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ベトナムにおける意匠出願の拒絶理由通知に対する応答

2015年03月31日

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■概要
意匠出願の拒絶理由は大きく分けて、方式審査における図面の明瞭性に係る拒絶理由と、実体審査における新規性に係る拒絶理由である。拒絶理由通知を受けた場合、通知書の署名日から2ヶ月以内(2ヶ月延長可)に応答することができる。期限内に十分な応答ができない時には、暫定の応答を行い、その後、査定が発行されるまでには追加の証拠や関連書類を補充することも可能である。
■詳細及び留意点

【詳細】

 ベトナム知的財産法において、意匠出願は、当該意匠が保護基準を満たすか否かを評価するため、方式審査と実体審査の2段階の審査が行われる。これら2つの審査結果に問題がある場合、それぞれ段階に応じて次の2種類の庁通知が発行される。

 

(1)拒絶理由通知

 意匠出願が方式要件または実体的な保護基準を満たさない場合、国家知的財産庁(National Office Of Intellectual Property Of Vietnam : NOIP)により拒絶理由通知が発行される。これにより、出願人は、誤りの訂正や補正をするための期間および機会が与えられる。拒絶理由通知に対する応答は、2005年に改正され、2009年に附則が追加された知的財産法に従う。

 

(2)拒絶査定

 拒絶理由通知に対し出願人が応答を行わないか、または応答が審査官を納得させるのに不十分である場合、拒絶査定が発行される。この査定に対する回答は、2011年抗告法(Law on Denunciation)に従う。

 

 一般的に、上記2種類の庁通知に対する手続は大きく異なるが、本質的には同じものである。本稿では主に、方式審査および実体審査に関する拒絶理由通知を解消するための実務について述べる。

 

 意匠における主な拒絶理由は次のものである。

 (i)方式審査における図面の明瞭性

 (ii)実体審査における新規性

 (iii)その他、応答期限の徒過等c

 

(i)方式審査における図面の明瞭性

 提出を義務付けられる書類のひとつは、4つの図面または写真で構成される図面一式(以下「図面」という)である。図面は、斜視図、正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図および底面図により意匠を明確に示すものでなければならない。さらに、出願人は、当該意匠を十分に示すために(必要であれば)使用状態、たとえば折りたたんだ状態を示す図面等を追加的に提出できる。追加の図面は、意匠の複雑さの度合いに応じて提出される。

 

 意匠出願が図面の方式要件を理由に拒絶されるいくつかの事例を次に示す。

 

図面の品質

 図面の品質に関し、最も多くみられる不具合は、不明確で不鮮明、または線がギザギザであったり滲んでいたりすることにより、意匠の詳細が図面に正確に示されていないことである。見える部分の線は必ず実線でなければならず、部分意匠であるかによらず点線を用いてはならない。

 

 このような拒絶理由を解消し、図面補正のための不要な時間と費用を省くために、出願人は、基本的には図面を用いて、製品の写真を利用することは控えるべきである。つまり、写真には影、くすみ、光の反射などの光の影響が生じ、それらが図面の品質に悪影響となる。

 

図面の比率

 出願図面または写真、特に製品から直接撮影した写真は、同じ比率を有していないことが多い。よって、出願前に図面毎の比率を慎重に確認する必要がある。

 

(ii)実体審査における新規性喪失に基づく拒絶理由

 実体審査については、経験上、拒絶される意匠出願のほとんどは新規性の欠如を理由とするもといえる。これは2005年に改正され、2009年に附則が追加された知的財産法第65条に従う。

 

 ベトナムでは、意匠は、国内外を問わず出願日または優先日前に、使用により、または書面での説明その他何らかの形態によりすでに開示されている他の意匠と顕著な差異を有する実質的な意匠的特徴が少なくとも一つ含まれる場合、新規であるとみなされる。実質的な意匠的特徴とは、同じ製品および分類において容易に識別し記憶することが可能で、その意匠と他の意匠を見分けるために用いることができる基本的形状である。

 

 実質的な意匠的特徴についての詳細な判断基準が存在しないため、新規性に関する審査結果は主に、審査官の個人的な見解に基づく。ただし、実務上、一般によく用いられる基準は次の通りで、多くの場合これらが意匠的特徴を結論づけるのに用いられる。

 

・意匠は、特定の細部ごとに別々に判断するものではなく、全体として判断するものである。

・意匠は、その外観により評価されるものであり、アイディアを評価するものではない。

・製品のうち意匠が含まれる部分は通常、集中的な観察がなされ、より重要であると評価される。

・一般に、意匠のサイズの変更は実質的な意匠的特徴とはみなされない(二次元意匠のサイズにおける大きな変更の場合を除く)。

・意匠の製造に用いられる材料は、実質的な意匠的特徴とはみなされない。

 

 出願人は、意匠の新規性を確実なものとするために、次のことに留意すべきである。

 

・意匠を知る人数を最小限にする。

・意匠を公に開示しない。ただし、2005年知的財産法 第65条(4)の規定(新規性喪失の例外)に該当する場合を除く。

・意匠の説明により新規性を強調する。

・意匠の独創性について強調する。

 

(iii)その他、応答期限の徒過等

○優先権書類における出願人の住所記載

 ベトナムでは、パリ条約など国際条約に基づく優先権を主張して意匠出願を行うことができる。優先権を主張する場合、出願人は、原出願の優先権書類を提出しなければならない。日本や韓国などでは、日本語または韓国語と英語で記載されている優先権書類の1頁目に出願人の住所が記載されていない。この場合NOIPは、優先権書類およびベトナム出願に記載された出願人が正当であることの十分な根拠がないものとして、方式的な拒絶理由通知を発行する。

 

したがって、日本や韓国から優先権を主張してベトナムに出願する際には、出願人住所を示す書面を提出すべきである。この書面において、優先権書類には出願人住所が欠落していることの説明を記載し、出願人情報に関して問題が生じた場合には責任を負うと記載することで拒絶理由を解消することができる。

 

○優先権を主張する出願に関する拒絶

 外国で登録された意匠は、ベトナムの審査過程において有利である。この実務に関しては、次の点に留意すべきである。

 

・ベトナムにおいて優先権を主張して意匠出願を提出しなければならない。優先権を主張できる期限は、パリ条約に基づく原出願日から6ヶ月間である。

・他国で登録されたという事実は、実体審査において参考となる。実体審査の期間中、出願人は、審査期間を短縮し登録の可能性を高めるために、他国での審査結果(ある場合)をNOIPに提出することが好ましい。

・米国などの意匠審査国の審査結果は、特に参考される場合が多い。

 

○拒絶理由通知に対する応答期限

 

拒絶理由通知

拒絶査定

期限

署名日から2ヶ月

署名日から90日

期限延長

2ヶ月延長可能

延長不可

再審査期間

応答書の提出日から5-6ヶ月

1年超

 

 期限が近づいているにもかかわらず、出願人が十分な応答書面を準備できていない場合、意匠出願を有効に係属させるために、まずは暫定的な応答書を提出すべきである。10-15日間のうちに、完成した応答書を提出すればよい。提出した応答書に対する査定が発行されるまでであれば、出願人はいつでも証拠や関連書類を補充することができる。

■ソース
・ベトナム知的財産法
・科学技術省・省令第01/2007/TT-BKHCN号(2007年2月14日付)
・ベトナム意匠出願審査規則
■本文書の作成者
Ageless IP Attorneys and Consultants、Nguyen Dieu Linh
■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研
■本文書の作成時期

2015.01.31

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