アジア / 出願実務
マレーシアにおける特許出願の早期審査制度
2015年03月31日
■概要
マレーシアでは、所定の条件を満たす特許出願について、公開後に早期審査を請求することができる。早期審査請求については約1週間で承認可否が判断され、早期審査請求が承認されると、審査官は4週間以内に当該出願の早期審査を実施する。■詳細及び留意点
【詳細】
マレーシアにおける特許出願の早期審査については、マレーシア特許規則における規則27Eにより以下の通り規定されている。
マレーシア特許規則 規則27E 早期審査
(1)規則27に基づく実体審査請求を行いまたは行った出願人は、登録官に対して特許法第34条に基づき公開となった出願の早期審査を請求できる
(2)早期審査請求は様式5Hを登録官に提出することによって行うものとし、次の2つのものを添付しなければならない
(a)早期審査を請求する理由を述べた宣誓書
(b)所定の手数料
(3)出願人が早期審査を請求する場合、登録官は次の事項を満たすと合理的に判断できる場合に、かかる請求を認めることができる
(a)国または公の利益があること
(b)適応される特許に関して、侵害に関する手続が継続中または潜在的に侵害していることを示す証拠があること
(c)出願人が発明をすでに商品化していることまたは本規則に基づく早期審査請求の申立日から2年以内に商品化する予定であること
(d)特許付与を受けるための出願を行うことが、政府または登録官認定機関から金銭的便益を得るための条件であること
(e)当該の発明が、環境の質またはエネルギー資源の保護を高めるような環境保全技術に関連すること、または
(f)かかる請求を認めるべき他の合理的な根拠があること
(4)登録官は、早期審査を実施すべきか否かにかかわらず自己の決定をなした後、実行可能な限り速やかに、出願人に書面で通知しなければならない
(5)登録官が出願の早期審査請求は正当であると認める場合、出願人は(4)に定める登録官
の決定を受領した日から5営業日以内に様式5Iを提出し、所定の手数料を支払わなければならない
(6)出願の実体審査の適用上、特許法第30条(1)および(2)に定められた要件の全部または一部を満たさないと審査官が通知した場合、登録官は満たさない要件を出願人に説明するための不利益通知(adverse report)を出願人に送付しなければならず、かつ、出願人には、登録官による不利益通知の発行日から3週間以内に当該報告に対する意見書を提出し、また要件を満たすように出願を補正する機会が1回与えられるものとする
(7)出願人が(6)に基づき定められた期間内に出願の補正を行わない場合、早期審査の請求は取り下げられたとみなされる
早期審査を利用するには、出願人は、優先日または出願日から18ヶ月後に自己の出願が公開され次第、早期審査請求を行う必要がある。この請求(様式5H)には、早期審査を請求する理由を述べた宣誓書を添付する必要がある。
登録官は、「当該出願の迅速な処理が国または公の利益となること」、「侵害訴訟が提起されている、もしくは潜在的侵害を示す証拠があること」、「出願人が発明をすでに商品化しているかまたは早期審査請求の申立日から2年以内に商品化する予定であること」、「政府または登録官認定機関から金銭的便益を得るための条件であること」、「または環境保全技術に関連するものであると、合理的に判断できる場合」に、早期審査請求を承認する。
請求が承認されると、出願人に書面で通知される。出願人は、登録官の通知の日付から5営業日以内に、様式5Iを提出し、所定の手数料を支払わなければならない。
MyIPOの実務に従い、様式5Iによる早期審査請求書および所定の手数料(オンラインの場合はRM2,000、手交の場合はRM2,200)の支払受領後、審査官は4週間以内に当該出願の審査を実施する。実体的要件が満たされていない場合、審査官は不利益通知を発行する。出願人には、不利益通知の発行日から3週間以内に意見書を提出し、出願を補正する機会が1回与えられる。MyIPOは、この応答期限の延長も認めない。出願人が3週間以内に不利益通知に応答した場合、登録官は3週間以内に再審査を行うと共に、早期実体審査の最終決定を下す。
出願人が3週間以内に意見書を提出しない、または方式要件を満たさない場合、早期審査の申請は取り下げられたと見なされ、当該特許出願は通常の審査プロセスに従い、審査される。
出願が全ての要件を満たしている場合、登録官は認可通知を発行し、認可通知から5営業日以内に特許が付与される。
■ソース
・マレーシア特許規則・早期審査請求のフォーマット(様式5H)
http://www.myipo.gov.my/documents/10180/16411/PF5H.pdf ・早期審査請求承認後の納付フォーマット(様式5I)
http://www.myipo.gov.my/documents/10180/16411/PF5I.pdf
■本文書の作成者
SKRINE パートナー弁護士 Teh Hong Koon■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研■本文書の作成時期
2015.01.27