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台湾における新規性喪失の例外について
2012年10月09日
■概要
(本記事は、2020/4/14に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18445/
所定の公知事実については、専利法上の新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる。特許・実用新案出願、意匠出願のいずれにも当該規定が設けられている。
■詳細及び留意点
【詳細】
1.新規性喪失の態様
(ⅰ) 刊行物への掲載(専利法第22条第1項第1号)
・ここでいう刊行物とは、公開発行することを目的として、文字や図面などの方式で記載する情報伝達媒体のことを指す。世界のどのような場所又は文字で公開されているかを問わず、手書きのものでも構わない。インターネット上の情報の他、学生論文、交談記録、講演原稿、放送内容も含まれる (専利審査基準第二篇特許の実体審査第三章特許の要件2.5.2.1)。
・公開発行とは、実際に公衆に開示することのみならず、知られる状態に置く場合も含まれる。公衆が実際に閲覧してその内容を知る必要はない。書籍や学術論文を図書館の閲覧コーナーに置く、或いは図書館の図書目録に編集された状態も公開発行に該当する。但し、内部刊行物は、外部に公開頒布された証拠がない限り、公開発行に該当しない (専利審査基準第二篇特許の実体審査第三章特許の要件2.5.2.3)。
・審査で引用される公開発行の刊行物は、当該専利の出願日より前(出願当日を含まない)のものとなり、優先権を主張する場合は、優先日より前(優先権当日を含まない)のものとなる。重版の刊行物は、元出版発行日が公開日となる(専利審査基準第二篇特許の実体審査第三章特許の要件2.5.2.2)。
(ⅱ) 公然実施(公用)(専利法第22条第1項第2号)
ここでいう実施とは、物品或いは方法に技術・機能を応用する実施行為の他、製造、販売の申し出、販売、輸入する行為も含まれる(専利審査基準第二篇特許の実体審査第三章特許の要件2.5.3)。これらの実施行為により技術内容が開示されるか、公衆に知られる状態にするのが、ここでいう公然実施である。公然実施があれば、実際に公衆に知られたかは問わない(専利審査基準第二篇特許の実体審査第三章特許の要件2.5.3)。
(ⅲ) 公衆に知られていること(公知)(専利法第22条第1項第3号)
上記以外の行為により技術開示がなされて公知になった状態が該当する。例えば、会話、講演、会議、ラジオ放送やテレビ放送、模型やサンプルを展示することが挙げられる(専利審査基準第二篇特許の実体審査第三章特許の要件2.5.4)。
2.新規性喪失の例外(専利法第22条第3項)
公知になった場合でも、研究又は実験(専利法第22条第3号第1号)、刊行物による発表(専利法第22条第3項第2号)、政府主催又は許可された展覧会での陳列(専利法第22条第3項第3号)、出願人の意に反した漏洩(専利法第22条第3項第4号)のいずれかによる公知であれば、その公知事実に基づいて新規性を否定されない。
(ⅰ)研究又は実験
研究は「発明の技術内容についての検討或いは改良すること」と定義され、実験は「発明の技術内容を具体的に応用し、発明の技術効能を検証すること」と定義されている。テスト販売やビジネス・コマーシャルを目的とする公開的な実験は含まれない(専利審査基準第二篇特許の実体審査第三章特許の要件2.6.1)。
(ⅱ)刊行物
上記(1)(ⅰ)を参照。なお、出願人が発表者でなければ本規定の適用は 受けられない(専利審査基準第二篇特許の実体審査第三章特許の要件2.6)。
(ⅲ)展示会
台湾政府が主催又は認可する国内外の展覧会をいう(専利審査基準第二篇特許実体審査第三章特許の要件2.6.2)。以下のQ&Aによれば、台湾で開催される展覧会は産業組合、工商団体或いは財団法人が主催するものが多く、政府の認可等を得ていないものもあるので、事前に確認する必要がある。
http://www.tipo.gov.tw/ch/FAQ_AnswerPage.aspx?faqid=651&path=2805
(ⅳ)出願人の意に反する漏洩
他人が出願人の同意を得ずに発明の内容を漏洩して公知にすることをいう。例えば、秘密保持契約書に{ひみつ ほじ けいやくしょ}違反して公知にするなどが該当する(専利審査基準第二篇特許の実体審査第三章特許の要件2.6.3)。
(ⅴ)適用可能期間
新規性喪失した日の翌日から起算して6ヶ月以内である。新規性を喪失してから日本に特許出願してパリ優先権主張を伴う専利出願を台湾にする場合、新規性喪失の例外規定が適用される期間は、パリ優先権主張の有無に関係なく、新規性喪失した翌日から6ヶ月なので、注意を要する(専利審査基準第二篇特許の実体審査第五章優先権1.2.6)。
(ⅵ)証明書
新規性喪失の例外の適用を受ける意思表示は願書で行い、新規性喪失の例外が適用される事実を示す証明書を添付する必要がある。証明書は形式如何を問わず、規定された例外事由に該当することが示されていればよい(専利法施行細則第16条第3項)。
3.実用新案出願の場合
専利法の特許出願における新規性喪失の例外の規定を準用しており、特許出願の新規性喪失の例外規定の適用と同様の適用を受けることができる(専利法第120条で準用する第22条第3項)。
4.意匠出願の場合
意匠出願には独自の新規性喪失の例外の規定があり(専利法第122条第3項)、刊行物による発表、政府主催等の展示会での展示、および出願人の意に反する漏洩について、新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる。
【留意事項】
新規性喪失の例外規定を適用しても、出願日が新規性喪失した日に遡及するわけではない。つまり、新規性喪失の例外の適用を受けて特許出願をしても、第三者が同じ技術を出願前に公知にしていれば、その特許出願は新規性がないとして拒絶される。また、第三者が同じ技術を先に特許出願している場合も、先願主義に従い、後の特許出願は拒絶される。新規性喪失の例外の適用を受けられる場合でも、このようなリスクを避けるため、できるだけ早く出願する必要がある。
■ソース
・台湾専利法http://law.moj.gov.tw/LawClass/LawContent.aspx?PCODE=J0070007 ・台湾専利審査基準第二編特許実体審査第三章特許要件
http://www.tipo.gov.tw/ch/Download_DownloadPage.aspx?path=1626&Language=1&UID=21&ClsID=42&ClsTwoID=92&ClsThreeID=0
■本文書の作成者
聖島国際特許法律事務所(作成:2012年8月8日)特許庁総務部企画調査課 根本雅成(改訂:2013年6月17日)
■協力
一般財団法人比較法研究センター 木下孝彦■本文書の作成時期
2013.06.17