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日本と香港における特許分割出願に関する時期的要件の比較

2015年11月20日

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■概要
日本においては、所定の期間、特許出願について分割出願を行うことができる。香港における標準特許出願は、香港特許庁に直接出願するものでなく、指定特許庁に出願された特許出願(指定特許出願)に基づき香港特許庁へ記録請求手続きをするものである。したがって、香港の標準特許出願については直接分割出願を行うことはできないが、標準特許出願に対応する指定特許出願が指定特許庁で分割された場合に、所定の期間、その分割された指定特許出願を香港特許庁に記録請求することができる。
■詳細及び留意点

日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件

 平成19年3月31日以前に出願された特許出願であるか、平成19年4月1日以降に出願された特許出願であるかによって、時期的要件が異なる。

 平成19年3月31日以前に出願された特許出願については、下記の(1)の時または期間内であれば分割出願することができる。

 平成19年4月1日以降に出願された特許出願については、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば分割出願することができる。

(1)願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)

なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。

 (i)出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)

 (ii)審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)

 (iii)拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号

 (iv)拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)

 

(2)特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)

 (i)前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)

 (ii)審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定

 なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。

 

(3)最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内(第44条第1項第3号)

 (3)に規定する3ヶ月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。

条文等根拠:特許法第44条

 

日本特許法 第44条 特許出願の分割

特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一または二以上の新たな特許出願とすることができる。

 一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内にするとき。

 二 特許をすべき旨の査定(第163条第3項において準用する第51条の規定による特許をすべき旨の査定および第160条第1項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から30日以内にするとき。

 三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から3月以内にするとき。

2~4(略)

5 第1項第2号に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により同条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

6 第1項第3号に規定する3月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

 

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香港における特許出願の分割出願の時期的要件

 香港における特許出願(標準特許出願)は、香港特許庁に直接出願するものではなく、指定特許庁に出願された特許出願(指定特許出願)が公開された段階で、香港特許庁へ記録請求手続きをするものである。その後、指定特許出願に対して指定特許庁で特許付与された段階で、その指定特許を香港特許庁へ登録付与請求手続きをすることで香港における標準特許が付与される。

 標準特許出願からの分割出願を香港特許庁へ直接行うことはできないが、標準特許出願に対応する指定特許出願が指定特許庁で分割された場合に、所定の期間、その分割された指定特許出願を香港特許庁に記録請求することができる。

 

(指定特許出願の分割出願についての記録請求の時期的要件)

 標準特許出願(親出願)に対応する指定特許出願(対応指定特許出願)が指定特許庁において分割された場合であって、その分割指定特許出願の公開日または記録請求公開日(親出願の記録請求公開日)のいずれか遅い方の後6ヶ月以内に、その分割指定特許出願の記録請求(親出願の分割出願に相当)をすることができる。

※なお、標準特許出願とは別に、香港特許庁へ直接出願する短期特許出願(日本の実用新案に相当、権利期間は出願から8年)もある。短期特許出願の場合には、その公開準備が完了する日付の前に、分割短期特許出願を行うことができる。

条文等根拠:特許条例第22条、116条

 

香港特許条例 第22条 分割指定特許出願の場合の記録請求の規定 

(1)標準特許出願において、次に該当する場合は、出願人は、分割指定特許出願の公開日または本条例に基づく記録請求公開日の何れか遅い方の後6ヶ月以内に、登録官に対し、その分割指定特許出願を登録簿に記入するよう請求することができる。

 (a)記録請求が第20条に基づき公開されており、かつ、拒絶されておらず、取り下げられておらず、または取下とみなされていない場合、および

 (b)対応指定特許出願の出願人またはその権原承継人が指定特許庁において分割特許を出願(「分割対応指定特許出願」)した場合であって、その特許出願が、次に該当する場合

  (i)同一の主題に係るものであって、指定特許庁に出願された対応指定特許出願の内容を超えないもの

  (ii) 対応指定特許出願の出願日を出願日として有するもの

  (iii) 対応指定特許出願と同一の優先権の利益を享受するもの

(2)本条に基づき分割指定特許出願の記録請求が提出される場合は、

 (a)それは、先の記録請求の提出日にされたものとみなされ、標準特許出願は、優先権の利益を有する。

 (b)(a)に従うことを条件として、本条例の規定は、第15条(1)に基づく記録請求に適用されるように、分割指定特許出願の記録請求に適用される。

(3)本条例の他の規定の本条への適用上、

 (a)当該他の規定において対応指定特許出願というときは、(1)(b)に規定される分割指定特許出願をいうものと解釈する。

 (b)当該他の規定において対応指定特許というときは、分割指定特許出願により付与される指定特許をいうものと解釈する。

 

香港特許条例 第116条 分割短期特許出願

短期特許出願がなされた後、特許明細書の公開の準備が完了する第122条に基づく日付の前に、短期特許の新規出願が、所定の規則に従い原出願人または当該人の権原承継人によりなされた場合であって、出願が次に該当する場合は、当該新規出願は、先の短期特許出願の出願日をその出願日として有するものとして取り扱い、如何なる優先権の利益をも有する。

 (a) 先の短期特許出願に含まれる主題の何れかの部分に関するものである場合

 (b) 規則に定める手続および期限を含む関連要件を遵守するものである場合、および

 (c) 第103条に違反しないものである場合

 

 

日本と香港における特許分割出願に関する時期的要件の比較

 

日本

香港

分割出願の時期的要件(注)

補正ができる期間

分割指定特許出願の公開日または記録請求公開日の何れか遅い方の6ヶ月以内

(注)査定(特許査定または拒絶査定)前の時期的要件の比較

 

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新興国等知財情報データバンク 調査対象国、地域における分割出願の要件については、下記のとおりである。

 

分割出願の時期的要件および出願人による自発的な分割可否に関する各国比較

分割出願の可否(出願から審査請求まで)

分割出願の可否(審査請求から最初の指令書(拒絶理由通知などの通知)まで)

分割出願の可否(最初の指令書~査定まで)

出願人による自発的な分割の可否

JP

指令書応答期間のみ

BR

CN

HK

○*

ID

IN

KR

指令書応答期間のみ

MY

審査報告書郵送から3ヶ月

PH

○**

RU

SG

TH

×

×

分割指令発行から120日

×

TW

VN

(*)香港の標準特許出願に対応する指定特許出願の分割についての可否

(**)単一性違反の指令後の非選択発明についての分割は、その指令書発行から4ヶ月以内または4ヶ月を超えない範囲で認められる追加の期間内

■本文書の作成者
日本技術貿易株式会社 IP総研
■本文書の作成時期

2015.03.03

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