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台湾における連合意匠制度

2012年08月21日

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■概要
連合意匠の登録出願のプロセス或いは権利行使の範囲は、いずれも本意匠に従属する。(台湾の連合意匠は日本における関連意匠に相当する。)
■詳細及び留意点

  意匠登録は、工業的に量産し得る物の外観形状、模様、色彩又はこれらの結合による創作を保護するものである。産業界では時々物品の一部の形を変更したり、原物品の外観の一部を変更して、その物品の全体的なデザインを原意匠に似せたり、当該デザインを関連する類似物品に応用して、シリーズ物品を構成することがある。台湾専利法の連合意匠の規定では、同一意匠権者による原意匠のデザインを踏襲する創作で、原意匠の構成に類似するものは、連合意匠として登録出願できる。これによって、同一意匠権者の同一物品における類似デザイン、類似物品における同一デザイン、類似物品における類似デザインを保護できるほか、本意匠権の類似範囲を確認でき、類似デザインと類似物品の範囲をより明確にすることができる。連合意匠は制度設計上、意匠を補助するものであり、本意匠と連合意匠には密接な相互関係がある。このため、以下では形式的要件と実質的要件、及び権利範囲から、両者の差異点や相互関係を説明する。台湾の連合意匠制度は日本における関連意匠制度に相当するものである。

(1) 形式的要件

連合意匠を登録出願する際、台湾専利法施行細則(以下、「施行細則」という)第36条第1項により、願書に本意匠の出願番号を記載し、本意匠の図面説明書を添付しなければならない。また、台湾専利法(以下、「専利法」という)第110条第5項本文と第6項により、出願人は本意匠の出願人或いは意匠権者でなければならず、原出願の類似範囲を拡張してはならない。このため、連合意匠を登録出願できる期間は、本意匠が既に台湾特許庁(中国語「智慧財産局」)に登録出願されており(出願当日も含む)、本意匠権が有効に存続している間に限られる。登録査定を受けた連合意匠は、本意匠の登録査定がなされ公告したのち、本意匠の意匠登録証書に注記される(施行細則第36条第2項)。連合意匠が指定した物品名称は、本意匠の物品名称と異なってもかまわず、例えば、本意匠の物品の名称が“万年筆”で、同一出願人が別途“ボールペン”の連合意匠を登録出願しようとするときは、連合意匠の物品の名称と実際の物品が合致するように、その物品名称を“ボールペン”と記載すべきである。

(2) 実質的要件

連合意匠は本意匠に従属して存在している以上、意匠の定義に該当すべきほか、従属対象である本意匠にも類似していなければならない。類似の意匠には、(a)類似物品に同一デザイン、(b) 同一物品に類似デザイン、(c) 類似物品に類似デザインという三つの様態がある。(a)の態様を除き、(b)と(c)の態様の連合意匠は、その従属対象である本意匠のデザインの新規の特徴を踏襲して類似していなければならず、これにより本意匠の意匠権の類似範囲を確認する。連合意匠の登録査定は、本意匠の登録査定がなされ公告されていることを前提とし、本意匠は創作性の要件に該当しており、類似した連合意匠は単独な権利ではないため、その創作性を審査する必要はなく、その新規性は本意匠によって否定されない(専利法第110条第5項)。連合意匠における新規性の判断基準は、本意匠の出願日を基準日とする(本意匠が優先権を主張している場合は、優先権日を基準日とする)。但し、下記の事由があるときは、登録査定を受けることができない。

(i) 登録を受けようとする連合意匠が本意匠と完全に同一、即ち物品が同一で、デザインも同一な場合(専利法第109条第2項)。

(ii) 登録を受けようとする連合意匠が本意匠に類似しない、即ち物品が同一でなく類似でもない、或いは設計デザインが同一でなく類似でもない場合(専利法第109条第2項)。

(iii) 本意匠出願前に既に連合意匠と同一または類似する意匠が刊行物に掲載され又は公然使用されている場合又は出願前既に公然知られた場合(専利法第110条第5項)。

(iv) 連合意匠と同一又は類似する他の意匠登録出願が、本意匠の出願日前に出願され、当該連合意匠出願後に初めて公告された場合(専利法第111条、専利審査基準第三編第六章3.3.2実質的要件)。

(v) 連合意匠と同一又は類似する他の意匠が、本意匠の出願日の前に出願されていた場合(専利法第118条第1項)。 

(3) 権利範囲と効果

連合意匠権は登録査定を受けて公告を経て、本意匠権の意匠登録証書に注記される(施行細則第36条第2項)。その権利の存続は、本意匠の意匠権に従属し、単独で権利を主張することはできず(専利法第126条但し書き)、かつ類似範囲にも及ばない(専利法第124条第1項)。連合意匠の意匠権は公告日から始まり、本意匠権利存続期限と同時に満了する。もし本意匠の意匠権が取り消しされ又は消滅した場合、連合意匠も共に取り消され或いは消滅する(専利法第124条第2項)。 

【留意事項】

 連合意匠は、本意匠の意匠権の範囲を明確するためにあり、単独の権利ではなく、本意匠の意匠権から分離して譲渡、信託設定、実施許諾又は質権設定することはできない。

■ソース
台湾特許庁ウェブサイト、専利審査基準第三編第六章3 連合意匠
http://www.tipo.gov.tw/ch/MultiMedia_FileDownload.ashx?guid=e806b2b0-4f71-4a0c-9727-5d4dc32b4543.doc 台湾特許庁ウェブサイト、連合意匠制度と意匠の類似概念(上)
http://www.tipo.gov.tw/ch/MultiMedia_FileDownload.ashx?guid=284ae728-acdd-41e2-8834-e37a6be7b8ad 台湾特許庁ウェブサイト,連合意匠制度と意匠の類似概念(下)
http://www.tipo.gov.tw/ch/MultiMedia_FileDownload.ashx?guid=c8414e07-b908-4018-b57f-3c04a7774523
■本文書の作成者
聖島国際特許法律事務所
■協力
一般財団法人比較法研究センター 木下孝彦
■本文書の作成時期

2012.08.13

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