国別・地域別情報

ホーム 国別・地域別情報 アジア 出願実務 特許・実用新案 ベトナムにおける特許出願に関する実体審査上の拒絶理由通知

アジア / 出願実務


ベトナムにおける特許出願に関する実体審査上の拒絶理由通知

2015年03月31日

  • アジア
  • 出願実務
  • 特許・実用新案

このコンテンツを印刷する

■概要
ベトナムの特許実務において、実体審査における拒絶理由通知は、主に、発明の新規性および進歩性に関する評価、外国の対応特許出願に一致させるための補正要求、発明の単一性に関するものである。ベトナムにおける拒絶理由通知およびその対応ついて解説する。
■詳細及び留意点

【詳細】

 ベトナムにおける特許出願の実体審査の拒絶理由通知は、新規性、進歩性および産業上の利用可能性といった保護要件に基づき発明の特許性に関する判断を示すために審査官により発行される。ベトナム知的財産法に基づき、実体審査の拒絶理由通知は実体審査請求日または公開日のうち、いずれか遅い方の日から18か月以内に発行される (知的財産法第119条)。実体審査の拒絶理由通知に対する応答期限は、当該拒絶理由通知の署名日から2か月である(省令01/2007/TT-BKHCNの規則15.7)。出願人が応答するためにより多くの時間を必要とする場合、期間延長請求書により1回のみ2か月の期間延長を請求することができる。実際には、国家知的財産庁(National Office of Intellectual Property of Vietnam : NOIP)の副長官(Vice Director)により承認されれば、2回目の延長申請も認められる。出願人が応答期限を遵守しない場合、または応答により拒絶理由を解消できない場合、NOIPは当該出願を拒絶することができる。

 

 ベトナムの特許実務において、拒絶理由の主な内容は通常、以下に説明する問題に関するものである

 

(1)新規性および進歩性に関する評価

 請求項に記載された発明が新規性および進歩性の要件を満たしているかどうかを判断するために、NOIPの審査官は通常、PCT出願の国際段階で作成された国際調査報告(ISR)および特許性に関する国際予備報告(IPRP)を参照するか、または外国の対応出願の審査結果を参照する。IPRPまたは対応出願の審査結果は、実体審査の最初の拒絶理由通知の際に使用されることが多い。しかし、これらの審査結果が、特許性に関する審査官の最終決定に大きな影響を及ぼすことはない。

 

 このような拒絶理由通知に対応するために通常使われる手段として、下記に示す3つの方法がある。

 

・請求項に記載された発明の新規性および進歩性を裏付ける議論を提出する。

・特許請求の範囲を補正し、補正した請求項の新規性および進歩性について説明する。

・既存の特許請求の範囲を、外国において、特に欧州特許庁(EPO)、日本国特許庁(JPO)または米国特許商標庁(USPTO)において権利付与された対応特許の特許請求の範囲に一致させる。中国、オーストラリア、ロシア、韓国、ユーラシア特許庁、またはドイツにおいて付与された対応特許に一致させる補正が、特許性を検討する際に用いられることもある。

 

 対応特許のない特許出願については、NOIPの審査官自身が、先行技術調査に基づく実体審査を行う。先行技術には、当該出願の出願日より前に公開された全ての発明および情報が含まれる。当該特許出願の出願日または優先日より前に国内または国外で、使用により、または書面もしくは口頭での説明、その他の形式により公然に開示されていない発明は、新規性を有すると判断される(ベトナム産業財産法第60条および省令01-2007/BKHCNの規則25.5)。請求項に記載された発明が先行技術と同一である場合、その請求項に記載された発明は新規性の欠如を理由に拒絶される。新規性に関する拒絶理由を解消するには、出願人は、先行技術と比較して区別される当該発明の技術的特徴を明らかにし、当該発明が新規であると主張しなければならない。それができない場合、出願人は拒絶理由を通知された請求項を削除または補正し、特許請求の範囲が先行技術と競合しないようにする。

 

 進歩性に関しては、当該特許出願の出願日または優先日より前に国内または国外で、使用により、または書面もしくは口頭での説明その他の形式により既に開示されていた全ての技術的解決策に照らして、独創的な進歩をもたらし、当業者により容易に創出可能ではない発明は、進歩性を有すると判断される(知的財産法第61条および省令01-2007/BKHCN の規則25.6)。発明が引用文献(先行技術)と相違する特徴を備えていても、NOIPの審査官が、引例の組合せにより当業者が当該発明を容易に着想できると判断する場合には、拒絶理由通知が発行される。

 

 進歩性に関する見解は、主観的な場合が多い。これは、自明性の概念は人によって異なるためである。したがって、進歩性に関する主張が認められるかどうかは予測できない。一般的に進歩性に関して審査官を納得させるには、出願人は、発明の予測できない効果を中心に分析を行い、請求項に記載された発明の技術的特徴によりもたらされる新しい有益な技術的効果を立証することにより、請求項に記載された発明の非自明性を証明しなければならない。それができない場合、出願人は、非自明性を有するように特許請求の範囲を補正する。

 

 しかし実際問題として、対応出願のない出願に関する審査の質は、各審査官の技術分野および経験によって異なる。また、化学または医薬分野に属する出願の審査には、より多くの時間を必要とする。これは、かかる発明が新規性および進歩性を満たしていることを確認するために必要な、請求項に記載された発明および化学試験または臨床試験に関する評価が、ベトナムの審査官にとって難しいためである。このような場合、ベトナムの審査官は通常、外国の特許庁に支援を求める。

 

(2)外国の対応出願に対応させる形での補正要求

 ベトナムでの特許出願が外国で登録された対応特許を有する場合、NOIPの審査官は通常、審査手続を促進するため、外国で登録された対応特許を考慮する。ただし、ベトナムの審査官は、特にEPO、JPOおよびUSPTOにより付与された特許を重要視する傾向がある。登録された対応特許があって、出願人が審査を促進させたい場合、特に早く特許権を取得したい場合には、外国で登録された対応特許に一致させる補正が必要となる。

 

 一方、ベトナム知的財産法に基づき特許を受けることができない発明、特に「用途」および「疾病の治療方法」に関する主題は、特許請求の範囲から削除しなければならない。一般的にベトナムの審査官は、外国で登録された特許の特許請求の範囲のうち、ベトナム特許出願の現在の特許請求の範囲と比べて同一または狭いものだけを考慮する。特許請求の範囲を減縮する補正が望ましくない状況では、出願人は補正を行わず、望ましい特許請求範囲を有する対応特許の登録を待たなくてはならない。

 

(3)発明の単一性に関する評価

 発明の単一性に関する要件は、ベトナム知的財産法第101条および省令01/2007-BKHCNの規則23.3に規定されている。特許出願が単一の発明について保護を求めている場合、または技術的に関連した単一の発明概念を示す一連の発明について保護を求めている場合、当該出願は発明の単一性の要件を満たしているとみなされる。

 

 実体審査段階における発明の単一性に関する評価は、通常、発明の新規性に関する評価と並行して行われる。単一性の評価は、請求項に記載された一連の発明に共通する技術的特徴が新規かどうかによって左右される。共通する技術的特徴が新規である場合、当該発明は新規性の要件を満たしている。稀にではあるが、一連の発明に共通する技術的特徴が新規ではないために、単一性を満たさなくなることもある。つまり、その発明には異なる技術的解決策が含まれているということになる。この場合、単一性違反を回避するためには、分割出願を行う必要がある。

■ソース
・ベトナム国家知的財産庁ウェブサイト
http://www.noip.gov.vn/ ・ベトナム知的財産法
・科学技術省・省令第01/2007/BKHCN号
・ベトナム特許審査ガイドライン
■本文書の作成者
Investip International Intellectual Property Law Firm Dao Thu Trang
Investip International Intellectual Property Law Firm Do Tuyet Nhung
■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研
■本文書の作成時期

2015.01.26

■関連キーワード