国別・地域別情報

ホーム 国別・地域別情報 アジア 出願実務 | アーカイブ 商標 台湾における商標法の保護客体―非伝統的商標

アジア / 出願実務 | アーカイブ


台湾における商標法の保護客体―非伝統的商標

2012年12月25日

  • アジア
  • 出願実務
  • アーカイブ
  • 商標

このコンテンツを印刷する

■概要
(本記事は、2019/4/18に更新しています。)
 URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/16907/

文字や図形などから構成される伝統的商標に加えて、音、動き或いは色彩等からなる非伝統的商標も保護対象としている。商標法に列挙した保護対象は例示列挙であり、識別性を有する全ての標識を保護客体としている。非伝統的商標は、商標の特定方法や指定商品との関係で機能性を有してはならないという特徴がある。
■詳細及び留意点

【詳細】

台湾の商標法第18条第1項では、識別性を有するすべての標識を保護客体とし、文字、図形、記号、色彩、立体形状、動き、ホログラム、音等からなる商標を保護対象として例示している。本稿では、非伝統的商標の出願書類の構成や非伝統的商標のタイプ別の出願記載事項の例を中心に説明する。

 

(1)出願書類の構成

(ⅰ)願書(中国語「申請書」)

願書に、出願人、商標の図、指定使用商品又は役務を明記する点は伝統的商標と同じである(商標法第19条第1項)。出願商標の特定について、伝統的商標は商標の図のみで足りることが多いが、非伝統的商標は商標の図に加え、商標の説明及び商標の見本を用意する場合が増えるだろう(商標法施行細則第13条第2項-第4項、非伝統商標審査基準2.1、2.1.2、8)。

(ⅱ)商標の図(中国語「商標圖樣」)

商標の特定は商標の図で行うのが基本であり、平面的な静止画像によって表現する。音の商標であれば、五線譜により商標を構成する音を商標の図に示す。商標の図の例を以下に示す。商標を構成しない商品の部分は点線で示されている。図1は位置商標、図2は色彩商標の例である。なお、商標の図の補正は、実質的な変更に当たらない場合を除き、することができない(商標法第23条)。

位置商標、色彩商標の例

位置商標、色彩商標の例

(ⅲ)商標の説明(中国語「商標描述」)

出願商標を特定するために記載するために、図で表した商標を文章で説明する。上記図1は、「本件は位置商標であり、靴のかかとの中央部分から靴底まで伸びる赤色のテープ状の構成によって標示されている。点線部分は靴の形状を示しているもので、商標の一部ではない。」と説明できる。上記図2であれば、「本件は色彩商標であり、赤、黄色、赤がそれぞれ面積の三分の一を占める色の組み合わせを以って、商品容器の表面の上部から下部に分布しているものである。点線部分の容器形状は商標の一部ではない。」と説明できる。

(ⅳ)商標の見本(中国語「商標樣本」)

商標の見本としては、商標の実物又は商標を記録した電子メディアを挙げることができる。商標の説明と同様、審査官による出願商標の理解を容易にするためのものである。非伝統的商標のどのタイプの場合に商標の見本が必要であるかは、現地代理人に確認する必要がある。

 

(2)非伝統的商標のタイプ別記載例

(ⅰ)色彩商標(中国語「顏色商標」)

色彩商標を商標の図で表す場合、下記図3が示すように、商標の色彩を施す部分を着色し、それ以外の部分を点線で表現する。加えて、商標の説明も用意する。図3の商標であれば、「本件は色彩商標であり、商標の図に紫で示されている部分は、ナットの非金属のOリングに使用される部分である。点線部分は商標の形状を示しているもので、商標の一部ではない。」と説明できる(商標法施行細則第14条、非伝統商標審査基準4.2.2、非伝統商標審査基準8)。

色彩商標、立体商標の例

色彩商標、立体商標の例

(ⅱ)立体商標(中国語「立體商標」)

・ 立体商標を商標の図で表す場合、上記図4が示すように、正面、背面、左側面右側面、左側面、底面、平面の六面が特定できるように表示する。当該図面は6つ以内に限られる。六面図の間で不一致がある場合は補正命令の対象となる(非伝統商標審査基準3.2.2)。

・ 上記図4の商標は、「本件の立体商標は、願書に添付した立体図によって示す通り、立っている形態で、暖色の台湾レッド(PANTONE-RUBINE RED)を基調とし、頭部に白字で英語「mit」と書かれたスウエットを被り、胸部に“台湾”の図が入った銀灰色の服装をした笑顔のキャラクターによって構成されるものである。」と説明できる(商標法施行細則第15条、登録第1443198号商標資料検索データベース)。上記図4の立体商標は色彩や文字も商標の構成要素であるため、商標の説明では、立体形状に加え、その他の構成要素についても説明しなければならない。

 

(ⅲ)動きの商標(中国語「動態商標」)

動きの商標を商標の図で表す場合、下記図5のように、動きが変化する過程を静止画像で表示する。静止画像は6つ以内に限られる。商標の説明を用意して動く映像の連続変化過程を順番に説明すると共に、録画した電子メディアを添付する。下記図5の商標は、「本件は動きの商標であり、商標の図の通り、2つの画像を含む、人差し指と中指でつくったチョキの形状が連続して開合する動きのものである」と説明できる(商標法施行細則第16条、非伝統商標審査基準6.2)。

動きの商標、ホログラム商標の例

動きの商標、ホログラム商標の例

(ⅳ)ホログラム商標(中国語「全像圖商標」)

ホログラム商標の場合、商標の図はホログラムを表現する画像となり、画像数は4つ以内に限られる。視角の変化により画像が異なる場合は、商標の説明を用意し、その変化の状況を説明する。上記図6の商標の場合、「本件はホログラム商標であり、背景は黒地に青字で英語VIDEO FUTUREと記載されている。その上に白字でアルファベットのVFと標示された3つの球体が浮かんでおり、球体間には青色の波状の線によって相互に繋がっている」と説明できる(商標法施行細則第17条、非伝統商標審査基準7.2)。

 

(ⅴ)音の商標(中国語「聲音商標」)

音の商標の場合、商標の図では当該音を表現する五線譜・数字譜で表示する。五線譜・数字譜で音を表現することができない場合、商標の図は当該音声の文字説明とする。所定の電子メディアを添付すると共に、商標の説明を用意する。下記図7については、「これは願書に添付されたディスク中の音による音の商標である。本件商標は、音符のミ、ラ、ソ、ファ、ミ、ド、レ、シ、ド等のリズムの組み合わせによって構成されており、歌詞は「新一点霊B12」である」と説明できる(商標法施行細則第18条、登録第1150436号商標資料検索データベース)。下記7図では、ド・レ・ミの音階を数字で表している。

 

音の商標、位置を示す商標の例

音の商標、位置を示す商標の例

(ⅵ)位置を示す商標(中国語「位置商標」)

・ 位置商標は、位置が識別するための重要な特徴となっている。その図、色又は立体形状が特定位置に使用されなければ、出所標示機能が喪失する可能性がある場合、位置商標の性質を有するといえる。上記図8は、靴のかかとの中央部分から靴底まで伸びる赤色のテープ状の標示であり、当該赤色のテープ状の標示が同特定位置から離れると、その識別性を喪失する。

・ 位置商標を出願する場合、商標の図は、商標の商品又は役務に使用する位置を点線で示す。商標の説明では、商標本体及び使用方法、位置等について詳細に説明する。上記図8の場合、「本件商標は位置を示す商標であり、靴のかかとの中央部分から靴底まで伸びる赤色のテープ状の構成によって標示されている。なお、点線部分は靴の形状を示しているもので、商標の一部ではない。」という説明が考えられる(非伝統商標審査基準8)。

 

(ⅶ)連合式非伝統的商標(中国語「聯合式非傳統商標」)

商標は文字、図、色、立体形状、動き、ホログラム又は音等の各構成要素の組合せからなる場合もある。例えば、下記図9は動き(左側)と音(右側)からなる商標であり、商標の説明において「本件は動きと音の商標の連合であり、動きについては、大人の手と子供の手によって構成された、4つの画像を含むものである。第1から第2の画像は大人の手と子供の手が次第に近づき、第3から第4にかけて大人の手と子供の手が接触し、握られる。また、動画に付随する音は第5図の楽譜に示す音によって構成される」と説明できる(非伝統商標審査基準9)。

動きと音からなる商標の例

動きと音からなる商標の例

(3)機能性(中国語「功能性」)

非伝統的商標の拒絶理由の特徴として、機能性がある。商品の形状、包装、音、色又は匂い等からなる特徴が、同業の競合者の使用上又は技術上不可欠なもの、商品又は役務のコスト又は品質に影響を及ぼすものである場合、独占権の設定は社会的に好ましくないため、機能性を有しているとして登録されない。建築物の断熱板商品に銀色の色指定をする場合、一般的に危険又は警告を表す赤色又はオレンジからなる色彩商標を交通警示器具商品等を指定商品とする場合が考えられる(非伝統商標審査基準,4.2.4)。

 

(4)識別性(中国語「識別性」)

非伝統的商標も識別性が要求されるが、その構成要素となる色彩、音、動き及びホログラムなどは、商品の装飾、包装、機能、偽造防止のラベル又は販売促進手段として利用されることが多く、識別標識と認識されないため、識別性が否定されやすい。識別性が弱いと思う場合は、使用による識別性獲得を主張することを想定し、使用期間の長短、商品又は役務への使用量、販売状況、広告による支出額、消費者調査報告書等の資料を用意する(商標法第18条第2項、第29条第2項、商標法施行細則第29条)。

 

【留意事項】

非伝統的商標を出願する場合は、審査官の理解を助ける目的から、商標の図に加え、商標の説明や商標を記録した記録メディア等を出願時に提出するかどうかを現地代理人と事前に検討を行うのが良い。

 

■ソース
台湾商標法
台湾商標法施行細則
非伝統商標審査基準
台湾特許庁ウェブサイト
http://www.tipo.gov.tw/ch/index.aspx
■本文書の作成者
聖島国際特許法律事務所(作成:2012年8月15日) 
特許庁総務部企画調査課 古田敦浩(作成:2012年8月15日)
特許庁総務部企画調査課 根本雅成(改訂:2013年6月17日)
■協力
一般財団法人比較法研究センター 木下孝彦
■本文書の作成時期

2013.06.17

■関連キーワード