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台湾における特許の分割出願

2015年03月31日

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■概要
(本記事は、2020/5/12に更新しています。)
 URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18556/

2011年の台湾専利法(日本における特許法、実用新案法、意匠法に相当。)改正により、分割出願を行う時期に関する規制が緩和され、初審審査の特許査定書の送達後30日以内に分割出願を行うことが可能となった。
■詳細及び留意点

【詳細】

2011年に改正された台湾専利法第34条は、分割出願に関して以下の通り規定している。

 

台湾専利法第34条

特許を出願した発明が、実質上 2以上の発明である場合、台湾特許庁の通知または出願人の請求により、出願を分割することができる。

分割出願は次の各号に掲げる期間内にこれを行わなければならない。

1.原出願の再審査の査定前

2.原出願の特許査定書の到達日から起算して30日以内。ただし、再審査を経て査定されたものは、分割することはできない。

分割後の出願は、原出願の出願日を出願日とする。優先権がある場合は、優先権を主張することができる。

分割後の出願は、原出願の出願時の明細書、特許請求の範囲または図面に開示された範囲を超えてはならない。

第2項第1号規定により分割を行った後の出願は、原出願で既に完了した手続から審査を続行しなければならない。

第2項第2号規定により分割を行った後の出願は、原出願が査定される前の審査手続きを続行するものとする。原出願は、査定時の特許請求の範囲および図面をもってこれを公告するものとする。

 

 

(1)第1項に規定されている分割出願の要件

「1つの発明ごとに出願しなければならない」との専利法第33条第1項の規定に従い、1つの発明ごとに出願すべきたが、例外の「2以上の発明が、1つの広義の発明概念に属する場合、1出願において出願することができる。」との専利法第33条第2項の規定に合致する場合、1つの出願にまとめて出願することも可能である。

 

ここで、単一性を有していない2つ以上の発明、または単一性を有し、まとめて1つの出願で出願された2つ以上の発明に対して、出願人が「1つの発明ごとの出願」に戻すことができるよう、専利法第34条第1項に、特許出願した発明が、実質上2以上の発明である場合、分割出願することができると規定された。

 

一般的に、分割出願には、主に次の場合がある。

(i)請求の範囲に単一性を有さない2つ以上の発明が含まれる場合

(ii)単一性を有する2つ以上の発明について、出願人が2つ以上の出願に分けるほうが有利であると認めた場合(例えば、そのうち1つの発明が、拒絶査定された場合)

(iii)請求の範囲のうち、1つまたは複数の発明が審査によって新規性または進歩性がないとされ、他の発明との単一性がなくなった場合

(iv)請求の範囲に記載されておらず、原明細書に開示されていた発明を補正で追加しようとしたが単一性がない場合

 

(2)専利法第34条第2項に規定されている分割出願の時期に関する要件

(i)専利法第34条第2項第1号には、原出願の再審査の査定前に分割出願することができると規定されているが、分割する際に、原出願は台湾特許庁による審査中でなければならない。原出願が取下げられまたは受理されず、すなわち、審査中でない状態の場合は、分割しようとするもの(すなわち、原出願)がなくなるので分割することができない。

 

よって、初審審査において拒絶査定され分割出願しようとする場合は、原出願は法定の期限までに再審査を請求し審査中の状態に戻して初めて分割出願することが可能となる。なお、分割後の原出願が、取下げられ、または受理されなくとも、分割後の全ての分割出願に影響はない。

 

(ii)専利法第34条第2項第2号には、原出願の初審審査での特許査定後に分割をすることができると規定されている。出願は初審審査の実体審査の段階または初審審査の拒絶査定に対する再審査を請求した後の再審査の段階の何れにおいても、再審査の査定前に分割出願することができる。改正前の専利法には、初審審査で特許査定された場合に分割することができるとの規定がなかった。実務では、出願人が分割出願する前に出願が既に特許査定されてしまった例がある。

 

このようなことを避けるため、初審審査の特許査定後、公告の前に出願人がその発明の内容に対して分割出願する必要があると考える場合は、分割をする機会が与えられる必要があった。そこで、出願人は初審審査での特許査定後に分割出願することができるとの規定が追加された。ただし、権利を早めに確定するために一定の時期の制限をしなければならない。

 

そこで、初審審査の特許査定通知書の送達後30日以内に、分割出願しなければならないと規定された。また、台湾の審査には初審審査と再審査の2つの段階があり、第2号には初審審査の特許査定の場合について規定されているが、初審審査で拒絶査定された場合、出願人は再審査を請求した後に再審査の段階で分割出願することもできる。よって、審査の時期が遅れることのないように、但書きとして、再審査の拒絶査定または特許査定のいずれの後にも分割出願することはできないことが明記された。

 

(3)専利法第34条第3項には、分割出願の出願日の認定と優先権の主張について規定されている。分割出願は、原出願の出願日を出願日とする。原出願が優先権を主張した場合は、分割出願もその優先日を有する。

 

(4)専利法第34条第4項には、分割出願に新規事項を追加してはならないと規定されている。分割出願は、原出願の出願日を出願日とするので、その明細書、請求の範囲または図面の内容は、原出願の明細書、請求の範囲および図面に開示されている範囲を超えてはならず、すなわち、新規事項を追加してはならない。

 

(5)専利法第34条第5項には、審査における、分割出願にかかる原出願と分割出願の審査段階について規定されている。原出願は、補正が提出された場合には、補正にかかる手続きにて審査を続けなければならない。分割出願については、分割出願毎に審査を行わなければならない。また、分割出願に対して審査を繰り返し行うことを避けるために、分割出願毎に、分割出願が行われた原出願の完了した手続きに合わせて審査を続行しなければならない。例えば、原出願が再審査の段階にある場合は、各分割出願とも再審査段階から審査を続行しなければならない。

 

(6)専利法第34条第6項には、初審審査での特許査定後に分割をした原出願と分割出願の審査段階について規定されている。この場合、原出願の審査手続きが査定により終了したにもかかわらず、分割出願の審査が同一の処理手続きの繰り返しにより遅れるということがないように、分割出願は、初審審査の特許査定前の審査を続行することが明記された。すなわち、その際の分割出願は、特許査定された原出願の請求の範囲から分割をするものではなく、原出願の明細書に記載された技術の内容のみから、分割をするものでなければならない。原出願の明細書、請求の範囲および図面は、分割により変更されることがないので、原出願は、依然として、その特許査定された時点の請求の範囲および図面で公告が行われる。なお、その際の分割出願は初審審査の段階にあると認められた。

 

【留意事項】

(1)分割出願した際に、原出願の種類を変更することはできない。すなわち、特許出願は、分割後も依然として特許出願のままである。分割出願を実用新案登録出願として続行しようとする場合は、改めて出願変更しなければならない。

 

(2)分割出願は、原出願に開示されている範囲を超えてはならない。すなわち、各分割出願の内容は、原出願の明細書、請求の範囲または図面に開示されている事項でなければならないが、同時に、各分割出願の内容が原出願の請求の範囲と完全に同一であってはならない。同一である場合、専利法第31条第2項に規定されている出願日、優先日が同日である場合の、出願人が同一人である同一の発明にかかる規定に違反することになる。

 

(3)分割出願において実体審査を請求しようとする場合、原出願の出願日から3年以内に行わなければならない。分割出願する時期が既に3年の期間を超えている場合は、分割出願した日から30日以内に実体審査を請求しなければならない。

 

(4)原出願(以下、親出願)から分割出願した後に、親出願が分割時期の要件を満たさなくなった場合、分割要件と分割時期の要件を満たす分割出願(以下、子出願)があれば、当該子出願からさらに分割出願(孫出願)をすることができる。

 

(5)2011年の専利法改正では最後の拒絶理由通知の制度が導入され、原出願と分割出願の審査について、次の事情があれば台湾特許庁はただちに最後の拒絶理由通知を行うことができる。

(i)原出願に対して行う通知が、分割出願において既に通知されている内容と同じである場合

(ii)分割出願に対して行う通知が、原出願において既に通知されている内容と同じである場合

(iii)分割出願に対して行う通知が、その他の分割出願において既に通知されている内容と同じである場合

 

なお、最後の拒絶理由通知がなされた場合、出願人は通知された期間内において、次の事項についてのみ、特許請求の範囲を補正することができる。

(i)請求項の削除

(ii)特許請求の範囲の縮減

(iii)誤記の訂正

(iv)不明瞭な記載の釈明

 

(6)実用新案登録出願の分割時期は、原出願の処分(許可処分、または拒絶処分)前でなければならない。

■ソース
・台湾専利法
■本文書の作成者
理律法律事務所 弁護士 李文傑
■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研
■本文書の作成時期

2015.01.29

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