・登録商標に相対的拒絶理由があるときは、先行権利者(中国語「在先权利人」)または利害関係人が登録日から5年以内に商標評審委員会にその登録の無効を請求できる。ただし、登録商標が悪意のある登録であり、かつ、先行権利者または利害関係人が馳名商標(日本における著名商標)の所有者であれば、無効を請求できる期間は5年以内に制限されない(商標法第45条)。
・権利の存続期間は登録日より10年であり(商標法第39条)、登録日は初日に算入する。更新したい場合は、存続期間満了前12か月以内に更新手続をしなければならない。この期間に手続できなかった場合は、追加料金の納付を必要とするが、6か月の更新手続の延長期間が認められる(商標法第40条)。
・商標が登録後3年以上不使用の場合、如何なる個人、法人、団体又は政府機関等も商標局に不使用取消請求ができる(商標法第49条)。
中国における実用新案制度の概要と活用
(1) 中国における実用新案制度の概要
(i) 実用新案(中国語「实用新型专利」)の定義
実用新案とは、製品の形状、構造またはそれらの組合せについて提案された実用に適した新しい考案(中国語「技術方案」)をいい(専利法第2条第3項)、中国の実用新案は製品のみを保護対象とする。
ここでいう「製品」とは、産業的方法により製造されたもので、確定した形状、構造を有し、かつ一定の空間を占める実体をいう(専利審査指南(以下「審査指南」という。)第1部第2章6.1)。
また、専利法第2条第3項の規定に基づき、実用新案は物品の形状および/または構造に対して行われる改善でなければならない(審査指南第1部第2章6.2)。
(ii) 実用新案登録を受けることができないもの
以下は、実用新案の保護対象に属さず、実用新案登録を受けることができないものである。
(a) すべての方法および人的に製造されていない自然に存在する物品(審査指南第1部第2章6.1)。
(b) 確定した形状がないもの(審査指南第1部第2章6.2.1)。例えば、気体状態、液体状態、粉末状、粒状などの状態の物質や材料。具体的には、例えば化合物、化学組成物、結晶体。
(c) 製品の特徴が材料の改良にあるもの(審査指南第1部第2章6.2.2)。例えば、製品の原材料の組成を記載した請求項。
(d) 製品の特徴がその製法の改良にあるもの(審査指南第1部第2章6.1)。例えば、製造方法の工程を記載した請求項。
ただし、実用新案の請求項の構成要素の一部に、例えば樹脂、ゴムなどのような既知の材料の名称を記載することは認められている。また、実用新案の請求項の構成要素の一部に、例えば溶接、リベット締めなどのような既知の方法の名称を記載することも認められている。
(iii) 審査の順序
(a) 審査開始の順序
一般的に、出願書類が提出された順に初歩審査が開始されなければならない(審査指南第5部第7章8.1)。
(b) 優先審査
国家利益または公共利益に重要な意義がある出願は、出願人が請求し許可を受けた場合、優先審査が行われ、その後の審査過程において優先して処理される(審査指南第5部第7章8.2)。ただし、同一の出願人が特許と実用新案を同日出願した場合、通常、特許出願の優先審査は行われない。
(c) 遅延審査
出願人は、審査の遅延請求を提出することができる(審査指南第5部第7章8.3)。遅延請求を行う場合は、出願人は、出願と同時に遅延審査を請求しなければならない。延期期限は、審査遅延請求を提出して効力が生じた日から起算して1年とする。ただし、必要な場合は、専利局は自発的に審査を開始して出願人に通知し、出願人が請求した遅延審査の延期期限を終了することができる。
(iv) 実用新案の初歩審査
実用新案出願は、初歩審査を経て拒絶すべき理由がない場合、権利付与されることになる(専利法第40条)。初歩審査では、具体的には下記の該当する登録要件を明らかに満たしているかいないか等が審査される(専利法実施細則(以下「実施細則」という。)第50条第1項第2号)。
(a) 公序良俗違反(専利法第5条)
(b) 権利付与されない考案(専利法第25条)
(c) 外国人等による出願(専利法第17条、第18条第1項)
(d) 国内で完成した考案の外国出願(専利法第19条第1項)
(e) 考案該当性(専利法第2条3項)
(f) 考案の新規性、進歩性、実用性(専利法第22条)
(g) 明細書等の記載要件(専利法第26条第3項)
(h) 請求の範囲の記載要件(専利法第26条第4項)
(i) 一考案一出願の原則(専利法第31条第1項)
(j) 補正における新規事項の追加(専利法第33条)
(k) 同一出願人の特許出願との競合(専利法第9条)
2023年の実施細則の改正により、初歩審査において、審査官は、取得した先行技術に関する情報に基づいて、実用新案が明らかに進歩性を備えるかを審査できることとなり、進歩性に関する審査は無効審判における実用新案審査の規定(審査指南第4部第6章4)が参照されることになった(審査指南第1部第2章11)。
なお、実用新案の進歩性がどのように審査されるかについては、今後の専利局における実務に留意する必要がある。
(v) 特許/実用新案同日出願制度
中国には、出願変更制度は存在しないが、出願人は、同一の発明について特許と実用新案の両方を同日に出願することができる(専利法第9条、実施細則第47条第2項)。この同日出願制度を利用して特許と実用新案を同日に出願すれば、実用新案出願は初歩審査のみなので先に登録されることとなり、特許出願は、特許の登録要件を満たす場合に、出願人が実用新案権を放棄することにより、特許権を取得することができる。
(2) 中国における実用新案権の活用
(i) 中国実用新案権の権利行使のし易さ
中国の専利法には、日本の実用新案法第29条の2のような「技術評価書を提示して警告をした後でなければ、侵害者等に対し、その権利を行使することができない」旨の規定は存在しない。また、日本の実用新案法第29条の3のような「警告や権利行使を行い、その後、実用新案登録が無効となった場合、技術評価書の提示やその他の相当な注意をしないで行った警告や権利行使により相手方に与えた損害を賠償する責めに任ずる」旨の規定もない。
つまり、中国の実用新案権は、日本の実用新案権に比べて、権利行使しやすい権利であると言える。
(ii) 実用新案権評価報告
中国では、侵害の紛争が実用新案権に係る場合、裁判所等は、権利者または利害関係者に対し、国務院専利行政部門が関連実用新案権について調査、分析と評価を行った上で作成した実用新案権評価報告の提出を要求することができる(専利法第66条第2項)。当該評価報告は、実用新案権の侵害紛争の審理において証拠とすることができる。
また、裁判所が受理した実用新案権に関する侵害紛争案件において、被告(被疑侵害者)が答弁期間(中国に経常住所がある場合15日、中国に経常住所がない場合30日)内に当該実用新案権に対して無効審判を請求した場合、裁判所はその訴訟を中止しなければならない(最高人民法院による専利紛争案件の審理における法律適用の問題に関する若干の規定第5条)。ただし、実用新案権評価報告に、実用新案権の新規性、進歩性を喪失させる技術文献が含まれていない場合、裁判所は訴訟を中止しなくてもよい。
上記の通り、実用新案権を行使して侵害訴訟が提起された場合、裁判所は実用新案権評価報告の提出を要求することができる。しかし、この評価報告は、裁判所が裁判を中止するか否かを判断する際の根拠として利用されるものに過ぎず、提訴時に必須のものではない。
(iii) 実用新案の無効審判
特許と同じく、実用新案も、登録公告された後、何人でも無効審判を請求することができ(専利法第45条)、無効理由および証拠の使用については、特許と基本的に同様である。ただし、進歩性の判断に関しては、特許と実用新案における進歩性の定義が異なるため、以下の相違点が存在する(審査指南第4部第6章4)。
特許の進歩性は、「既存の技術と比べて、その発明が突出した実質的特徴および顕著な進歩を有する」ことと規定されている一方、実用新案の進歩性は、「既存の技術と比べて、その実用新案が実質的特徴および進歩を有する」ことと規定されている(専利法第22条第3項)。したがって、実用新案の進歩性基準は特許の進歩性基準よりも低いといえる。
両者の進歩性基準における相違は、既存の技術に「技術的示唆」が存在するかを判断する際の以下の二つの点で述べられていている。
(a) 既存の技術の技術分野
特許の場合、発明の属する技術分野以外に、それに近いまたは関連する技術分野および当該発明が解決しようとする課題が当業者に対し技術的手段を模索せしめるその他の技術分野も考慮されるべきである(審査指南第4部第6章4(1))。
一方、実用新案の場合、一般的には、当該実用新案が属する技術分野が優先的に考慮される。ただし、既存の技術に「明らかな示唆(例えば、明確な記載がある。)」がある場合、当業者に対し技術的手段を模索せしめる、近いまたは関連する技術分野を考慮に入れてもよい。
(b) 既存の技術の数
特許の場合、1件または複数の既存の技術の組合せで進歩性を評価することができる。一方、実用新案の場合、一般的には、1件または2件の既存の技術の組合せで進歩性を評価することができる(審査指南第4部第6章4(2))。ただし、従来技術の「簡単な寄せ集め」からなる実用新案に対しては、状況に応じて、複数件の従来技術の組合せで進歩性を評価することもできる。
(3) 留意事項
・中国における実用新案権は、特許に比べて格別に権利行使しにくい権利であるという印象はない。また、実用新案権は初歩審査のみで登録され、一度権利になると、それを無効にするためには時間と費用がかかる。さらに、実用新案権の進歩性基準は特許と比べて低いものの、実際に無効審判を請求する場合、2件以内の無効資料で無効とすることは容易ではない。
上記の状況に鑑み、模倣されやすい構造的特徴があり、(実用新案の保護期間は出願日から10年(専利法第42条第1項)であるため)ライフサイクルが短い考案については、実用新案の出願を検討する価値がある。
・中国における事業展開にあたり、抵触する実用新案権が存在すると判明した場合、権利行使される可能性があることに備えて事前に無効資料を調査し、準備すべきである。抵触する権利が重要な製品に係わるものである場合、無効審判を請求する方向で検討すると良い。相手に無効審判を請求した事実を知られたくない場合には、匿名で(無効審判は何人でも請求することができるため(専利法第45条)、実際に請求する企業名等を出さずとも、実在する個人の名前等で)無効審判を請求することも可能である。
中国における特許・実用新案・意匠年金制度の概要
1. 特許権
1-1. 存続期間
中国における特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年(専利法第42条第1項、専利審査指南(以下「審査指南」という。)第5部第9章4.1)である。
1-2. 年金の納付期限
最初の年金の支払い義務は、特許権の設定登録時に発生し、特許が付与された年度の年金を納付する(専利法実施細則(以下「実施細則」)という。)第114条)。ここで、年度とは、出願日を基準とした年度をいう(審査指南第5部第9章4.2.1.1)。従って、例えば、4年度に特許が付与されたとした場合、登録時に第4年度の金額の年金を納付すれば、第1年度から第3年度は出願後、審査係属中であったので、この期間の維持年金の支払いは必要ない。
最初の年金は、国家知識産権局が設定する期限内(専利権付与通知書および登録手続実行通知書の受領日から2か月以内)(審査指南第5部第2章1.(6))に登録手続において納付しなければならず、登録手続を行う時に登録手続通知書の要求に従って権利付与年の年金を納付しなければならない。期限までに登録手続が行われた場合、特許証書が発行されると同時に登録、公告が行われ、公告日から特許権の効力が生じる(審査指南第5部第9章1.1.2から1.1.4)。
2回目以降の年金は、前年度の満了前に納付しなければならず(実施細則第115条、審査指南第5部第9章4.2.1)、納付期限は各年の出願日に対応する日となる(審査指南第5部第9章4.2.1、4.2.1.1、4.2.1.2)※1。
※1 納付期限については、前年度の最終日ではなく、その翌日(各年の出願日に対応する日・各年度の初日)となる旨が、審査指南において、以下のように説明されている。
「出願日から起算される専利年度は、優先日や権利付与日に関係なく、暦年とも必然的な関連性はない。例えば、ある専利出願の出願日が1999年6月1日である場合、当該専利出願の第1年度は 1999年6月1日から 2000年5月31日であり、第2年度は2000年6月1 日から 2001年5月31日になる(審査指南第5部第9章4.2.1.1)。
(中略)例えば、 ある専利出願の出願日が1997年6月3日である場合、当該専利出願が2001年8月1日に専利権付与され(専利権の権利付与公告日)、そして出願人が登録手続を行う際に、すでに第5年度(2001年6月3日から2002年6月2日)の年金を納付していれば、当該専利権者は遅くとも2002年6月3日までに第6年度(2002年6月3日から2003年6月2日)の年金を納付しなければならない(審査指南第5部第9章4.2.1.2、一部追記)。」
年金の金額は、年度が上がるに従って増額する(専利および集積回路設計に関する支払手続ガイド 付録2)※2。中国に常駐住所または営業場所を持たない外国人、外国企業、またはその他外国組織が年金納付する場合、法に基づき設立された専利代理機関に委託して処理する必要がある(専利法第18条第1項)。
※2 各年度の年金額は、下記の関連記事を参照されたい。
【関連記事】「中国における専利(特許、実用新案、意匠)出願関連の料金表」(2022.11.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/27104/
1-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
登録後、年金納付期限日までに年金納付がされない場合や納付金額に不足がある場合、国家知識産権局より、その旨を知らせる通知が発行される。どちらの場合でも、納付期限日から6か月以内であれば追納が可能である(実施細則第115条)。追納期間中は、所定の年金金額や不足分の金額に加えて、追徴金も同時に納付する必要がある。追徴金は、納付期限日から時間が経過するに従って増額する(審査指南第5部第9章4.2.1.3)。6か月の追納期間を超えて年金納付がされない場合や、追徴金の納付漏れがあった場合、権利は納付すべき期間の最終日から失効とされ、国家知識産権局から権利喪失確認通知が発行される(審査指南第5部第9章4.2.2)。
1-4. 権利回復制度
追納期間内に年金納付がなされず権利失効となった場合でも、権利喪失確認通知書の受領日から2か月以内であれば、権利の回復が可能である。権利回復の際には、当初の年金と追徴金に加え、回復費用も納付する必要がある(実施細則第6条、審査指南第5部第2章1.(4)、第9章4.2.1.3)。
上記のとおり、追納期間を超えて年金納付がされなかった場合、特許権は年金を納付すべき期限の満了日に終了する(審査指南第5部第9章4.2.2)が、権利を放棄したい旨を記した宣誓書を国家知識産権局に提出することにより積極的に放棄する手続もある(専利審査指南第5部第9章4.3)。
1-5. 年金の誤納
意図しない特許権に対して誤って年金を納付した場合、または所定の納付金額を超えて納付した場合などは、国家知識産権局に返還請求をすることができる(実施細則第111条)。
1-6. その他
1-1.「存続期間」に関連して、中国には日本の「特許権の存続期間の延長」に相当する制度として「特許期間の補償」がある。
発明専利(特許)の出願日から4年、かつ実体審査請求日から3年経過後に発明専利が付与された場合、国家知識産権局は、専利権者の請求に応じて、発明専利の権利付与過程における不合理な遅延について特許権の期間に補償を与える。ただし、出願人に起因する不合理な遅延は除外する(専利法第42条第2項)。
なお、2023年の実施細則と審査指南の改正により、特許権の期間補償の請求期限、補償期間の計算方式、合理的な遅延、および出願人に起因する不合理な遅延に該当する場合などが規定された(実施細則第77条から第79条、第84条、審査指南第5部第9章2.1から2.4)。
また、中国で発売許可を得られた新薬に関連する発明専利(特許)について、新薬の発売承認審査にかかった時間を補償するため、国家知識産権局は、特許権者の請求に応じて、特許権の存続期間について補償を与える。補償の期間は5年を超えず、新薬発売承認後の専利権の合計存続期間が14年を超えないものとする(専利法第42条第3項)。
なお、2023年の実施細則と審査指南の改正により、新薬に関連する発明専利の定義、医薬品専利権期限の補償を請求できる条件と期限、補償期間の計算方式、補償期間における特許権の保護範囲などが規定された(実施細則第80条から第84条、審査指南第5部第9章3.1から3.8)。
2. 実用新案権
2-1. 存続期間
中国における実用新案権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく実用新案登録出願の場合は国際実用新案登録出願日)から10年である(専利法第42条第1項)。
2-2. 年金の納付期限
実用新案の年金制度は、権利期間を除き特許とほぼ同様である。最初の年金の支払い義務は、実用新案権の設定登録時に発生し、実用新案が付与された年度の年金を納付する(実施細則第114条)。出願日を基準とする年度の考え方は特許と同じである。
最初の年金は、国家知識産権局による専利権付与通知と登録手続実行通知書に基づき遅滞なく納付期限日までに納付しなければならない(審査指南第5部第8章1.2.2.1)。
2回目以降の年金は、特許と同様で、前年度の満了前に納付しなければならず(実施細則第115条、審査指南第5部第9章4.2.1)、納付期限は各年の出願日に対応する日となる(審査指南第5部第9章4.2.1、4.2.1.1、4.2.1.2)。
年金は、年度が上がるに従って増額し(専利および集積回路設計に関する支払手続ガイド 付録2)、中国に常駐住所または営業場所を持たない外国人、外国企業、またはその他外国組織が年金納付する場合、法に基づき設立された専利代理機関に委託して処理する必要がある(専利法第18条第1項)。
2-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
年金の追納制度は、特許と同じである(実施細則第115条、審査指南第5部第9章4.2.1.3)。
2-4. 権利回復制度
追納期間を徒過した場合の権利回復制度は、特許と同じである(実施細則第6条、審査指南第5部第2章1.(4)、第9章4.2.1.3)。
2-5. 年金の誤納
年金の誤納返還に関する制度も特許と同じである(実施細則第111条)。
3. 意匠権
3-1. 存続期間
中国における意匠権の権利期間は、出願日から15年である(専利法第42条第1項)。
3-2. 年金の納付期限
意匠の年金制度は、特許のそれとほぼ同様である。最初の年金の支払い義務は、意匠権の設定登録時に発生し、意匠が付与された年度の年金を納付する(実施細則第114条)。出願日を基準とする年度の考え方は特許と同じである。
最初の年金は、国家知識産権局による専利権付与通知と登録手続実行通知書に基づき遅滞なく納付期限日までに納付しなければならない(審査指南第5部第8章1.2.3.1)。
2回目以降の年金は、特許と同様に、前年度の満了前に納付しなければならず(実施細則第115条、審査指南第5部第9章4.2.1)、納付期限は各年の出願日に対応する日となる(審査指南第5部第9章4.2.1、4.2.1.1、4.2.1.2)。
年金は、年度が上がるに従って増額し(専利および集積回路設計に関する支払手続ガイド 付録2)、中国に常駐住所または営業場所を持たない外国人、外国企業、またはその他外国組織が年金納付する場合、法に基づき設立された専利代理機関に委託して処理する必要がある(専利法第18条第1項)。
3-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
年金の追納制度は、特許と同じである(実施細則第115条、審査指南第5部第9章4.2.1.3)。
3-4. 権利回復制度
追納期間を徒過した場合の権利回復制度は、特許と同じである(実施細則第6条、審査指南第5部第2章1.(4)、第9章4.2.1.3)。
3-5. 年金の誤納
年金の誤納返還に関する制度も特許と同じである(実施細則第111条)。
中国における特許・実用新案・意匠(中国語「専利」)の拒絶査定不服審判制度概要(中国語「専利復審請求制度」)
拒絶査定不服審判請求制度(中国語「专利复审请求制度」、専利法第41条*1)は、次の手順で行われる。
*1:第四次改正専利法2021年6月1日施行
(1) 請求手続
出願人は、拒絶査定に不服がある場合、拒絶査定通知を受領した日から3か月以内に、国務院専利行政部門に審判請求書を提出して、審判を請求することができる(専利法第41条)。ただし、審判請求の期限に間に合わなかった場合は、審判請求の期限の満了日から起算して2か月以内に国務院専利行政部門に権利の回復を請求することができる(専利法実施細則(以下「細則」という。)第6条第2項)。
出願人は、審判請求時に専利出願書類を補正することができる(細則第66条)。
日本の拒絶査定不服審判とは異なり、後日、請求の理由を補充することはできない。
(2) 方式審査
審判請求書が規定の書式に合致するかどうかを審査する。合致していない場合は、国務院専利行政部門の指定する期限内(15日以内)に補正しなければならない(細則第65条)。この補正は書面のみによる。
(3) 前置審査
方式審査に合格した審判案件は審査官に転送され、審査官は転送された審判請求書に対して前置審査を行って、前置審査意見を作成する(専利審査指南(以下「審査指南」という。)第2部第8章8)*2。日本と異なり、補正の有無に拘わらず、すべて前置審査の対象となる。また、前置審査においては、出願人(審判請求人)に書類提出や審判官との面談の機会は与えられない。
前置審査において審査部門が拒絶査定の取消に同意する場合、国務院専利行政部門は合議体による審理を行わずに原審査部門に回して審査させる旨の決定を下す(細則第67条第2項、審査指南第2部第8章8)。審査部門が拒絶査定を維持すると判断した場合は、審判合議体により審理される。
*2 第四次改正専利法に対応する実施細則、審査指南が2024年1月20日に施行された。改正実施細則では、旧実施細則第62条が削除され、前置審査における「原審査部門に戻して審査」という条件が除外された。これにより、前置審査は拒絶査定とした審査官またはその審査官の所属部門以外で行うことが可能となった。これまで、元の審査官が前置審査において拒絶査定を取り消す判断をするケースは極めて少ない状況であったが、この改正により別の審査官による異なった判断がなされることが期待されている。
(4) 合議審理
3名または5名の合議体を結成して審理を行う(審査指南第4部第1章3)。
合議体は、審理の結果、審判請求が専利法および関連規則の規定に合致していない、または専利出願に専利法および細則の規定に明らかに違反するその他の状況が存在する(つまり原査定の拒絶決定を維持すべき)と考える場合、審判請求人に審判通知書(審判請求口頭審理通知書を含む)(中国語「复审通知书(復審通知書)」、「复审请求口头审理通知书(復審請求口頭審理通知書)」)を送付し、指定の期間内(通常、1か月以内)に回答するよう求める(細則第67条第1項、審査指南第4部第2章4.3)。この審判通知書が出されずに拒絶査定維持の決定が出されることはない。
審判請求人は、審判通知書を受領した場合は、指摘された欠陥に対して書面による回答を行う。審判請求口頭審理通知書を受領した場合は、口頭審理に参加するか、または指摘された欠陥に対して書面による回答を行う(審査指南第4部第2章4.3)。ただし、実務においては、口頭審理が行われることはほとんどない。
審判請求人は、審判通知書に回答する際に、専利出願書類を補正することができる。ただし、補正は、拒絶査定または審判通知書に指摘された欠陥を解消するものに限られる(細則第66条)。
合議体は、拒絶査定を維持する旨の決定または拒絶査定を取り消して元の審査部門に回して審査させる旨の決定を行う(細則第67条)。
出願人は、国務院専利行政部門の決定に不服がある場合、決定の通知を受領した日から3か月以内に人民法院に訴訟を提起することができる(専利法第41条)。
香港における商標公報へのアクセス方法
香港における商標公報は、香港知識産権署のサイトにおいて、公報の発行日ごとにまとめて閲覧することができる。
(1) 香港知識産権署のウェブサイト(https://www.ipd.gov.hk/sc/home/index.html)にアクセスすると図1の画面が表示される。
(2) 図1の画面の赤線で囲んである地球儀マークを選択するとプルダウンメニューが表示され、言語を選択することができる。本稿では、英語版での閲覧方法を紹介する。
(3) 図2の「Trademark」を選択するとメニューが表示され「HK IP Journal」をクリックすると図3の画面が表示される。
(4) 図3の画面上部に、「香港知識産権公報は《商標条例》第73条、《専利条例》第150A条および《登録意匠条例》第84A条に明記されている公報である。」と記載されている。図3の画面の表は、商標、専利、意匠と種別ごとにタブがあり、発行日を分けて表示されている。
香港知識産権公報は、通常、毎週金曜日に公布され、金曜日が祝日である場合、その前日に公布される。
公布日が2024年2月23日の商標公報を例として説明する。図3の画面中の「Feb 2024」の「23Feb」をクリックすると、図4の画面が表示される。
(5) 図4の画面中の「類別」(ニース分類の区分)の中で、調査したい商標の類別番をクリックすると、具体的な内容を閲覧できる。
例えば、1-5類を選択しクリックすると、2024年2月23日に公布された案件の1-5類の公報が画面に表示される(図5)。