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ベトナムにおける意匠出願の分割および統合

2015年03月31日

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■概要
出願人は、意匠出願後の審査手続の過程で、自発的にまたは国家知的財産庁(National Office of Intellectual Property of Vietnam : NOIP)の指令に応じて、自らの出願を複数の意匠出願に分割し、あるいは複数の意匠出願を複数の実施例を含む単一の出願に統合することができる。NOIPによる意匠出願の統合指令ないし分割指令を回避するためには、意匠の差異もしくは同一性に関する出願人の意匠の説明を明瞭で説得力のあるものとすべきであり、また、登録までに要する審査の長期化と不要な費用の発生を避けるため、複数の意匠を統合して出願するか個別に分割して出願するのか、出願前に十分に検討することが望ましい。
■詳細及び留意点

【詳細】

○意匠出願の分割および統合

意匠出願の分割は、複数の実施例を含む1件の意匠出願もしくは一組の物品(組物)に関する出願について、複数の実施例もしくは組物に含まれる意匠が単一の共通独創概念を表現していない場合に通常行われる。

 

 一方、意匠出願の統合を行う場合には以下のような3つの条件がある。

 

(i)統合される意匠に同一出願人が関与していること、(ii)統合される意匠出願の出願日が同一であること、(iii)統合される意匠の差異が些細なものであること。

 

 知的財産法第101条は、出願の単一性を規定しており、特に第3項は意匠の統合出願について規定している。また、知的財産法第115条には、出願の分割を規定している。

 

ベトナム知的財産法第101条

(1) 各工業所有権登録出願は,(2),(3)及び(4)に規定する場合を除き,単一の工業所有

権に関して1 の保護証書のみを請求しなければならない。

(2) 各登録出願は,緊密に連結していて単一の共通発明概念を形成する1 群の発明に関

して1 の発明特許又は1 の実用新案特許を請求することができる。

(3) 各登録出願は,次の場合は,数件の工業意匠に関して1 の工業意匠を請求すること

ができる。

 (a) 単一の共通独創概念を表現する数個の製品を含み,共に又は単一目的で使用される

組物についての工業意匠

 (b) 1 又は複数の他の変形,すなわち,単一の共通独創性を表現し,かつ,当該工業意

匠と著しく異ならない変形を伴う工業意匠

(4) 各登録出願は,1 又は複数の異なる商品又はサービスに使用される1 の標章に関し

て1 の標章登録証を請求することができる。

 

ベトナム知的財産法第115 条 工業所有権登録出願の補正,補充,分割及び変更

(1) 国家工業所有権庁が保護証書の付与の拒絶通知又は付与の決定を行うまで,出願人

は,次の権利を有する。

 (a) 出願に補正又は補充を行うこと

 (b) 出願を分割すること

 (c) 出願人の名称又は宛先の変更を記録するよう請求すること

 (d) 契約に基づく譲渡の結果として,相続,遺贈の結果として,又は当局の決定に基づ

いて出願人変更を記録するよう請求すること

 (dd) 発明特許に係る願書付きの発明登録出願を,実用新案特許に係る願書付きの発明登

録出願に変更すること,及びその逆に変更すること

(2) (1)に規定する手続について請求する者は,手数料及び料金を納付しなければならな

い。

(3) 工業所有権登録出願に対する如何なる補正又は補充も,出願書類において開示され

又は明記された主題の範囲を拡張してはならず,かつ,当該出願において登録を求めた

主題の内容を変更してはならず,また出願の単一性を確保しなければならない。

(4) 出願の分割の場合は,分割された出願の出願日は,原出願の出願日と決定されるも

のとする。

 

つまり、出願の分割もしくは統合に関する判断は、出願の中で開示された意匠の「単一の共通独創概念」に基づいてなされる。「単一の共通独創概念」を評価するための詳細な基準がないため、分割もしくは統合の大半は出願人が自発的に行うかもしくはNOIPの請求に基づき行われる。分割もしくは統合を求めるNOIPの請求に同意しない場合、出願人は、自らの主張を書面により提出しなければならない。書面の提出がなければ当該出願は拒絶される。

 

 意匠出願が複数の出願人によるものである場合、権利の一体性を保証するため、分割もしくは統合に関して出願人間で書面による合意が必要である。

 

〇意匠出願の分割および統合の手続

 分割出願に関する手続は、「科学技術省・省令第01/2007/TT-BKHCN号」の規則17.2に以下の通り規定されている。

 

・分割出願には新たな出願番号が付され、出願日は親出願の出願日(優先日がある場合には優先日)となる。また、出願の受理通知の発行後、出願が公開される。

・出願人は、各出願について出願料を初めとする全ての料金を支払うとともに、親出願とは別に手続手数料を支払うものとする。ただし、優先権主張に伴う料金は不要である。分割出願は方式審査の対象となり、親出願において完了していない手続きについて処理が進められる。NOIPが親出願について出願の受理通知を発行した後に分割がなされた場合、当該分割出願は再公開され、出願人は公開手数料を支払うものとする。

・(分割がなされた後の)親出願の処理は通常の手続に従って進められ、出願人は補正料および追加料金を支払うものとする。

 

 複数の意匠出願が統合されるべきものである場合、出願人は1件の出願を選択すると同時に他の出願を取り下げるか、または、一の意匠出願に対して他の意匠出願を統合して複数の実施例を有する1件の出願とし、他の意匠出願の実施例に関する図面と、複数の実施例に対する新たな意匠の説明を提出し、他の意匠出願を放棄することができる。

 

○意匠出願の分割および統合の長所と短所

補正

長所

短所

意匠出願の統合

・ポートフォリオ、更新状況、更新期限、侵害に対する法的措置等を出願人が管理するのに便利。

・意匠権を維持するための提出物(特に更新の場合)に伴う費用の節減。現行法では、図面や実施例の数によって更新料が変わることはなく、更新料は意匠登録の件数に基づいて計算される。

・複数の優先権を主張するために余分な費用を支払わなくて済む。

・どのような意匠が「単一の共通独創概念」を持つと見なすか出願人自身が評価するための具体的な基準が未だ存在しない。その結果、出願人が出願前に正確な判断を行うことができない場合がある。

・統合は主として審査官の個人的見解に基づくため、出願人の自発的な統合は拒絶されることがある。

・NOIPが受理通知を発行した後の統合の場合、出願の再公開が義務づけられ、出願人はこれに伴う諸費用を支払わなければならない。

意匠出願の分割

・サーチ請求や実体審査請求に伴う費用を支払う必要がない。

・出願日として親出願の出願日が適用される。

・実施許諾に際して便利な場合がある。

・分割された出願に示された主題が親出願の主題と異なっている場合、独立の出願として追加の庁費用が課される。

・審査は分割請求が提出された時点から開始される。

・出願人は親出願の記載を補正しなければならない。

・分割出願および親出願の再公開が義務づけられる。

 

【留意事項】

・組物に関して、組物に含まれる物品が単一の共通独創概念を有していない場合、出願人は、組物に含まれるすべての物品に関する意匠出願を、それら物品を含む完成品に関する意匠出願と同時に行う必要がある。これに対し、組物に含まれる物品が同一のモチーフに基づいて作製されている場合、出願人は複数の実施例を備えた1件の意匠出願を行うことになる(このような意匠出願は多意匠出願と呼ばれることがある)。

 

・当局による意匠出願の統合請求ないし分割請求を回避するためには、意匠の差異もしくは同一性に関する出願人の意匠説明を明瞭で説得力あるものにすべきである。

 

・登録に要する時間および費用の増大を避けるため、出願人は、複数の意匠について出願する場合、出願前にそれらを統合出願とするかもしくは個別に分割して出願するかを判断すべきである。

■ソース
・ベトナム知的財産法
・科学技術省・省令第01/2007/BKHCN号
・ベトナム意匠出願審査規則
■本文書の作成者
Ageless IP Attorneys & Consultants Nguyen Thi Dieu Linh
■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研
■本文書の作成時期

2015.02.12

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