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中国における商標登録出願の流れと審査期間および期間短縮への動き
2015年03月31日
■概要
(本記事は、2022/2/24に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/22613/
中国では、商標登録出願に関する早期権利化のニーズはあるものの、早期審査(優先審査)の制度は設けられていない。しかしながら、2014年5月1日の中国商標法第三次改正に伴い、商標出願の審査期間が厳格に定められ、出願書類を受理してから9ヶ月以内に審査を終了しなければならないと規定された。このことにより、従来は登録までに出願から2~3年かかることもあった商標出願の審査期間が大幅に短縮されることになった。
■詳細及び留意点
【詳細】
(1)商標登録出願の早期審査とは
中国においては制度が設けられていないが、商標登録出願の早期審査(優先審査と呼ばれることもある)とは、商標登録出願に関する早期権利化のニーズを踏まえ、所定の要件を満たす出願について、通常と比べて早期に審査を行う制度である。
商品のライフサイクルの短縮化や経済活動のグローバル化等により、商標権の設定登録前に出願人が出願に係る商標を使用することも少なくない。また、商機の把握や迅速な対応、ブランドの立ち上げ・宣伝の展開、商品の包装のデザイン・印刷等の一連の事業に関連する活動においても、商標の早期登録が望まれている。しかしながら、通常の商標登録出願手続きでは、設定登録までかなりの時間を要するのが実状であり、事業活動のニーズに対応できないケースも少なくない。
商標登録出願に関する早期権利化のニーズに対応するため、商標登録出願の早期審査制度が他国では確立されており、日本、韓国、オーストラリア、ロシア、インド、マレーシア、ベトナム等の国ではすでに導入されている。
(2)中国の商標出願早期審査制度の有無
中国には、商標登録出願の早期審査制度または類似の制度はない。
(3)中国における商標登録出願の審査状況
2014年5月1日の中国商標法第三次改正後、国家工商行政管理総局商標局へ直接(国際登録出願ルートではなく)出願する商標出願は、以下のフローで手続きが行われる。
上記フローチャートに基づき、通常の商標出願の審査の流れおよび期間について概要を説明する。
商標局は新規の商標出願を受理した後、まず出願の書式や記載事項、署名・捺印等の確認などの方式審査を行う。上記事項等で一つでも不備があると、不受理通知書が発行される。この審査には通常2、3日を要する。
その後、出願書類の電子化、情報の記録、図形要素の分類付与、商品・役務の所属区分の確認等の処理が行われる。このステップに通常20日~30日程度を要する。
上記作業が完了すると、出願費用の納付状況を確認する。商標代理機構に出願を依頼した場合、出願費用は商標代理機構が商標局に予納している予納金から徴収されることになる。このステップには通常2、3日を要する。
出願費用納付の確認が行われると、審査官により出願に関わる商品または役務の名称や商標の態様等が審査され、不備があった場合には、補正通知書が発行される。不備がなく、もしくは出願人の補正により不備が解消された場合、受理通知書が発行され、当該商標出願は方式審査合格として正式に受理されたこととなる。受理通知書の郵送に要する期間を考慮すると、このステップには約1ヶ月半から2ヶ月を要するのが通常である。なお、補正が必要となった場合は、30日間の補正期間が与えられ、受理通知書の発行までには、更に時間を要することとなる。
受理通知書の発行と同時に、出願はその区分に応じて審査一部から八部の8つの審査部門のいずれかに送られ、実体審査を受ける。中国では、商標出願の数が膨大であるため、実体審査の結果(初歩登録査定又は拒絶査定)が出るまでは通常4~6ヶ月程度を要する。
初歩登録査定の場合、初歩登録査定公告に掲載された後3ヶ月間の異議申立期間に入り、第三者からの異議申し立てがなければ、設定登録公告や商標登録証の発行等の手続きが行われる。これにより商標登録の手続きが完了する。
なお、商標法の改正に伴い、商標出願の審査期間が厳格に定められ、出願書類を受理してから9ヶ月以内に審査を終了しなければならないとされている。法改正前は、商標出願の審査期間について制限がなかったため、審査の遅滞等が生じ、審査の結果が通知されるまでに2、3年を要したケースも珍しくなかった。
中国では現在のところ、商標登録出願の早期審査制度が設けられておらず、日本の商標出願早期審査制度のように審査期間を1~2ヶ月程度まで短縮することはできないものの、審査期間が9か月以内と厳格に定められたことから、商標出願の後1年以内に設定登録を受けることが可能となった。
■ソース
・中国商標法■本文書の作成者
天達共和律師事務所 張嵩■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研■本文書の作成時期
2015.01.13