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日本とタイにおける意匠の新規性喪失の例外に関する比較

2015年10月16日

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■概要
タイでは、新規性喪失の例外規定について、特許法の関連条文を引用し、政府公認のタイ国内で開催された博覧会で展示した場合のみ、新規性喪失の例外規定の適用を認めている。適用を受けるためには、公開日から12ヶ月以内に出願する必要がある。
■詳細及び留意点

日本における意匠出願の新規性喪失の例外

 日本においては、新規性を喪失した意匠の救済措置として、新規性喪失の例外規定が定められている。新規性喪失の例外規定の適用要件は以下の通りである。

1 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の意に反して公開されたこと(第4条第1項)または

2 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の行為に基づいて公開されたこと(第4条第2項)

上記いずれの場合についても、以下の要件を満たす必要がある。

(1)意匠登録を受ける権利を有する者が意匠登録出願をしていること

(2)意匠が最初に公開された日から6ヶ月以内に意匠登録出願をしていること

 

なお第4条第2項に記載される自己の行為に基づく新規性喪失については、さらに以下の手続が必要となる。

(3)出願時に、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出、あるいは願書にその旨を記載すること(第4条第3項)。

(4)出願の日から30日以内に、公開された意匠が新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する「証明書」を証明書提出書とともに提出すること(第4条第3項)。

 

「証明書」には、意匠が公開された事実(公開日、公開場所、公開された意匠の内容等)とともに、その事実を客観的に証明するための署名等を記載することが必要である。上記要件を満たした場合、その意匠登録出願に限り、その公開意匠は公知の意匠ではないとみなされる。

条文等根拠:意匠法第4条

 

日本意匠法 第4条 意匠の新規性の喪失の例外

1 意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠は、その該当するに至った日から六月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第一項および第二項の規定の適用については、同条第一項第一号または第二号に該当するに至らなかつたものとみなす。

 

2 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠(発明、実用新案、意匠または商標に関する公報に掲載されたことにより同条第一項第一号または第二号に該当するに至ったものを除く。)も、その該当するに至った日から六月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第一項および第二項の規定の適用については、前項と同様とする。

 

3 前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。

 

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タイにおける意匠出願の新規性喪失の例外

タイ特許法57条に意匠の新規性要件の記載がある。タイでは、新規性喪失の例外規定について、特許法の関連条文を引用し、政府公認のタイ国内で開催された博覧会で展示した場合のみ、新規性喪失の例外規定の適用を認めている。適用を受けるためには、公開日から12ヶ月以内に出願する必要がある。ただ、意匠出願の場合、上記展示会発行の開示証明書は不要であり、展示会情報を願書に記載すれば足りる。

条文等根拠:特許法第57条、第65条、第19条、特許法施行規則第23条、特許法施行規則第8条

 

タイ特許法 第57条

次の意匠は新規とはみなさない。

(1)特許出願の前に、国内で他人に広く知られまたは使用されていた意匠

(2)特許出願の前に、国内外で文書または印刷刊行物において開示または記述されていた意匠

(3)特許出願の前に第28条を準用する第65条に基づき公告されていた意匠

(4)(1)、(2)または(3)の意匠と外観が非常に似ているため模倣とされる意匠

 

第65条には、発明特許に関する一部の条文を、意匠でも準用する旨規定されている。

 

タイ特許法 第65条

第II章の発明特許に関する第10条、第11条、第12条、第13条、第14条、第15条、第16条、第19条、第20条、第21条、第22条、第27条、第28条、第29条、第31条、第32条、第33条、第34条、第37条、第38条、第39条、第40条、第41条、第42条、第43条、第44条および第53条の規定は、第III章の意匠特許について準用するものとする。

上記の通り、特許法第65条では、新規性喪失の例外規定に関する第19条を準用している。そのため、意匠出願において、政府後援または公認のタイ国内で開催された博覧会で出願意匠を公開しても、公開日から12月以内に当該意匠出願を行えば、その博覧会の開催初日に出願したものとみなされる。

 

タイ特許法 第19条

政府後援または公認のタイ国内で開催された博覧会でその発明を展示した者が、その博覧会の開催初日から12月以内に当該発明について特許を出願したときは、その博覧会の開催初日に出願を行ったとみなすものとする。

しかしながら、特許法施行規則第23条では、開示事実の証明書類を提出する旨の第8条の規定を不準用としている。意匠出願の場合、願書に博覧会情報を記載する欄があるため、そちらに公開日、博覧会開催日、博覧会の管理者名を記載する。

 

タイ特許法施行規則 第23条

発明特許出願に関する、第1部第2条第1段落および第4段落、第4条第1段落、第7条、第9条、第11条、第12条、第13条、第14条および第15条の規定は、意匠出願についてこれを準用する。

 

タイ特許法施行規則 第8条

出願においてその開示の日および、または博覧会の開催日を願書に記載し、当該博覧会を企画または許可した政府、庁または当局が発行した、当該発明の重要な特徴もしくは詳細が開示されたことまたは当該発明が出展されたことに関する証明書を願書に添えて提出しなければならない。

 

日本とタイにおける意匠の新規性喪失の例外に関する比較

 

日本

タイ

新規性喪失の例外の有無

公知行為の限定の有無

政府後援または公認のタイ国内で開催された博覧会

 

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新興国等知財情報データバンク 調査対象国、地域における意匠の新規性喪失の例外については、下記のとおりである。

 

意匠の新規性喪失の例外に関する各国比較

新規性例外の有無

例外期間

例外期間の起算日

公知行為の限定の有無

JP

6ヶ月

公開日

BR

180日間

公開日

CN

6ヶ月

公開日

HK

6ヶ月

公開日

ID

6ヶ月

公開日

IN

6ヶ月

公開日

KR

6ヶ月

公開日

MY

6ヶ月

公開日

PH

6ヶ月

公開日

RU

12ヶ月

公開日

SG

6ヶ月

公開日

TH

12ヶ月

公開日

TW

6ヶ月

公開日

VN

6ヶ月

公開日

■本文書の作成者
日本技術貿易株式会社 IP総研
■本文書の作成時期

2015.03.03

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