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日本とロシアの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
2019年08月29日
■概要
(本記事は、2023/12/21に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/37911/
日本とロシアの実体審査においては、拒絶理由通知への応答期間が異なる。具体的には、実体審査において60日(在外者でない場合)または3月(在外者の場合)の応答期間が設定されている日本とは異なり、ロシアにおける応答期間は2月(旧法適用出願)、もしくは、3月(改正法適用出願)である。また、応答期間の延長に関しては、ロシアのほうが条件は緩く、また比較的長期間の延長が可能である。
■詳細及び留意点
<日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長>
1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3月
条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10 1(2)アa意見書、2(2)アa意見書
・日本特許法 第50条(拒絶理由の通知)
審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号または第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
・日本特許法 第17条の2第1項(願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の補正)
特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第一項において準用する場合を含む。)および第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。
・日本特許庁 方式審査便覧 04.10 1(2)アa意見書、2(2)アa意見書
1 手続をする者が在外者でない場合
(2)指定期間
ア.次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許および実用新案に関しては60日、意匠(国際意匠登録出願における拒絶の通報に応答する場合を除く。)および商標(国際商標登録出願における命令による手続補正書を提出する場合及び暫定的拒絶の通報に応答する場合を除く。)に関しては40日とする。ただし、手続をする者またはその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許および実用新案に関しては60日を75日と、意匠および商標に関しては40日を55日とする。
a. 意見書(特50条*3、商15条の2*4、15条の3第1項、商附則7条*5)
2 手続をする者が在外者である場合
(2)指定期間
ア.次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、上記1(2)コ.の国際意匠登録出願において拒絶の通報に応答する場合の意見書の提出及び意匠法第9条第4項に基づく応答書面の提出についての指定期間、及びサ.の国際商標登録出願における命令による手続補正書の提出についての指定期間を除き、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、上記1(2)ア.の手続をする者が在外者でない場合の期間と同様とする。
a. 意見書(特50条*3、商15条の2*4、15条の3第1項、商附則7条*5)
*3 特50条:特67条の4、意19条において準用
*4 商15条の2:商65条の5、67条2項、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)附則12条において準用
*5 商附則7条:商附則23条
2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大2月まで延長可能
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3月まで延長可能
条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10
・日本特許法 第5条第1項(期間の延長等)
特許庁長官、審判長または審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期間を延長することができる。
2 審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期日を変更することができる。
・日本特許庁 方式審査便覧 04.10 1(4)ア、2(4)イウ
1 手続をする者が在外者でない場合
(4)指定期間の延長(特・実・意)
次に掲げる特許法及び実用新案法並びに特許登録令、実用新案登録令及び意匠登録令の手続の指定期間については、指定期間内又は指定期間に2月を加えた期間内の請求により、2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。
ア.上記(2)ア.の意見書(特50条の規定によるものに限る)。ただし、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項又は第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
2 手続をする者が在外者である場合
(4)指定期間の延長(特・実・意)
イ.特許法第67条の4の規定による意見書の提出についての指定期間は、「手続書類の翻訳のため」という理由により1月単位で3回まで期間延長請求することができる。
ウ.上記2(2)ア.a.の特許法第50条の規定による意見書の提出についての指定期間は、請求により延長することができる。延長する期間は以下のとおりとする。
a.指定期間内の延長請求は、1回目の請求により2月延長し、2回目の請求により1月延長することができ、2回の請求により最長3月の期間延長をすることができる。
b.指定期間経過後の延長請求は、指定期間に2月を加えた期間内の請求により2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。また、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項又は第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
<ロシアの実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長>
1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・拒絶理由通知に対する追加資料の要求または出願に反駁する資料の写しの送付から3月以内
条文等根拠:民法 第1386条第6項
・ロシア改正連邦民法 第1386条第6項(発明出願の実体審査)
- 発明出願の実体審査の間,知的所有権を所管する連邦行政機関は,実体審査又は特許の付与に関する決定に不可欠な追加資料(補正されたクレームを含む)を,出願人に要求することができる。この追加資料は,出願の実体を変更することなしに,要求又は出願に反駁する資料の写しの送付から3月以内に提出されるものとする。ただし,当該写しに関しては,当該連邦行政機関による要求から2月以内に,出願人がこれを請求することを条件とする。所定の期間内に出願人が請求された資料を提出するか又は期間の延長を求める申立を提出しない限り,出願は取り下げられたものとみなされる。当該連邦行政機関は,請求資料の出願人による提出のために定められた期間を10月を越えない範囲で延長することができる。
出願の実体審査において,発明の単一性要件が満たされていないことが確認された場合は,本法第1384条第4段落の規定が適用される。
出願人が追加資料を提出した場合は,当該資料が出願の本質を変更する(第1378条)ものであるか否かが確認される。
出願の本質を部分的に変更する追加資料は検討されない。出願人は,かかる資料を独立出願として提出することができる。知的所有権を所管する連邦行政機関は,この旨を出願人に通知するものとする。
2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・最大10か月まで延長可能
条文等根拠:民法第1386条第6項、ロシア連邦経済開発省令第316号第8条
・ロシア改正邦民法第1386条第6項(発明出願の実体審査)(前出)
・ロシア連邦経済開発省令第316号第8条
- 要求された文書の提出期限を延長する申請の提出は、
a)ロシア特許庁が、民法第1384条第3項、第4項または1386条第6項に基づいて要求書を送付した日から、または、出願人が当該要求書の送付から2月以内に当該写しを請求した場合には出願に反駁する資料の写しを送付した日から3月以内になされなければならない。
(以下省略)
日本とロシアの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
日本 | ロシア | |
応答期間 | 60日(ただし在外者は3か月) | 3月 |
応答期間の延長の可否 | 可 | 可 |
延長可能期間 | 最大2月
(在外者は最大3月) |
最大10月 |
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2018.12.05