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インドネシアにおける特許の分割出願に関する留意点
2016年05月24日
■概要
(本記事は、2019/9/3に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17667/
インドネシアにおいて特許の分割出願を行う場合の留意点を説明する。また、インドネシアにおける特許出願戦略の一環として分割出願を利用する方法を紹介する。
■詳細及び留意点
【詳細】
1. 分割出願に関する特許法上の規定
2001年8月1日付で施行された特許法(2001年法律第14号)では、第36条において分割特許出願が以下のように規定されている。
「第36条
- 出願が第21条にいう発明の単一性を構成しない複数の発明を含んでいる場合、出願人は、出願の分割を請求することができる。
- (1)にいう出願の分割は、一以上の出願として別々に提出できるが、各出願において求められる保護範囲が原出願において求められる保護範囲を拡大していないことを条件とする。
- (1)にいう出願の分割は、原出願について第55条(1)または第56条(1)に示した決定が下されるまで請求することができる。
- (1)または(2)に定める出願の分割の請求が、第21条および第24条の要件を満たしている場合、当該請求は原出願日と同じ日に提出されたものとみなされる。
- 出願人が(3)に定める期間内に出願の分割を請求しない場合、原出願のクレームに記載された発明についてのみ実体審査が行われるものとする。」
2. 分割出願における留意点
出願人は、インドネシアでの分割出願にあたって以下の点に注意すべきである。
- 出願が発明の単一性を満たしていない複数の発明が含まれる場合、その出願からの分割出願を行うことができる。一方、発明の単一性の要件が満たされている場合には、製造物クレームと方法クレームの両方を一つの出願に含めることができるが、それらのクレームを分割出願によって分割することも可能である。
- 出願人は自発的に分割出願を行うこともできる(特許規則(1991年政府規則第34号)第7条(a))、審査官が実体審査報告書の中で挙げた発明の単一性欠如の拒絶理由に応じて分割出願を行うこともできる(特許規則第10条(1))。
- 分割出願は、原出願に対して特許付与の決定(第55条(1))または拒絶の決定(56条(1))が下される前であれば、いつでも行うことができる。
- 分割出願では、原出願の開示の範囲の拡大や、原出願に開示されない新規事項の追加は認められない。
- 分割出願では、以下の書類の提出が要求される。
- 願書(特許規則第4条)
- 委任状(特許規則第2条)。委任状について公証人認証は必要ない。署名済みの委任状であれば十分である。新たな(分割でない)出願の場合と同様、この委任状は、出願日から3か月以内であれば出願後に提出することができる。
- 英語の明細書(クレーム及び要約を含む)および発明の説明に必要な図面があれば図面(特許規則第17条)。
- インドネシア語の明細書(クレーム及び要約を含む)および発明の説明に必要な図面があれば図面(特許規則第2条、第4条)。新たな出願の場合と同様、インドネシア語の明細書及び図面は、出願日から1か月以内であれば出願後に提出することができる。
- 実体審査請求書。インドネシア知的財産権総局(DGIPR)が2011年9月5日付で発行した通達HKI-77.OT.03.01号によれば、実体審査請求は分割出願の願書と同時に提出されなければならない。
3. 特許出願戦略としての分割出願
分割出願は、発明者や企業にとって、自らの発明を有利な権利として保護するための特許出願戦略としても利用することができる。
例えば、原出願でのクレームよりも広い範囲のクレームに基づき、分割出願を行うことができる。原出願の明細書には記載されているが、原出願のクレームに含まれていない別の発明を分割出願することで、さまざまな観点での権利化を図ることができる。
また、複数の関連する発明を含む明細書で1件の出願として出願し、出願後、特許付与までの期間をインドネシアでの対象製品の市場動向を見極め、権利化すべき発明を選択するための準備期間として利用することもできる。出願人はこの期間に、自発的に分割出願を行うことや、または実体審査における発明の単一性欠如の拒絶理由に対しする応答として分割出願を行うことが可能である。これにより、重要度が高い発明のみを権利化し、出願後に重要度の低下した発明に対しては別途権利化しないという判断を行うことができる。このような手続きの進め方であれば、同時に複数の出願を行う場合と比較して手続き費用の削減が期待できる。
■ソース
・インドネシア特許法■本文書の作成者
ACEMARK Intellectual Property(インドネシア特許法律事務所)■協力
日本技術貿易株式会社■本文書の作成時期
2016.3.2