アジア / 出願実務
マレーシアにおける特許の第一国出願制度
2015年03月31日
■概要
マレーシアでは、マレーシア特許法第23A条に基づき、出願人または発明者の中にマレーシア居住者が含まれる場合、原則として最初の出願がマレーシアにおいて行われるべきと規定されている。マレーシア国外で第一国出願を行う場合は、事前に書面による許可を得なければならない。この規定に違反する場合は罰金および拘禁を科される恐れがある。なお、マレーシアの「居住者」とは、恒久的にまたは相当の期間にわたりマレーシアで生活する個人または営業する事業体を指すものと考えられる。■詳細及び留意点
【詳細】
マレーシアでは、特許法第23A条に基づき、出願人または発明者がマレーシアの居住者である場合の特許出願について、以下のように定めている。
マレーシア特許法 第23A条(居住者による出願は最初にマレーシアにおいて行われるべきこと)
マレーシアの居住者は、登録官からの書面による許可を得ないで、マレーシア以外で発明についての特許出願をしてはならず、または、他人にさせてはならない。ただし,次に掲げる条件に該当するときは、この限りでない。
(a)同一発明に関する特許出願が、マレーシア外での出願の2ヶ月以上前に特許登録局に対して行われていること、および
(b)その出願に関し、登録官が第30A条に基づく指示を出していないか、またはそのような指示はすべて取り消されていること
さらに特許法第62A条の規定に従い、第23A条に違反して特許出願をし、またはさせた者は、違反行為を犯したものとし、15,000リンギット(約4,500 USドル)以下の罰金もしくは2年以下の拘禁またはその双方を科される恐れがある。
マレーシア特許法 第 30A 条(マレーシアに損害を及ぼす虞のある情報の公表禁止)
(1)特許出願が特許登録局に対して行われ,または行われたとみなされ,かつ,その出願が公表されたならばマレーシアの利益又は安全を害する虞があると登録官に思われる情報を含んでいる場合は,登録官は,大臣の指令に従うことを条件として,当該情報の公表,又は一般的であるか特定の人若しくは特定の集団に属する人に対するものであるかを問わず,当該情報の伝達を禁止又は制限する指令を出すことができる。
(2)大臣の指令に従うことを条件として,登録官は,登録官が(1)に基づいて出した指令であって,特許出願に含まれている情報の公表又は伝達を禁止又は制限する趣旨のものを取り消すことができるが,ただし,登録官が,その公表又は伝達が既にマレーシアの利益又は安全を害するものではなくなっていると認定していることを条件とする。
(3)(1)に基づいて登録官が出した指令が出願について効力を有している場合は,その出願についての手続は,特許を付与する準備を整える段階まで進めることができるが,その出願について特許を付与してはならない。
(4)本条は,本条に基づく指令の発出,修正又は取消をすべきか否かに関する意見を取得するために,省庁,政府部局又は当局に対して発明に関する情報を開示することを妨げるものではない。
第 62A 条(第 23A 条に違反する出願)
第 23A 条に違反して特許出願をし又はさせた者は,違反行為をしたものとし,有罪判決により15,000 リンギット以下の罰金若しくは 2 年以下の拘禁,又はこれらを併科されるものとする。
この特許法第23A条に関して、当事務所の見解によると、発明者または出願人がマレーシアの居住者(市民権とは関係ない)である場合、かかる発明者または出願人に対して第23A条が適用され、マレーシア国外で第一国出願を行う前に、書面による許可を求めなければならない。発明者がマレーシアの居住者ではないものの出願人にマレーシアの事業体または個人が含まれる場合も許可を取得しなければならない。同様に、出願人はマレーシアの事業体または個人ではないが、発明者にマレーシアの居住者が含まれる場合も、許可を取得しなければならない。特許法第23A条は「発明が創出された時点」で適用されるものと考えられる。
特許法において「居住者」は定義されていない。しかし、所得税法に基づく「居住する」または「居住者」という用語を解釈している複数の事件がある。これら事件は、居住者の定義として、オックスフォード辞典に記載された「居住する」の定義を採用している。同辞典によれば、「居住する」は、自己の定住所または通常の住所を持つために恒久的にまたは相当の期間にわたり生活ことを意味している。そのため、極めて限定された目的または短期の目的による単なる滞在ではなく、恒久的にまたは相当の期間にわたりマレーシアで生活する個人または営業する事業体が、マレーシアの居住者であると考えられる。
■ソース
・マレーシア特許法■本文書の作成者
SKRINE、Yap Tai Lan■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研■本文書の作成時期
2015.01.23