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(中国)実用新案権侵害に基づく巨額の損害賠償の支払いが認められた事例-シュナイダー事件判決

2013年10月04日

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■概要
(本記事は、2024/1/4に更新しています。)
 URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/precedent/37937/

本件は、実用新案権に基づき、侵害行為の停止、損害賠償の支払い等が求められた事案である。本件では、被告が提出した無効審判請求の抗弁や公知技術の抗弁等は何れも認められず、一審裁判所は原告の請求を認めた。これを不服として被告は上訴したが、最終的に、巨額の補償金を支払う旨の和解が成立した。
■詳細及び留意点

【詳細】

1999年3月11日に遮断器の実用新案権を取得していた正泰集団股份有限公司(以下「正泰集団」という)は、シュナイダー電気低圧(天津)有限公司(以下「シュナイダー天津社」という)が生産・販売している型番C65Nの遮断器が自社の実用新案権を侵害したとして、2006年8月2日に浙江省温州市中等裁判所に訴訟を提起し、シュナイダー天津社などに対して、直ちに侵害行為を停止、侵害製品を廃棄し、かつ損害賠償金3.348億元を支払うことを命じるよう請求した。

これに対し、シュナイダー天津社は裁判所に管轄権異議を申し立て、また、無効審判請求することによって訴訟の停止を求めると共に公知技術の抗弁も行ったものの、いずれも裁判所に認められなかった。無効審判は2006年8月28日に特許庁審判部(中国語「专利复审委员会」)に申立てられたが、その無効審判において、正泰集団は、クレーム1とクレーム2を組み合わせて一つのクレームにする(独立クレーム)というクレームの訂正を行い、特許庁審判部は2007年4月25日に訂正後の実用新案権を有効とする審決を下した(その後、シュナイダー天津社は審決取消訴訟を提起したが、最終的に北京市高等裁判所は、その実用新案の有效性を維持する判決を言い渡した)。

一審裁判所は、侵害製品の構成が係争実用新案の権利範囲に属し、侵害に該当すると判断するとともに、シュナイダー天津社の提供したデータに基づき、2004年8月2日から2006年7月31日までの間に侵害製品を販売することにより得た営業利益が3.559億元であることを確認し、2007年9月26日にシュナイダー天津社に対して、直ちに侵害行為を停止し、正泰集団に損害賠償金3.348億元を支払う旨を命じる判決を言い渡した。

シュナイダー天津社はこれを不服として上訴した。浙江省高等裁判所は、二審を経て、数回の調停を行い、かつ、2009年4月15日に公に開廷審理を行った。シュナイダー天津社及びその親会社であるフランスシュナイダー社と正泰集団は和解に到達した。そして、本事件において、シュナイダー天津社は、正泰集団と法廷で和解合意書を締結し、シュナイダー天津社が調停書の発効日から15日以内に正泰集団に補償金人民幣1.575億元を支払い、仮にシュナイダー天津社が指定期間内に指定金額を支払わない場合、正泰集団は一審判決の執行を請求する権利を有することを認めた。2009年4月24日、シュナイダー天津社は、調停書における全ての事項を履行した。

 

【留意事項】

本事件は、最高裁判所が公布した2009年中国裁判所知的財産司法保護10大事件の1つであり、世界的に比較的大きな反響を起こした。本件において、正泰集団は特許権ではなく実用新案権に基づき訴訟を提起し、第一審において損害賠償請求が認められ、最終的には和解という形で解決されており、この事件の結果は、「実用新案は小発明にすぎず、技術程度も低いため無効になりやすく、大きな価値を有しない」というイメージを覆した。

上記の訴訟過程からすれば、シュナイダー天津社は正当な対抗手段を可能な限り利用して抗弁したものの、最終的には巨額の損害賠償を命じられている。このことから、中国においては、実用新案も特許と同様に権利者の有力な武器となり得るものであり、その権利行使は重要な意義を有するといえるので、積極的な権利取得を知財戦略の一つとして検討することが望ましいと言える。

■ソース
・浙江省高級人民法院民事調停書2009年4月15日付(2007)浙民三終字第276号
http://ipr.court.gov.cn/sdjdws/201104/t20110413_98894.html ・2009年中国裁判所知的財産司法保護10大事件
http://www.court.gov.cn/qwfb/sfwj/tz/201006/t20100613_6075.htm
■本文書の作成者
北京林達劉知識産権代理事務所
■協力
一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻
■本文書の作成時期

2013.02.04

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