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中国における専利権侵害訴訟手続の概要

2017年07月27日

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■概要
(本記事は、2024/4/2に更新しています。)
 URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/38480/

専利権(特許、実用新案、意匠を含む)が侵害された場合、権利者が取りうる法的手段として、人民法院に専利権侵害訴訟を提起する司法ルートによる保護と、地方知的財産権局へ紛争の処理を申し立てる行政ルートによる保護が存在する。司法ルートによる保護は、一つの訴訟手続において差止請求と損害賠償の双方を請求することができ、かつ終局的な解決手段であるため、かなり頻繁に利用されており、訴訟件数は毎年増加している。そこで本稿では、専利権侵害訴訟手続の概要について紹介する。
■詳細及び留意点

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専利権侵害訴訟手続フローチャート図

 

1.裁判制度

 

 中国の裁判制度は「四級二審制」とよばれており、全部で四つの等級の人民法院から構成され、当事者が第1審の判決に不服な場合は、一度だけその一等級上の人民法院に上訴をする機会が与えられる(民事訴訟法第164条)。上訴があった場合は、一級上の人民法院により第2審手続が行われ、その第2審判決が確定判決となり、効力が発生する(民事訴訟法第175条)。

 

 なお、確定判決に重大な瑕疵がある場合は、当事者は確定判決の人民法院の一級上の人民法院に再審を申し立てることができるが、再審手続を行うか否かは、申立てを受けた人民法院が決定するものであり、再審理由もかなり限られている(民事訴訟法第198-200条)。

 

2.管轄

 

 専利権侵害訴訟は、原則第1審は省級行政区の政府所在地の中級人民法院、または最高人民法院が指定する中級人民法院が管轄権を有する(特許紛争事件の審理に適用される法律の問題に関する若干規定(以下、単に「若干規定」という)第2条)。

 

 土地管轄は、被告所在地または侵害行為地の人民法院が管轄権を有する。侵害行為地には、侵害行為発生地と侵害結果発生地が含まれる(若干規定第5条)。

 

 なお、複数の人民法院が管轄権を有する場合は、原告はいずれか一つの人民法院に提訴することができる。また、複数の被告が存在する場合は、いずれか一つの被告の所在地または侵害行為地の人民法院を選択して提訴することができる(民事訴訟法第35条)。

 

3.提訴

 

 訴訟手続は提訴により開始される。原告は、提訴するときは、管轄権の有する人民法院に以下の書類を提出しなければならない。

 

3-1.訴状の原本および副本

 

 訴状には、(1)原告と被告、(2)請求の趣旨、(3)事実と理由を記載する。

 

3-2.初歩的な証拠

 

 典型的な初歩的証拠は以下のとおりである。

(1)専利権の登録原簿

(2)年金納付証明(領収書等)

(3)被告の侵害行為を裏付ける公証書類

 

(4)原告側主体証明書類

(a)現在事項全部証明書およびその公証、中国在日大使館または領事館による認証

(b)代表者証明書およびその公証、中国在日大使館または領事館による認証

(c)委任状およびその公証、中国在日大使館または領事館における認証

(d)人民法院に認められた翻訳機関による上記(a)~(c)の翻訳書類

(5)被告側主体証明書類

(a)工商登録情報ページ

(b)組織機構コード証明書コピー

 

4.訴状審査

 

 人民法院は、提訴があったときは、起訴要件を満たしているか否かを審査する。起訴要件を満たしていないと判断したときは、7日以内に不受理の裁定を行う。原告は、不受理の裁定に不服がある場合は、裁定書の受領日から10日以内(在外者については30日以内)に上訴することができる。人民法院は、起訴要件を満たしていると判断したときは、7日以内に受理して当事者に通知し、受理の日から5日以内に訴状の副本を被告に送付する(民事訴訟法第123条、第125条)。

 

5.開廷前手続

 

 被告は答弁を行う場合は、訴状の副本の受領日から15日以内(在外者の場合は30日以内であり、以下「答弁期間」という)に答弁書を提出しなければならない(民事訴訟法第125条)。

 

 当事者は当該答弁期間内に管轄権に関する異議申立を行い、事件を他の人民法院へ移送することを請求することができる。人民法院は、申立に理由がある場合は、事件が当該他の人民法院に移送する裁定を行い、申立に理由がない場合は当該異議申立を却下する裁定を行う。当事者は、裁定に不服がある場合は、裁定書の受領日から10日以内(在外者については30日以内)に上訴することができる(民事訴訟法第127条)。

 

 その後、人民法院は合議体を形成して、口頭審理の期日を定め、双方当事者に呼出状を送付する。

6.口頭審理

 

6-1.冒頭手続

 

 法定秩序を読み上げると同時に、当事者の有する法廷上の権利を通知する。その後、当事者、代理人の身分を確認する。また、各当事者に対して裁判官、書記官の忌避または除斥の申請をするか否かを確認する。

 

6-2.法廷調査

 

 法廷調査は、事実の認定を目的とする。

 

 まず、原告が訴訟請求およびその根拠となる事実と理由を述べ、被告が答弁としてそれに依拠する事実と理由を述べる。

 

 その後、証拠調べを行う。原告が証拠を提出し、被告は提出された証拠に対して真実性、合法性、関連性に関する意見を述べる。その後、被告が証拠を提出し、原告が提出された証拠に対して真実性、合法性、関連性に関する意見を述べる。証人がいる場合は証人尋問を行う。

 

6-3.法廷弁論

 

 法廷調査の段階で認定された事実に基づいて、原告と被告がそれぞれの主張を述べた後、双方が互いに弁論する。法廷弁論の段階で、新たな事実が判明した場合は、法廷調査の段階に戻ることもある。

 

6-4.和解の試み

 

 当事者双方に和解の意思があれば、裁判長は裁判上の和解を行う。ただし、当事者の一方が和解の意思がないことを表明すれば、この段階は終了する。和解が成立した場合は、人民法院により和解調書が作成される。この和解調書は確定判決と同等の法的効力を有する。

 

7.判決

 

 第1審手続は、国内案件では受理日から6月以内に終結することが求められている(民事訴訟法第149条)が、渉外案件はこの制限を受けないため、実際は1年ほどかかることが多い。各当事者は、第1審判決に対して不服である場合は、判決の送達日から15日以内(在外者については30日以内)に一級上の人民法院に上訴することができる(民事訴訟法第164条、第269条)。

■ソース
・専利法
・民事訴訟法
・特許紛争事件の審理に適用される法律の問題に関する若干規定
■本文書の作成者
日本技術貿易株式会社
■本文書の作成時期

2017.01.31

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