アジア / 出願実務 | 制度動向
韓国における特許法の主な改正内容
2015年03月16日
■概要
韓国では特許法の改正法が2014年6月11日に公布され、2015年1月1日以降にされた出願(国際出願を含む)から適用される。今回の改正においては、出願日確保のための明細書記載要件の明確化、明細書の言語要件の緩和、外国語出願明細書の補正および訂正基準の緩和、国際出願の韓国語翻訳文提出期間延長制度の導入等の改正が行われている。■詳細及び留意点
【詳細】
韓国の特許法の改正法が2014年6月11日に公布され、2015年1月1日以降にされた出願(国際出願を含む)から適用される。主な改正内容は以下の通り。
改正の主な内容
(1) 出願日確保のための明細書記載要件の明確化
現行法でも早期の出願日確保のため、一定期間については明細書に請求の範囲を記載せず出願することができる制度となっている。しかし、請求の範囲がない明細書を提出しても出願日が認められるという規定は明確ではなかった。改正法では研究論文等の内容を明細書に記して、願書に添付して提出すれば出願日が確保できることを明確にしている。(第42条第2項-新設)
しかし、最先出願日から1年2か月以内に明細書に請求の範囲を記す補正をしなければならず、請求の範囲を記す補正を行わなかった際には、取下げとみなされる。また、明細書に請求の範囲が記載されていない場合は審査請求を行うことができない(第59条第2項第1号)。また、請求の範囲を記載した出願に限って出願公開される。(第64条第2項)
(2) 出願日確保のための明細書の言語要件の緩和(外国語出願制度の導入)
韓国では出願書類を韓国語で作成しなければならないというハングル重用政策を依然として固守しているため、特許制度の国際的調和に対応できておらず、かつ国内でも英語論文などが増え続けていることを考慮するとき、英語論文を基に早期の出願日確保ができる制度が必要であった。こうしたことから、出願日確保のために許容される言語の範囲を韓国語の他に外国語まで拡大し、細部事項は産業通商資源部令に委ねた(現在、外国語記載可能言語は英語に限定予定)。しかし外国語出願の場合、最先出願日から1年2か月以内に韓国語翻訳文を提出しなければならず、韓国語翻訳文未提出の際には取下げとみなされる(第42条の3第4項)。
一定の要件の下で、韓国語翻訳文の提出期間内に新たな韓国語翻訳文を提出することができる。また、韓国語翻訳文に誤訳があった場合、明細書を補正することができる期間内に誤訳の訂正が可能である。一方、韓国語翻訳文の提出前は明細書の補正、分割・変更出願および審査請求が不可能であり、出願公開されない。
(3) 外国語出願の明細書補正・訂正基準の転換
(翻訳文 → 原文)
五大特許庁のうち、韓国だけが韓国語翻訳文を補正の基準としているため翻訳上の単なる誤訳でも補正することができず、出願人が真正な権利を取得できない問題があった。改正法では、外国語国際出願の場合、国際出願可能言語(英語、日本語など)で作成された外国語明細書の範囲内で補正が可能であり、外国語出願の場合、英語明細書の範囲内で補正が可能である。
〈原文主義 vs翻訳文主義の補正範囲の比較例〉
区分 |
現行法(翻訳文主義) |
新法(原文主義) |
原文 |
Ca |
Ca |
翻訳文 |
カリウム |
カリウム |
補正範囲 |
カリウム ×(補正不可) カルシウム |
カリウム ↓(補正可能) カルシウム |
審査段階では外国語明細書または韓国語翻訳文のいずれかの範囲を逸脱した補正を行えば拒絶理由に該当するが、特許登録後は外国語明細書を逸脱した補正のみ無効理由に該当する。外国語国際出願(一般の外国語出願を含む)の分割出願、変更出願、国内優先権主張出願の場合も外国語明細書の範囲内で補正が可能である(第47条および第208条)。また、外国語国際特許出願の他出願であって拡大先願の地位も外国語明細書範囲に変更されている(第29条第5項および第200条の2第2項)。
(4) 国際出願の韓国語翻訳文提出期間延長制度の導入
出願人の韓国語翻訳文提出の便宜を図るために、韓国語翻訳文提出期間が延長される。現行法では、国内段階へ移行する旨を表示した書面と外国語明細書に対する韓国語翻訳文をともに提出しなければならないが、韓国語翻訳文提出期間の延長申請がある場合は国内書面提出期間までに韓国語翻訳文なしに書面のみ提出することができる。すなわち改正法では、外国語国際出願の韓国語翻訳文提出期間が1か月延長される(2年7か月+1か月=最大2年8か月)。具体的には、韓国語翻訳文提出期間の延長を求める旨を国内段階へ移行する旨を表示した書面に記し、国内書面提出期間の満了日前1か月からその満了日までに提出すればよい。(第201条)
改正による効果
英語論文自体を明細書として提出しても出願日が確保できることが明確になるので、早期の出願日を確保するための外国語出願が増加することが見込まれる。また、翻訳上の単なる誤訳により拒絶されたり、権利範囲が縮小された外国語出願(国際出願を含む)に対して、原文基準の補正の機会を与えることで出願人の真正な権利を確保することができる。さらに、韓国語翻訳文提出期間の延長認定により出願人の便宜が図られ、韓国語翻訳文の品質向上により出願公開明細書を技術書として活用する一般大衆の便宜増進に資することとなると考えられる。
さらなる法改正
2015年8月には公知例外主張補完制度や登録査定後の分割出願制度の導入等が含まれる、さらなる改正特許法が施行される見込みである。
■ソース
JETRO 韓国 知的財産チーム韓国知的財産制度に関する情報
最新の知財関連法律改正案(韓国特許庁発表) 特許法一部改正法律(説明資料)
http://www.jetro-ipr.or.kr/info_view.asp?br_main=6&br_sub=5&br_idx=591
■本文書の作成者
CENTRAL INTELLECTUAL PROPERTY & LAW■協力
日本技術貿易株式会社IP総研■本文書の作成時期
2014.12.16