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中国における早期審査のための「特許審査ハイウェイ(PPH)」活用

2018年07月24日

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■概要
(本記事は、2022/11/22に更新しています。)
 URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/27133/

中国における特許出願の早期審査を請求する方法として、「特許審査ハイウェイ(Patent Prosecution Highway: PPH)」の活用が挙げられる。出願に含まれる少なくとも一つ以上のクレームが第一出願庁(Office of First Filing: OFF)により登録可能であると判断された場合、一定の申請条件を満たしていれば、中国知識産権局を第二出願庁(Office of Second Filing: OSF)として、必要書類とともに「特許審査ハイウェイ」に基づく早期審査を請求することができる。
■詳細及び留意点

特許審査ハイウェイ(Patent Prosecution Highway:PPH)は、出願に含まれる少なくとも一つ以上のクレームが第一出願庁(Office of First Filing: OFF)により登録可能であると判断された場合に、関連する第二の出願が一定の条件を満たせば、出願人がOFFの審査結果に基づき、第二出願庁(Office of Second Filing: OSF)に早期審査を請求できる制度のことである。

通常、PPHは、通常型PPHまたは特許協力条約型PPH(PCT-PPH)のいずれかの形態を取る。通常型PPHは、OFFの審査結果、すなわち審査意見通知書や認可決定に基づくOSFに対しての請求である。PCT-PPHは、PCT国際段階の審査結果、すなわち国際調査機関の見解書、国際予備審査機関の見解書、または国際予備審査報告書に基づくOSFに対しての請求である。

PPHは、二国間または多国間協定に基づき実施される。現在、中国国家知識産権局(SIPO)は、日本など二十数か国とPPH試行プログラムを実施している。欧州特許庁、日本特許庁、韓国特許庁、SIPOおよび米国特許商標庁の5大特許庁は、2014年1月6日より、3年間のPPH試行プログラムを開始しており、5大特許庁のPPH試行プログラムは、2017年1月6日より3年延長する。

日本、米国、韓国、ロシア、フィンランド、オーストリア、スペイン、スウェーデン、イスラエル、およびチリなどの国とは、通常型PPHまたはPCT-PPHのいずれかを中国において申請することができる。しかし、ドイツ、デンマーク、メキシコ、ポーランド、シンガポール、カナダ、ポルトガル、イギリス、アイスランド、ハンガリー、チェコ共和国、およびエジプトなどの国とは、通常型PPHしか中国において申請することができない。上記5大特許庁のPPH試行プログラムにおいては、中国において通常型PPHまたはPCT-PPHのいずれかを請求することができ、しかも5大特許庁の通常型PPHに関しては、いずれかの庁(必ずしもOFFである必要はない)から、中国出願の少なくとも1つ以上のクレームが登録可能であると認められていれば良い。

 

  1. 申請条件

SIPOに対するPPH請求の提出申請は、以下の条件を満たさなければならない。

(i)外国出願と当該中国出願とが、対応関係を有していること。5大特許庁および中国と各国とのPPH試行プログラムの「SIPOへのPPH申請手続」には、規定を満たしている各種の対応関係が列挙されている。

(ii)対応出願において、特許が付与されていない場合であっても、登録可能または特許可能性ありと判断された一つ以上のクレームがあること。

(iii)当該中国出願におけるすべての係属中のクレームが、補正されていない原クレームであるか補正されたクレームであるかを問わず、登録可能または特許可能性ありと判断された一つ以上のクレームと充分に対応すること。

(iv)当該中国出願が公開されていること。

(v)当該中国出願が、実体審査段階に入っていること。認められる一つの例外は、出願人が実体審査請求と同時にPPH請求を提出する場合である。ただし、こうした特例が認められる場合であっても、その他の条件を満たさねばならず、実体審査請求を提出する際に、中国出願がまだ公開されていない場合、PPH請求を提出することができない。

(vi)PPH請求の提出前および提出時、SIPOが当該出願の審査を行っていないこと。すなわち、審査部からオフィスアクションを受領していないこと。

 

  1. 必要書類

SIPOへの手続に従ってPPH請求を提出する場合、PPH試行プログラムへの参加請求とともに(「SIPOへのPPH申請手続」の規定により、PPH請求をする場合、「PPHプログラム請求表」に従って)、下記書類を提出しなければならない。

(i)対応出願に関して発行されたすべての審査意見通知書の写しとその中国語訳または英語訳

(ii)登録可能または特許可能性有りと判断された請求項の写しとその中国語訳または英語訳

(iii)審査官により引用された文献の写し(翻訳不要)。参考目的のみであって、拒絶理由を構成しない引用文献は提出の必要がない。特許文献は提出しなくても良いが、ただし、SIPOが特許文献を所持していない場合であって、審査官からの要求があった場合には、出願人はこれら文献を提出しなければならない。また、非特許文献の場合、必ず提出しなければならない。なお、提出する必要がない文献であってもPPH「請求表」に記載しなければならない。

(iv)SIPO出願におけるすべての係属中のクレームが、対応出願における登録可能または特許可能性ありと判断されたクレームと充分に対応することを説明する「クレーム対応表」。下記3つの状況について充分に対応していると認定されうる。

(a)完全に同一、

(b)SIPO出願のクレームと対応出願のクレームとの間の引用関係の補正、

(c)SIPO出願のクレームが、明細書から特定の技術的特徴を対応出願のクレームに組み込むことにより作成されている。

 

  1. 承認決定

SIPOは、PPH請求および添付書類を受領した後、当該出願の早期審査を認めるか否かを決定する。SIPOが申請を承認すると、当該出願はPPH手続に基づき早期審査の特殊状態を獲得する。

PPH請求が上記要件を完全に満たしていない場合、出願人はその結果および結果に不備のある理由について通知を受ける。SIPOは、状況に応じて、申請に存在する不備を解消できるよう、出願に対して補正する機会を一度与える。一回目のPPH請求が拒絶された場合、出願人は二回目のPPH請求を提出することができるが、ただし、一回に限る。

実務において、PPH請求に不備があった場合、審査官は補正の機会を与えることなく、早期審査を否定する決定を通知する決定通知書を発行することが多い。不備については、実質的な不備とされるものは少なく、多くの不備は下記のような方式上の不備である。

(例1)通知書の標題の中国語訳が審査官が認める翻訳標題と一致していない。

(例2)外国出願と中国出願との間に対応関係はあるものの、「対応関係」が審査官に認められる表現によるものでない。

(例3)クレームは実質的に対応しているものの、「対応関係」が審査官の認める表現によるものでない。

(例4)「請求表」に、審査意見通知、引用文献が漏れている。

(例5)審査意見通知が添付されていないあるいは添付漏れがある。

■本文書の作成者
中原信達知識産権代理有限責任公司
■協力
日本技術貿易株式会社
■本文書の作成時期

2018.02.05

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