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フィリピンにおける地理的表示に関する施行規則の策定検討状況
2016年03月25日
■概要
(本記事は、2018/8/23に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/trend/15670/
フィリピンでは、地理的表示の保護に関する施行規則原案に関するパブリックコメント募集が2013年に実施され、2014年には改訂原案が公表され、追加のコメントが求められた。こうした動きから2015年中には地理的表示に関する施行規則が公布されるものと期待されている。公表された原案には、地理的表示の定義、出願人適格、不登録事由、異議申立、取消根拠等が盛り込まれている。
■詳細及び留意点
【詳細】
2013年後半、フィリピン知的財産庁は地理的表示の保護に適用される規則原案を関係者に提示し、パブリックコメントを募集した。約1年後、知的財産庁は改訂した規則原案を公表し、関係者に通知し、2014年12月14日までに追加コメントを提出するよう求めた。
最近のこうした状況を鑑みて、地理的表示の保護を求める関係者は、2015年中に新しい規則が最終的に公布される可能性が高いと期待している。
こうした動きは、フィリピンにおける知的財産と貿易や産業分野で歓迎されるものである。現在、フィリピン知的財産庁は、必要な保護を確保し、地方経済を振興するため、各地方の団体や生産者と協力している。フィリピン知的財産庁のRicardo Blancaflor長官により、地理的表示として保護される特産品として以下の品目が特定されている。
(1)「Aklan piña」布
(2)「Batangas Barako」コーヒー
(3)「Bicol pili」ナッツ
(4)「Cebu」乾マンゴー
(5)「Dagupan bangus」ミルクフィッシュ
(6)「Guimaras」生マンゴー
(7)「(South Cotabato産)Lake Sebu Tinalak」織物
(8)「Lumban」バロン(民族衣装)
地理的表示の保護は、フィリピンが既に加盟・締約している国際協定の中に規定されている。これらの国際協定には、工業所有権の保護に関するパリ条約やWTOのTRIPS協定などが含まれている。
また、フィリピン議会においても、フィリピン知的財産法改正法案に地理的表示の保護が盛り込まれた。知的財産法では、商標が「特に、その商品またはサービスの性質、品質、特徴または地理的出所について公衆の誤解を招く可能性が高い」場合は、その商標を登録することはできないと規定している。
改正法案
・地理的表示の定義
地理的表示は、その商品の特定の品質、評判その他の特性が本質的にその地理的出所および/または人的要素に帰される場合に、ある領域、地域または地方に由来するものとして商品を特定する表示をいう。
・出願人適格
(1)製品の採取、生産または製造に直接関与する自然人または法人
(2)商品を生産するまたは製品の貿易に従事する個人または機関
(3)地理的出所の対象となる地域に対する責任を負う政府機関または地方政府単位、ならびにその法律によりフィリピン国民に対して同等の権利と保護を提供する外国の国民の地理的表示に関係する外国政府の代表者
(4)地理的表示の規制または保護を具体的に委託された協会団体
・不登録事由
以下に該当する表示は自動的に拒絶される。
(1)法律、規制、公共の秩序、公共政策または道徳に反する表示
(2)原産国または原産地でもはや保護されていない表示
(3)商品および/またはその使用の特性、性質、品質および出所と生産プロセスについて誤解を招くか、または虚偽を述べている表示
(4)製品または商品の著しい一般名または慣用名である表示
(5)地理的出所の所定の定義に当てはまらない表示
(6)同じ商品または混同を生じるほど類似した商品に関して先に出願または登録された地理的出所表示とまったく同一の表示
・異議申立を提起できる主体
その登録によって損害を被る者は誰でも、地理的表示の登録可能性に関する第三者所見通知を提出することができる。
・取消根拠
利害関係を有する個人または団体による、保護の正当な理由がもはや存在しないとする申立が検証されて、その申立が妥当であると判断されたときは、登録官は、以下のいずれかの根拠に基づいてその登録を取り消すものとする。
(1)保護の条件が満たされていなかった
(2)商品の評判、品質または特性を決定する地理的起源および/または人的要因が変化し、その変化の結果、資格を喪失した
(3)裁判所または審判所が、その生産者が地理的出所、保護の基準またはその他の製品仕様に対する有効な支配権を持たないと判決した
(4)虚偽の根拠および文書を通じて登録が取得された
前述したように、地理的表示の保護に関する施行規則が2015年中にも公布されるものと期待されている。フィリピン知的財産法の法改正と併せて、今後の動向が注目される。
■本文書の作成者
Rouse & Co. International (Philippines) Ltd■協力
日本技術貿易株式会社■本文書の作成時期
2015.02.16