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オーストラリアにおける分割出願に関する留意事項
2016年05月25日
■概要
(本記事は、2023/2/7に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/33771/
オーストラリアでは、親出願が標準特許出願(実体審査を経て権利期間が出願から20年の標準特許が付与される特許出願)であるかイノベーション特許出願(実体審査を経ずに権利期間が出願から8年のイノベーション特許が付与される出願)であるかに応じて、分割出願に適用される法律や規則が異なる。本稿ではそれらの点について詳細に論じる。
■詳細及び留意点
【詳細】
最初に、オーストラリアにおける標準特許出願とイノベーション特許出願を説明する。標準特許出願とは実体審査を経て標準特許が付与される特許出願であり、標準特許の権利期間は出願から20年である。イノベーション特許出願とは実体審査を経ずにイノベーション特許が付与される特許出願であり、イノベーション特許の権利期間は出願から8年である。イノベーション特許は実体審査を経ずに付与されるが、権利行使をするには、審査請求を行い実体審査されたことの証明(certificate)(以下、「審査証明」と称する)を得る必要がある。
オーストラリアでは、下記の理由により分割出願が行われる。
・発明の単一性に係る拒絶理由への対応のため
・出願認可後に、より狭いクレームまたは代替のクレームでの権利化を目指すため
・侵害者への権利行使を行う目的で、速やかにイノベーション特許の付与とその審査証明を得るため
・出願が認可期限(最初の審査報告書の日から12か月)までに認可されなかった場合に審査を継続するため
オーストラリアの分割出願は、標準特許出願、イノベーション特許出願、分割出願(標準特許)、分割出願(イノベーション特許)、およびPCT出願に基づき出願することができる。親出願が標準特許出願であるかイノベーション特許出願であるかに応じて、分割出願に適用される法律や規則が異なる。以下、これらの点について詳細に論じる。
1.標準特許出願に基づく分割出願を行うことができる時期
標準特許出願に基づく分割出願の出願期限は、標準特許出願の認可の公告日から3ヶ月である。この期限を延長することはできない。分割出願は、標準特許出願として行うこともできるし、またはイノベーション特許出願として行うこともできる。
この出願期限は、特許付与に対する異議申立人からの異議申立期限と同じである。なお、異議申立を行った際に、出願人に代替のクレーム(例えば、より広範なクレーム)で分割出願を行うことができる期間を与えないために、実務上、異議申立は期限当日に行うのが一般的である。
2.イノベーション特許出願に基づく分割出願を行うことができる時期
イノベーション特許出願に基づく分割出願を行うことができる時期としては、下記の2つの期間が存在する。
(1)イノベーション特許出願の出願から特許付与までの期間
この期間は標準特許出願またはイノベーション特許出願として分割出願を行うことができる期間である。イノベーション特許出願は、通常極めて迅速に(例えば、若干の方式審査の後、出願から2~4週間で)権利付与されるため、分割出願を希望する場合には、親イノベーション特許出願後、直ちに分割出願を行う必要がある。なお、親出願が下記(2)に示す期間に出願された分割イノベーション特許出願である場合、この(1)に示される期間は適用されない。
(2)イノベーション特許の審査請求後から審査証明の公告後1ヶ月間
この期間はイノベーション特許出願としてのみ分割出願を行うことができる期間であり、親出願に開示されていた発明についてのみ分割出願を行うことができる(例えば、出願人が、親出願に対して発明の単一性に係る拒絶理由を受けた場合)。
3.分割出願の出願要件
分割出願としての地位が認められるためには、分割出願の出願時点において親出願が有効に存続している(すなわち、親出願が、失効しておらず、拒絶または取り下げもされていない)必要がある。しかし、分割出願の出願日以降に親出願が失効、拒絶または取り下げられても、分割出願は無効とならず、分割出願としての地位を失うことはない。
また、分割出願は、親出願に対して優先権の主張ができるクレームを少なくとも1つ含む必要がある。
4.分割出願における主題の追加(新規事項)
分割出願には新規事項を含めることが可能である。しかし、この新規事項に関するクレームには、分割出願の優先日が適用され、親出願の優先日は適用されない。
5.その他
特許出願の優先日以降に発明に小さな改良または変更が行われた場合、出願人は、これらの改良または変更を保護するために追加特許出願を行うことができる。追加特許出願のクレームは、親特許および親特許出願の開示に対して新規性がなければならないが、親特許および親特許出願の開示に対して進歩性を有する必要はない。
追加特許出願については、下記の点に注意する必要がある。
(a)親出願でクレームされた発明の改良または変更に関するものでなくてはならない。
(b)標準特許または標準特許出願に基づき出願できる。
(c)親特許の付与後に権利が付与される。
(d)親特許が有効に存続している間のみ、有効に存続する。
■ソース
・1990年オーストラリア特許法・1991年オーストラリア特許規則
■本文書の作成者
Griffith Hack (オーストラリア特許事務所)■協力
日本技術貿易株式会社■本文書の作成時期
2016.02.19