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中国におけるコンピュータソフトウェア発明およびビジネスモデル発明における特許性について

2015年03月31日

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■概要
(本記事は、2018/7/3に更新しています。)
 URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/15380/

中国において、コンピュータソフトウェアに関する発明、ビジネスモデルに関する発明については、発明の従来技術からの改良部分に関係しているものが方法である場合、専利法(第2条、第5条、第22条、第25条)の要件を満たさず特許性を有さない。しかし、その出願内容に技術的特徴が含まれている場合は、専利法第25条第1項第2号を根拠に特許性を排除してはならず、特許性を有するか否かを具体的に検討する必要がある。
■詳細及び留意点

【詳細】

中国専利法および関連規定に基づき発明が特許性を有するか否かを判断するには、通常、専利法第2条(特許の保護を受けることができる発明の範囲に関する一般規定)、専利法第5条(法律・公益に反する発明、法律・行政法規に違反して遺伝資源を取得または利用して完成された発明については特許権を付与しないとする規定)、専利法第22条(特許権が付与される発明および実用新案が具備すべき実体的要件に関する規定)および専利法第25条(特許権が付与されない知的活動の法則および方法等に関する規定)などの複数の観点から判断する必要がある。

 

以下、コンピュータソフトウェアに関する発明、ビジネスモデルに関する発明の特許性について分析する。

 

コンピュータソフトウェアに関する発明、ビジネスモデルに関する発明については、発明の改良に関係しているものが方法である場合、その発明の属する技術分野にかかわらず、すべて特許性に関する専利法上の要件を満たさず(専利法第2条、第5条、第22条、第25条)、権利付与されないこととなる。

 

中国の審査官は、ある特許出願が中国専利法の特許性に関する規定に適合するか否かを判断する際、通常、まず発明について保護を求める内容が専利法の保護対象に該当するか否かを判断している。その判断基準は、以下三つの要件である。

(1)特許出願に記載されているものが技術的課題を解決するためのものであるか否か

(2)技術的手段を採用しているか否か

(3)技術的効果を奏するか否か

 

上記三つの要件を全て満たしていれば、他の観点から特許出願において保護を求めるものが特許性を有するか否かを判断する。ビジネスモデルに関する特許出願を例にとれば、従来の審査の考え方では、上述の「三つの要件」についての検討と論理が主な着眼点とされ、「知的活動の法則および方法」に該当することを理由として拒絶されていた。しかし、実際のところは、ビジネスモデルについては、専利法、専利審査指南などの法律や規則においてビジネスモデルの特許性を明確に排除することはされておらず、純粋な知的活動の法則および方法の特許性が排除されているにすぎない。

 

専利審査指南第2部分第1章第4.2節は、例えば、組織、生産、商業の実施および経済等の分野における管理の方法や制度、コンピュータ言語および計算法則、各種ゲーム・娯楽のルール・方法、統計、会計および記帳の方法、コンピュータプログラム自体などの、知的活動の法則および方法のみに関係する請求項については、特許権が付与されてはならないと規定している。

 

その一方で、請求項で特定されている中に、知的活動の法則および方法の内容が含まれていても、技術的特徴も含まれるのであれば、当該請求項が全体としては知的活動の法則および方法ではないこととなるため、専利法第25条第1項第2号を根拠にして、特許権を取得する可能性を排除してはならないとも規定されている。

 

したがって、ビジネスモデルに関する特許出願については、次のように2種類に分けることができる。一つは、完全に自然人の行為によって実現されるビジネスモデル(すなわち、純粋なビジネスモデルの特許出願)であり、もう一つは、コンピュータ、ネットワークなどの自動化手段を利用して実施されるビジネスモデル(すなわち、ビジネスモデル関連の特許出願)であるが、前者は専利法第25条第1項第2号により排除される一方で、後者については、特許性を有するか否か具体的に検討する必要がある。

 

専利審査指南では、専利法第25条第1項第2号の適用が、ある程度制約されている。一方、方法を改良した特許出願(ビジネスモデルに関する特許出願を含む)について、審査官は、従来技術の引用文献を用いずに、明細書中に記載された既存の技術または公衆に周知された事実に直接基づき特許の保護対象に該当するか否かを判断する傾向がある。

 

つまり、従来の拒絶理由では主に専利法第25条第1項第2号が適用されていたが、最近では専利法第2条第2段落の発明の定義に基づき、単に技術的解決手段を構成しないとして拒絶されるようになっている。このような具体的な引用文献なしに専利法第2条第2段落を適用する拒絶理由では、出願人は応答する術がなくなる。

 

こうした審査手法には疑問の声も上がっており、国家知識産権局は、これら案件についての検討および調査に基づいて、審査の判断基準を調整している。特許の保護対象の判断については、技術的手段が採用されているか否かを重点的に検討するものとし、技術的手段が採用されていれば、技術の属性の要件を満たすものとされる。

 

専利審査指南第2部分第1章第2節には、「技術的解決手段とは、解決しようとする技術的課題について採用する自然法則を利用した技術的手段の集合である。技術的手段は、通常、技術的特徴によって表される」と規定されているため、請求項中に技術的特徴が含まれていれば、技術的手段が採用されていることになる。この意味で、知的活動の法則および方法の内容が含まれるビジネスモデルに関する出願の内容に技術的特徴が含まれていれば、全体としては単なるビジネスモデルの特許出願にはあたらないため、専利法第2条第2段落の規定に違反することを理由として特許権を取得する可能性を排除してはならないことになる。

 

逆に、ビジネスモデルに関する出願に何らの技術的手段も含まれていなければ、単なるビジネスモデルの特許出願にあたるため、特許の保護対象に該当せず、専利法第25条第1項第2号に規定する知的活動の法則および方法の範疇に該当し、また、技術的解決手段の要件も満たさない。

 

ビジネスモデルに関する特許出願だけでなく、コンピュータプログラムに関する特許出願も類似した問題に直面する。専利審査指南第2部分第9章第2節には、コンピュータプログラムに関する特許出願の審査基準が規定されており、当該特許出願がコンピュータプログラム自体のみに関係するか、または担持体(記録媒体)に記録しただけのコンピュータプログラムであれば、形態を問わず、すべて知的活動の法則に該当するとされている。

 

一方、コンピュータプログラムに関する特許出願に技術的特徴が含まれていて技術的解決手段を構成する場合は、特許の保護対象となる。コンピュータプログラムに関する特許出願が技術的課題を解決するためのもので、コンピュータで当該コンピュータプログラムを実行することにより外部または内部の装置等を制御または処理することに反映されているものが自然法則に従う技術的手段で、かつ、これによって自然法則に適合する技術的効果を得ているのであれば、当該特許出願がコンピュータプログラムに関係していることのみを理由としてその特許性を否定してはならないとされている。

 

以上のことから分かるように、ビジネスモデルに関する発明もしくはコンピュータソフトウェアに関する発明については、発明の従来技術からの改良部分に関係しているものが方法である場合、その特許出願に関する審査の考え方は、専利法第2条のような指針的な規定は適度に運用し、専利法第25条、第22条のような具体的規定はできる限り適用する傾向となっており、請求項中に何らかの技術的特徴が含まれていれば、知的活動の法則および方法の内容が含まれていることのみを理由に特許権を取得する可能性を排除してはならないようになっている。

 

国家知識産権局では、発明の保護対象についての審査基準が幾分緩やかになり、技術的手段を含み知的活動の法則にも関係する特許出願の進歩性が、先行技術調査により得られた引用文献を用いて審査されるようになっている。このような審査の考え方の変化によって、出願人には自由な応答の余地が与えられるが、このような考え方が各審査官に受け入れられて統一的に実行されるまでは、なお時間を要すると思われる。

■ソース
・中国専利法
・中国専利法実施細則
■本文書の作成者
北京三友知識産権代理有限公司 弁護士・弁理士 羅 蓉蓉
■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研
■本文書の作成時期

2015.01.05

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