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フィリピンにおける商標の審査迅速化のための対応

2015年03月31日

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■概要
フィリピンでは、商標、サービスマークおよび商号の登録出願は、フィリピン知的財産庁によって付与された出願番号の順番に従い審査される。審査を優先的に促進させる手段としては、(1)優先権主張すること、(2)一定の例外条件に基づく宣誓により優先審査、優先処理(審査以外の処理に関する処理)またはその両方を受けることが挙げられる。
■詳細及び留意点

【詳細】

 フィリピン共和国知的財産法およびその施行規則の規定に基づく商標、サービスマークおよび商号の登録出願は、出願日が付与された順番で、登録要件について審査される。通常、審査の順番は知的財産庁によって付与された出願番号に従い、出願番号の大きい出願が出願番号の小さい出願よりも早期に審査されることはないが、出願番号の大きい出願の出願日または優先権主張日が、出願番号の小さい出願の出願日よりも前である場合はこの限りでない。([商標、サービスマーク、商号およびマーキングされた容器に関する規則[局命令第39号(2002年)、命令第40号(2002年)、局命令第20号(2001年)、局命令第08号(2000年)、局命令第17号(1998年)による修正後のもの]の規則605(b)])

 

 審査を優先的に促進させるためには優先権主張ならびに以下の例外条件に基づく宣誓による手段がある。

 

フィリピン商標規則 規則203 優先権を主張する出願の要件

優先権を主張する出願は、最先の外国出願がなされた日から6ヶ月以内にしなければならない。出願人は、知的財産庁、商標局または審査官からの通知がなくても、次のどちらか一方の認証謄本の英語翻訳文をフィリピン出願日から3ヶ月以内に提出しなければならない。

(a)出願日を示す外国出願

(b)出願日を表示する外国登録

 

 ただし、優先権主張をしなくとも以下の条件に該当する商標出願は、宣誓に基づく正式な請求があり、手数料を納付し、かつ、商標局長の命令がある場合は、優先処理、優先審査またはその両方を受けることが認められる。[商標、サービスマーク、商号、マーキングされた容器に関する規則[局命令第39号(2002年)、命令第40号(2002年)、局命令第20号(2001年)、局命令第08号(2000年)、局命令第17号(1998年)による修正後のもの]の規則605(b)]

 

(1)以前登録されていたが、登録維持要件を満たさなかったために取り消された標章と同じ登録人または譲受人による再出願

 

(2)以前出願したが放棄して、もはや回復することができない標章と同じ出願人による再出願

 

(3)いずれかの国、政府間機関または国際機関の標章、名称もしくは略称、またはロゴに係る登録出願

 

(4)短期間または定期的に行われるスポーツ競技について、当該スポーツ活動の開始前から宣伝広告等で商標登録が必要な場合の標章、名称、略称、ロゴに係る登録出願

 

(5)短期間行われる国内外の貿易使節団または博覧会で紹介され、またはこれに参加している出願人の製品およびサービスの標章、名称、略称、またはロゴに係る登録出願

 

(6)宗教活動、社会的もしくは慈善活動、または教育活動の標章、名称、略称、またはロゴで、その活動の目的を達成するために早期登録が必要なものの登録出願

 

(7)(サービスマークとしての)ドメイン名称の登録

 

(8)情報通信技術インフラにおいて使用されている、または使用される商標、サービスマークおよび商号の登録出願

 

 優先処理または優先審査を認める商標局長の命令は、上記条件のいずれかに基づくものであれ、当該出願人がすでに対象の商標につき先行する権利を有するという決定的な推定とはならないが、慣習により、当該出願人は最先出願者とみなされる。

 

 フィリピン商標法の体系は、商標登録により当該商標にかかる所有権が付与されるのではなく、商標にかかる所有権を有していることにより、当該商標を登録し、関連する商品について当該商標を独占的に使用する権利が生じることを明確にしている。

 

 いわゆる「先願主義(first-to-file rule)」は、単にある商標出願が最初の出願であることを理由に、出願された当該商標について他人が先使用権などの優先する権利を有するにもかかわらず、当該商標出願を登録することを正当化するものではない。不正または不当な請求を目的として、先願主義の原則を濫用することは認められない。商標は、その所有者に属する産業財産権であり、商標を排他的に使用するため登録を受ける権利は、所有権の概念に基づき認められるべきである。「登録された所有者(registered owner)」とは、商標にかかる所有権が単に商標登録により確立されることを意味するものではない。商標登録により確立されるのは、商標の所有権に関する推定的な権利にすぎない。所有権の推定は、対象商標にかかる実際の所有権を示す上位の証拠により覆されるものであり、先行する権利を害してはならないというTRIPS協定の要件にも合致する。(RD TUNA CANNERS LTD.対FRABELLE FISHING CORPORATION [ODG控訴事件第14-06-26号(IPC第14-2004-00003号)、2008年3月13日]、DONALD J. TRUMP対MEGAWORLD CORPORATION [ODG控訴事件第14-08-19号(IPC第14-2007-00176号)]、およびFINANCIAL PLANNING STANDARDS BOARDS, LTD.対SOLID GROUND CONSULTING [ODG控訴事件第14-08-30号(IPC第 14-2007-00343号)、2009年6月1日を参照)

■本文書の作成者
ZOBELLA & CO. Onofre A. Francisco, Jr.
■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研
■本文書の作成時期

2015.02.12

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