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中国における国内出願とマドプロ出願のメリットとデメリット

2018年09月04日

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■概要
(本記事は、2022/11/10に更新しています。)
 URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/27058/

中国で商標を登録するには、国家工商行政管理総局商標局に直接出願するルートと、「マドリッド協定議定書」に基づいて本国の商標出願または登録を基礎に中国を指定することにより出願するルート(マドプロ出願)の2つがあり、一般的に、後者のマドプロ出願の方が、本国から一括して迅速に世界各国における商標の保護を図ることができ、費用は安く、商標の管理も容易であるメリットが挙げられる。2つの出願方法のメリットとデメリットを解説する。
■詳細及び留意点

中国で商標を登録するには2つのルートがある。国家工商行政管理総局商標局(以下「中国商標局」とする)に直接出願するルート(以下「中国国内出願」とする)と、「マドリッド協定議定書(マドリッド協定プロトコル)」(以下「マドプロ」とする)に基づいて本国の商標出願または登録を基礎に中国を指定することにより出願するルート(以下「マドプロ出願」とする)である。一般的に、マドプロ出願の方が、本国から一括して迅速に世界各国における商標の保護を図ることができ、費用は安く、商標の管理も容易であるメリットが挙げられる。しかし、近年中国国内出願も多区分制度の導入や、官費の減額により、費用負担が軽減し、さらに中国商標局が審査期間を短縮する措置を積極的に導入してきていることで、マドプロ出願の方が中国国内出願に比べて圧倒的にメリットが多いとは言えない状況になりつつある。また、中国には独特な商標法制度およびその運用が存在し、さらに言語も異なるので、ルートを選択する際には特別な考慮が必要である。本稿では、2つの出願方法のメリットとデメリットを次の側面から解説する。

 

手続の簡易さおよび権利の安全さ

 マドプロ出願は、本国において基礎出願もしくは基礎登録が必要となるが、各国ごとに出願する必要がなく、一つの出願で複数のマドプロ締結国への権利取得が可能であるので、複数国で同じ商標の保護を求める場合にはマドプロ出願を利用するのが有利である。さらに、出願後にも国、商品・役務を追加することができるので、実際の事業計画に基づき出願を修正できる点もそのメリットの一つである。また、名義・住所変更、更新手続を一括で一つの書類で行うことができるので、コスト・手間の意味では大きなメリットがあると言える。

 一方、マドプロ出願は、セントラルアタックの問題を抱える。すなわち、国際登録の日から5年以内に本国における基礎出願・基礎登録に対し拒絶、取下、放棄、無効、取消が成立した場合、国際登録も取消されてしまうというリスクがある。これに対して、中国国内出願の場合、登録後に無効または取消の事由がない限り、権利は安定的である。

 

審査スピード

 マドプロ出願と中国国内出願とは審査期間にも差異がある。中国商標局はマドプロ出願の場合、WIPOの通知の受領日から12ヶ月以内にマドリッド協定に基づくマドプロ出願の審査を完了しなければならず、さらに18ヶ月以内にマドリッド議定書に基づくマドプロ出願の審査を終結しなければならない。

 

 これに対して中国国内出願は、2014年改正法施行後、マドプロ出願よりも早くに登録権利を取得できる場合がある。中国商標法は、出願の審査期間を中国商標局が出願書類を受領した日から9ヶ月以内と規定している。2017年11月17日に商標局が発表した「商標出願の便利化の改革推進と確実に商標出願の効率を上げるための意見」において、中国商標局は、2018年末までに審査期間を6ヶ月に短縮することを目指すことを目標として掲げた。中国での権利化を急ぐ場合は、中国のみ国内出願の方法で早期に登録を取得できるか試すことも考えられる。

 

商標登録証

 中国国内出願の場合、中国商標局は登録公告後に『商標登録証』を発行するが、マドプロ出願には『商標登録証』が発行されないので、登録後に中国商標局に別途『国際商標登録証明』の発行を申請する必要がある。

 

指定商品・役務記載

 中国国内出願の場合、出願後に、中国商標局から補正通知がない限りは、商品・役務を補正することはできない。一方マドプロ出願は、出願後、中国商標局が審査を経て拒絶査定を下した後でも指定商品・役務の修正が可能というメリットがある。

 

 中国で商標を登録出願する際には、中国商標局が発行した《類似商品・役務区分表》(または中国商標局が別途公表した受理される非規範的な商品・役務リスト)に収録された規範的な商品・役務の記載を忠実に指定する必要がある。いわゆる積極的表記の指定商品役務で出願した場合、方式審査の段階で中国商標局から補正指令を受ける可能性が極めて高い。一方、マドプロ出願の場合、中国商標局は、《類似商品・役務区分表》に記載のない商品・役務をそのまま認める傾向があった。その為、《類似商品・役務区分表》にない商品・役務の権利化は、マドプロ出願が推奨される。しかし近年、中国商標局はマドプロ出願に関しても《類似商品・役務区分表》にない商品・役務に対する補正指令を発する場合がある点を留意する必要がある。

 

 また、《類似商品・役務区分表》には、中国固有の商品・役務も収録されているため、これらの商品・役務についての権利化が必要な場合は、中国国内出願を利用することが推奨される。

■ソース
・中国商標法
・中国商標審査基準
■本文書の作成者
Bird & Bird 法律事務所
■協力
日本技術貿易株式会社
■本文書の作成時期

2018.01.12

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