アジア / 出願実務
台湾における意匠出願の補正
2015年03月31日
■概要
台湾では、専利法(日本における特許法、実用新案法、意匠法に相当。)に基づき、意匠出願の補正は査定書が送達されるまでであれば、いつでも行うことができるが、中国語(台湾語)による意匠説明書または図面に開示された範囲を超えないことが求められる。なお、外国語書面による出願の場合は、出願時の外国語書面に基づき誤訳の訂正を請求できる。■詳細及び留意点
【詳細】
(1)補正可能な時期(審査基準第三編「設計専利実体審査」第六章「補正、訂正および誤訳の訂正」2「補正可能な時期」)
意匠出願の補正は、査定書が送達前されるまでであれば、いつでも行うことができる。初審査拒絶査定書を受けた場合は再審査を請求し、再審査の段階に入ってはじめて補正可能となる。
(2)補正可能な範囲(審査基準第三編「設計専利実体審査」第六章「補正、訂正および誤訳の訂正」1.3「出願時の説明書または図面に開示された範囲を超えるか否かの判断」)
補正は出願時の意匠説明書または図面に開示された範囲を超えてはならない(専利法第142条で準用する第43条第2項)。なお、意匠説明書に関して台湾専利法施行細則第50条は以下の通り規定している。
台湾専利法施行細則第50条
意匠登録を出願する場合、その説明書には以下の事項を記載しなければならない。
1.意匠の名称
2.物品の用途
3.意匠の説明
説明書は、前項各号が規定する順序および方法によって作成し、かつ、標題を付さなければならない。ただし、前項第2号または第3号が既に意匠の名称または図面において明確に表現されている場合には、記載しなくてもよい。
出願時の説明書または図面に開示された範囲には、形式上開示された内容と、形式上は開示されていないが実質上開示された内容とが含まれる。
補正後の意匠により生じる視覚的効果が当業者にとって出願時の説明書または図面に開示された内容から直接的に知り得るものでない場合は、新規事項の追加とみなされ、出願時の説明書または図面に開示された範囲を超えているとの認定がなされる。
(3)補正の項目(審査基準第三編「設計専利実体審査」第六章「補正、訂正および誤訳の訂正」1.4「補正の項目」)
(i)意匠の名称
意匠の名称を補正した結果、物品の用途が変更され、かつ、それが出願時の説明書または図面に開示された内容から直接的に知り得るものでない場合は、出願時の説明書または図面に開示された範囲を超えているとされる。
認められる補正としては、例えば、「物品の用途をより明確にするために意匠の名称を補正する」「図面に開示された内容に一致させるために意匠の名称を補正する」などが挙げられる。
(ii)物品の用途、意匠の説明
物品の用途または意匠の説明における記載に対する補正が出願時の説明書または図面に開示された内容から直接的に知り得るものでない場合は、出願時の説明書または図面に開示された範囲を超えているとされる。
認められる補正としては、例えば、「物品の用途において、灯具を名称とする意匠が適用される物品が街路灯など室外用灯具であることを補足説明する」「図面に現れる色彩、文字、商標または記号が意匠権を主張しない部分であることを補足説明する」「部分意匠において、意匠権を主張しない部分の表現の方法を補足説明する」などが挙げられる。
(iii)図面
図面に対する補正により、異なる視覚的効果が生じた場合は、当該補正の内容が直接に知り得るものではなく、出願時の説明書または図面に開示された範囲を超えていると認定される。一方、図面を補正しても異なる視覚的効果が生じていない場合は、当該補正の内容が直接に知り得るものであり、出願時の説明書または図面に開示された範囲を超えていないと認定される。
部分意匠において、「意匠権を主張する部分」と「意匠権を主張しない部分」を変更しても、それが出願時の説明書または図面に開示された内容であれば、いずれも元より出願人が完成した創作であり、新規事項は追加されておらず、出願時の説明書または図面に開示された範囲を超えていないと認定される。しかし、例えば、既有の実線の一部を点線に変更した下例15によると、補正後の視覚的効果は出願時に開示されておらず、補正の内容は直接的に知り得るものではなく、出願時の説明書または図面に開示された範囲を超えていると認定されている。
○ 審査基準における例示(台湾専利審査基準第三編「設計専利実体審査」第六章「補正、訂正及び誤訳の訂正」1.7「例示」より抜粋)
【留意事項】
台湾の部分意匠制度では、一部の点線を実線へ、または一部の実線を点線へ補正することは、意匠説明書または図面に開示された範囲を超えないと認められる可能性が高い。
■ソース
・台湾専利法・台湾専利法施行細則
・台湾専利審査基準
■本文書の作成者
理律法律事務所 弁護士 李文傑■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研■本文書の作成時期
2015.01.28