アジア / 法令等 | 出願実務 | アーカイブ
韓国における特許分割出願制度の活用と留意点
2017年07月13日
■概要
(本記事は、2022/12/8に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/27306/
分割出願は、2つ以上の発明を包含する特許出願の一部を1または2以上の新しい出願として分割することをいう。特許出願は1発明1出願でしなければならないが、その要件に違反した場合、または詳細な説明で記載された内容中の発明について保護を受けることを望む場合、その発明について新たに分割出願をすることができる。審査過程中または特許査定後分割出願が可能な期間に留意し、分割出願制度を上手く活用すべきである。
■詳細及び留意点
分割出願については特許法第52条、実用新案法第11条に定めがある。特許法改正(2015.01.28公布、2015.07.29施行)により、2015年7月29日以降に特許査定された出願は、特許査定以降でも、特許査定の謄本の送達日から3か月以内(ただし、設定の登録料を納付する前)においても分割出願が可能になった(特許法第52条1項3号新設)。
1.分割出願ができる期間
(1)特許査定謄本の送達日前まで明細書等を補正できる期間内に分割出願をすることができる。ただし、拒絶理由通知書(韓国語「의견제출통지서(意見提出通知書)」)を受けた場合は意見書提出期間まで、また、再審査を請求する場合は請求時に分割出願することができる(特許法第52条1項1号)。
(2)拒絶査定謄本を受けた場合は、拒絶査定不服審判を請求することができる期間まで、すなわち拒絶査定謄本の送達日から30日以内に分割出願をすることができる(特許法第52条1項2号)。
(3)特許査定の謄本の送達を受けた日から3ヶ月以内の期間に分割出願をすることができる。ただし、設定の登録料を納付する前でなければならない(特許法第52条1項3号)
2.分割出願に求められる要件
分割出願は、親出願の出願当初の明細書および図面に記載された事項の範囲内で分割出願をすることができる。補正によって親出願から削除した内容であったとしてもその内容を分割出願することができる。
3.優先権主張を含む親出願からの分割出願
優先権主張を含む親出願から分割出願する場合には、分割出願時にその旨を出願書に記載し、優先権証明書類を、通常の優先権主張の場合の優先権証明書の提出期間ではなく、分割出願日から3ヶ月以内に提出することができる(特許法第52条4項)。
4.分割出願の効果
分割出願は親出願を出願する時に出願したものとみなされる(特許法第52条2項)。
【留意事項】
(1)審査過程で1発明1出願の要件に違反するという内容の拒絶理由通知書を受けた場合、可能な限り分割出願をするのが望ましい。
(2)拒絶理由通知書で特許可能な請求項と拒絶対象の請求項が明白に区分して示された場合、拒絶対象の請求項は削除または分割出願し、親出願は特許可能な請求項のみになるように補正して、先に特許を受けることが望ましい。
(3)拒絶査定を受けた場合、再審査を請求する時に分割出願をすることができるが、この時に拒絶査定の理由となった請求項のさらなる権利化および特許可能な請求項の早期権利化を図る場合は、再審査時に特許可能な請求項のみになるように補正するとともに、必要であれば拒絶査定の理由となった請求項の分割出願を行うことが望ましい。
(4)再審査で再び拒絶査定がされた場合には、拒絶査定不服審判を請求する前に、分割出願の必要性を必ず検討することが望ましい。その理由は、拒絶査定不服審判請求時には、明細書や図面に対する補正書は提出できないからである。すなわち、再審査後の再拒絶査定に対して拒絶査定不服審判を請求する際には、特許可能な請求項のみに限定する補正もできないため、拒絶理由が含まれている請求項がある場合、拒絶査定不服審判でも原出願の拒絶査理由を解消することができない。したがって、補正した請求の範囲での権利化のためには、拒絶査定不服審判を請求せずに、さらなる補正の機会のある分割出願を検討することが考えられる。
(5)しかし、上記の拒絶査定不服審判と分割出願を同時に行うことはできる。この際に、分割出願の請求の範囲を再拒絶査定された当時の請求の範囲と同一にするのが望ましい。特許請求範囲が両者同一であれば、拒絶査定不服審判が審決されるまで分割出願は審査されない。
(6)特許査定後3ヶ月以内に分割出願は可能であるが、特許登録料を納付する前に分割出願をしなくてはならない。
■ソース
・韓国特許法■本文書の作成者
崔達龍国際特許法律事務所■協力
日本技術貿易株式会社■本文書の作成時期
2017.02.20