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日本とブラジルの意匠出願における実体審査制度の有無に関する比較
2015年06月05日
■概要
日本における意匠出願の審査では、意匠登録のために方式審査と実体審査が行われる。一方、ブラジルにおいては、意匠登録のためには方式審査のみが行われ、新規性および創作性に関する実体審査は行われない。ただしブラジルにおいては、登録後、出願人は権利存続中において、任意で新規性および創作性に関する実体審査を請求することが可能である。■詳細及び留意点
日本における意匠出願の審査
日本において意匠登録を受けるためには、願書、図面を含む出願書類が所定書式を満たしているかどうかの形式的な審査(方式審査)が行われた後、方式審査を通過した出願に対しては、審査官により意匠登録要件を満たしているかどうかの審査(実体審査)が行われる。実体審査において審査される内容は以下の通りである。
- 物品の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合であって視覚を通じて美感を起こさせる意匠であること(第2条1項)
- 工業上利用できる意匠であること(第3条1項柱書)
- 新規性を有する意匠であること。(第3条1項各号)
- 創作非容易性を有すること(第3条2項)
- 先願意匠の一部と同一または類似の意匠でないこと(第3条の2)
- 公序良俗違反でないこと(第5条1号)
- 他人の業務に係る物品と混同を生じる恐れがないこと(第5条2号)
- 物品の機能確保のために不可欠な形状のみからなる意匠でないこと(第5条3号)
- 最先の出願であること(第9条)
条文等根拠:意匠法第16条、第17条
日本意匠法 第16条 審査官による審査
特許庁長官は、審査官に意匠登録出願を審査させなければならない。
日本意匠法 第17条 拒絶の査定
審査官は、意匠登録出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その意匠登録出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
一 その意匠登録出願に係る意匠が第3条、第3条の3、第5条、第8条、第9条第1項もしくは第2項、第10条第1項から第3項まで、第15条第1項において準用する特許法第38条または第68条第3項において準用する同法第25条の規定により意匠登録をすることができないものであるとき。
二 その意匠登録出願に係る意匠が条約の規定により意匠登録をすることができないものであるとき。
三 その意匠登録出願が第7条に規定する要件を満たしていないとき。
四 その意匠登録出願人がその意匠について意匠登録を受ける権利を有していないとき。
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ブラジルにおける意匠出願の審査
ブラジルにおける意匠登録手続きにおいては、新規性、創作性等に関する実体審査は行われず、方式審査が行われるだけである。方式審査においては、公序良俗等の要件(産業財産法第100条)、出願書類の要件(産業財産法第101条)、単一物品の要件(産業財産法第104条)が審査される。(産業財産法第106条)
なお登録後、出願人は権利存続中において任意で新規性および創作性に関する実体審査を請求することができる。(産業財産法第111条)
ブラジル産業財産法 第100条
次に掲げるものは,意匠としての登録を受けることができない。
(I) 道徳及び善良の風俗に反するもの,又は他人の名誉若しくは印象を害するもの,又は良心,信条,信仰の自由を損い,尊敬及び崇拝に値する思想及び感情を損なうもの
(II) 対象物が通常又は一般に備える必然的な形状,又は技術的若しくは機能的配慮によって本質的に決定される形状
ブラジル産業財産法 第101条
登録出願には,INPI※が定めた条件に基づき,次のものを含めなければならない。
(I) 願書
(II) 該当する場合は,明細書
(III) 該当する場合は,クレーム
(IV) 図面又は写真
(V) 対象物の利用分野
(VI) 出願手数料の納付証明書
補項 登録出願を構成する書類は,ポルトガル語で作成しなければならない。
ブラジル産業財産法 第104条
意匠登録出願は,単一の対象に係わるものとしなければならないが,当該対象については,複数の変異を認めるものとする。ただし,それらが同一用途に係るものであり,かつ,同一の顕著な識別性を有していることを条件とし,各出願に含める変異の数は,20 を限度とする。
補項 図面は,対象物及びもしあればその変異を,当該分野の熟練者が複製することができるように,明瞭かつ十分に表示していなければならない。
ブラジル産業財産法 第106条
意匠登録出願が行われ,第100 条,第101 条及び第104 条の規定が満たされている場合は,その出願は自動的に公告されるものとし,同時に登録が付与され,それに係わる登録証が交付される。
(1) 出願人が出願時に請求したときは,出願は,出願日から180 日間秘密にすることができ,その後に処理が行われる。
(2) 出願人が第99 条の規定の適用を受けるときは,出願の処理は,優先権書類の提出を待って行う。
(3) 第101 条及び第104 条の規定が満たされていないときは,出願人に対して要請がなされ,出願人は60 日以内に応答しなければならない。応答がないときは,その出願は,最終的に却下される。
(4) 第100 条の規定が満たされていないときは,その登録出願は,拒絶される。
ブラジル産業財産法 第111条
登録意匠の所有者は,登録存続期間中いつでも,その登録対象の新規性及び独創性に関する審査を請求することができる。
補項 INPI※は,実体審査に関する見解書を発行するものとし,第95条から第98条までに規定した要件の内の少なくとも1が欠落していると結論付けるものである場合は,当該見解書を職権による登録無効手続の開始理由とすることができる。
※INPI-ブラジル産業財産庁(Instituto nacional da propriedade industrial)
日本 |
ブラジル |
|
実体審査制度の有無 |
有 |
無 ただし登録後、出願人は権利存続中において任意で実体審査を請求することが可能。 |
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新興国等知財情報データバンク 調査対象国、地域における実体審査制度については、下記のとおりである。
実体審査制度に関する各国比較
■本文書の作成者
日本技術貿易株式会社 IP総研■本文書の作成時期
2015.03.10